連載
ドミニオンから振り返るアナログゲームの歴史。連載「徹底解説:ドミニオンのひみつ」,第3回は「東方祀爭録」開発陣へのインタビューを掲載
ボードゲームのドイツと,テレビゲームの日本
4Gamer:
ドイツの話が出たので,ちょっと脱線を承知でお聞きしたいんですが,ドイツでボードゲームが盛んだというのは,何か理由があるんでしょうか。
会田氏:
うーん,なんででしょうね……。もしかすると,冬が長いため家の中で遊ぶ文化が育ちやすい環境なのかもしれません。その中でボードゲーム文化が育まれたとか。
浅原氏:
ヨーロッパだと日曜日は店が開いてないので,ショッピングや遊びに出かけない,と聞きますね。
会田氏:
そこはドイツに限らず,イタリアとかでも一緒ですが。
ホビージャパン広報 津田氏:(以下,津田氏)
民族性もあると思いますよ。あくまで印象ですが。
4Gamer:
ということは,日本でTCGが盛んというのも,もしかすると民族性かも?
津田氏:
ヨーロッパでは,ドイツ人が一番日本人に近いと良くいわれますね。スペインとかイタリアのラテン民族とはまったく真逆で,男性は陽気というより寡黙,遊ぶときは家族でみんなで,というような。
会田氏:
日本でTCGが流行った理由ということなら,一番は「遊戯王」というマンガがあったからだと思いますけどね。エッセン(ドイツで年1回おこなわれる,大規模なアナログゲームショー)に行くと,ファミリーゲーム――これは日本だと「人生ゲーム」とかにあたるジャンルなんですが,けっこう難しそうなゲームでもファミリーゲームの括りで扱われています。「ドミニオン」も,割と家族で遊んでる家庭が多いんですよ。そのくらい,屋内で遊ぶゲームが盛んなんです。
浅原氏:
クニツィア(ドイツの有名アナログゲームデザイナー)のゲームにも,“子供の頭を鍛える”みたいなウリ文句が書いてありますね。
会田氏:
アナログゲーム文化はヨーロッパ全体で盛んなんですよ。その総本山がドイツという感じです。
4Gamer:
日本でアナログゲームがいまいち流行っていないのは,何故だとお考えですか?
浅原氏:
日本のことをいうなら,麻雀の存在が大きいと思います。4人集まって何かやろうという時に,日本だと「じゃあ麻雀でもするか」ってなっちゃう。それがヨーロッパだと,「じゃあボードゲームやるか」ってなるんです。
会田氏:
日本でも昔はもう少し盛んだったんですよ。例えば20年くらい前はバンダイさんが「パーティジョイ」というシリーズでボードゲームを沢山出していて……。
4Gamer:
パーティジョイ! 小学生の頃に沢山買って遊びましたよ。1つあたり1000円くらいなので,お小遣いでも買えたし,長く遊べるので重宝した記憶があります。
会田氏:
ですが,それもいつの間にかキャラクターを乗せるのが当たり前になってしまって。キャラ人気に頼らないゲームは,業界的に切り捨てられてしまった,というのはあるかもしれません。
4Gamer:
では日本におけるボードゲームの流れというのは,その頃に潰えてしまったということですか。
会田氏:
マーチャンダイズに乗った商品が主流になったことにプラスして,ちょうど同じ頃にファミコンを始めとするテレビゲーム文化がアナログゲームを端に追いやってしまった。ヨーロッパに比べ,日本でアナログゲームが発達しなかった理由は,こんなところではないかと思います。
4Gamer:
ヨーロッパでは,テレビゲームはそんなに支配的な強さを持ちえなかった?
会田氏:
影響はあるにはありましたが,日本に比べると,そのシェアはずっと少なかったと思います。
ドミニオンの余波とアナログゲームの現状
4Gamer:
では話を戻して……ドミニオン以後のアナログゲーム,つまりアナログゲームの現状についてもお聞きしたいと思います。
会田氏:
「ドミニオン」のシステムを真似た,いわゆるクローンゲームが多く出てきたというのが1つ。それから日本市場でいえば,アナログゲーム市場全体が一回り大きくなった感はありますね。ライト層が広がったというか。
4Gamer:
それはドミニオンでカードゲームの魅力に気づいた人がたくさんいた,ということでしょうか。
会田氏:
ええ,TCGから「ドミニオン」に流れて,面白いからほかにもこういうゲームがないのかと,ボードゲームにも目を向けてくれる人が増えました。おかげで弊社のボードゲームの売り上げも,押し上げられたと感じています。
4Gamer:
海外ではどうなんでしょうか?
会田氏:
海外では元々のボードゲームの市場が大きいので,「ドミニオン」でさらに大きくなった,ということはないですね。ただクローンゲームについては,海外でも出ています。
4Gamer:
「サンダーストーン」や「アセンション」などですね。
会田氏:
そうです。クローンゲームは日本とアメリカ産がほとんどで,「サンダーストーン」「アセンション」は,アークライトさんから日本語版が出ています。それからアメリカでは,「ロード・オブ・ザ・リングス」のキャラクターを乗せた「The Lord of The Rings Living Card Game」というのもあって,それがすごく売れてますね。日本産では商業ベースで6〜7種類ですが,アメリカだと点数的に2桁は出ていると思いますよ。
[コラム]「ドミニオン」の派生ゲーム達
ドミニオンは基本ルールが単純なため,この基本システムにさらに追加ルールを加えるなどしたクローンゲームが多く作られ,発売されている。それらの中から代表的なものを紹介しておこう。興味のあるタイトルがあったら,これらから始めてみるのもいいかもしれない。
※なお「東方祀爭録」はルールとカード内容が「ドミニオン」と同一の,公式の製品である。
「デックビルド機動戦士ガンダム」
ガンダムの一年戦争を舞台としたカードゲーム。有名キャラクターが描かれた「パートナーカード」を1人1枚ずつ購入でき,場に配置しておけばずっと効果を発揮し続ける。
カード388枚入り
価格:4980円(税込・限定生産品のため現在は入手不可)
発売元:バンダイ
「デックビルド機動戦士ガンダム」公式サイト
「たんとくおーれ」
屋敷の主人となってメイドを雇用するというコンセプトになっており,すべてメイドのイラストが描かれている。ルールの特徴としては,特定プレイヤーを攻撃できる「悪癖」「病気」というカードが存在する。
第2弾「増築開始♪」,第三弾「ドキドキ バケーション」も展開中。
カード280枚入り
価格:3990円(税込)
発売元:アークライト
「たんとくおーれ」公式サイト →Amazon
「戦国大名カードゲーム くにとりっ!」
日本ボードゲーム界の至宝,鈴木銀一郎氏がデザインを手がけている。女性武将が描かれたカードを用いて,ほかのプレイヤーと合戦をおこなって勝利点を獲得できるのが特徴。
第二弾「天下は萌えているか」,「外伝 決戦萌ヶ原」も展開中。(※画像は第二弾のものです)
カード270枚入り
価格:3990円(税込)
発売元:アークライト
「くにとりっ!」公式サイト →Amazon
「ばるば★ろっさ」
ドイツの軍団長として部隊を整えながらロシアに進軍し,最終的にモスクワを目指す架空二次大戦もの。カードを買って攻撃力を集め,都市を落として勝利点を得る仕組み。
第2弾「える★あらめいん」,イラスト違いの限定版「BARBAROSSA」「EL ALAMEIN」も展開中。
カード305枚入り
価格:3990円(税込)
発売元:アークライト
「ばるば★ろっさ」公式サイト →Amazon
「リトルバスターズ!エクスタシー どたばたランキングバトル」
「リトルバスターズ!」のキャラクターを使ってバトルをおこない,ほかのプレイヤーと順位を競いあう。毎回キャラクターがランダムな面白武器を装備して攻撃力が変化するのが特徴。
カード300枚入り
価格:4200円(税込)
発売元:アークライト
「リトルバスターズ!エクスタシー どたばたランキングバトル」公式サイト →Amazon
「サンダーストーン完全日本語版」
ファンタジーRPGの雰囲気を堪能できるアメリカ製のデッキ構築型ゲーム。「英雄」「武器」「アイテム」などのカードを買ってダンジョンに入り,伝説の「サンダーストーン」を探す。
拡張セット「精霊獣の怒り」も展開中。
カード530枚入り
価格:4410円(税込)
発売元:アークライト
「サンダーストーン完全日本語版」公式サイト →Amazon
「アセンション完全日本語版」
財宝と武力の2種類のリソースがあり,財宝カードを使って場にあるカードを買うほか,手札のカードの武力を使って場に出ているモンスターと戦闘して勝利点を得る。展開の早さが売り。
価格:4410円(税込)
発売元:アークライト
「アセンション完全日本語版」公式サイト →Amazon
続編「東方妖々夢編」も発売決定。広がり続ける「ドミニオン」ワールド
4Gamer:
難波氏:
「東方祀爭録」については,紅魔郷編が好評だったことを受け,先日エキスパンションである「東方祀爭録 〜東方妖々夢編〜」を発表させてもらいました。プロモーションなどはこれからですが,月刊ゲームジャパン8月号に第1報を掲載していますので,ぜひご覧いただきたいと思います。
4Gamer:
東方妖々夢編には「礼拝堂」は出てくるんですか?
難波氏:
入る…かも……?
4Gamer:
「礼拝堂」がどのキャラクターになるのか,楽しみですね。ちなみに25種類のサプライは,また「ドミニオン」のカードから選ばれる形でしょうか。本家だとポーションやトークンなど,いろいろと拡張要素が入ってきていますが。
難波氏:
第1弾では意図的にそういうのを排除しましたが,今後はあり得る……かもしれない。
4Gamer:
紅魔郷編と東方妖々夢編は,混ぜて遊べるんでしょうか。
難波氏:
はい,東方妖々夢編単体でも遊べますし,混ぜて遊ぶこともできます。エキスパンションが増えていくと,東方の世界が広がっていくっていうのがコンセプトの1つですので。そこは期待していただければと思います。
4Gamer:
紅魔館が6点の勝利点カード,とかはそのまま?
難波氏:
そこは作品に合わせて変わる予定です。紅魔館のかわりに別の建物を建てる感じですね。
浅原氏:
名前は違うけど同じものなので,混ぜて遊ぶ時はどちらかを選んで使えばいいです。あと攻略本の新しいのも出す予定ですので。プロモカードもついてる……かもしれない。「The Invitation to SHISOUROKU」もよろしくお願いします。ドミニオンの7割くらいまではカバーしてるので,結構いい本です(笑)。あと3割は自分で突き止めてください。ゲームの面白さは自分で見つけるものなので。
「The Invitation to SHISOROKU」
現在発売中の「東方祀爭録」の攻略本。11枚セットのプロモーションカード,「稗田阿求」が付属している。
東方キャラ達によるカード解説や対戦リプレイでゲームの基礎を学べるほか,各カードのイラストを現物よりも大きなサイズで鑑賞できる,ビジュアルブックとしての要素もある。
価格:1500円(税込)
ホビージャパンオンラインショップ「The Invitation to SHISOROKU」
4Gamer:
そういえば,ニトロプラス編も出るそうですね。
難波氏:
そうですね。「ドミニオン」とキャラクターコンテンツを組み合わせたものとして,「東方祀爭録」とは別に,新シリーズ「ドミニオン・キャラクターズ」第1弾として展開する予定です。まだ名称は決まっていませんが,仮に「ニトロ・ドミニオン(仮)」と呼んでいます。時期にはまだ未定ですが,「東方妖々夢編」の前に「ニトロ・ドミニオン(仮)」が発売の予定です。
マスコットガール「すーぱーそに子」(「ソニコミ」より,イラスト:オガタガクオ) |
秘儀(アルカヌム)「アンナ」(「月光のカルネヴァーレ」より,イラスト:大崎シンヤ) |
特技・銅銭積み「湊斗景明」(「装甲悪鬼村正邪念編」より,イラスト:なまにくATK) |
4Gamer:
「ニトロ・ドミニオン(仮)」が先なんですね。
難波氏:
はい。「ニトロ・ドミニオン(仮)」が出ても,「東方祀爭録」が打ち切りになるわけではないのでご安心を。「祀爭録」は「祀爭録」のラインで続いていきますので。「ニトロ・ドミニオン(仮)」は「ニトロ・ドミニオン(仮)」で続きがある……かもしれない。
「ドミニオン・キャラクターズ」第2弾も,あるかもしれない?
難波氏:
それはもう,あるかも? としか言えないですね(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。それでは今回の連載を読んで,「東方祀爭録」や「ドミニオン」をやってみようかな? と思った人に向け,メッセージをお願いします。
難波氏:
もともとの「ドミニオン」からして,実際にやってみないと面白さが分からないゲームではありますが,「東方祀爭録」はプレイしてもらえれば東方ファンなら絶対に楽しんでいただけるゲームに仕上がっていると思います。ぜひお友達を誘って,皆で楽しんでみてください。それから「ニトロ・ドミニオン(仮)」についても,「コミックマーケット80」「キャラホビ2011 C3×HOBBY」でプロモカードを配布予定です。そちらもお楽しみに。
4Gamer:
お話を聞いていても,相当こだわって作られているのが伝わってきました。
難波氏:
遊んで楽しい,見て楽しいカードゲームです。これを機会にぜひ!
本家「ドミニオン」のほうも,「収穫祭」という最新のエキスパンションが8月末に発売になります。それから「ドミニオン」の世界選手権が,ドイツで今年初めて開催されるんですが,それに出場する日本代表を決めるための大会を9月10日〜11日におこなう予定です。
4Gamer:
それでは,どちらも引き続いて楽しめそうということですね。本日はありがとうございました。
ボードゲームに今までなじみがなかった層をも巻き込んで,ますます発展を続けている「ドミニオン」。「東方祀爭録 〜東方妖々夢編〜」や「ニトロ・ドミニオン(仮)」の発売も決り,今後も多くのプレイヤーに愛されるタイトルとなることは間違いないだろう。
その面白さは,なんといっても実際に遊んで確かめるのが一番手っとり早い。この連載を読んで興味を持った人は,どのシリーズでもいいので,ぜひ実際に手にとって,その奥深さや中毒性を実感してみてほしい。テレビゲームではなかなか体験できない,アナログゲームならではの面白さを,きっと堪能できるはずだ。
「東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜」
全種類書きおろしカード500枚,ストレージボックス入り
価格:5500円(税込)
お買い求めは「こちら」から
ホビージャパンオンラインショップ「東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜」
「東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜」公式サイト
「ドミニオン」公式サイト
(C)Rio Grande Games (C)上海アリス幻樂団
(C)HobbyJAPAN Co., Ltd. All Rights Reserved.
Lost Worlds is a trademark of Flying Buffalo Inc. and is used with permission.
(C)Lookout Games 2007/2009
(C)2006-2011 Nitroplus co.,ltd. All rights reserved.
(C)2007-2011 Nitroplus co.,ltd. All rights reserved.
(C)2010-2011 Nitroplus co.,ltd. All rights reserved.
(C)2009-2011 5pb./Nitroplus
- 関連タイトル:
東方祀爭録 〜東方紅魔郷編〜
- 関連タイトル:
ドミニオン
- この記事のURL:
キーワード
(C)Rio Grande Games (C)上海アリス幻樂団
(C) 2009 HobbyJapan CO.,Ltd All Rights Reserved.