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[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
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印刷2012/09/08 22:23

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[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか

画像集#011のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
 2012年8月20日から3日間開催されていた国内最大級のゲーム開発者イベント「CEDEC 2012」。CEDECでは,業界を代表する技術者やクリエイターがパネリストとして登壇し,テーマについて意見を出し合う形のパネルディスカッションセッションも数多く行われている。

 今回レポートするのは「クロスボーダー『AI×アニメーション』パネルディスカッション」で,このセッションでは,次世代ゲームには必要性が高まると言われている「AIとアニメーションの連携技術」がテーマとして取り扱われた。


AIとアニメーションが連携するってどういうこと?


司会の南野真太郎氏(ジープラ 開発推進室 室長,右)
画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
 ゲーム開発技術において「アニメーション」とはテレビアニメのことではなく,「キャラクターの動きやアクション,振る舞い」のことを指す。「モーション」という言葉で置き換えられる場合もあるが,モーションは動きそのものを言い表すことが多く,「アニメーション」にはもう少し広義な意味合いがあり,なおかつ他動詞的な「動かす」という意味が含まれる。

 「AI」は「Artificial Intelligence」の略で,日本では人工知能としての略語のほうが馴染み深いほど,定着した用語である。ゲームにおけるAIは,キャラクターの行動方針を決定する場合などに用いられる。場合によっては,プレイヤーからの操作などを予測して反応を返すなどのほか,ゲーム全体の進行を司ることもある。
 一般読者からすれば,「アニメーションとAIがどう関連するのか」,イメージが湧きづらいかもしれないが,実は,次世代機のゲーム開発においては,その2大要素の相互連携が重要なテーマとして捉えられているのだ。

 例えば,「室内で行われる剣を武器に用いた戦い」があったとして,人間の動きを模した場合,長さのある剣を相手に振り回させないように,壁に追い詰めて逃げ場を失わせ,動きを限定させようとするような思考が働く(ゲーム:AI)。その思考に基づいて,キャラは相手を壁に押し込んでいくような剣裁きを行う決断をする(ゲーム:アニメーション)。つまり,思考が行動を生み出していくのだ。

 かたや,部屋の角っこ,つまり壁のコーナーに追い詰められた側は,剣の動きが制限されて動きが小さくなる(ゲーム:アニメーション)。両脇に壁があると横斬りをしたときに剣の振り回し角度が取れないため打撃が弱くなるので,攻撃を縦斬りあるいは突き攻撃に切り換えようとする(ゲーム:AI)。人間の場合,自分の行動が抑制されていることが理解できれば,それを打開しようと新たな行動に切り換える思考が働く。これは「行動」から「思考」にフィードバックが起こっているわけで,結果として,行動から新たな思考を生み出していることになる。

画像集#006のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
従来型のAIとアニメーションの関係
画像集#007のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
ユークス上野氏の考える今後のAIとアニメーションの関係性
画像集#008のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
スクエニ三宅氏が提唱する将来的な「AIとアニメーションの相互連携」の方向性。偶然にも上野氏と三宅氏の提示したスライドの内容はよく似ている。すなわち,次世代のAIとアニメーションの方向性について共通認識があるということだ

 現在の多くのゲームはどうかと言えば,相手の行動にリアクションして位置取りを決めて,最適な攻撃方法を選択して攻撃を行ってくるものが多い。いわばAIが主体であり,アニメーションは命令されたからその行動を取るというだけの一方通行だ。
 先ほどの剣闘の例でいけば,今の多くのゲームは壁に追い詰められた敵は,剣を壁にめり込ませて横斬りを継続選択する。これは不自然であり,ビジュアル表現が今以上にリアルになるはずの次世代機では,AIとアニメーションの両システムが相互連携して品質の高い(≒説得力のある)行動を選択していかなければならないと考えられつつあるのだ。

三宅陽一郎氏(スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー)
画像集#009のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
 AIの専門家であるスクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏は「AIとアニメーションは,双方それぞれが複雑なシステムを持っている。この二つをただつなぐと言うことの先にある,相互を連携させていくことを今後考えていかなければならない。それぞれが今や動的なシステムとなってきたため,これは想像以上に難しいテーマではある」と,今回のパネルディスカッション開催の動機を冒頭に述べていた。


セガ「バイナリードメイン」に見る次世代アニメーションシステムの片鱗


白子路央氏(セガ 第一CS研究開発部 リードデザイナー)
画像集#010のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
 実は,こうした難しいテーマに果敢に取り組んだ実例がある。それが,セガの「バイナリー ドメイン」PS3 / Xbox 360)だ。
 同作開発チームのリードデザイナーの白子路央氏は,この作品のアニメーションシステムについての解説を行った。

 結論から言うと,バイナリードメインでも,ゲーム側のAIシステムとアニメーションシステムは従来型のゲームと同じく「主従関係」はあるのだが,アニメーションシステム側に知性に近いアルゴリズムを組み込むことで,環境適応型の動的なアニメーション生成を行うことに成功している。

バイナリードメインでは,敵の行動アルゴリズムとなるAIに説得力をもたせることを目標に,ハイクオリティな動的なモーション生成に取り組んだとしている
画像集#012のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか

 白子氏は「グラフィックス,そして敵の行動を司るAI,そしてそれを表現する動き(モーション,アニメーション)のすべてがハイクオリティとなることが求められた」と開発当時のことを振り替えている。
 しかし,膨大なバリエーションのモーションをつないでいくような「データ量に依存した制作方法」は,開発コスト,開発期間,開発チームの規模から考えると現実的でないとされた。その結果,開発チームはプロシージャルアニメーションシステムの開発に取り組むことになる。
 プロシージャルアニメーションについては,CEDEC 2011でいくつかの講演の記事が掲載されているので,そちらも参考にしてほしいのだが,簡単に言えば,登録されていないアニメーションパターンを状況に合わせて作り出していくことだ。剣が壁につっかえたら,壁の位置に沿って剣を動かしてメリ込ませないようにしたり,段差がある場所では,歩行のモーションで足の位置を補正するなどといった使われ方が多くされている。

[CEDEC 2011]リアルな動きを無限に作り出す,機械学習&データ駆動によるプロシージャルアニメーションの試み

[CEDEC 2011]効率的にバランスを取ってはいけない。クリーチャーの動きをプロシージャルアニメーションで作るには


 なお,今回,セガ 龍が如くスタジオから許可をいただき,このセッションで披露された動画そのものを,いただくことができたので以下に示したいと思う。


 この動画にインサートされる白黒の映像は,アーティストがSoftimage XSI上で作り込んだモーション素材で,カラー映像が実際の最終映像,すなわちプロシージャルアニメーションシステムによって動的生成されているモーションになる。
 まず,最初に登場する8本足の蜘蛛型ボスメカは,ゲーム中での対戦で足を破壊して,弱点となる下腹部にあるコアへの突破口を開くような戦術が必要になる。足が1本ずつ破壊された際,目減りした足の状態でのモーションは,アーティストによって作り込まれた8本足状態のモーションデータをタネにして動的にプロシージャル生成されているという。
 基本的なアルゴリズムは,ボディ部の重心を足のフットプリントから外さないように足を配置するという制御になっているとのこと。周囲にあるビルに足を突くのは,イベントやスクリプトによるものではなく,あくまで蜘蛛型ボスの能動的な行動によるものなのだという。
 さらに半ば予測はしていたものの「その通り」になったことで開発チームの面々ですら驚かされたのは,隣接する二本以外のすべての足がすべて破壊されたときに,蜘蛛型ボスが2本足で立ち上がったことだったという。二本足状態でボディを支えるためには,二足立ちするしかなかったということだ。この様子は動画でも確認できるので注意深く見てほしい。

 白子氏は「このときは『クララが立った』以来の衝撃でしたよ(笑)」と冗談交じりに当時を振り返る。最終的に,「これはプレイヤーに大きな驚きを与えられる」ということでゲームの最終仕様にも組み入れられたのだそうだ。
 このほか,動画中盤のクラゲ型ボスでは,下がアーティストが作り込んだ攻撃モーションで,上半身はプロシージャルアニメーションシステムによる動きになっているとのこと。
 そのほかのボス戦においても,歩行や攻撃モーションは,平らな地面でアーティストが制作しておいたものを,ランタイムではプロシージャルアニメーションシステムにより,環境に適合した高さに補正して,脚部を設置させているとのこと。また,ボス達の移動や攻撃行動中の「やられ」モーションについても,プロシージャル生成しているとのこと。

バイナリードメインでのプロシージャルアニメーションシステムを自らの身体を使って解説する白子氏
画像集#013のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか 画像集#014のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか


三つの視点からの「リアル」


 三宅氏は「バイナリードメインのような,アニメーションシステム側が独立してプロシージャルに身体制御を実践するような実装は,厳密にはAIとアニメーションシステムが相互連携しているとは言えないかもしれない」と指摘する。
 つまり,バイナリードメインの蜘蛛型ボスの例でいえば,攻撃不能にならないように絶えず攻撃部位を安定した姿勢に保とうとするプロシージャルアニメーションが行われたにすぎず,AI側は一定リズムでフィールド内を歩き回り,常にプレイヤー側を攻撃するための意志決定しか行っていない。
 しかし,「ボス戦」という状況を考えれば,バイナリードメインの仕組み自体に無駄はない。しかも,ゲーム体験として,プレイヤーに「リアルに感じる」と満足させられれば,それは現世代機でできる範疇では正解ということはできるだろう。

 これを機に,話題は,ゲーム体験の基本かつ重要な要素の一つである「リアル」というキーワードと,AI,アニメーションとの関係性へと移っていく。

 三宅氏は,ゲームにおける「リアル」体験とは三つの視点からのものがあると指摘する。
 一つめは「プレイヤーにとってのリアル」。バイナリードメインはまさにこれを優先した産物だと言える。
 二つめは「アーティストから見たリアル」。これは実在する人間やモノの動きとは違う,多分に演出要素を含んだもので,オーバーアクションなどはこの部類だ。
 三つめは「そのキャラクターにとってのリアル」だ。これは,そのAIにとって行動することが「最良」か……に相当する。
 「この三つは,微妙に目指している部分が異なり,ゲームにおいてはこの三つリアルがせめぎ合うことになる。だから難しい」(三宅氏)

金久保哲也氏(バンダイナムコスタジオ 第一開発本部 P&S部門 技術部 モーション課 シニアテクニカルアニメーター)
画像集#003のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
 バンダイナムコスタジオのアニメーターを務める金久保哲也氏も,この「三つのリアル」の難しさを噛み締めた経験を持つという。
 バンダイナムコスタジオでは,人間キャラクターが超人的キャラの打撃を受けて吹っ飛ばされ,壁に打ち付けられてズルズルと下に落ちるというアクションをプロシージャルアニメーションで再現できないか取り組んだことがあるという。確かに,こうしたシーンはアニメなどではしばしば見られる。ある意味,定番の演出効果だ。
 しかし,実際に,壁や人体に正確なパラメータを入れて物理シミュレーションを行うと,壁に打ち付けられた人体は壁にめり込まず,ものすごい勢いで跳ね返ってしまうのだという。これは,物理的には正しいのかもしれないが,アーティスト(アニメーター)的な立場からはリアルとは言えないし,おそらくプレイヤー目線からいってもカッコいいリアルには感じてもらえないだろう。
 金久保氏は「アニメーターの立場から見たカッコいいリアルさは,むしろ物理的な正しさをいかに抑えるかにつながってしまう」と述べ,さらに「ゲームの場合は,「ゲームとしてリアル」な物理シミュレーションやプロシージャルアニメーションの熟成が必要だと感じる」と付け加えた。

 ゲーム開発において,プロシージャル技術や物理シミュレーションについて,しばしば「コントロールしづらくて困るから使いたくない」という意見が聞かれることがある。金久保氏が述べた事例は,まさにそうした意見だといえる。

上野浩樹氏(ユークス/YUKE'S LA シニアテクニカルディレクター)
画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
 ユークスのテクニカルディレクター上野浩樹氏は「我々の制作しているゲームはその多くが格闘モノになるわけだが,人体シミュレーションの一部に物理シミュレーションを使ってはいるものの,多くの嘘をついている」と述べる。ユークスの作品でも,アーティストの考える「リアル」の視点で,あるいはゲームとして破綻しない方向性でのコントロールを行っているのだ。
 しかし,上野氏は「物理を使うことで動的なインタラクティブ性を与えることができることの価値は大きい。モーションにリアリズムを与える道具としての物理には大きな魅力がある」とも述べており,コントロールしづらい部分を理解しつつも物理やプロシージャル技術に対する必要性も強く感じているようだ。

画像集#015のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
アニメーションシステムの進化
画像集#016のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか
現在のプロシージャルアニメーションはデータ駆動型が多い
プロシージャルアニメーションで期待される要素
画像集#018のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか

 それぞれの意見は述べられたが,「リアルなアニメーションを実践する」ために「物理シミュレーション」や「プロシージャル技術」の要素が少なからず必要だということは,共通する意見のようだ。


プレイヤー主観としてのリアル。知性が生み出すリアル


 AIの専門家である三宅氏の立場としては,もう少し議論の方向性を「プロシージャル」よりも「AI寄り」に持っていきたいようで,再び問題を提起する。
 「アニメーションだけでリアリズムを突き詰めていっても,どうしても最後にたどり着けないリアリティがある。それは知性(AI)が介在するリアリティだと思う」(三宅氏)
 例えばだが,「攻撃を受けたから,あらかじめ決まっていたモーションでリアクションをする」のではなく,「攻撃からのダメージを最小限にするために身をかばう」ような動作がこれに相当する。
 個性豊かな屈強な男達が闘う本格格闘ゲームを制作しているユークスの上野氏も「感情から発せられる芝居」としてのモーションには,AIの要素が多分に絡んでくるべきものなのかもしれないと賛同する。
 しかし結局,感情表現とは「こういう感情表現のときには,こんな感じのモーションで」という具合に,アーティストがあらかじめバリエーションを作成して仕込んでいく作業が主体になってしまうのではないか,とバンダイナムコ金久保氏はその実現の難しさを指摘する。
 実際,現在のゲームからプレイヤーが感じる「リアリティ」とは,プレイヤーが主観として感じるリアリティが主である。例えばラブプラスなどは,金久保氏が述べたような,あらかじめ作り込まれたシーケンスを再生しているだけだ。しかし,その仕草が「女性っぽい」可愛らしさで構成されているため,男性プレイヤーからは,「リアル」な体験として受け止められる。
 しかし,この手法は,人的,予算的,時間的に開発コストがかさむ。ラブプラスが成功できたのは,その豊富なモーション生成やキャラクターの行動をヒロイン3人に絞ったためだ。
 次世代ではゲーム内に登場するキャラクター達に能動的なAIを持たせ,それを見たプレイヤーに「リアル」を感じてもらうことを目指すべきなのかもしれない。「作り込んだゲームプレイ体験」でリアルを演出するのではなく,登場人物側に知性を持たせることで,ゲーム世界全体側をリアルに演出していく方向性だ。このアプローチのほうが,ゲーム側が想定していないプレイヤーのアクションに対しても,リアリティを示し続けられる可能性がある。
 もっとも,ある決まったエンディングに向けて進行する予定調和が求められるゲームにおいては,結局「コントロールしにくい」というジレンマに悩まされるのかもしれないが。


バラバラに発展してきた要素技術を結びつけ合う必要性


 三宅氏は,現実世界の人間は頭脳と身体が複雑かつ連続的に相互にフィードバックし合っているのに,ゲーム世界のキャラクター表現では頭脳と身体の関係が間断化されていることも指摘。「次世代」はこれを考えなおすよい機会とし,ゲームを構成する5つの要素として「AI」「アニメーション」「グラフィックス」「物理シミュレーション」「ゲームデザイン」を挙げ,これら5つすべての要素をキャラクター表現用にデザインしていくことこそが,次世代のキャラクター表現に必要なのではないか,と次世代技術開発の方向性を提案した。

ディスカッション風景
画像集#019のサムネイル/[CEDEC 2012]「クララが立った!」的なバイナリードメインのボスの二足立ちに,キミはAIとアニメーションの相互連携の可能性を見るか

 ただ,それをすべて一人で,現在の開発技術の範囲内ですべて作り込むのは難しい。その実現のためには,そうした5つの要素をアーティストやプログラマが互いに協力し合ってトータルデザインできるコンテンツパイプラインの整備や,さらにはそうした工程をトータルにディレクションできるキャラクター制作のための専任テクニカルアーティストのような存在が必要になるのではないか,と金久保氏や上野氏は指摘する。
 実際に,バイナリードメインで,それに近い開発を経験してきた白子氏は,そうした開発環境の整備,次世代技術の開発には,ゲーム開発の現場での企画側やプロデューサーの理解が必要になるだろう,という意見を添えた。
 企画側やプロデューサーから,こうした要素が懸念されるのは,そうした技術が「とても未知なもの」として敬遠されているためだ。
 ゲーム開発が産業化し分業化した現在では,開発に従事しているそれぞれが,互いに何をやっているか分からない局面があると言われる。金久保氏は,コンピュータゲームが黎明期だったころの「それぞれの技術がクロスオーバーしながら発展していた時代」を思い返し,今一度,それぞれの要素技術のクロスオーバーに対して目を向けていくことが重要になってきているのではないか,と述べる。

 三宅氏もこれに同調し,PS3,Xbox 360に代表される今世代機のゲームでは前出の5つの要素がそれぞれ独立して発展した時代だったと分析したうえで,次世代ではそれぞれを融合させることに取り組んでいくべきだ,と結んだ。
 それぞれの要素技術が持つ「入力」と「出力」を互いに結び合い,お互いを生かし合う構造を考えていくことが,次世代ゲームの開発には必要だと言うことなのだろう。
 難しいテーマではあったが,パネルディスカッションとしては珍しく,一つの方向性というか,結論のようなものが導き出されたことに大きな価値があったように思う。
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