イベント
ウメハラの“俺様キャラ”に社会派ブロガーが悶絶。下北沢で開催された対談イベント「梅原大吾×ちきりん『ウメハラ流・仕事術とは』」に行ってきた
ウメハラ氏の著書「勝ち続ける意思力」は,小学館101新書から発売中だ。これまでのウメハラの活躍をよく知る格闘ゲームファンであっても,その内容には一読の価値がある。まだ読んでいないという人は,ぜひ手にとってみてはいかがだろうか |
2005年からブログ「Chikirinの日記」を開始し,今では月150万PVを集めるちきりん氏。証券会社勤務やアメリカ留学の経験を活かし,社会問題を「ゆるく考える」記事で,「おちゃらけ社会派」ブロガーとして活躍している。近著に「世界を歩いて考えよう!」(大和書房)など |
このイベントのきっかけは,自身のブログ「Chikirinの日記」でさまざまな書籍の紹介を掲載しているちきりん氏が,2013年1月3日付けのエントリーで,ウメハラ氏の著書「勝ち続ける意思力」を紹介したことに遡る。ゲームにはあまり馴染みがなかったというちきりん氏だが,同エントリーでは「『勝つ方法』と『勝ち続ける方法』の違いを、これだけキレイに説明してくれた本は、初めて読んだ気がする(原文ママ)」とベタ褒めで,さらにビジネスや子育てといったシーンでも参考になる書籍と,かなりの惚れ込みよう。
このエントリーの影響もあって,Amazon.co.jpの同書籍は瞬く間に完売となり,またKindle版も数千ダウンロードを記録。そしてトークイベントなどを企画する「B&B」の担当者の目にとまったことで,今回の対談にまでつながったとのことである。
ウメハラ氏,ちきりん氏どちらのファンから見ても,かなり異色の対談ということもあって,事前に発売された60枚のチケットは,あっという間に完売してしまったというこのイベント。本稿では,その模様を写真と共にレポートしていこう。
「B&B」公式サイト
ちきりん氏のブログ「Chikirinの日記」
「勝ち続ける意思力」(Amazonアソシエイト)
「社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!」(Amazonアソシエイト)
下北沢のおしゃれ本屋に,60人を越えるファンが集結
筆者が会場に着いた20:00前,すでに店内は運良くチケットを入手できたお客さんでいっぱいの状態となっていた。格闘ゲーム関連のイベントには,よく顔を出す筆者だが,さすがに今日の客層は,雰囲気が違うようだ。年齢層も幅広く,男女比も同程度。皆,チケット代込みのワンドリングを注文して,イベントの開始を待っている。
あまり広くはないイベントスペースに,隙間を埋めるように着席して待つことしばし,ウメハラ,ちきりん両氏の登場をもって,イベントはスタートした。
対談は,ちきりん氏が「勝つための意志力」を読んで感じたこと,また疑問に思ったことなどを,ウメハラ氏に対して質問していくという形式での進行となった。
ちきりん氏が「俺様キャラ」と呼ぶウメハラ氏の回答に対しツッコミを入れつつ,話を広げて行くという感じで,笑いありの終始アットホームな雰囲気でイベントは進んでいく。途中に休憩を挟んだ2時間の間に,興味深い話題は尽きなかった。ここではその中から,4Gamer的に気になったものをピックアップしてお伝えしていこう。
一つ目は,格闘ゲームファン……というか,格闘ゲームプレイヤーのファンにはお馴染みの,いわゆる「五神」についての質問だ。とあるインタビュー動画で,「五神に序列を付けてください」と問われたウメハラ氏が,「自分はその中にはいません。その上ですから」と答えたエピソードに触れ,ちきりん氏は「知り合いもいると思うんだけど,言いきって大丈夫なの?」とツッコミを入れる。
対するウメハラ氏は,苦笑いを浮かべつつ,もちろん大丈夫だという。その理由は,「彼らは,対戦で“逃げた”ことがあって,それを自覚している。自分は一度も逃げたことがないので,それが分かっている当事者同士,文句を言われることはない」とのことである。
その自信満々な回答ぶりに,ちきりん氏は感心しきりな様子で,その後は“逃げる”ということの意味について,ウメハラ氏はたとえ話を交えながら,説明しようとしていた。
ただ,この“逃げる”ということが,どういう事なのかについては,格闘ゲームプレイヤーでない人には,いまいち伝わりにくい感覚だろう。これは対戦において消極的な戦術をとることや,あるいは単に対戦を拒否するような行動を意味するわけではない。
長い期間トッププレイヤー同士がしのぎを削っているような状況では,日によって不調な日もあり,負けが続くことによって,嫌気がさしてしまうことがある。その場合,その日これ以上プレイを続けても意味がないと,気分転換をするトッププレイヤーも多いのだが,ウメハラ氏のプレイスタイルはそれを良しとしない。どんなに苦しい状況にあっても,相手に立ち向かうことで突破口を見出す。一切妥協せずに,それを続けて来たウメハラ氏だからこそ言える言葉だと,筆者には感じられた。
ゲームが原因の不調は,ゲームをプレイすることで取り戻すしかない。ウメハラ氏にとって,それがゲームに真摯に向かい合うことであり,つまりここで言う“逃げた”とは,「お前より,俺のほうが真剣にゲームをやってるよね?」という意味なのだろう。
もう一つは,ウメハラ氏の幼少期の話について。学校の先生から疎まれていたというウメハラ氏だが,その一つのエピソードとして,「テスト期間だから勉強しろ!」という先生に対し,勉強をする理由になっていないと反論し,大いに怒られたという話が紹介された。
ちきりん氏は「イヤな子供だな〜」と率直かつ,会場を代弁するかのようにツッコミを入れていたが,ちきりん氏自身も,日本の教育のあり方には,不満を持っているとのこと。学校は社会の縮図とは良く言われる話だが,ちきりん氏にとっては,そのすべてが書き割り――偽物のように見えるという。
いずれにせよ,両氏ともあまり学校に良い思い出はないようなのだが,ちきりん氏の「じゃあ今,母校から講演の依頼がきたらどうします?」という質問には,ウメハラ氏も「受けますね。優越感に浸れそうだし(笑)」と答え,会場の笑い誘っていた。
また,これはちきりん氏からではなく,会場からの質疑に答える形だったが,「ウメハラ氏がプレイヤーを引退するとしたら,いつなのか」という質問も面白い。ウメハラ氏は「実力で勝負しなくなったら終わり」と解答していたが,それは先の“逃げる”という話にも通じる話だろう。勝てる勝てないではなく,自分自身をプレイヤーとして認識できるかどうかが分かれ目のようで,ウメハラ氏の美学ともいえるその言葉に,ちきりん氏は何度も頷いていたように見えた。
ちなみにウメハラ氏自身,今のところ体力的な衰えは感じていないものの,年齢で衰える能力――格ゲー的に言えば,人間性能に頼る戦い方はしてこなかったといい,現時点では40歳や50歳になっても一線に立っているつもりだという。決して才能で戦っているわけではないというウメハラ氏。「今後,もし年齢によって勝てなくなったとしたら,それは自分に才能があったということなんだから,残念ですね」と語っていたのが,とくに印象に残っている。
このほか,トークはさまざまな話題に触れつつ,展開していった。なお,この対談の後日ちきりん氏のブログにも掲載される予定とのことなので,気になる人はそちらもチェックしてみるといいだろう。4Gamerでは,イベント終了後のお二人を直撃し,イベントの感想などをうかがった。以下に掲載するので,合わせてご一読をいただきたい。
ウメハラさんには,もっと活動の幅を広げていってほしい――ウメハラ×ちきりんミニインタビュー
本日はお疲れ様でした。対談を終えてみて,ちきりんさんはいかがでしたか。
ちきりん氏:
ウメハラさんの本を読んだときは,なんて自信家な俺様キャラなんだろうって印象だったんですよ。だけど,それがどこまで本当なのか,というのが気になっていたんです。
4Gamer:
対談中も,ことあるごとに俺様キャラについてツッコミを入れていましたね(笑)。
ちきりん氏:
そうですね(笑)。会ってみて,改めて思いましたから。でも本当に真面目というか……ストイックな方でした。自信を裏付ける考え方をしっかり持っているからこその言葉なんだと思いました。
4Gamer:
ちきりんさんは,普段から数多くの本を読まれていると思うのですが,そもそもウメハラさんの「勝ち続ける意志力」を手に取ったきっかけってなんたったのでしょうか。
ちきりん氏:
最初は例の「背水の逆転劇」の動画を,知人にTweetで紹介してもらって観たことだったんです。私は普段ゲームをプレイしないので,試合の内容自体は何が起こってるのかすら分からなかったんですが,ギャラリーの沸きようをみて,ただ事じゃないと思ったんです。
4Gamer:
あれはもう10年くらい前の動画ですが,ウメハラを象徴する動画になっていますね。
ちきりん氏:
そのときに丁度,「勝ち続ける意思力」が出版されていることを知ったんです。最近は献本という形で本をいただくことも多いのですが,これは自分で購入しました。それくらい興味があったので。私はジャンルを問わず,一流の人にはすごく興味があって,どうしたらそういう風になれるんだろう? という思いを常に持っているんです。
4Gamer:
では「勝ち続ける意志力」を読んでみて,どのあたりがちきりんさんの琴線に触れたんでしょうか。
ちきりん氏:
新たに気づかされることが多かったというのが,良かったですね。私自身は小さい頃から褒められることの多い人生で,けれどそれは,本をよく読んだり勉強や作文ができるからだったんですね。なので,自分がやっていることに疑いを持たないで生きてこられたんですけど,自分が得意なことが,もし社会的に認められないことだったら,という視点には,この本を読むまで気付かなかった。それがどれだけ悲しいことなのか,実感として持てなかったんです。
4Gamer:
なるほど。
ちきりん氏:
14歳で自分が世界一だと確信していたウメハラさんでさえ,これだけの葛藤を感じていたのだから,大人はめったなことを子供に言うものじゃないなと。なので,もっと多くの人に「勝ち続ける意思力」を読んでほしいと思って,ブログで取り上げたんです。
4Gamer:
2013年4月には,ウメハラさんがアメリカのニューヨーク大学で講演を行う予定と聞きます。こういう動きが広がると,社会的なゲームの地位も,もっと向上するのかもしれません。
ちきりん氏:
それは素晴らしいことだと思います。サブカルチャーが社会的に認められるためには,教育機関や研究機関に取り上げられるのが重要なんです。現在のジャパンカルチャーには,そういう動きがあるので,ウメハラさんには,今後ぜひそういうところに向かってもらいたいですね。
4Gamer:
日本の大学でも,もっとそういう動きがあるといいですよね。
ちきりん氏:
大学ももちろんですが,個人的にはぜひ経団連あたりで講演してほしい(笑)。「苦労して積み上げてきたものを,捨てることを怖れては次にいけない」というウメハラさんの言葉を,ぜひ彼らに聞かせてあげたい。
4Gamer:
ああ,経団連……その発想はなかったです(笑)。
ちきりん氏:
あとは,対談でも少し話が出ましたが,教育の現場ですね。昔ほどではないにせよ,ゲームや,そのほかマイノリティな得意分野を持っていて,それで肩身の狭い思いをしている子供はいると思うので。そういう子供達に届く言葉を,ウメハラさんは持っていると思います。あと企業経営者なんかもいいですね。
4Gamer:
では仮に,ウメハラさんが本気でビジネスに取り組んでいたとしたら,果たして成功したでしょうか。
ちきりん氏:
……うーん,ビジネスには向いてないんじゃないですか(笑)。ウメハラさんは,やっぱり突き抜け型だと思うので,何かに特化したものの方が向いていると思います。ビジネスって,いろいろ清濁併せ呑むようなところがあるので……そんなことをやらせるのは,正直もったいないですね。
4Gamer:
うーん,なるほど。分かりました(笑)。では最後にウメハラさん,先日「スーパーストリートファイターIV」のバージョンアップがアナウンスされましたが,どう思われますか?
ウメハラ氏:
すごくありがたい話ですね。単純に,うれしいです。
4Gamer:
調整の方向性について,何か意見はありますか?
ウメハラ氏:
そうですね……積極的な行動が,もうちょっと評価されるゲームになってくれるといいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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