レビュー
簡易液冷クーラー搭載&OC仕様のGTX 980 Tiはどれだけ速いのか
GIGABYTE GV-N98TXTREME W-6GD
「GeForce GTX 980 Ti」(以下,GTX 980 Ti)搭載グラフィックスカードとなる本製品,外観上の最大の特徴は,写真を見てもらえれば分かるとおり,簡易液冷クーラー「WATERFORCE All in One Closed Loop Water Cooling System」(以下,WATERFORCE AiO)を標準搭載するところだが,それを生かした高い動作クロック設定も,大きなポイントとなっている。
では実際のところ,簡易液冷クーラーを組み合わせたGTX 980 Tiカードには,どれだけの性能を期待できるのだろうか。GIGABYTEから入手した製品版サンプルを用いて,そのポテンシャルに迫ってみたい。
動作モードはOC,GAMING,ECOの3つ
WATERFORCE AiOは純然たる簡易液冷クーラー
GTX 980 Ti GPU。「GPU Gauntlet Sorting」により,高クロック動作に耐性のある個体のみを採用しているというのがGIGABYTEによるアピールポイントの1つだ |
OC Guru IIで確認したところ,最大動作クロックは1418MHzに達した |
後述するテスト環境で,ゲームアプリケーション実行中のコアクロック推移をGIGABYTE製オーバークロックツール「OC Guru II」(Version 1.92)から確認した限り,ブースト最大クロックは1418MHzに達した。同条件でGTX 980 Tiリファレンスカードだと1202MHzが上限だったので,ブースト最大クロックはプラス約18%という計算だ。
メモリクロックは7202MHz相当(実クロック1800MHz)で,リファレンスの7010MHz相当(実クロック1752MHz)と比べると約3%高い。
しかも,話はそれで終わりではない。G
では,残る2モードはどうなるかというと,以下のような設定になっている。
- OCモード:ベース1241MHz,ブースト最大1443MHz,メモリ7202MHz
- ECOモード:ベース1126MHz,ブースト最大1327MHz,メモリ7010MHz
ざっくりいえば,OCモードはGAMINGモードからさらにベースクロックを25MHz高めたもので,ECOモードはGAMINGモード比でベースクロックを90MHz低く抑え,さらにメモリクロックをリファレンス相当に抑えたものという理解でいいだろう。
ただ,ECOモードはその名の割にはGTX 980 Tiのリファレンス仕様と比べて13%もベースクロックが高いわけで,言うほどエコか? という気はする。このあたりの実態は,後段で検証したい。
カード長は実測約272mm(※突起部含まず)。GTX 980 Tiリファレンスカードが同268mmだったので,わずかに4mm長い計算となる。ただし,カードをマザーボードに差したとき,マザーボードから垂直方向の長さはリファレンスカード比で9mmほど長い実測約117mmであり,簡易液冷クーラーのホースがさらに伸びることになるため,ホースの剛性も考慮すると(デスクトップ向けのタワー型筐体に搭載する場合)PCケースの横幅はざっくり140mm以上必要になる。この点は押さえておく必要がありそうだ。
この6ピンコネクタは,すぐ隣にあるプッシュスイッチと合わせて利用するもので,このスイッチを押すと,通常のグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)ではなく,液体窒素冷却に対応した,いわゆるLN2モードのVBIOSに切り替わる仕様だ。ゲーマー向けではなく,オーバークロック競技へ参加するような人向けに,追加の電源供給を行えるようにしてあるわけである。逆にいうと,このスイッチを押さない限り,6ピンコネクタへ電源供給を行う必要はない。
ちなみに,標準の8ピンコネクタ
光り方は,点灯しっぱなしの「NONE」,ゆっくりと明滅を繰り返す「Breathing」,速い点滅を繰り返す「Flashing」,点滅の回数が2回に増える「Dual Flashing」の4とおりで,デフォルトはNONE。色は「オレンジ」「水色」「赤色」「緑色」「黄色」「紫色」「白色」の7色が標準で,それらがランダムで入れ替わる虹色モードと,フルカラーのパレットから好きな色を選択できるモードも利用できる。パレットといっても単なるスライダーであって,現実には,とてもフルカラー(≒1677万色)から選べるとは言えないが,カスタマイズできるのはいいことだ。
GPUクーラーを取り外して基板をチェック。注目は豪勢な電源回路
WATERFORCE AiOのカバーを取り外すと,基板側のクーラーが,ポンプと水枕,ヒートパイプ,ヒートシンクが一体化したものであることを確認できる。GPUに接触している銅製の枕は,メモリチップも覆っており,さらに,電源部を覆うヒートシンクから,ヒートパイプで枕へ熱を運ぶような構造にもなっていた。
なお,搭載するメモリチップはSamsung Electronics製GDDR5「K4G41325FC-HC28」(7Gbps品)。なので,OCモードやGAMINGモードでは若干ながらチップの仕様を超えたクロック設定で動作することになる。
見ただけでは分からないが,基板にはA |
搭載するメモリチップは7Gbps品で,このあたりはリファレンスのGTX 980 Tiカードと変わらない |
3つの動作モードでGTX 980 TiおよびGTX TITAN Xと比較
今回,G
テストに用いたグラフィックスドライバ,テスト開始時点の公式最新版となる「GeForce 359.06 Driver」。そのほかのテスト環境は表のとおりだ。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0準拠。ただし,これまでのレビュー記事でもお伝えしているとおり,筆者の環境では「Crysis 3」が正常に動作しない。そのため,今回は代わりに「Fallout 4」を採用している。
そのテスト条件だが,ここでは,描画負荷が最も高い「Ultra」と比較的低めの「Medium」両プリセットを選択のうえ,さらに後者ではアンチエイリアシング設定の「TAA(Best quality)」,異方性フィルタリング設定の「16 Samples」を無効化し,描画負荷の軽減を図る。
なお,余談気味に続けておくと,ベンチマークレギュレーション18でFallout 4を採用するにあたっては,シーンの再選定など,さらなる検討が必要だと考えている。今回は時間の都合により先の一斉検証時と条件を揃えているので,その点はあらかじめお断りしておきたい。
テスト解像度は,G
GTX 980 Tiよりもざっくり15%は高いスコア
ECOモードでさえGTX TITAN X以上
グラフ1に結果を示した「3DMark」(Version 1.5.915)から,順番に結果を見て行こう。
G
OCモードはGAMINGモードよりも1〜2%程度高いスコアで,逆にECOモードはGamingモード比で約95%のスコアだが,それでもGTX TITAN Xより高い。「エコモード」というより「クロックアップ控えめモード」と紹介したほうがよさそうである。
全体的な傾向は,グラフ2,3の「Far Cry 4」でも同じだ。
G
今回のテスト対象はいずれもGM200コアを採用するGPUということもあってか,「EVOLVE」でも,ここまでのスコアを踏襲する結果が出ている(グラフ4,5)。レギュレーションでは平均45fpsを及第点としているのだが,G
グラフ6,7のFallout 4で,G
動作クロックの違いなどを踏まえると,スコア差は付きすぎといったところだが,その理由の1つには,OCモードとGAMINGモードでメモリクロックが引き上げられていることがあるとは考えている。さらに,簡易液冷クーラーの冷却能力を背景に,より高い動作クロックに留まる時間が多くなっていることもいい結果につながっているのではなかろうか。
続いてグラフ8,9は「Dragon Age: Inquisition」の結果だが,ここでのスコア傾向は3DMarkからEVOLVEまでのそれに近い。GAMINGモードのG
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」公式ベンチマーク(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)のスコアをまとめたものがグラフ10,11である。
「標準品質(デスクトップPC)」は,もはやこのクラスの製品にとっては描画負荷が低すぎるため,ここでは「最高品質」のスコアで比較していくことになるが,ここでもG
実フレームレートだと,GAMINGおよびOCモードで解像度2560
「GRID Autosport」も,今回テストに用いているGPUにとっては負荷が低すぎるため,全体としてスコアは似通ったものになった(グラフ12,13)。とくに2560
GAMINGモードで消費電力は最大30W弱の増加
WATERFORCE AiOは冷却能力&静音性ともに優秀
クロックアップモデルというと,どうしても消費電力の増大からは逃れられないが,G
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果がグラフ14だ。
まずアイドル時だが,G
続いて,各アプリケーション実行時を見ていくと,GAMINGモードにおけるG
また,ECOモードも,GTX 980 Tiと比べて5〜13W高い。これが文字どおりの「エコ」でないことは誰の目にも明らかだと思う。
GPUの温度も,念のため確認しておきたい。ここでは,温度24℃の室内において,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 0.8.6)から温度を取得することにした。
リファレンスカード2枚はともかくとして,G
気になる動作音は,今回,録音してサウンドファイルにしてみたので,実際に聞いてみてほしい。今回は,カードに正対する形で30cm離した地点にマイクを置き,アイドル状態で1分間放置したあと,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを4分間実行したときの様子をデータ化してある。動作モードは,デフォルトのGAMINGだ。
最初の1分間は,アイドル時でもラジエータのファンが回転し続けることもあって,アイドル時にファン回転を停止させるという最近の流行に乗ったGPUクーラーと比べて,静音性は譲る。しかし,ベンチマークが始まっても動作音はほとんど変化せず,負荷がかかった状態でも動作音はかなり低いレベルに収まっている。簡易液冷クーラーの場合,PCケース側の冷却能力次第で結果はかなり変わるため,今回のテスト結果はベストケースと理解したほうがいいかもしれないが,それでもこの結果は優秀と述べてよさそうである。
※再生できない場合は,Waveファイルをダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。
性能も価格も圧倒的。基板設計と簡易液冷ユニットに価値を見出せるかがポイント
また,高い動作クロックに問題なく堪えてくれるであろう基板設計や,W
とにかく3D性能とクーラーの冷却能力に期待するというのであれば,G
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