インタビュー
KONAMIとトライエースが開発中のPSP「フロンティアゲート」は,マルチプレイとターン制コマンドバトルを前提としたRPGだった。その狙いを両社に聞く
物語を彩るのは個性溢れるパートナー達
武器防具やアバターも充実
4Gamer:
パートナー絡みでお聞きしたいんですが,人気の出そうなキャラクターは誰だと思いますか?
向峠氏:
ディジーじゃないですか。釘宮さんの人気もありますから。
小牟田氏:
個人的にはニケちゃんは人気が出る思いますよ。
天野氏:
女性ならクロトキくんが一番いいんじゃないですか。
小牟田氏:
みんな個性的なので,きっと好き嫌いははっきり分かれるでしょうね。最初に出会ったときのレインヴァルトもカッコイイし。
向峠氏:
彼は基本的に2枚目キャラじゃないですか。ただちょっとベタベタですけどね。
小牟田氏:
いやでも最初だけですよ。後半は……。
天野氏:
まぁ……イケてないですよね(笑)。お話的にはニケちゃんが一番人気が出るでしょう。
ニケちゃんが一番,いわゆる日本のRPGらしい物語になっていますね。ニケとクロトキはそういう意味では最もキャラ立ちする2人です。
4Gamer:
シナリオによっても受け手の感想が変わりそうですね。
天野氏:
変わるでしょうね。アレッティオ君なんかは,クエストを繰り返して素材を集めていくという楽しみ方をするプレイヤーにはいいと思います。途中に絡みもありますが,シナリオ的にぐっと惹きつけるような感じではなくて,主人公と同じ視点で成長していくという分かりやすいキャラですから。
4Gamer:
声優陣も豪華ですが,キャストを決めていく上で,何か基準はあったんですか?
天野氏:
制作時にこんなイメージだよねって言っていた候補を,そのまま通していただきました。
小牟田氏:
決めるときは,みんなで1キャラずつ候補を出して,打ち合わせのときにひたすらサンプルボイスを聞いていましたね。
天野氏:
ただ,ちょっとストレートすぎたかもしれません。
小牟田氏:
ど真ん中のストレートですからね。
4Gamer:
キャストを決めたのは,キャラクターの設定やシナリオがある程度決まってからなんですか?
小牟田氏:
シナリオはまだプロットの段階でしたが,キャラクター設定自体は固まっていました。
4Gamer:
各キャラクターごとにシナリオがあるとなると,収録も大変そうですよね。
小牟田氏:
それなりに時間はかかりました(笑)。
天野氏:
全員分のキャラクターとシナリオを合わせれば,シナリオ,キャラクターありきのRPG1本分かそれ以上はありますから。
4Gamer:
それにしても,まさに豪華声優陣が勢揃いですよね。
向峠氏:
声優陣を豪華にしよう! というつもりはなくて,シナリオに合う人を探していったら,結果的に有名な方々にお願いすることになっただけなんです。ただ,有名な方々って,やっぱり演技が上手なんですよ。とても華やかで,フックにもなる。それが分かっていますから,プロデューサーとしては悩むこともなくGoサインを出せました。
小牟田氏:
実際に声の入った状態でイベントシーンなどを見てみると,やはり皆さん上手なので,見応えも抜群です。
4Gamer:
そういえば,設定の中に戦盾という大きな盾が出てくるようですが,ゲーム内に登場するんでしょうか。
小牟田氏:
出てきますよ。
4Gamer:
公開されていないキャラクターの中に使えるキャラクターがいるということですか? それとも主人公が装備できるんでしょうか。
小牟田氏:
これも詳しくは言えませんが,もちろん使えます。戦盾はFRONTIER GATEならではの武器でしょうね。1人で戦いに行くのに盾だけ持っていく人なんていません。2人1組だからこそ成立するものです。例えば,片方が盾を持って片方が武器を持つという分担も可能ですし,2人とも盾というプレイもできますからぜひ使ってほしいですね。
天野氏:
とにかく武器の種類は多いですよ。
向峠氏:
武器防具はすべて見た目に反映されますしね。
小牟田氏:
その辺りもマルチプレイで楽しんでいただけそうですね。同じパートナーを使っているんだけど,見た目はまったく違うというように。
天野氏:
キャラクターのカスタマイズはかなり力を入れさせていただきました。
小牟田氏:
そこは五反田さんが一番やってほしいとおっしゃったところですよね。
五反田氏:
そうだったかもしれません(笑)。
4Gamer:
やはりそれも,マルチプレイ前提だからこそですか。
向峠氏:
ええ。マルチプレイだと,自分のキャラクターをほかの人に自慢したくなりますよね。主人公のカスタマイズは当然のこととして,俺のパートナーどうよ? という楽しみ方もありじゃないかな,というところを突いてます。
小牟田氏:
ホストのところに遊びに行くと,ホストのパートナーが拠点の中のどこかにいるんですよ。変えた装備はその状態でも反映されているので,歩き回ってみると面白いかもしれません。コイツ,このキャラをこんな格好で立たせてるよ……とかね。テスト中は仲間になったパートナーからとりあえず装備品を引っぺがすという人もいましたし。
4Gamer:
ひどい人ですね(笑)。
見た目の爽快感を重視した戦闘と
簡単ながら奥深いコンボシステム
4Gamer:
ちょっと話題を変えて,戦闘システムについても聞かせてください。ターン制コマンドバトルというのも,最初から決まっていたものなんですよね。
小牟田氏:
そうですね。
4Gamer:
マルチプレイで戦闘を楽しめるゲームというと,アクション寄りのものが増えていますが,FRONTIER GATEではアクションを採用しなかった理由を教えてください。
アクションとコマンドバトルのどちらを採用するかというのは,RPGにおいて重要な問題です。ただ,マルチプレイでアクションと言ってしまうとどうしても「モンスターハンター」などが代表作としてイメージされてしまうと思うんです。それではちょっとRPGとして打ち出していく意味が薄れてしまいます。
それに,アクションゲームというのはアクション自体が難しくて楽しめないという人も,少なからずいると思うんですよ。そこで今回は,間口を広くハードルを低くということを踏まえて,コマンドバトルのほうが楽しめる人が多いだろうということで,選択しました。
ただ,コマンドバトルであってもアクション並みのテンポのよさでカバーしています。アクションRPGが好きなトライエースファンもご安心ください。
天野氏:
テンポの良さは,かなり意識して作っていますからね。
向峠氏:
パッと見るとアクションゲームにも見えるぐらいですし。
天野氏:
動画だけ見ると,そう思われるかもしれませんね。演出の方向性が,1個1個の技を解説するのではなくて,ガンガンいこうというものでしたから。オーソドックスなコマンドバトルにしようかとも悩んだんですが,今回は見たときの爽快感を重視しました。
4Gamer:
FRONTIER GATEにおいて,戦闘の爽快感というものを演出していくうえで,キーポイントになるのはどの部分だと思いますか?
小牟田氏:
簡単に重ねられるコンボでしょうか。コンボを組み替えると演出も全部変わりますし,新しい技を覚えたらコンボのどこに組み込もうかと考える楽しみもあります。
4Gamer:
戦闘を飽きさせないための演出としても,コンボシステムが機能しているわけですね。コンボはどういう風に重ねていくものなんですか?
天野氏:
自分以外のキャラクターが,自分と同じターゲットを攻撃したらその時点でコンボが発生します。そのとき,どの属性の技に対してどの技を合わせたかで効果が変わってくるんです。どの技をどのタイミングで出すかというのが,コンボの組み方を考えるうえでの基本になりますね。
小牟田氏:
技ごとに打ち上げ属性とか打ち下ろし属性とか,いろいろな属性があるんですけど,何をやっても攻撃が連続すればコンボは成立します。ただ,それをどう繋ぐかで,得られる効果や見た目は大きく変化します。
4Gamer:
そのコンボというのは基本的にプレイヤーが覚えていくものですか? あるいは,あらかじめセットしておくような形なんでしょうか?
小牟田氏:
自分で覚えるタイプですね。
4Gamer:
なるほど,マルチプレイでも同じように「あいつがこれをやったから,じゃあ俺はこのコンボを繋いでいく」という遊び方ができるわけですか。
天野氏:
おっしゃるとおりです。
小牟田氏:
さらに武器ごとに持っている属性も違うので,1人でやっていると自分とパートナーの2人の属性でしかコンボできませんが,マルチプレイで6キャラが集まっていて,全員が違う武器を持っていれば,まったく異なる属性のコンボが繋がって新たな発見があると思います。武器を換えるだけでもかなり楽しめますよ。
天野氏:
マルチプレイのコンボの繋がりは相当面白いですね。
4Gamer:
マルチプレイ時に戦闘の行動順は決まっているんですか?
小牟田氏:
いえ,入力した者順です。ターン開始の頭にこういうコンボ入れたいからこういう順番で入力しようといったように,作戦会議をしてから実際に入力をして,その結果がどうなるかを演出で確かめるというイメージになると思います。
4Gamer:
自分勝手な人が嫌われそうですね(笑)。
小牟田氏:
さらにブーストAPという,自分勝手な人がより嫌われそうなシステムもありますね(笑)。ブーストAPは使うと自分のAPが一気に回復して,その分たくさんのコマンドを入力できるというものなんです。
4Gamer:
どうすればブーストAPを得られるんでしょうか。
小牟田氏:
コンボを繋ぐと,ターンの開始時にブーストAP獲得率が上がって,それに当選するともらえますね。なので,みんなで話し合って分配をするのが普通なんですけど,自分勝手な人は出た瞬間にぽんっと使って,自分の好きな技を入れちゃうかもしれません。
4Gamer:
逆に,ゲームに慣れている人と慣れてない人が一緒に遊ぶ場合は,慣れている人に戦闘を任せることもできるわけですか。
小牟田氏:
できますね。「お前これ入れろよ」って誘導してもらったりして。その時間はアクションゲームと違って完全に時が止まっているので,仲のいい人同士でああだこうだしゃべりながらできると思います。
アクションゲームだと顔を付きあわせていても,会話は「ちょっと待って!」とかになっちゃうんですよね。
小牟田氏:
「やられたー!」とかそういう声しか聞こえてこないですよね。
天野氏:
その点,FRONTIER GATEはちゃんと会話しながら遊べるようにしているんです。
向峠氏:
そうやって会話して,コンボを見つけるというやり方もそうですが……まぁ,即席でササっとやってもらっても面白いと思います。
天野氏:
適当に入力したときに,新しいコンボや見た目のカッコイイエフェクトがでると「あれなに!?」という驚きがありますね。
向峠氏:
1人でやっていても,本当に突き詰めたい人はコンボを狙ってやっていくのもいいと思うんですけど,ただのガチャプレイみたいな入力方法でも,レベルを上げればそれなりに先に進んでいけます。そういう部分の間口も広くなっていますよ。
4Gamer:
ちなみに,1回の戦闘にかかる時間というのはどれくらいなんでしょうか。
小牟田氏:
雑魚戦はそんなに長くないですね。パパッと入力してしまえば。
天野氏:
2ターンくらいと考えて2〜3分くらいでしょうか。コマンド入力の際の思考速度にもよりますが,どうしてもそこはプレイヤーごとに個人差がありますから。
小牟田氏:
ただ,ボス戦は難しめになっています。
天野氏:
ボスは結構考えないと倒せないでしょうね。序盤に,最初の挫折を与えるボスがいますが,あれはいい設定,いいバランスだと思います。
小牟田氏:
それまで適当なコンボで何とかしのいできた人も,「俺ちょっと考え方変えなきゃだめかも……」って思わせるようなボスです。
天野氏:
「開拓って甘くねぇな」って思ってもらえれば(笑)。
総プレイ時間は100時間超!?
トライエースならではの極悪なやりこみ要素も
4Gamer:
では,全体的なボリュームはどんなものなんでしょうか。
天野氏:
ちょっとやりすぎたかもしれません。試算したことがないのでなんともいえませんが,短く見積もっても1キャラ6〜7時間,それ掛ける15人+メインが1個あるので……。
小牟田氏:
全部やろうと思ったら100時間はいってしまいますね。しかもそのあとの世界でもずっと遊べるように作っていますので。
向峠氏:
トライエースらしいストーリー後のやり込み要素もご用意しています。いつものことですけど“極悪”らしいです。
4Gamer:
相当遊べそうですね……!
小牟田氏:
やりつくそうと思ったら大変ですよ。
4Gamer:
もちろん,お気に入りのパートナーとメインだけをクリアすればいいやという人はそれはそれでと。
小牟田氏:
そうですね。それなら100時間もかかりませんし。
4Gamer:
そろそろお時間も迫ってきましたが,最後にFRONTIER GATEをどんな方々にプレイしてほしいお考えですか?
小牟田氏:
純粋に,RPGを愛している人達にプレイしてもらいたいなと思っています。
向峠氏:
ただ実際,これは難しいんですよ。ジャンルの話をすると,RPGってゲーム全体の中でもトップの人気を誇りますが,それでもRPG自体が売れる本数というのは徐々にシュリンクしてきています。一言でRPGと言っても,プレイヤーの嗜好は細分化されてきていますからね。
4Gamer:
そのニーズに応えるものとして,最初話題に上がったようなシナリオやキャラクターが目立つものが増えているわけですよね。
向峠氏:
ええ。そしてそういう状況の中,FRONTIER GATEはあえて逆に記号的でないキャラクターデザインとか,パートナーを選ぶことでプレイヤーごとに異なるシナリオを楽しめるとか,ある意味間口が広いコンセプトを持っています。
これは,ある一定の層に訴求するタイプではないということですから,一か八かの勝負と言えるかもしれませんね。それでもやはり,たくさんの人たちにやっていただきたいという願いは込めています。
4Gamer:
コンセプトを伺っている限りでは,最近ちょっとRPGから離れている人などを呼び戻そうというような狙いがあるのかなと思いました。
向峠氏:
狙いは壮大なんですけど,現段階のプロモーションでは,まずどこに対して訴えかけていくべきか悩んでいますね。ただ,これが受け入れられたらパイは大きいのかなと考えています。RPGというジャンルのメインタイトルの一つとして,育ってほしいなという気持ちはありますよ。
4Gamer:
ちなみに発売予定は2011年内とのことですが……?
向峠氏:
ええ,はい……。今,まさに頑張って制作中です(笑)
4Gamer:
楽しみにしています。本日はありがとうございました。
発売日こそ発表されていないものの,今回のインタビューでゲームの概要がかなり明らかにされたFRONTIER GATE。シングルプレイとマルチプレイの境界を取り払うパートナーシステムや,ターン制のコマンドバトルながらテンポの良さを損なわないという戦闘など,実際のプレイフィールもかなり気になるところだ。
また,話の中で五反田氏が語った「シングルプレイとマルチプレイの乖離」については,個人的には非常に興味を持った。確かにマルチプレイを前提とする作品の多くは,マルチプレイに優位性を持たせている場合がほとんどだ。
「開拓」をテーマとする本作が,“マルチプレイ前提のRPG”としてゲームジャンルでも新たな領域を切り開く作品になることを,心から期待したいと思う。
「FRONTIER GATE(フロンティアゲート)」公式サイト
- 関連タイトル:
FRONTIER GATE(フロンティアゲート)
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(C) Konami Digital Entertainment