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「G1.Sniper 5」「G1.Sniper M5」フォトレポート。Haswellに対応したGIGABYTE製ゲーマー向けマザーの特徴を俯瞰してみる
最近はデスクトップPCの用途としてこれまでにないほどゲームにスポットライトが当たっており,マザーボードメーカー各社は「ゲーマー向けマザーボード」のラインナップ拡充に余念がない。そのため,選択肢は豊富になり,いきおい,どれを選んだらいいのか迷ってしまうケースもあるのではなかろうか。
そこで今回は,すでにゲーマー向けマザーボードのフラグシップを市場投入済みであるGIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)のゲーマー向けマザーボード「G1-Killer」シリーズから,ATXモデル「G1.Sniper 5」と,MicroATXモデル「G1.Sniper M5」を取り上げたい。写真を中心に,その特徴をチェックしてみよう。
なお,Z87チップセットの特徴はデスクトップPC向けHaswellのラインナップを整理したときにお伝え済みなので(関連記事),そちらもチェックしてもらえれば幸いだ。
G1.Sniper 5(左)とG1.Sniper M5(右)の製品ボックス |
G1.Killerシリーズの特徴を受け継いだ
ATXマザーボード G1.Sniper 5
電源部とチップセットを冷却するこのヒートシンクは,冷却ファンによる放熱だけでなく,液冷システムを取り付けての放熱も可能な点が特徴だ。CPUを囲む電源部は,小型冷却ファンが付いた大きなヒートシンクで覆われており,チップセット上のヒートシンクと,実測5mm径のヒートパイプで接続される。冷却能力重視のマザーボードではよくある設計といえよう。
チップセットのヒートシンク(左)は,ヒートパイプでCPUを囲む電源部のヒートシンク(右)につながっている。電源部のヒートシンク上に冷却ファンが用意される点にも注目 |
電源部のヒートシンクを拡大したところ。ヒートシンク上に装備された冷却ファンは,40mm角のものとなっている |
電源部のヒートシンクには,液冷用パイプを接続するコネクタ(写真赤枠内)が2か所あり,ここに冷却液を流すことで液冷が可能になる |
さらにCPUソケットは,端子に24金メッキ加工が施されていて,優れた伝導性によって高信頼性を実現するという。こうした高品質パーツの採用により,CPU負荷が高い状況が続いても安定して動作するというのが,G1.Sniper 5の大きな売りとなっているわけである。
オーバークロック動作を設定するときに使うマザーボードのUEFI(≒BIOS)も,非常に多機能だ。GIGABYTEは以前から,BIOSを二重化して破損に対応する独自技術「Dual BIOS」を,多くのマザーボードに導入していた。G1.Sniper 5では,2012年の同社製品に導入された「UEFI Dual BIOS」を継承しつつ,ユーザーインタフェースを変更したものを採用している。
G1.Sniper 5のUEFI Dual BIOSの設定画面は,マウスで操作が可能な扱いやすいもので,オーバクロック関連の設定項目が多数並んでいる。たとえばCPUコア電圧の場合,外部から供給する電圧だけでなく,CPU内部のVcoreやGPUコア電圧,リングバスの電圧にSystem Agentの電圧など,第4世代Coreプロセッサの内蔵電圧レギュレータが作り出す出力電圧6系統を(関連記事),0.001Vステップで調節できるという細かさだ。
ゲーム用PCをオーバークロック動作させる人は少ないかもしれないが,Unlock版CPUである「Core i7-4770K」や「Core i5-4670K」を使用するユーザーには,かなり楽しめるマザーボードに仕上がっていると言えるだろう。
一見すると凝ったWindowsアプリのようなUEFI Dual BIOS。配色や背景画像をユーザー自身がカスタマイズできるのも売りとのこと |
BIOSのCPUコア電圧設定。第4世代Coreプロセッサが持つ内蔵電圧レギュレータ6種類の電圧を調整できる |
マザーボード初? オンボードのOPAMPを交換可能
G1.Sniper 5の次なる特徴は,マニアックなサウンド機能だ。前モデルにあたる「G1.Sniper 3」でも,サウンド機能には変わった特徴があり,オンボードのサウンド回路周辺を直立した小さな銅板で囲むことで,デジタル回路からのノイズによる干渉を防いで,音質を向上させる試みが行われていた。
また,サウンド回路のコンデンサに,日本の大手コンデンサメーカーであるニチコン製の,オーディオグレードの高品質コンデンサ「MUSE ES」を使用している点もサウンド品質向上の試みとして目を引く。
さて,GIGABYTEがG1.Sniper 5のサウンド機能でとくに大きくアピールしているのが,サウンド回路に搭載されたOPAMP(オペアンプ)を,ユーザーが交換できる機能「GIGABYTE AMP-UP Audio」である。
マザーボード上のOPAMPはZIFソケットに取り付けられており,これをユーザーが引き抜いて,別のOPAMPと交換できるのだ。サウンドカードでOPAMPを交換できる製品はあるが,オンボードサウンドにそうした機能を搭載したという話は,筆者の知る限り,今回が初めてだ。
マザーボード上には,Texas Instruments(以下,TI)製の2回路入りOPAMP「OPA2134」が標準搭載されていた。これはオーディオの世界で定評のあるものだ。一方,製品ボックスには「OPAMP Upgrade Kit」なるものが付属しており,その中にはマザーボードからOPAMPを引き抜くリムーバーと,TI製の2回路入りOPAMP「LM4562NA」が入っている。
OPAMP Upgrade Kit(左)にはリムーバーと,交換用のOPAMPであるLM4562NA(右)が同梱される |
どちらもオーディオの世界では定評のあるOPAMPで,前者はかつてTIに買収されたアナログICメーカーBurr-Brownが設計した製品,後者はやはりTIに買収された旧National Semiconductorが設計した製品である。今では同じTI製品だが,音の傾向は違うと(マニアの間では)言われている。
ちなみにヘッドフォンアンプには,TI製の「DRV632」というサウンドドライバICが使用されていた。ドライブ能力の高いと言われるサウンドドライバICである。
そんなアナログ段と組み合わされるサウンドチップは,G1.Sniper 3から引き続き,Creative Technology製の「Sound Core3D」となっている。チップ自体が金メッキされたノイズ対策用のカバーで覆われている点は,前モデルとの分かりやすい違いだ。
Sound Core3DはクアッドコアのDSP(Digital Signal Processor)を統合したHD Audio CODECで,市販されている単体サウンドカード「PCIe Sound Blaster Recon3D」(以下,Recon3D)に搭載されるのと同じものだ。
以上のように,凝った仕様を盛り込んできたG1.Sniper 5のサウンド機能であるが,それを手放しで褒められるかというと,そうではない。サウンドカードに関心がある人は覚えているかと思うが,サウンドカードのRecon3Dでは内蔵DACの音質に問題があり,4Gamerでも過去に,「ゲームなら問題ないが,音楽鑑賞には堪えない」という低い評価を下したことがある(関連記事)。
こうした評価を受けてCreative Technologyは,2012年に発表した「Sound Blaster Z」シリーズでは,外部DACを採用するという対策を講じて,内蔵DACに起因する音質の問題を解決してきたほどだ。
そういうわけなので,オーディオグレードなOPAMPを搭載するというのは,正直,音質面だけ考えるとオーバースペックという気がする。ただ,Sound Core3Dはゲーム用のサウンドチップとして優秀なので,そんなSound Core3Dの能力を最大限発揮させるために“奢った”というのなら,それは悪くないアイデアともいえるだろう。
G1.Sniper 3に引き続きKiller E2200を搭載
Killer E2200は,「Windowsが抱えるネットワーク処理の一部をオフロードすることで,CPU負荷を軽減し,ゲーマーに最適なネットワーク環境を提供する」と謳っている有線LANコントローラである。同じKiller E2200搭載を特徴とする,MSI製のゲーマー向けマザーボード「Z77A-GD65 GAMING」でのテストでは,ゲーム内での効果はさておき,有線LANコントローラ自体の性能は非常に高いものを持っていたので,耳慣れないものだからといって,性能面で不満を感じる心配はない。
また,G1.Sniper 5にはもう1つ,Z87内蔵1000BASE-T LANコントローラの物理層となるIntel製PHYチップ「82579V Gigabit Ethernet PHY」も搭載されており,Killer E2200と合わせて,1000BASE-T対応の有線LANポートを2基備えている。
ただし,Killer E2200と82579Vのイーサネットを束ねて1系統のネットワーク接続に用いることで,スループットと信頼性の向上を図る機能「Teaming」には対応しない。果たして,この2基をどう使い分ければいいのだろうか。
あえて使い道を考えてみると,ネットワーク設定に関する知識があり,なおかつそうしたニーズを持つユーザーに限定されてしまうが,たとえばDMZ機能を持つルーターを使い,82579Vは通常のインターネット接続に使用しつつ,Killer E2200をDMZ側に設定することで,G1.Sniper 5を使ったPCでゲームサーバーを運用するといった使い方はできるかもしれない。
そのほかにもネットワークに関する特徴としては,PCI Express(以下,PCIe)x1接続タイプの無線LAN/Bluetoothカード「GC-WD300B」が付属する点を挙げられよう。搭載する無線LANコントローラはQualcomm Atheros製の「AR9462」チップセットで,IEEE 802.11a/g/nとBluetooth 4.0に対応する。
G1.Sniper 5の主要同梱物。無線LAN/Bluetoothカードのほかに,SLIやCrossFire用のケーブルが付属している |
G1.Sniper 5に付属する無線LAN/Bluetoothカードとアンテナ |
ただ,有線LANポートが2つもあるゲーマー向けマザーボードで,わざわざ無線LANを利用しようというユーザーは少ないだろう。そもそもTeamingできない有線LANコントローラを2基備えるのもどうかと思うのだが,ネットワーク関連の特徴は,高価なゲーマー向けマザーボードの最上位モデルとして,箔を付けるためのオマケにすぎない印象が,どうしても否定できない。
PCIeスロットは4-way SLI/CrossFireにも対応
黄緑色をした4本のx16スロットのうち,CPUから見て1本め(PCIEX16_1)と3本め(PCIEX16_2)は16レーン動作が可能で,2本め(PCIEX8_1)と4本め(PCIEX8_1)は8レーン動作までだ。PCIEX16_1とPCIEX8_1,PCIEX16_2とPCIEX8_2はPCIeの帯域幅を共有しているので,x8スロット側にグラフィックスカードを装着すると,対になるx16スロットも8レーン動作になるという制限がある。
しかし,この構成ではx16スロット4本で合計32レーン分(x8×4)が必要になり,第4世代Coreプロセッサ自身が持つPCIe 16レーンでは到底足りない。そこでG1.Sniper 5では,PLX Technology製のPCIe Gen3対応ブリッジチップ「PEX 8747」とASMedia
背面USB 3.0の6ポートはすべて,オンボードに搭載されたルネサス エレクトロニクス製USBハブ「μPD720210」を介して,Z87チップセットのUSB 3.0に接続されている。Z87に直接接続されているUSB 3.0ポートは,フロント用の4ポートのみだ。なお製品ボックスには,3.5インチフロントベイ用のUSB 3.0拡張ヘッダ(USB 3.0×2ポート)が付属していた。
I/OインタフェースにPS/2ポートを残してくれているのは,ゲーマー向けマザーボードらしい特徴だろう。同時押し対応のために,PS/2インタフェースを使うゲーマー向けキーボードは少なくないからだ。
Z87チップセットを採用したマザーボードとして十分な拡張性を確保しつつ,ゲーマー向けのサウンド機能やLANコントローラをオンボードで搭載するG1.
小さめのゲームPCを構築するのに適したG1.Sniper M5
次に紹介するのは,G1.Sniper 5の弟分と呼べるmicroATXマザーボードのG1.
G1.Sniper M5はサイズが小さいだけでなく,G1.Sniper 5よりもシンプルな構成になっている部分が目立つ。CPU周りを固める高品質パーツは共通のものを採用しているが,冷却機構は簡略化されているといった具合だ。たとえば,,空冷ファンは装備されておらず,液冷システムに対応する機能はなく,電源部とチップセット部のヒートシンクをつなぐヒートパイプもない。
microATXサイズのG1.Sniper M5(左)。G1.Sniper 5と同じ高性能コンデンサや高品質ソケットが採用される。電源部のヒートシンクはファンレスになり,液冷システムには対応しない |
そのため,PCIEX16だけにグラフィックスカードを装着する場合は16レーン動作になるが,PCIEX8にも装着した場合は,両スロットとも8レーン動作に制限される。なお,2本めのx16スロット(PCIEX4)はZ87チップセットに接続された,PCIe 2.0 4レーン動作のものだ。
インタフェース類も,Z87チップセットに単体のコントローラを組み合わせ数を増やしていたG1.Sniper 5に比べると,G1.Sniper M5は少なめになっている。まず,SATAインタフェースはG1.Sniper 5の10ポートから,Z87に直結されたSATA 6Gbps×6ポートのみとなった。USB 3.0も同様で,Z87に直結された6ポート(背面に4,前面に2)のみと削減されている。
また,G1.Sniper M5の1000BASE-T LANは1系統のみだが,有線LANコントローラはKiller E2200を搭載しているので,G1.Sniper 5と比べても実用上は見劣りしないだろう。
背面に配置されたビデオ出力端子はG1.Sniper 5よりも多く,DVI-I出力が追加されている。わざわざマザーボード側の映像出力を増やしたのは,G1.
SATA 6GbpsはZ87による6ポートのみだが,不足を感じることは少ないだろう |
G1.Sniper M5の背面I/Oインタフェース。G1.Sniper 5にはないDVI-I出力を搭載している |
一方で,サウンド関連の特徴は,G1.Sniper 5からほぼそのまま引き継がれている。マザーボード上での占有面積こそやや小さいものの,アナログ回路部分を基板上で分離してノイズの影響を抑える構造は変わらず,OPAMPの交換機能やSound
Sound Core3D(写真右)や交換可能なOPAMPを備えるサウンド機能はG1.Sniper 5と同等だ |
G1.Sniper M5の主要同梱物。ケーブル類は少なめで無線LANカードもないなど,シンプルな構成だ |
microATXサイズに合わせて,冷却機構や拡張性は簡略化されているとはいえ,G1.Sniper 5と比べても,ゲーマー向けマザーボードとして主要な機能は,遜色ない作りといえる。より小さなゲームPCを構築したい人なら選択肢になるマザーボードだ。
G1.Sniper 5 製品情報
G1.Sniper M5 製品情報
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