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インテル,ソフトウェア開発者向に大規模イベントを開催。次世代Ultrabookは各種センサーを備え,Windows 8での利用が前提に
ソフトウェアに力を入れ,新たな付加価値を創造したい
これまでもIntelは,ソフトウェア開発者向けイベントを何度か開催しているが,基調講演に先立って登壇したインテルの吉田和正氏は,「今回が初めの開催になる」と強調していた。確かに,「Intel Software Innovation Forum」という名の付くイベントは今回が初めてで,これまで行われた同種の国内イベントと比べてもかなり規模が大きい印象ではある。
Apeland氏は,Intelがソフトウェアに投資する狙いを「素晴らしいユーザー体験を実現するためにはソフトウェアが最重要だからだ」と語る。ゲーム向け物理エンジンのミドルウェアで知られる「Havok」や,ソフトウェア開発の「Wind River」といった知名度が高い企業の買収に加え,オープンソースにも多額の投資を行なっているのはそういった考えがあるためだという。そして,「Intelがオープンソースに提供しているコードの量は,企業団体の中でナンバー1だ」とオープンソース界への貢献を強調した。
もしかすると,先日Linus Torvalds(リーナス・トーヴァルズ)氏に厳しい言葉を浴びせられたNVIDIAを意識してのことなのかもしれない……というのはさておき,実際のところは,ここまで右肩上がりの成長を続けてきたPC市場に,若干の陰りが出てきたためだろう。ARMベースのスマートフォンやタブレットが席巻し,PC業界に影響を与えていると囁かれているのは周知の事実である。
それに対抗するIntelの有力なデバイスは,言うまでもなく同社が猛烈にプッシュしているUltrabookであり,今回Apeland氏が推していたのは,「第2世代」になる次世代Ultrabookだ。
次世代Ultrabookでは,スマートフォンやタブレットなどで採用されている,加速度,ジャイロ,GPSなどといったセンサーを搭載しているのも特徴だとApeland氏は語っていた。今回のイベントでIntelは,これらセンサーの活用に向けた技術セッションを設けていたが,それだけソフトウェア開発者に向けてアピールしたいということなのだろう。
次世代のUltrabookは,ディスプレイにタッチパネルを備え,回転させることでタブレットのようにも利用できるのが特徴だ。スマートフォンなどと同様に加速度センサーやGPSなども備えるという |
次世代Ultrabookが備えるセンサー群。センサーそのものは現行のタブレットなどが備えるもなので新鮮味はなかったりもするが,PCで利用できるようになるのというのがトピックだ |
Windows 8が前提となる次世代Ultrabook
ただ,ここで注意が必要なのは,各種センサーの制御法が,スマートフォンやタブレットのそれとは異なることだ。Intelでは,センサー群をとりまとめる「Sensor Hub」というハードウェアを提供するとし,その概要をインテルの秋庭正之氏が紹介していたので,以下にまとめてみたい。
「Ultrabookのハードウェア概要」という題のセッションに登壇した秋庭氏いわく,各種センサーが接続されるSensor Hubには,「Metro」アプリケーションのAPIである「WinRT API」でアクセスする形になるだろうとのこと。「従来の『Win32 API』からも使えないことはないだろうが,ポータビリティ(移植性)を考えるとWinRT APIからアクセスすることになるだろう」と秋庭氏は語っていた。
WinRT APIには,センサーデータの取得や制御を行うAPIセットが標準で用意されているのに対し,Win32 APIには,そういったAPIセットが用意されていない。そのため,Win32 APIからセンサーを使うには,独自のソフトウェアスタックを利用するなどの必要があり,ソフトウェアやハードウェアごとに個別対応となってしまうわけだ。
そうなると,各種センサーを利用するようなゲームはほとんどがMetro向けということになる。登場してくるタイトルは,既存のタブレット向けゲームのようなものが中心になるのではなかろうか。
なお,秋庭氏は,「次世代Ultrabookは,国内メーカーも開発中の段階にあり,2013年に発売されるUltrabookにそれらのセンサー類が搭載される見込み」と述べていた。
その鍵を握るのが「Power Optimizer」という省電力機構になるとのことだが,Power Optimizerは,Windows 8ありきで機能するものなのだそうだ。
Power Optimizerは,CPUだけでなく,液晶ディスプレイや各種デバイスを制御して省電力化を実現する。Haswellのアイドルステートは「S0ix」と名付けられ,アイドル時の消費電力を「数十mWにまで低減する」(秋庭氏)とのことだが,これは,アイドルステートから復帰させる割り込みの制御によって実現しているという。
アイドルステートでは,定期的にOSからの割り込みが発生しており,その度にCPUが動作することになる。そこでS0ixでは,その割り込みをある程度まとめることで,CPUがアイドル状態から復帰する頻度を低減するのだそうだ。
さらに秋庭氏によると,「Windows 8では,定期的な割り込みの頻度を調節できるため,Windows 7で利用するよりもアイドルステート時に低消費電力となる」とのこと。また,秋庭氏は,HaswellとWindows 8とを組み合わせたときに,電力効率が最大になるとも述べていた。
各種センサーと省電力機能を備えた次世代Ultrabookでは,Windows 8の利用が前提になりそうなので,その点だけは覚えておくといいかもしれない。
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