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  • MAGES.
  • 発売日:2012/06/28
  • 価格:通常版7140円,限定版9240円(共に税込)
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夢を拡張する物語「ROBOTICS;NOTES」が目指したもの――5pb.志倉千代丸氏が語る,コンテンツとビジネスの理想の関係
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印刷2012/10/06 00:00

インタビュー

夢を拡張する物語「ROBOTICS;NOTES」が目指したもの――5pb.志倉千代丸氏が語る,コンテンツとビジネスの理想の関係

画像集#004のサムネイル/夢を拡張する物語「ROBOTICS;NOTES」が目指したもの――5pb.志倉千代丸氏が語る,コンテンツとビジネスの理想の関係
 「ROBOTICS;NOTES」PS3 / Xbox 360)は,2012年6月28日に5pb.から発売されたノベルゲームだ。5pb.は,これまでに科学アドベンチャーシリーズとして「CHAOS;HEAD NOAH」PC / PS3 / Xbox 360 / PSP / Android / iOS「STEINS;GATE」PC / Xbox 360 / PS3 / PSP / iOS)の2作を世に送り出しており,本作はその第3弾にあたる。

 科学アドベンチャーシリーズの魅力は,さまざまな角度から語ることができるが,その一例を挙げるなら,魅力的なキャラクター達による人間ドラマを描きつつも,同時に身近な科学技術の新しい可能性を,フィクションの中に見ることができる点だろう。

 前2作に続き,「ROBOTICS;NOTES」においてもそれは同様だ。
 「オタク達が協力してロボットを作り上げる青春もの」である本作の物語は,ロボット製作に情熱を向ける少女・瀬乃宮あき穂と,格闘ゲームで頂点に立つこと以外に関心がない主人公・八汐海翔を軸として動きはじめ,やがてたった2人から始まった中央種子島高校ロボット研究部は,天才プログラマーの神代フラウ,ロボット工学のエキスパートである日高 昴,空手少女の大徳淳和といった個性的なメンバーを加えながら,一つのチームとして成長していく。
  とはいえ,科学アドベンチャーシリーズである以上,それは単にほのぼのとした日常を描写するだけには留まらない。これまでの作品にも登場した「300人委員会」といった悪の組織や,忍び寄る陰謀の魔の手によって,種子島から始まったロボ部の活動は,やがて世界の命運を握る戦いにつながっていくのだ。

 本稿では,その企画者である志倉千代丸氏へのインタビューをお送りする。制作にあたり,氏はどんなことを考えていたのか,そして科学アドベンチャーシリーズは,本作によってどのような世界線を描こうとしているのか。過去の作品にも触れつつ,作品論とキャラクタービジネスの両面から,お話をうかがってみた。
 クリエイターでありながら,5pb.という組織を束ねるビジネスマンとしての側面を持つ志倉氏。その氏だからこそ語ることのできる風景とは,いったいどのようなものなのだろうか?

※インタビュー中には,本編についてのネタバレが含まれます。未プレイの方は,本編を終えた後に読まれる事をオススメします。

MAGES./5pb. 代表取締役社長 志倉千代丸氏
画像集#005のサムネイル/夢を拡張する物語「ROBOTICS;NOTES」が目指したもの――5pb.志倉千代丸氏が語る,コンテンツとビジネスの理想の関係

「ROBOTICS;NOTES」公式サイト

テレビアニメ「ROBOTICS;NOTES」公式サイト



渋谷,秋葉原,そして舞台は種子島へ


4Gamer:
 本日はよろしくおねがいします。5pb.が手がける「科学アドベンチャーシリーズ」の第3作目である「ROBOTICS;NOTES」ですが,まず制作にあたり,初めにどのようなイメージがあったのか。また開発が始まったタイミングはいつ頃だったのか,というところからうかがわせてください。

志倉千代丸氏(以下,志倉氏):
 企画が始まったのは,「STEINS;GATE」が発売になる半年前ぐらい(2009年4月頃)ですね。
 僕は,科学アドベンチャーシリーズを天気と関連付けてイメージしているんですが,「CHAOS;HEAD」が“雨”で,「STEINS;GATE」は“曇り”という感じなんですよ。そうなると,次は“晴れ”をやりたいな,というのが初めにありました。

4Gamer:
 ああ,確かに「ROBOTICS;NOTES」は青空のイメージが強い作品ですね。


志倉氏:
 ええ。その青空のイメージから青春をモチーフに選んだうえで,じゃあ「科学」要素をどうするかと考えた時に,これはもうロボットしかないと思ったんです。初めはUFOを科学するというような話が面白いかなとも考えたんですが,自分自身がホビーロボット好きだったこともあって,結局はそちらの方向に舵を切りました。

4Gamer:
 本作は種子島が舞台ですが,そこも意表を突かれたと感じました。「CHAOS;HEAD NOAH」が渋谷,「STEINS;GATE」が秋葉原と,どちらも東京が舞台でしたから。

志倉氏:
 場所については,毎回きちんと理由があって選んでるんですよ。例えば「CHAOS;HEAD NOAH」で渋谷を舞台にしたのには,ギャップを生み出すという狙いがありました。そもそも「CHAOS;HEAD NOAH」は,キャラクターがいわゆる「萌え」を重視したビジュアルですよね。なのにストーリーはサイコホラーっぽい。そこにギャップが生じている。さらに主人公がものすごいオタクなのに,ファッションや流行の発信地である渋谷に住んでいる。そういうのもギャップになっているわけです。

4Gamer:
 確かに「CHAOS;HEAD NOAH」は,「こいつ,どう考えても渋谷キャラじゃないのに!」って,プレイヤーはみんな思っていたことでしょう。

志倉氏:
 「STEINS;GATE」の場合は,主人公達が発明をするにあたって,色々な部品を買い集めるわけですよ。その都合を考えると,ラボを構える場所としては秋葉原がピッタリです。じゃあ「ROBOTICS;NOTES」はどうかというと,とにかく高校生が本格的なロボットを作れる舞台を用意する必要がありました。

4Gamer:
 高校生だけでは,とても無理だと。

志倉氏:
 そう。そんな高校生達に協力してくれて,かつ数トンの部品を持ち上げられる,大きなクレーンのような設備が整った場所は? と考えていったときに,必然的に出てきたのがJAXA(宇宙航空研究開発機構)なんです。もちろんJAXAの施設は色々な場所にありますが,中でもロケットの組み立てなどを行える場所というと,種子島がベストでした。

4Gamer:
 科学アドベンチャーシリーズって,一見無茶に思える設定にもちゃんと説明が付けられていて,リアリティを失わないよう配慮されてるのが魅力だと思うんです。種子島という今回の舞台も,その一つということですね。

志倉氏:
 そうですね。その意味でも,種子島は最適なチョイスだったと思います。「巨大ロボットを作る」という物語にリアリティを持たせるためには,東京ではどうしても難しい。テストでロボットを動かそうと思っても,都内を歩かせるわけにはいきませんし。

4Gamer:
 巨大ロボットがいきなり新宿の街を歩いたら,警察のお世話になることは間違いないですね(笑)。

志倉氏:
 その点,種子島なら旧種子島空港をロボットが歩いても迷惑がかからないし,綺麗な青空が“晴れ”という本作のイメージにも合っています。今回やりたかったことにピタりと当てはまるので,「これはもう種子島しかないわ!」という感じでした。まあ,聖地巡礼がちょっと大変かな? とは考えましたけど(笑)。

画像集#006のサムネイル/夢を拡張する物語「ROBOTICS;NOTES」が目指したもの――5pb.志倉千代丸氏が語る,コンテンツとビジネスの理想の関係


オタク達の青春――「ROBOTICS;NOTES」のキャラクター達


4Gamer:
 では,まず本作のキャラクターについて詳しくうかがっていきたいのですが,その前に。科学アドベンチャーシリーズはいずれも,オタクを主人公とした物語になっていますよね。本作の主人公である八汐海翔も「格闘ゲームオタク」なわけですが,志倉さんがオタクにこだわるのは何故なんでしょうか。

志倉氏:
 それはやっぱり,僕自身ロボットやSFが好きで,オタク的な部分を持っているからだと思いますよ。何より自分の周囲に色々なタイプのオタクがいて,僕自身,それを見ているのが好きなんです。おかげでオタクであることのイタさや面白さを書くのが得意になっちゃいました(笑)。むしろ今は一般人の感覚が分からなくて,そっちを書く方が難しいですね。

4Gamer:
 「CHAOS;HEAD NOAH」では妄想ばかりしている引きこもりの西條拓巳,「STEINS;GATE」では厨二病全開で自称マッドサイエンティストの岡部倫太郎が主人公,そして本作の主人公である八汐海翔は,オンライン格闘ゲームの「キルバラ」にのめり込んでいて,それ以外――ロボット部の活動や,世界に迫る危機などには,当初無関心を貫いていますよね。

志倉氏:
 科学アドベンチャーシリーズの主人公って,どれもスタート時点だとすごく「イタい」んですよ。だから,プレイヤーは最初距離を感じるはずです。でも中盤くらいになると,少しずつ共感できる部分が出てきて,最終的には「あれ,なんかこいつカッコいいんじゃないか」と思ってもらえる。そういう場所に物語を着地させるように心がけています。
 そういう,スタートとゴールの振れ幅を楽しんでもらうことも,主人公がオタクであることの強みですね。

4Gamer:
 数あるオタクの中から,今回,格闘ゲームオタクを選んだ理由は?

志倉氏:
 ロボットをテーマにすると決めたとき,それがゲームのコントローラで動かせたら面白いのに,と考えたことが理由の一つですね。実際のホビーロボットも,今はゲームのコントローラで動かすようになってますし。だったら巨大ロボットだって同じように動かせるはずです。さらに格闘ゲームと同じ感覚でコマンド入力ができたら,夢のある話になるんじゃないか。そんな感覚がまずありました。

4Gamer:
 なるほど。

志倉氏:
 それに格闘ゲーマーって面白いんですよ。今は格闘ゲームのプロゲーマーなんて人もいますけど,彼らはすごくストイックでありながら,どこか常識とはかけ離れたことを考えている……ように見える。海翔にもその辺りの要素を取り入れながら,最終的には愛されるキャラを目指したつもりです。

4Gamer:
 主人公である海翔と,ヒロインの瀬乃宮あき穂の設定って,すごく特殊だと思うんです。一般的に,日本のアニメやゲームでは,熱血を引き受けるのって,普通は男の子の方じゃないですか。でも「ROBOTICS;NOTES」では,「絶対にロボットを完成させる!」という情熱で動いているあき穂の方が熱血担当になっている。

画像集#028のサムネイル/夢を拡張する物語「ROBOTICS;NOTES」が目指したもの――5pb.志倉千代丸氏が語る,コンテンツとビジネスの理想の関係

志倉氏:
 実は「ROBOTICS;NOTES」だと,主人公の海翔はそこまで「イタい」わけじゃないんですよ。海翔って,イタいというより,純粋にムカつく奴でしょう?

4Gamer:
 確かに。かなりイラッとくる部分の多いキャラクターです。

志倉氏:
 じゃあオタクの「イタさ」という要素をどこで補っているのかというと,それをヒロインのあき穂が担っているんです。さらにそれを上回る「イタい」キャラに,腐女子のフラウがいる。もう奴は「CHAOS;HEAD NOAH」の拓巳並みに「イタい」ですから。もし二人が会話したら,相当気が合うんじゃないかな(笑)。

4Gamer:
 そのシーンは,ぜひ見てみたいですね(笑)。しかし,海翔は自分から動こうとはしないし,あき穂はあき穂で空回りしてばかりで,とくに序盤はイライラした人が多いのではないでしょうか。

志倉氏:
 うーん,熱血でもってロボ部を引っ張っていく役を,なぜ海翔ではなくあき穂が担っているのかといえば,それは従来のロボットアニメのテンプレを壊したかったからなんですね。僕自身,ロボットアニメは大好きですけど,だからこそ,自分でロボットものを作るなら,これまでのテンプレを否定することで新しいものを創り出したかった。

4Gamer:
 「機動戦士ガンダム」や「機動警察パトレイバー」など,ロボットアニメへのオマージュは随所に感じられました。ただ,完成した「ガンつく2」はあまりカッコ良くなくて,むしろ敵役のロボットの方がカッコ良かったという(笑)。

志倉氏:
 そうそう。ロボ部が作り上げるロボットにしても,従来のロボットアニメのテンプレからは出てこないものを目指したつもりです。ロボ部の面々が感じた「コレジャナイ」感は,きっとプレイヤーさんも一緒じゃないかな。

4Gamer:
 ロボットアニメのテンプレでいえば,やっぱりロボットものって,基本的に男の子の成長物語として描かれることが多いじゃないですか。その点は,本作でも変わりないように思うんです。そう考えたとき,じゃあ海翔の成長ってどこだったんだろうって。やっぱりキルバラであき穂と対戦してわざと負ける,あのシーンがキーですよね。

志倉氏:
 あれ,負けないとバッドエンドですしね(笑)。でも,おっしゃられたシーンが,まさに海翔が成長した瞬間だと思います。勝ってしまうとバッドエンドという展開も,プレイヤーに対して「空気読んでよ!」というメッセージのつもりだったんです。もちろん,君島レポートを追う過程で成長は描いたつもりですが,一番分かりやすいのはやっぱりあのシーンでしょう。

4Gamer:
 ゲーマーとしては,すごく葛藤してしまったシーンです。女をとるのか,ゲームをとるのか,選択を迫られているような気がして(笑)。まあ,それは考えすぎかもしれませんが,でも海翔にしてみれば,それまでの自分を全否定するような選択をしたことだけは確かです。にもかかわらず,海翔は最後まで「世界を救いたいんじゃく,“全一”になりたいだけ」と言い続ける。

志倉氏:
 そこはプレイヤーに判断を委ねているんですよ。海翔のその言葉を,本心を隠したツンデレの台詞ととるか,それとも本気でそう考えているととるかで,海翔への印象は大きく変わります。……個人的には,格闘ゲームへのモチベーションだけで,命を懸けることはできないんじゃないか,とは思いますけど。

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