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GWのビッグサイトに最新アナログゲームが集結。著名デザイナーのトークステージなどで盛り上がった「ゲームマーケット2015春」レポート
改めて概要を紹介しておくと,ゲームマーケットは毎年東京で春と秋に,大阪では春のみに開催されているアナログゲーム即売会だ。気になったゲームはその場で試遊と購入ができるということで,日本のみならず海外からもバイヤーが訪れるなど,ボードゲームファンなら見逃せないイベントとなっている。さらに今回は,著名クリエイターによるトークステージなどのオフィシャルイベントも充実しており,見どころ満載の1日となった。
ゴールデンウィーク期間と重なったこともあり,いつも以上の盛り上がりとなった会場の様子を,豊富な写真と共に紹介していこう。
「ゲームマーケット」公式サイト
「世界の七不思議」「HANABI」のアントワン・ボザが来場。公開インタビューとサイン会を開催
この来場は,今回からスタートしたステージ企画の一環として行われたもの。ボザ氏は会場に用意されたステージに登壇し,公開インタビューという形の質疑応答が行われたのだ。親日家として知られるボザ氏は,これまで何度も日本へ観光旅行に来ているそうだが,ゲームマーケットに参加するのは今回が初めてとのことで,来日の良い口実になったと笑いながら話していた。
氏への質問には「日本の魅力は?」というものがあったが,それについては「伝統的な文化と最新の技術が一緒に存在するギャップがたまらない」との回答だった。とくに氏が生まれ育ったフランスは,ヨーロッパの中でも日本の漫画やアニメ,ゲームなどがさかんに輸入されている国で,氏も幼い頃からこういったカルチャーに影響を受けて育ったそうだ。ステージ終了後,とくに強い影響を受けた作品はと聞いてみたところ,「多くの本,漫画,映像から影響を受け,それらすべてが今の僕を形作っているので,どれか一つを選ぶことはできない」とのことだった。
ステージイベントの終了後も,ボザ氏は共に来日したLudovic Maublanc(ルドヴィック・モーブラン)氏※と一緒にサイン会を開催し,多くのファンとの交流を楽しんでいたようだった。
※「キャッシュ&ガンズ」「SOSタイタニック」などで知られるフランスのゲームデザイナー。「ランペイジ〜怪獣征服」では,ボザ氏との共同デザインも手がけている。
新企画「2種カードゲー」が続々登場
以前にも紹介した「500円ゲームズ」や「ポストカードゲーム」など,ゲームデザイナー達の発案によって,さまざまなゲーム企画が行われるゲームマーケットだが,今回も例外ではない。
今回の企画はズバリ「2種類のカードしか使わないゲーム」(以下,2種カードゲー)。たった2種類のカードで果たしてゲームが成立するのか? と思ってしまうところだが,ステッパーズ・ステップの「ゴリティア」など,実はそうしたタイトルの先例は少なくない。企画に賛同したのは19サークルで,工夫を凝らした22作品が生み出された。
TCG解禁でブシロードやWizards of the Coastが参戦。テーブルトークRPGが体験できるJGC出張版ブースも
これまで会場の規模などの問題からトレーディングカードゲーム(以下,TCG)系の企業の出展が制限されていたゲームマーケット。だが今回から晴れて解禁となり,TCG大手のブシロードと,Wizards of the Coastの「マジック・ザ・ギャザリング」がブースを構えていた。
ブシロードブースでは,同社タイトルのプレイ卓が用意される共に,次世代のTCG開発スタッフを探すリクルーティング窓口が開設されていたのが印象的だ。担当者に話をうかがってみると,「TCG開発に欠かせない若く柔軟な才能を見出したい」と考えての試みといい,実際に開場直後から志望者が次々と訪れたとのこと。
また,今回はTCGだけでなくテーブルトークRPG(以下,TRPG)関連の出展も充実していた。主にプレイ時間の関係で,なかなか会場での試遊が難しいTRPGジャンルだが,今回は日本最大のTRPGイベント「Japan Game Convention」(以下,JGC)が出張版としてブースを構えていたのだ。
用意されていた体験卓は6卓で,「クトゥルフ神話TRPG」「アリアンロッドRPG 2E」「グランクレストRPG」「ソード・ワールド2.0」「トーキョーN◎VA THE AXLERATION」「キルデスビジネス」「迷宮キングダム」といったタイトルが試遊できた。いずれも1時間ほどで遊べるシステムになっていて,どの卓も大入り。さらに多くの見学者がセッションを見守っているような状況となっていた。
なお本家JGCは今年で20周年を迎え,今年は新横浜プリンスホテルにて,9月4日〜6日の日程で開催される予定だ。参加申し込みも6月8日からスタートするそうなので,興味のある人は以下のリンクからJGCの公式サイトをチェックしてみよう。
「Japan Game Convention」(JGC)公式サイト
ゲームマーケット事務局の刈谷圭司氏と山上新介氏によると,とくにTRPGはボードゲームと非常に近いジャンルでありながら,時間が限られるゲームマーケットとは相性が良くない部分があった(実際,先のJGCは宿泊が前提となっている)。しかし,ニコニコ動画のリプレイ動画などでTRPGへの関心が高まっている中にあって,少しでも実際のTRPGに触れることができる機会を作りたかったとのこと。両氏の感触では,今回の3つの試みはそれぞれに手応えを感じているそうなので,次回以降もより充実した運営企画に期待したい。
次回の「ゲームマーケット2015秋」は,会場を今回の東京ビッグサイト西2ホールから東4ホールに移し,11月22日に開催される。これまで順調に拡大を続けてきたゲームマーケットだが,来場者数は今回で8500人を超え,次回は恐らく1万人の大台に乗るだろうとのこと。また中高生の来場者が増えつつあるなど,来場者の属性にも変化が起きつつあるそうだ(ちなみに中高生は入場無料)。
タイミング的にも,ドイツで開催される世界最大級のアナログゲームイベント「Spiel」から1か月後ということで,さらなる盛り上がりが期待できるそう。もしかすると,Spielで発表されたばかりの新作が,いち早く遊べる場になるかもしれないので,この記事で興味を持った読者は,ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
まだまだ元気な人狼系ゲーム。TSUTTE!の「マスターレス人狼」は,役職多めの短時間人狼。人狼を1名にすることで,マスターなしでのプレイを可能にした。第三勢力「神様」は昼間に処刑されれば勝ちとなる変わり種役職だ |
「サンゴク」のリトルフューチャーは机で遊ぶ人狼ゲーム「ワー! ワーウルフ」を発売。タイル式のマップとキャラクターカードを使い,人狼をボードゲーム風に楽しめる |
人狼系ゲームにこだわる人狼ゲーム研究会は,レギュレーション「人狼ゲームが少し楽しくなる本」を発売 |
「カタンの開拓者」を展開するジーピーは,拡張セット「カタン 商人と蛮族版」を先行発売。4つの選択ルールと5つのシナリオが収録されている |
ニューゲームズオーダーは,「枯山水」の当日発売分150個を用意したが,開場直後から長蛇の列が。たちまち完売してしまったそうだ |
ばねゲー部(仮)の「まいごねこ」は,猫好きのためのボードゲーム。手作りのもふもふコマがかわいい |
オインクゲームズの新作「Rights」は著作権をテーマにしたカードゲーム。ほかのプレイヤーから使用料を徴収すべく,ファッションデザイナー達が模様の権利を奪い合う |
イエローサブマリンブースで販売されていた「クトゥルフダイス」日本語版。横にあるのは販促用のクトゥルフお面だ |
Wisteriaの「俺の街 〜Ore City〜」は,カードを使った都市開発ゲーム。1度に1色のカードでしか開発できないので,開発と決算のタイミングが鍵となる |
ゲームデザイナーの藤浪智之氏とイラストレーターの佐々木亮氏のコンビによるコトノハゲームズは,新作ゲームブック「アイドル★スター 失われた歌を求めて」を発売 |
もしもスイッチの新作「桜」は,花びら型のカードで散る桜を再現したカードゲーム。カードを使い切り,さきに桜を散らせた人が勝ちとなる |
HOY GAMESの「ドラゴン」は,最強のドラゴンを育てて戦わせるカードゲーム。2枚のカードを組み合わせて,さまざまなドラゴンが生み出せる |
まどりやの「落山水」は,山水模様のカードを落として,線をつなげていくアクションゲーム。巷で話題の「枯山水」+「2種カードゲー企画」の奇跡のコラボ |
はんそできーの「ユリトバラ」は,同性のカップルを作って遊ぶカードゲーム。百合カードと薔薇カードがそれぞれ9枚用意されているが,混ぜて使うのはNGとのことだ |
バンブーファームの新作「廃管工 〜クレイジープライマー〜」。水道管ゲームにUNO風の工夫を加えたことで,プレイしやすくなっている |
立川のゲームカフェ・ペンタミローネの制作による「にょきにょきウドラ」。立川の公認ゆるキャラになりそこねたウドラが主人公の街開発ボードゲームだ |
Manifest Destinyの「マイ・フェア・プリンセス」は,王女様育成をテーマにしたボードゲーム。アルバイトや武者修行で能力値を上昇させていくあたり,かなりプリンセスメーカーちっく |
JHラボの「真空管ドールコレクション」。新ブースターや新スターターデッキ,プレイマットなどが販売されていた |
KIKACOOLの「逃げる魂・眠る鬼」は,巻物型のボードが面白いすごろく風ゲーム。シンプルながら繰り返し遊べるゲームとのこと |
堀場工房の「猫と缶詰とお皿」。その名のとおり,猫と缶詰とお皿のミニチュアを積み上げて得点を競うアクションゲーム。積み過ぎて崩してしまうとペナルティとなる |
吉々庵の「Quadra」は,変形チェス風の対戦ボードゲーム。カードで手の予定を組みつつ,相手のチップが積まれたタワーを攻撃し,先に破壊した側の勝ちとなる |
しらたまゲームズの「しらたまコレクション」は,デザイナーの愛犬をゲーム化(?)した対戦カードゲーム。プレイフィールは“トリックテイキング系のドラフト風味あえ”とのこと |
三賢者屋の「にゃんにゃんにゃん」は,頭/胴/尻尾に分かれたカードから,同じ柄を3枚集めて保護する猫探しゲーム |
おうち遊園地舎の「ママのかんびょう!」は,風邪を引いたママを看病するという子供向けのすごろくゲーム。コンポーネントが可愛らしい |
かめのうきしまの「シュレッダーは社内に一つだけ」は,社内で成り上がるために極秘文書を処理したり,他人に濡れ衣を着せたりするブラックユーモアあふれるカードゲーム |
PhantomLabの新作「押して参る」は,並べたカードを場外に押出すことで得点が得られるという対戦カードゲーム。信玄と謙信のように,歴史上縁のある人物の組み合わせなら,さらに高得点が得られる |
PURPURINの「ニンニクと十字架」は,吸血鬼が自らの弱点(ニンニクや十字架など)に挑むチキンレース風のカードゲーム。吸血鬼の顔を模した専用のカード立てが面白い |
篠原遊戯重工の新作「ボードライナー」は,さまざまなコマを並べて線を描いていく,アブストラクト系の対戦パズルゲーム。相手の動きを妨害しながら,自分のコマを延ばしていく |
Full House Gamesの「Blowin'in the Wind〜風に吹かれて〜」は,木製トレイを帆船に見立て,海賊同士の海戦を行う対戦ゲーム。風向きをうまく読んで攻撃するのがポイント |
同人アナログゲーム情報誌「Game Jamboree」。フルカラー50Pで,新作ゲーム紹介やインタビュー,漫画まで揃った本格的な内容だ。次号はゲームマーケット秋に合わせて刊行予定とのこと |
リットーミュージックで先行販売されていた「賭けずに楽しむ日本の賭博ゲーム」(著:伊藤拓馬氏)。おいちょかぶや手本引きなど,日本の伝統賭博ゲームに関する入門書となっている |
スモール出版は,ボードゲーム初級者向けのレビュー本「ボードゲームって本当におもしろいの? 〜ボードゲーム クロスレビュー〜」を販売 |
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