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GeForce GTX 500
  • NVIDIA
  • 発表日:2010/11/09
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コア電圧調整に対応したASUSの「ちょっとだけOC版GTX 580」で,空冷OCの常用限界を探ってみる
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印刷2010/11/20 11:45

テストレポート

コア電圧調整に対応したASUSの「ちょっとだけOC版GTX 580」で,空冷OCの常用限界を探ってみる

ENGTX580/2DI/1536MD5
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
予想実売価格:5万5000前後(※2010年11月20日現在)
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 劇的なインパクトこそもたらさなかったものの,従来製品比で順当な性能向上と,大幅な静音化を果たしたことで,順調な滑り出しを見せた,NVIDIAの新しいハイエンドGPU,「GeForce GTX 580」(以下,GTX 580)。グラフィックスカードベンダー各社からは,NVIDIAのリファレンスデザインを採用した搭載製品が数多く登場してきているが,今回取り上げるASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「ENGTX580/2DI/1536MD5」(以下,ENGTX580)は,コア&シェーダクロックがリファレンスより10MHz高く,さらにコア電圧の調整機能が標準でサポートされているというのが特徴だ。
 今回は,実機を検証する機会が得られたので,コア電圧の引き上げも含めたオーバークロックテストを行い,加えて,「GTX 580の謎」の一端にも触れてみたいと思う。


リファレンス仕様を採用しつつ

「SmartDoctor」によるコア昇圧をサポート


 ENGTX580は,他社の製品と同様,NVIDIAのリファレンスデザインを採用したグラフィックスカードだ。冒頭でも紹介したとおり,コアクロックはリファレンスより10MHz高い782MHz,それと同期する形でシェーダクロックも20MHz高い1564MHzに設定されている一方,GPUクーラーも含め,基本的にはリファレンスデザインそのままと考えて差し支えない。

リファレンスデザインそのままと述べて問題ない,ENGTX580の外観
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優秀なGPUクーラーを搭載するだけに,換装しようという人は多くないと思われるが,ENGTX580で,クーラーを固定するネジは突起が6つある星型になっていた。もし換装する場合,対応するドライバーを用意する必要があるので要注意
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 コアで10MHz,シェーダで20MHzとなり,メモリクロックはリファレンスどおりなので,メーカーレベルのクロックアップとしても小規模だが,本製品で特徴的なのは,ASUS独自のGPU設定ユーティリティ「SmartDoctor」から,動作クロックならびにコア電圧をカスタマイズできることだ。製品ボックスに同梱のドライバCD-ROMからセットアップすると,ASUSのサーバーから最新のSmartDoctorがダウンロードされ,利用できるようになっている。筆者が試用した時点のバージョンは5.68だった。
 下に示したのは,そのメインウインドウである。

SmartDoctor。セットアップ時に最新バージョンが自動的にダウンロードされる。ウインドウの右上部は電源関係,GPU&メモリチップの温度,ファン回転数を確認できるようになっているが,ENGTX580では電源周りのデータが表示されなかった。このあたりは,同じASUSのカードでも,製品によって異なるということなのだろう
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 SmartDoctorでは,ウインドウ下部に用意された3本のスライダーから,「Vcore」(GPUコア電圧),「Engine」(GPUコアクロック。シェーダクロックはこの設定値と同期),「Memory」(メモリクロック,データレート表記)を変更できる。その範囲は以下のとおりだ。

  • Vcore:1.05V〜1.213V(0.013〜0.015V刻み)
  • Engine:532MHz〜1032MHz(1〜3MHz刻み)
  • Memory:3208MHz〜4808MHz(4〜8MHz刻み)

 刻みに幅があるのは,実際,全域にわたって最も小さい刻み幅になっているわけではないためである。例えばGPUコアクロックの場合,スライダー自体が1MHz単位で刻めるところとそうでないところがあったりする。一方のGPUコア電圧だと,ライダー自体は最小ステップで動くが,適用するために稲妻マークのボタンをクリックすると,「スライダーの値に近いところへ設定しますよ」というダイアログがポップアップする仕掛けだ。

 このほか,SmartDoctorには,コンテキストメニューから「SmartDoctor設定」を開くと,負荷に応じたファン回転数設定機能や,自動オーバークロック機能「HyperDrive」を利用するための項目も用意されているが,率直に述べて,現在,GPUオーバークロックツールの一番人気となっているMSIの「Afterburner」と比べると,外観も機能も使い勝手も一段以上落ちる。
 2010年11月20日時点における公式最新版Afterburner(Version 2.0.0)だと,コア電圧の可変がうまくいかなかったことと,GTX 580に対応したバージョン2.1.0がβ版に留まっていることから,今回のテストにあたってはSmartDoctorを用いることにしたが,基本的にはAfterburnerを使ったほうが幸せになれそうである。

SmartDoctor設定ウインドウ。HyperDriveでは,CPU負荷に応じてクロックを引き上げる「CPU使用モード」と,GPUの温度が低いときにクロックを引き上げる「温度モード」,そして3D APIを使用するアプリケーションが起動したのを検知してクロックを引き上げる「3Dモード」があるのだが,3Dモードの利用には,別途「GamerOSD」というアプリケーションをドライバCD-ROMからセットアップしておかねばならず,けっこう面倒である
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0.038Vの昇圧で,コア871MHz,シェーダ1742MHzに到達

800MHオーバーでの常用には多少の昇圧が必須か


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 というわけで,ここからはSmartDoctorを用いてオーバークロックを試みてみたい。今回は後述するテスト環境において,4Gamerのベンチマークレギュレーション10.1から,「高負荷設定」の1920×1200&2560×1600ドットでテストを行うことにし,「3DMark06」(Build 1.2.0),「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP),「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2),「Just Cause 2」のベンチマークがすべて完走したことをもって「安定動作した」と判断することにした。
 で,どうだったのか。結論から先に述べると,今回のテストでは,コア電圧を規定の1.05Vから0.038V高い1.088Vに設定した状態において,コア871MHz,シェーダ1742MHzで安定動作が得られた。コアクロックで比較すると,リファレンス比+99MH,約12.8%の引き上げが可能だった計算になる。

 また,これに付随するデータもいくつか取れているので,以下,まとめてお伝えしておきたい。

  • 今回試したENGTX580は,動作クロックをリファレンスクロック相当まで引き下げたうえで,先に4Gamerのレビュー記事で用いたGTX 580リファレンスカードと比較したとき,アプリケーション実行時にGPU温度が平均して5℃程度高かった
  • メモリクロックは,少しでも引き上げるとすぐ不安定になってしまった(ので,今回はリファレンスクロックのまま据え置くことにした)
  • 0.038Vというのは,SmartDoctorのスライダーで3目盛り分。ただしこのとき,GPUクーラーのファン回転数はSmartDoctorから85%に固定する必要があり,正直,かなりうるさかった
  • SmartDoctorのGPUコア電圧設定スライダー1目盛り分の1.063V設定だと,コア861MHz&シェーダ1722MHzで安定動作。しかもファン回転数は自動設定のままでOKだった
  • 定格電圧では,2560×1600ドット設定時にエラーが頻発した
  • ゲームアプリケーションでエラーが出たため,「安定動作」とはしなかったが,1.088V設定時に,コア901MHz設定で3DMark06の高負荷設定,1920×1200ドットは完走し,総合スコア21371をマークした
  • 1.088Vよりも高いGPUコア電圧に設定すると,GPUの動作が急激に不安定となった。
  • HyperDrive+GamerOSDによる自動オーバークロック機能の“オーバークロック幅”は手動設定できるが,規定は+6MHzだった

ファン回転数を自動設定に任せておけるコア861MHzが,今回の検証においては,落としどころになりそうだ
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 GPUの温度がリファレンスカードよりも高めに出たことからすると,場合によってはもう少し上の動作クロックを狙えるのかもしれない。また,コア電圧の昇圧は安定動作に必須だが,やり過ぎてもよくないことや,メモリのオーバークロックがあまり現実的でないと判明したことなどは,収穫といえるかもしれない。
 軽い昇圧+規定クロック100MHz未満のクロック引き上げ,が,現実的な落としどころになるといったところか。今回の結果に限っていえば,コア861MHz設定が推奨設定になるだろうと思う。

※注意
グラフィックスカードのオーバークロック動作は,メーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,グラフィックスカードをはじめとする構成部品の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。



クロックを引き上げた分の効果はアリ

GTX 580リファレンス比で5〜14%のスコア向上


 以上を踏まえて,実際のベンチマークテスト結果をチェックしていくことにしよう。上で「後述する」としたテスト環境はのとおりだ。

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 テストに用いたカードの動作条件は下に示した。

  • ENGTX580@871MHz(1.088V):ENGTX580の動作クロックをコア871MHz&シェーダ1742MHzへ引き上げた状態。コア電圧は1.088Vで,ファン回転数は85%固定となる
  • ENGTX580@861MHz(1.063V):ENGTX580の動作クロックをコア861MHz&シェーダ1722MHzへ引き上げた状態。コア電圧は1.068Vで,ファン回転数は自動設定
  • ENGTX580 HyperDrive:ENGTX580に対して,SmartDoctorのHyperDriveから,規定の+6MHz設定で自動オーバークロックを適用した状態。GamerOSDをセットアップし,「3Dモード」に設定してある
  • ENGTX580@782MHz(1.05V):ENGTX580をカードとしての定格動作させた状態。コア782MHz,シェーダ1564MHzとなる。コア電圧は1.05Vだ
  • ENGTX580@773MHz(1.05V):ENGTX580の動作クロックを,GTX 580のリファレンス相当にまで引き下げた状態。ただし,SmartDoctorの仕様により,実際の動作クロックはGTX 580のリファレンスより1MHzだけ高い
  • GTX 580(1.05V):GTX 580リファレンスカード。GTX 580のレビュー記事やNVIDIA SLIテストレポートで用いたものと同一の個体だ
  • ENGTX480:ASUS製の「GeForce GTX 480」搭載グラフィックスカード「ENGTX480/2DI/1536MD5」。リファレンス動作するカードである
  • HD 5970:「ATI Radeon HD 5970」のAMDリファレンスカード

画像集#012のサムネイル/コア電圧調整に対応したASUSの「ちょっとだけOC版GTX 580」で,空冷OCの常用限界を探ってみる
ENGTX480/2DI/1536MD5
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:4万4000〜4万8000円程度(※2010年11月20日現在)
画像集#013のサムネイル/コア電圧調整に対応したASUSの「ちょっとだけOC版GTX 580」で,空冷OCの常用限界を探ってみる
Rampage III Extreme
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:4万1000〜4万5000円程度(※2010年11月20日現在)

 というわけで,まずはグラフ1に示した3DMark06だが,DirectX 9世代のアプリケーションでは,さすがにオーバークロックの効果が出づらいようだ。ENGTX580@871MHz(1.088V)でもGTX 580のリファレンスクロック比で2〜5%高いスコアに留まっている。また,3DMark06をはじめとするHD 5970にも,まったく届いていない。

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 ただ,DirectX 11世代のアプリケーションを実行すると,様相は変わってくる。先に掲載したレビュー記事で,GTX 580はSTALKER CoPにおいてHD 5970といい勝負を演じていたが,負荷の低い「Day」,負荷の高い「SunShafts」どちらのテストシークエンスにおいても,ENGTX580@861MHz(1.063V)はHD 5970を上回るスコアを示した。
 GTX 580リファレンスクロックに対して,ENGTX580@871MHz(1.088V)が9〜10%,ENGTX580@861MHz(1.063V)が7〜9%高い結果になっているあたり,クロックを引き上げた分,順当にスコアも上がっているといえる。

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 DirectX 11世代を名乗ってはいるものの,DirectX 10世代のエンジンをベースに,性能面の最適化など,補助的な拡張としてDirectX 11が実装されているBFBC2。その結果はグラフ4のとおりで,HD 5970も高いスコアを示しているが,それでも,ENGTX580@871MHz(1.088V)とENGTX580@861MHz(1.063V)が1920×1200ドットでHD 5970のスコアを上回った点は注目しておきたい。

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 グラフ5に結果を示したJust Cause 2は,メモリ周りのパフォーマンスがスコアを左右しやすいタイトルだけに,高解像度では384bitメモリインタフェースと容量1536MBのメモリ容量が有効に機能し,競合よりも高いスコアを示しやすい。だが,ENGTX580@871MHz(1.088V)とENGTX580@861MHz(1.063V)のスコアを見る限り,それだけに留まらず,オーバークロックの効果も相応に認められると述べていいだろう。
 対GTX 580リファレンスカードのスコア上昇率は,ENGTX580@871MHz(1.088V)が5〜10%,ENGTX580@861MHz(1.063V)が5〜7%だ。

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 最後に,ENGTX580@782MHz(1.05V)とENGTX580 HyperDriveのスコアから,ENGTX580というグラフィックスカードの話をしておくと,やはりリファレンスクロック比でコアクロックが10MHz高いだけだと,「あえていえば,気持ち高いスコアが出ることがある」程度だ。HyperDriveの自動オーバークロック機能も,6MHzというデフォルト設定だと,やはり違いは見えづらい。
 手動設定するにせよHyperDriveを使うにせよ,コア電圧が変更できるという点を活かして,設定をある程度追い込める人にこそ,ENGTX580は向いているといえそうだ。


消費電力の上昇率は,妥当といえば妥当

ところで「自動クロックダウン機能」はあるの?


 消費電力もチェックしておこう。ベンチマークレギュレーションに従い,OS起動後30分経過した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークテストを実行し,最も高い値を示した時点をそれぞれの実行時として,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」でスコアを計測した結果がグラフ6となる。

 CPUが原因と思われるボトルネックによってスコアが上がりきらない3DMark06では規則性がやや乱れるものの,ほかのテストでは,面白いくらい,オーバークロックの度合いと消費電力値が連動しているのが分かる。とくに,今回テストしたなかで最も描画負荷の高いSTALKER CoPでは,ENGTX580@871MHz(1.088V)でシステム全体の消費電力が450Wに達し,GTX 580をリファレンスクロックで動作させたときと比べて30W程度,パーセンテージにして7%程度高い値を示している点は見逃せないところだ。
 コア電圧を“盛って”いるので,リーク電流も増えるだろうから,妥当といえば妥当だが,インパクトのある数字なのも確かである。

 なお,アイドル時は,自動的に低いクロックへ落ちるので,テストしたGeForce製品搭載環境のスコアに大きな違いはない。

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新しいハードウェアモニターを採用しており,FurmarkやOCCTといった負荷の高いアプリケーションを実行するとき,消費電力がスペックを超えないよう,性能を調整するとされる
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 ところで,GTX 580では新しい電圧&電流モニターを搭載すると発表されたことから,海外の一部サイトなどで「Intel Thermal Monitor 2」が連想され,「IntelのCPUと同じように,GPU温度が一定の値を超えたら,自動的に動作クロックを落とす“ダウンクロック”機能が働くのではないか?」と考えている人がちらほらいるようだ。
 ただ,ここまでのテストから明らかなように,昇圧までしてオーバークロックを行っても,テスト中,PCが不自然な形でハングアップしたり,スコアが急激に落ちたりといったことは起こっていない。温度をトリガーとした保護が効いている気配はないのである。

 だが,右上のスライド内で明示されているアプリケーションのうち,GPU負荷テストツールである「Furmark」(Version 1.8.2)を実行してみると,変化が見られた。ここではENGTX580を「GTX 580」,ENGTX480を「GTX 480」とそれぞれ表記するが,両者でFurmarkを実行したときのフレームレート推移がグラフ7で,ご覧のとおり,GTX 580のほうが低く推移している。
 Furmarkではフレームレートが一定の枠内で定期的に波打つので,一定でないこと自体は問題ないのだが,GTX 580は,起動直後にGTX 480のフレームレートを超えるものの,その直後にGTX 480を大きく下回るレベルにまで落ち込んでしまうのだ。

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 この件についてNVIDIAの関係者にコンタクトを取ったところ,興味深い回答が得られた。スライドにあるとおり,GTX 580ではPCI Express電源の+12Vラインにおける電流および電圧を監視する機構を持っている。そして,消費電力が閾値を超えると,動作クロックを定格の2分の1にまで落として,消費電力がTDP(Thermal Design Power,熱設計省電力)の枠内を超えるようにもなっているのだが,この保護回路はドライバレベルで制御されており,現時点では,GPU負荷ツールであるFurmarkと「OCCT」の起動のみを監視しているのだという。
 同関係者いわく「今後,監視対象が増える可能性はゼロでないものの,その場合でも,対象はGPU負荷ツールに限られる」。要するに,通常使用時には考えられない負荷をかけるツールだけ,ドライバにマークされているということのようである。

 ちなみに,Furmarkで保護が発動するさまは,グラフ8にまとめた実行時の消費電力推移を見ると分かりやすい。GTX 580では,起動直後に2回だけ450Wを超える消費電力を記録し,その後,保護が効いて動作クロックを落とし,消費電力が閾値を下回ると保護が外れ,また保護が働き……といった動作の繰り返しになっているわけだ。

画像集#022のサムネイル/コア電圧調整に対応したASUSの「ちょっとだけOC版GTX 580」で,空冷OCの常用限界を探ってみる

 いずれにせよ,「オーバークロック設定を行ってゲームやベンチマークを実行していたら,保護回路が勝手に働いてフレームレートが下がった」などという心配が,まったくの無用であることだけは間違いない。


NVIDIAのハイエンドGPUとしては

久しぶりにOCが楽しめる?


製品ボックス。「Voltage Tweak」(電圧調整)と大きく謳われる
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 ENGTX580はリファレンスクーラーを採用する製品だが,「Vapor Chamber」技術を採用したGPUクーラーが持つ冷却能力も十分に高いようだ。空冷の常用を前提とした今回のテストで,コアクロックをリファレンス+99MHzまで引き上げて,高負荷環境で安定動作したというのは,まあまあの結果といえそうだ。スコアもおよそ満足できるレベルで伸びており,GTX 580を使い込んでいくうえで,空冷オーバークロックというのは,選択肢として一考に値するのではなかろうか。少なくとも,GF100コアではほとんど夢のまた夢のような状況だったので,その点でもGF110コアが出てきた意義はあった,とまとめるべきだろう。

 リファレンスデザインを採用する他社のGTX 580カードがコア電圧の引き上げに対応するかどうかまでは何ともいえないが,その点で,コア電圧の変更機能搭載が明言されているENGTX580は安心といえそうである。
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