インタビュー
システムやビジュアルなどのクオリティが大幅に進化した「戦場のヴァルキュリア3」,プロデューサー本山真二氏へのインタビューを掲載
システムやビジュアルなど一人用としてのクオリティが大幅に進化
4Gamer:
バトルシステムで大きく変わったところ,ここは進化させようと思った部分はどこでしょうか?
本山氏:
「1」から「2」のときは,ハードが変わったということもあって,PSPでもBLiTZをきちんと遊べるものにすることが最大の目的でしたが,今回は同じハードで2回目になるので,当然BLiTZも進化していかないといけないですよね。
BLiTZが画期的だと言っていただけることがあって,それはありがたいことですけど,それに甘えて僕らの思考が停止してしまうのも良くないなと思っているんです。
4Gamer:
進化としては,クルト,リエラ,イムカの「特殊化」が一番目立つ部分ですよね。
本山氏:
今回はまず,BLiTZをもっと面白いものにすることを,チームにオーダーしました。その中で,スペクタクル感をアップさせる要素として生まれたのが特殊化ですね。
これは,BLiTZというシステムで,「ヴァルキュリア」シリーズにおける重要なポイントでもある,キャラクター感のようなものをもっと出せれば,キャラクターとシステムが両立するんじゃないかなと思ったのがきっかけです。ヴァルキュリア化したキャラクターを操作することもやってみたかったので,それらを上手い具合にシステムに落とし込めるか,という挑戦でした。
4Gamer:
キャラクターの見た目も,前作より綺麗になっていて,一般兵を除くとキャラクターごとのモデルもすべて違うんですよね?
本山氏:
そうですね。クオリティはかなり向上していますし,名前のあるキャラクターに関しては,すべてボディを描き分けています。
これが実現できたのは,実は今作で通信機能を省いたところによるものが大きいんです。「2」では,ストーリーモードのほぼすべてが通信プレイに対応していたので,通信のためのモジュールが常駐する形になっていました。
「3」ではその要素をなくしたことで,その分できた余裕を,キャラクターのクオリティであったり,マップの大きさであったりといった部分に回せたんですね。思った以上に,いろいろな面での波及効果は大きかったです。
4Gamer:
「3」で通信要素をなくした理由を聞かせてもらえますか?
「2」をプレイした方の評判は悪くなかったんですよ。「手伝ってもらって4月のバルドレン戦をクリアできた」といった方もいらっしゃいましたし,入れた意義はあったと思います。ただ,「戦場のヴァルキュリア」のユーザーさんが求めていたものは通信だったのかという点では,その絶対数は少なかったんじゃないでしょうか。
また,実際に通信プレイの様子を見ていると,司令官役の人がほかの人に指示を出すというスタイルが多かったんです。それはそれでもちろんアリなんですが,マルチプレイの楽しさというところでは,疑問に感じるところもあったんです。「“司令官以外の人は,やらされている感”になっていないのか?」と。
なので,「3」を立ち上げる際,僕の中では通信の要素は切ってもいいかなという思いがありました。ただ,「2」にあった要素をただ切るというのは乱暴ですし,その見返りとなるものも求められますよね。ユーザーさんの意見をはじめ,いろいろなリサーチをして最終的な確認をしたうえで,一人プレイを充実させて,クオリティの高いものを仕上げていこうと考えたんです。
4Gamer:
通信要素を削ることで,ビジュアルのみならずシステム面でもかなりパワーアップできたと。マップのバリエーションは「2」よりも増えているんでしょうか?
本山氏:
新しいマップのバリエーションはだいぶ増やしています。
「2」ではミッション重視ということもあって,マップの形状が割と画一的になりがちでした。それだとドラマチックなバトルはなかなか演出しづらいという面があります。マップを大きくしたり形状を変えたりすることで,遊びの部分が大きく変わっていくのではないか,という感じで取り組みました。
一つの章あたりのバリエーションも豊かになりましたし,章ごとの最終ミッションは組み合わせを変えただけではない,個性的な新マップになっているので,そのあたりも含めて,戦記を読み進めている感覚はアップしたと思います。
4Gamer:
そういえば,ミッションに出撃できるユニット数も,「2」の最大6人から9人に増えていますよね。
本山氏:
そうですね。実は,「3」では敵のユニットも増やしているので,歯ごたえもアップしています。その強い敵を,頭を使って攻略していくというのがBLiTZの面白さだと思うんです。そこに新しい爽快感として特殊化というエッセンスを加えた,ということですね。
4Gamer:
前作では,敵戦車よりもV2の怖さが際立ってしまっていたと感じたのですが,「3」ではどうなるんでしょうか?
本山氏:
戦車については,弱点を突くこともできるけど,とにかく堅くて驚異を感じるような存在にしよう,そうじゃないと戦車がいる意味がないよね,という意見がチーム内でありました。
戦車って兵種の一つとして考えることができますよね。シミュレーションゲームのバランスの話にもなってくるのですが,今回は,兵種の使い分けをきっちりして,特性を際立たせようというのがテーマの一つだったんです。
たとえば,偵察兵は移動距離が長いという特徴はそのままですが,圧倒的に打たれ弱いので,偵察兵だけが敵拠点に突っ込めばどうにかなるようなものではありません。突撃兵がしっかりと拠点を防衛しつつ,偵察兵は敵を避けて回り込んで敵の本拠点を奪うといった,戦術的な意味での役割分担をはっきりさせています。
4Gamer:
兵種の数が「2」より減ったのも,そのテーマの顕れですか?
今回は各兵種の個性が際立つように調整したので,最終的な数でいうとシュリンクしているところはあります。ただ,どのキャラクターも武器を持ち替えるだけで兵種を変更できるので,実際のところ,数が減ったという印象はそれほど感じないと思います。
4Gamer:
自由に兵種を変更できるとなると,キャラクターの個性が薄れる気もするのですが。
キャラクターにはもともと,ポテンシャルという個性もありますし,物語の面での個性付けは,もちろんしています。また,それぞれ得意な兵種というのが設定されていますが,これはちょっとしたボーナス程度だと考えてください。やはり,得意な兵種での能力差がありすぎると,クラスチェンジが自由にできる意味がなくなってしまうので。
たとえば,あるミッションで対戦車兵が多くないとクリアできないと感じたようなときは,迷いなくクルトを対戦車兵にしてもらっても全然OKだと思います。
「戦場のヴァルキュリア」は,シミュレーションゲームとしての面白さももちろん大事なんですが,一方ではキャラクターも大事にしないといけないんです。
たとえば,途中から戦線に加わったキャラクターの見た目が好きでも,弱いとなかなか使いづらいですよね。また,兵種ごとに育成をしている/いないみたいなことで差がつくのもつらいので,そのあたりを少し解消してあげたかったんです。
レベルアップも,兵種ごとの形から,ヒットポイントや射撃といった能力主体の形にがらりと変わりましたね。
本山氏:
はい。本作ではすべてのキャラクターが自由に兵種変更できるようになったので,能力的な部分は部隊全体での管理要素にしました。一方,キャラクターを育てる楽しみは,新要素“マスターテーブル”のほうに持っていきました。
4Gamer:
今まではお気に入りのキャラクターだけで部隊編成をしたとき,兵種の偏り方が自分の好みではない形になったり,レベルの低い兵種ばかりになってしまうことがあったのが,「3」ではなくなるという感じですかね。
本山氏:
基本的にはそうですね。ただ,各キャラクターには熟練度という固有パラメータもあるので,途中参戦のキャラクターが,入ってきた瞬間に前からいるキャラクターと同じくらい強いかというと,そうとも限らないんですけどね。
4Gamer:
先ほど話に出ましたが,キャラクター個別の育成では,マスターテーブルという要素が入るんですよね?
本山氏:
はい。それがポテンシャルにも関わってきます。
ユーザーさんも,各キャラクターに覚えさせたいポテンシャルがあるでしょうから,キャラクターの成長過程を一緒に楽しめるようにしてあげたかったんです。希望のポテンシャルを覚えるには,どの兵種で育てたらいいか,視覚的に分かりやすく確認できるインタフェースとして用意したのが,マスターテーブルなんです。
4Gamer:
「2」ではどの兵種/兵科でどんなポテンシャルを覚えるかは,マスターするまで分からかなったから,それは嬉しいですね。
ちなみに,「3」では武器の強化に素材がいらなくなったとのことですが,強化はゲームを進めていくとバリエーションが増えていく形なんですか?
そうです。シナリオを進めていくとお店に並ぶものが増えていって,別ツリーに派生するものに関しては,設計図を入手する必要があるという感じですね。
4Gamer:
武器でもう一つお聞きしたいのが,イムカの「ヴァール」です。イムカはどの兵種でもヴァールを使うとのことですが,兵種を変更したらどうなるんですか?
本山氏:
兵種ごとに,ヴァールにアタッチメントが付くなど,見た目を含めて細かく変わります。そのあたりは,ぜひゲームをプレイして確認してください。
4Gamer:
戦車は,基本的には「2」のときと同じくらいカスタマイズできる感じですか?
本山氏:
そうですね。これまでは兵士の装備もパラメータ違いでビジュアルは一緒というものが多かったと思うんですけど,今回はキャラクターモデル同様,パーツのモデル違いも増やしています。パーツの実数としては同じくらいですけど,カスタマイズしたときの見た目は変わりやすいかもしれません。
ちなみに,個人的には調達屋のカリサがえらい毒舌でものすごく気になるんですけど,カリサ以外にも,個性的なサブキャラクターは出てきますか?
本山氏:
カリサは見た目はすごく可愛らしいんですけどね。ほかにも「なんだこいつは!?」ってくらい相当変なキャラはいます。期待してください。
4Gamer:
ゲームの全体的なボリュームは,どれくらいあるんですか?
本山氏:
プレイの仕方にもよるんですけど,相当やりごたえはあると思いますよ。たとえばストーリーのテキスト量はシリーズの中でも圧倒的に多いですし,やり込んだら相当長く楽しめると思います。
4Gamer:
ちょっと気が早いですが,クリア後に楽しめる要素は用意されていますか?
本山氏:
クリア後に出てくるフリーミッションやエクストラエピソードはもちろんあります。また,発売後もダウンロードコンテンツを出していきたいと思っていて,そちらでもエクストラエピソードや,手応えのあるミッションを用意する計画があります。今回は,エンディングを見たあとも,BLiTZのシステムだけじゃなく,ストーリーもセットで楽しめるようになっているので,ご期待ください。
4Gamer:
追加コンテンツの用意があるとのことですが,エンディングまでたどり着いていなくても楽しめるものも提供する予定ですか?
本山氏:
そうですね。ただ,そこはやはり追加コンテンツですので,ある程度ゲームを進めたユーザーさん向けのものになるとは思います。
4Gamer:
今回も予約特典が用意されましたが,特典の「0章」は予約限定特典で,「エイリアス」は先行配信という形になるんですよね?
本山氏:
そうですね。0章は予約特典のみで,配信の予定はありません。ただ,ダウンロード版では発売後1週間まで,特典付きでの販売となります。予約しそびれてしまった方は,ダウンロード版もご検討ください。
4Gamer:
エイリアスのほかにゲストキャラクターはいるんですか?
本山氏:
……続報をお待ちください(笑)。
4Gamer:
では最後に,読者に向けてのメッセージをお願いします。
本山氏:
「戦場のヴァルキュリア」シリーズは今回で3作めになりますが,シリーズを重ねていくことで熟成された要素が沢山ありますし,その中で変えていかなくちゃいけない部分というものもありました。「3」では,それらのほぼすべてに応えられているタイトルに仕上がったので,シリーズファンの方にはもちろん楽しんでいただけるタイトルになっていると思います。
また,シリーズ物ではありますが,過去の物語を知らないと遊べないことはまったくないので,「3」が初めてという方も,恐れずに手に取ってもらいたいです。
難易度に関しても,「イージー」「ノーマル」がいつでも切り替えられるので,自分に合った難易度でいつでも楽しんでもらえる内容になっています。そこは自信を持ってお勧めできますので,ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビュー中で本山氏も語っていたが,「戦場のヴァルキュリア3」は,基本的なシステムは「2」のシステムをベースに,コンセプトは「1」寄りの重厚感に再シフトしたといった印象だ。シリーズ初のダブルヒロインであったり,ストーリー上のルート分岐があったりといった要素も気になるところだ。
「戦場のヴァルキュリア」シリーズの特徴といえる戦闘システム「BLiTZ」は,「2」の時点ですでにしっかりと楽しめるPSP向けのアレンジがなされていたが,「3」では「2」よりも大きいマップが用意されたり,戦闘に出撃できるユニット数が9人に増えたりと,パワーアップしているため,より歯ごたえのある戦闘が楽しめそうである。
また本作では,「1」と同じ征暦1935年を舞台に,別の視点で独立した物語が描かれている。つまり,ストーリーにおいてはシリーズの知識の蓄積は不要であり,これまでプレイしたことがない人でも,すんなりゲームの世界に入り込めるといっていいだろう。
シリーズのファンはもちろんだが,これまで本作をプレイしたことがない人も,ぜひ本作を手に取ってプレイしてみてほしい。
「戦場のヴァルキュリア3」公式サイト
- 関連タイトル:
戦場のヴァルキュリア3
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