インタビュー
[TGS 2014]東京ゲームショウ2014でついに日本でも試遊ができるようになった「World of Warships」。戦艦「長門」が大活躍するゲームの内容をWargaming.netに聞いた
ここでは,二度めの東京ゲームショウ出展にして,すでに大きな存在感を発揮するウォーゲーミングジャパンブースで行われた「World of Warships」のインタビューの模様をお伝えしよう。
18日に掲載した記事でもお伝えしたように,アニメ「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」とのコラボレーションが発表され,話題沸騰中のマルチプレイ海戦アクション「World of Warships」だが,6月にロサンゼルスで開催されたE3 2014でメディア向けに,そして8月にドイツで行われたgamescom 2014では一般向けの試遊まで行われ,着々と完成に近づいている雰囲気。
というわけで,そんな「World of Warships」の現状などを聞いてみた。インタビューの相手は,毎度おなじみという感じの同社CEO,Victor Kislyi(ビクター・キスリー)氏と,「World of Warships」のクオリティアシュアランスを担当するTatyana Sagirova(タチアナ・サギィロワ)氏のお二人だ。
Tatyana Sagirova氏 |
Victor Kislyi氏 |
まず,今回の試遊バージョンについて質問したところ,これは「TGSスペシャルバージョン」とのことで,基本的にgamescom 2014で使われたものと同じ,コンピュータ相手のPvEになっている(製品版ではPvP)が,テキストが日本語化されるなど,細かい部分が作り直されている。ミッションについても,gamescomでは「空母を守るか,敵艦隊を殲滅する」というものだったが,今回は「傷ついた戦艦大和が安全地帯に戻れるまで敵艦隊の攻撃をしのぐか,敵艦隊を殲滅する」という内容に変更されている。
ちなみに筆者も試遊したのだが,ドイツで見たときよりも,さらに細かいバランス調整が入っているような気がした(試遊時間はそれほど長くなかったので,あくまで,そんな気がしたという程度)。ただ,表示は日本語ながら,例えば日本の偵察機のパイロットが英語で艦隊とやりとりするなど,ちょっと妙な感じがするところもあった。しかし,Kislyi氏によれば,当然それは日本語化される予定であるとのこと。
現在は,ゲームの基本的な部分の制作に集中しているため,音声のような部分については,どうしても後回しになってしまうという。
Kislyi氏は,「World of Warships」の現状について,ようやく,最適なバランスが見つかりつつあるとした。実際の軍艦が多数出てくる本作。戦車に比べて各艦の個性が強い海の戦いであるため,バランス調整には細心の注意が必要になってくるが,火力,スピードなど,各要素のバランスが理想に近づいており,これによって,1マッチを10分程度に抑えることが可能になったとのこと。
現在は,約5000人のテスターによるαテストが続けられているが,テスターからのレスポンスは良好で,評価はとても高いという。このため,2014年冬にはさらに一般からの募集を行い,クローズドなテストを実施する予定だ。ただし,正式サービス開始の日時については発表できないというスタンスは,以前と同じ。じらすなあ。
さて,ブースの2階にしつらえられたインタビュールームでは,ディスプレイに「World of Warships」のゲーム画面が映し出されていた。いつもは「撮影厳禁」と強く釘を刺されるのだが,今回は撮影オッケーとのこと……ただし,ドックのシーンだけだったが。というわけで,以下に掲載するのがそのスクリーンショットの直撮りフォトだ。
テックツリーに写っているのは駆逐艦と戦艦で,ここに空母と巡洋艦が加えられる予定だが,例えば「陽炎」がTier 7,「吹雪」がTier 8,また戦艦では「金剛」がTier 5で,「扶桑」「長門」「天城」が順にTier 6〜8と続き,Tier 10がやっぱりかという感じの「大和」であることなどが確認できる。なんか,ワクワクしますね。
さらに,各艦のディテールなども撮影したが,軽巡洋艦「北上」にずらりとならんだ魚雷発射管や,戦艦「長門」のディテールなどが確認できるはずだ。
サンクトペテルブルクで「World of Warships」の開発に携わるSagirova氏の仕事は,こうした緻密な軍艦の3Dモデルを制作することだ。詳しくは,本日掲載した記事を参照してほしいが,上がってきたモデルを精査して,オッケーを出すことが主な業務になる。とはいえ,とくに日本の艦船の場合,資料が十分に残っていない場合も多く,不明点を造船エンジニアの経験を持つスタッフや,歴史コンサルタントと協力して再現に務めることもあるという。途中まで制作したら,新資料が発見され,そっくり作り直したということもあり,なかなか苦労の多い仕事のようだ。なんちゅうか,職人ですな。
ちなみに,北上の制作には約半年かかっているが,ここに掲載した写真はまだ完成形ではないらしい。
gamescom 2014のレポートでも書いたように,現段階ではこのグラフィックスの表示にハイエンドPCが必要だが,リリースのときには設定を変更できるようにして,ローエンドのPCでもゲームがプレイできるようになるとのこと。ただし,ミニマムスペックなどについては,現段階では言えないという。前と同じことを書いて恐縮だが,このものすごいグラフィックスでゲームを堪能するために,PCを買い換えるという選択もありじゃないかと思う。
さて,軍艦といえば「改修型」が付きものだ。同じ船でも時期によって細かい改修が行われており,それを追いかけるのも軍艦マニアの楽しみの一つだが,「World of Warships」では,さまざまなパーツを取り替えることによって,そうした改修型を再現できるように考慮されている。
例えば,アメリカの重巡洋艦「ペンサコーラ」は初期には2連装砲を装備していたが,これを改修型の3連装砲にすることができるという。また,パーツ交換によって同型艦への変更も可能になっており,例えば「金剛」を「比叡」や「榛名」「霧島」にすることも可能だ。
ただ,これによってバランス調整がさらに難しいものになったのは,仕方のないことだとSagirova氏は語っていた。
空母についても新情報があり,使用可能な航空機は「戦闘機」「急降下爆撃機」,そして「雷撃機」の三種類とのこと。いうまでもなく,戦闘機の使用目的は制空で,急降下爆撃機の任務はピンポイントの攻撃,そして雷撃機は魚雷による敵艦の沈没を目的とする。
第二次世界大戦は,それまでの大艦巨砲主義から航空機へと海軍の戦術がシフトした戦争だ。ということは,やはり空母が最強ですかと質問したところ,Kislyi氏はそうかもしれないとしつつも,例えば艦載機は,飛行ルートと目標をプレイヤーが指示する必要があり,それなりのスキルが必要になる。さらに,空母は自分自身を守る武器を持たず,鈍足であり,肉迫した駆逐艦の魚雷攻撃で沈んでしまう場合もある。という感じで,やはりうまいことバランスがとられているという。
艦船の対空砲は主砲と異なり,航空機が接近すると自動的に反撃を行うシステムになっているが,わりと命中率が高く,敵機を簡単に撃墜する,というのが試遊を経験した筆者の印象でもあるので,空母はむしろトリッキーな艦種といえそうだ。というか,なんでもいいから早く空母で戦ってみたい。
ちなみに,戦艦などカタパルトのある船は偵察機を飛ばすことが可能で,偵察機が敵艦を発見すると,目視はできないものの,戦術ミニマップに艦影が表示される仕組みになっていた。
さて,ここまでできているのなら,もう正式サービスを始めちゃってもいいのではないかという気分になるが,Kislyi氏はまだまだ調整が必要だという。どの段階でリリースに踏み切るのかと聞いたところ,テスターから得られるさまざまな統計数値が,理想値に近づくことが重要だという。統計数値は,例えばプレイヤーが一日に何時間プレイするのか,一日のうちのどの時間帯にプレイするのかなど,かなり細かいものになっているようだ。
そしてその理想値は,「World of Tanks」など,同社の成功したタイトルから得られるものだという。あまり人が集まっていないタイトルとは,やはりさまざまな数値が異なるそうで,少しでもその理想に近づけるのが現在の課題だ。うーむ,これはなかなか大変そう。
最後にKislyi氏は,昨年日本にオフィスを開設したのは,営業上の正しい判断だったと述べた。Wargamingにとっての日本は最も急速に成長した市場であり,6月に配信を開始したiOS版「World of Tanks Blitz」の登録アカウント数はアメリカを抜き,ロシアに次ぐ第2位になっているという。すでにAndroid版「World of Tanks Blitz」も2014年内のリリースが予定されており,日本市場にはさらに期待しているとのこと。
氏は,いつも時間がかかって申し訳ないが,Free-to-Playのオンラインゲームは長く遊べることが前提になるだけに,開発中のタイトルをなるべく完璧に近づけるべく努力している。日本の皆さんには,TGS 2014というこの機会にWargamingのブースで我々のタイトルを体験してほしいと話を締めくくった。話題の「World of Warships」をその目で見られるいい機会なので,チャンスがあればぜひどうぞ。続報にも期待したい。
「World of Warships」公式サイト
4Gamer「東京ゲームショウ2014」特設サイト
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