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NVIDIAのPascalベーススパコン「DGX-1」を124台使ったシステムが電力当たり処理性能で世界一に
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印刷2016/11/15 12:00

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NVIDIAのPascalベーススパコン「DGX-1」を124台使ったシステムが電力当たり処理性能で世界一に

画像集 No.010のサムネイル画像 / NVIDIAのPascalベーススパコン「DGX-1」を124台使ったシステムが電力当たり処理性能で世界一に
 北米時間2016年11月13日から18日までの日程で,米国ユタ州のソルトレイクシティにて,スーパーコンピュータ関連イベント「SC16」が行われている。北米時間2016年11月14日,SC16に合わせてNVIDIAは,同社CEOであるJen-Hsen Huang(ジェンセン・ファン)氏が,スーパーコンピュータやハイパフォーマンスコンピューティング(以下,HPC)分野に関連したいくつかの発表を行った。
 およそゲーマーに直接関わるような話ではないのだが,Pascalアーキテクチャ採用のサーバー向けGPU「Tesla P100」が,HPC分野でどのように使われていくのかが見えてくる話題だったので,概要を簡単にレポートしよう。


124台の「DGX-1」採用するスーパーコンピュータ「SATURNV」を発表


DGX-1の実機
画像集 No.002のサムネイル画像 / NVIDIAのPascalベーススパコン「DGX-1」を124台使ったシステムが電力当たり処理性能で世界一に
 まずはハードウェアの新発表から。
 2016年4月にNVIDIAは,同社開催のイベント「GTC 2016」で,Pascalアーキテクチャを採用するGPU「Tesla P100」を8基を搭載するディープラーニング向けスーパーコンピュータ「DGX-1」を発表している(関連記事)。

 世界各国の企業や研究機関から数多くの引き合いがあるというDGX-1だが,それを124台も使用するスーパーコンピュータ「SATURNV」(サターンブイ)を,NVIDIAが開発したとHuang氏は発表した。
 このSATURNV,人工知能(以下,AI)研究用途のスーパーコンピュータとしては,世界最高の性能を有するそうで,IntelのHPC向けプロセッサ「Xeon Phi」を採用したスーパーコンピュータと比べて2倍の電力性能比を実現。スーパーコンピュータの電力効率を競う「Green500」では,トップになったということだ。

124台のDGX-1を使ったスーパーコンピュータSATURNV。消費電力1Wあたりの演算性能が9.5GFLOPSに達し,Green500でトップに立ったという
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 ところで,SATURN Vといえば,米国が月への有人飛行を実現するために開発したロケットの名前であることを覚えている人もいるだろう。このスーパーコンピュータは,それにあやかった命名というわけだが,それにはちゃんとした理由がある。

 2016年1月に米国政府は,政府の主導で癌の早期発見や治療の研究を加速させるプロジェクト「Cancer Moonshot」をスタートした。Moonshotは「月への打ち上げ」のほかに,「挑戦」という意味があるそうだ。
 Cancer Moonshotの一環として,National Cancer Institute(米国立がん研究所)や各研究機関が共同で「CANDLE」(Cancer Distributed Learning Environment,がん研究用分散学習環境といった意味)というAIを使ったシステムを開発しており,SATURNVはそのプラットフォームとしてNVIDIAが構築したスーパーコンピュータであるという。つまり,Cancer Moonshotのためのコンピュータだから,SATURNVというわけである。

2016年1月に,癌研究を加速させるプロジェクトのCancer Moonshotがスタート(左)。その一環として,がん研究のためのAIシステム「CANDLE」を構築するプラットフォームがSATURNVとなる
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 ハードウェア関連では,IBMのプロセッサである「POWER8」と,Tesla P100を組みわせたサーバーシステムの発表もあった。
 POWER8は,PCI Express 3.0比で5〜12倍の実効帯域幅を有するNVIDIA独自のプロセッサ間バス「NVLink」を備えたCPUで,Tesla P100と最大750GB/sという帯域幅の広いバスで接続できる点を特徴としている。CPUとTesla P100をネイティブのNVLinkで接続するサーバー製品は,このIBM製システムが世界初となるそうで,どれくらいの性能を発揮するかに注目が集まりそうだ。

POWER8とTesla P100を組みわせたIBM製サーバーシステムが発表された
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MicrosoftのAI開発ツールキットもDGX-1に対応


 ソフトウェアに関する発表は2つ。
 まず,POWER8がTesla P100に対応したことに合わせて,IBMは,NVIDIA GPUによる演算処理に対応するAI開発ツールキット「IBM PowerAI Toolkit」をリリースした。
 IBM PowerAI Toolkitでは,ディープラーニング向けライブラリ「Caffe」やGoogle製の機械学習ライブラリ「TensorFlow」,数値演算ライブラリ「Theano」,オープンソースのディープラーニング向けライブラリ「Deeplearning4j」など,代表的なディープラーニング向けフレームワークに対応しているという。さらに今後のバージョンでは,Preferred Networks製のフレームワーク「Chainer」にも対応する予定だそうだ。

Tesla P100に対応するPOWER8の登場に合わせて,IBM PowerAI Toolkitがリリースされた。POWER8とTesla P100を活用したAIの開発が可能になるという
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 AI分野に関する,MicrosoftとNVIDIAの協業も発表された。MicrosoftのAI開発ツールキット「Microsoft Cognitive Toolkit」をDGX-1に最適化したとのことで,これを使用したAI開発では,DGX-1の処理性能を利用できるようになるようだ。

AzureベースのAI開発向けツールキット「Microsoft Cognitive Toolkit」が,DGX-1に最適化された
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Microsoft Cognitive Toolkitは,Windows 10ユーザーにはおなじみのパーソナルアシスタント「Cortana」や,メッセンジャーアプリ「Skype」の機械翻訳,検索エンジン「Bing」,複合現実(MR)対応ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」による拡張現実の処理といったサービスにも利用されているという
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 発表の概要は以上のとおり。
 ゲーム用GPUではいまだ採用事例のない広帯域メモリインタフェース技術「HBM2」に対応したTesla P100が,HPC分野とはいえ順調に普及しているという点は,ゲーマーにもいずれは影響があるかもしれない。スーパーコンピュータやAI分野でTesla P100が普及することでHBM2の製造コストが下がれば,ゲーム用GPUでの採用にも弾みが付くかもしれない。
 2017年ともいわれるゲーム用GPUでのHBM2採用が,今から楽しみだ。

NVIDIA公式Webサイト

SC16 公式Webサイト(英語)

  • 関連タイトル:

    NVIDIA RTX,Quadro,Tesla

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