インタビュー
コンセプトはTRPGのようなロールプレイを楽しむためのブラウザSRPG。「英雄クロニクル」運営・開発チームにインタビュー
公式サイトには,とにかく“プレイヤーの好きなようにキャラクターを作って遊べる”ということばかりが書かれており,具体的にどのようなゲームなのかは,正直なところとても分かりにくいのだ。
そこで英雄クロニクルがいったいどんなゲームなのか,今後どのような展開をしていくのか,英雄クロニクルの運営・開発スタッフに話を聞いてみた。インタビューに応じてくれたのは,以下の4名だ。
- プロデューサー オッド氏
- ディレクター 稲川征史氏
- 企画 麓川智之氏
- 運営担当 横山和弘氏
コンセプトはテーブルトークRPGのように遊べるオンラインSRPG
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは皆さんが,英雄クロニクルの運営・開発でどのような役割を担っているのか教えてください。
稲川征史氏(以下,稲川氏):
ディレクション兼企画を担当しています。私はもともとデザイナーとしてサクセスに入社したのですが,システム周りにも口を出すタイプだったので,英雄クロニクルではディレクターをやっています。
麓川智之氏(以下,麓川氏)
主に企画を担当しています。英雄クロニクルには開発がスタートした当初から関わっていて,最初はデザイン周りを,最近ではシナリオやテキスト周りの作業を中心にやっています。サクセスのタイトルでは,ほかにも伝奇アドベンチャーゲームの企画やシナリオを手がけています。
私はプロデューサーで,英雄クロニクルの原案を考えました。もともとはコンシューマゲームの開発を手がけていて,7〜8年前からオンラインゲームに携わるようになりました。サクセスでは,ブラウザゲーム「メタルサーガ・ニューフロンティア」に,立ち上げから中盤くらいまでプロデューサーとして関わっています。
横山和弘氏(以下,横山氏):
運営担当として,この3人が作ったゲームをプレイヤーの皆さんに届けるべく,環境を整えています。具体的には各種告知やユーザーサポート,そしてインゲームイベントの企画などを行っています。
4Gamer:
英雄クロニクルは,最近増えてきたシミュレーションRPGというジャンルでありながら,戦闘システム云々……といった部分をまったく前面に出していない珍しいタイトルです。まずはじめに,読者に向けて本作がどういったゲームなのか,簡単にお話いただけますか?
オッド氏:
はい。一言で述べてしまうと,「プレイヤーが考えた理想のキャラクターを可能な限り再現できる」ことが最大のウリとなるシミュレーションRPGです。キャラクターの外見やゲーム中のカットインをチョイス,もしくは自分で描いたイラストに変更して,特殊能力や装備の名前も自分好みに変えて,キャラクターの背景設定も自由に記入して,といった具合に,とにかく自分の思い描いたキャラクターを作り出せることに注力しています。
4Gamer:
よく言えばキャラクターメイクの自由度が高いということになりますが,ある意味,かなりマニアックですね。
ブラウザゲームというと,「手軽に,かつ簡単に遊べます!」という方向性が主流です。一方で英雄クロニクルはその流れと正反対といいますか,手の込んだキャラメイクはゲームスタート時の壁になりかねないと思うのですが。
オッド氏:
それはそうかもしれません。ただ,語弊はありますが万人向けのライトなゲームは,ほかなメーカーのいろいろな方が作っているので,あえて私達が同じようなタイトルを作る必要はないだろうと思っています。
そして何よりも,私にとってゲームの原点はテーブルトークRPGなので,キャラメイクにひたすらこだわれるゲームを遊びたかったのです。それを実現できるゲームをブラウザで作ろうとしたところ,ソーシャルゲーム寄りではなく,マニアックな内容になってしまいました。
4Gamer:
なるほど。たしかにキャラメイクの細かさはテーブルトークRPGのような雰囲気がありますね。
オッド氏:
テーブルトークRPGやプレイバイメールの多人数参加型ゲームで遊んでいた人は,昔自分で作ったキャラクターのイメージを持っていますよね。そういう人は,例えばフリーでユニットを雇えるタイプのシミュレーションRPGをプレイする場合,そのユニットに自分のキャラの名前を付けると思うのです。少なくとも,私はそうしています。
しかしその遊び方では,自分のイメージしているキャラクターとゲーム内のユニットとで,思い描く能力が違っていたり,顔や性格に違和感があったりと,何かしらのギャップが生じてしまいます。
4Gamer:
ええ,とてもよく分かります。でも自分のキャラは登場させたいので,最終的にどこかしらで妥協して「何となく似ているキャラ」を作ってしまいますよね。
オッド氏:
そうなんですよ。それなら,全部自分の理想どおりのキャラを使えるゲームを作ってしまおうと考えたんです。それが英雄クロニクルの企画をスタートさせた一番の原動力でした。
企画始動にあたって,稲川と麓川もテーブルトークRPG畑の人間だったので,私が「一緒にやろうぜ」と二人を抱き込みました。
4Gamer:
つまりは,サクセスのテーブルトークRPG好きが集まって作っているタイトル,ということになるのでしょうか。
麓川氏:
そのとおりです。そうやって始まった企画なので,英雄クロニクルは,テーブルトークRPGで昔私達がやっていたような,キャラクターのロールプレイを楽しめるゲームを目指して作られています。
オッド氏:
ジャンルがシミュレーションRPGになっているのも,キャラクターを重視したかったからです。これをもし通常のオンラインRPGのような作りにしてしまうと,せっかく皆さんが作ってくれた,たくさんのキャラクターがいるのに,主力の6人以外は酒場に置きっぱなしというような状況になりかねません。シミュレーションRPGなら一度に多くのキャラクターが登場する群像劇に合っているので,ジャンルはこれで決まりだな,と。
4Gamer:
実際,英雄クロニクルのプレイヤーは,テーブルトークRPG好きな方が多いのでしょうか?
オッド氏:
大きく分けて3つの層に分かれます。まずはやはり,テーブルトークRPGが好きで,もともとロールプレイに理解があって,それを楽しめる人達です。
次にシミュレーションRPGが好きな人達。キャラの能力の組み合わせで戦略の幅を広げられる部分を楽しんでいただけています。
そして最後は,絵描きさんです。自分で描いたイラストをゲームに反映できるので,そこに魅力を感じて遊んでいただける方もいます。
4Gamer:
年齢層はどうでしょう? テーブルトークRPGに親しんでいるとなると,それなりに高そうなイメージですが。
オッド氏:
mixiアプリ版(※)のデータを見ると,20代後半から30代半ばが中心になっています。
※本作はサクセス版,ハンゲーム版,mixiアプリ版の3プラットフォームでサービスされている。サクセス版とハンゲーム版は同じサーバーだが,mixiアプリ版は別サーバーとなっている。
稲川氏:
平均年齢は高いと思いますよ。ゲーム内掲示板で15年くらい前のテーブルトークRPGの話題を書き込まれると,わりと食いついている方が多かったり(笑)。
オッド氏:
あとは我々と同じような,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の“赤箱”(関連記事)を遊んでいたような世代ですね。ゲーム内でも,その方達が活発にプレイしてくださっていて,非常にありがたいです。
横山氏:
そういったコアな方々は,遊び方をレクチャーしなくとも,実装内容から運営・開発の意図を汲み取ってロールプレイを楽しんでくださる人が予想以上に多く,とても嬉しいです。
オッド氏:
とくにmixiアプリ版のプレイヤーは,ロールプレイを重視する傾向が強いですね。
ただ,英雄クロニクルはmixiアプリでありながらちょっと変わっていて,mixiの誰がプレイしているのか,ゲーム内では絶対に分からないようになっていたりします。
4Gamer:
それはまた珍しいですね。そこはやはりロールプレイを重視するにあたって,いわゆる“中の人”がいるわけではなく,1キャラクターとして成立させたいから,といった理由ですか?
オッド氏:
それもありますが,何よりプレイヤーの中には,若気の至りで作られた昔のキャラクター設定を引っ張り出してきている人もいると思うんですよ。それが周りにバレてしまうのもな,と(笑)。
4Gamer:
なるほど(笑)。
ちなみに,サクセス公式版やハンゲーム版でプレイしている方は,あまりロールプレイはしていないのでしょうか。
麓川氏:
もちろんサクセス公式版やハンゲーム版の方でも,ロールプレイをしているプレイヤーはたくさんいます。
ただ,どちらかというと,シミュレーションRPG的な要素を重視して,特殊能力やスキルを研究して強力な組み合わせを探し出す,といった遊び方をしている傾向があります。
オッド氏:
英雄クロニクルは,特殊能力とスキルの組み合わせがポイントになっていて,それによってキャラクターに強弱が生じます。しかし一つの組み合わせが恒常的に強いということはなく,必ず弱点を突いた新たな組み合わせが生み出されるといったような,流行り廃りがあるんです。
横山氏:
それが,ほぼ1週間サイクルで移り変わっています。強い組み合わせを見つけたプレイヤーにスポットが当たると,その対抗策が次の週には編み出される,という感じです。
4Gamer:
プラットフォームごとに傾向が違っているのは,どういった要因からだと分析していますか?
オッド氏:
おそらく,mixi版はもともとSNSとしてのコミュニティ媒体ですから,それが土壌となってロールプレイを楽しむ方が多いのではないでしょうか。
プラットフォームごとにやや傾向が違ってはいますが,どちらも非常に良いプレイヤーが集まってくださったと感謝しています。
ロールプレイを阻害しないよう,ゲーム内容はあえて紹介しない
4Gamer:
そういえば,英雄クロニクルの公式サイトには掲載されているのはイメージイラストばかりで,ゲーム画面がほとんど存在しません。ここを公開していないのは意図的なものなんですか?
オッド氏:
それは意図的なものですね。
ゲーム画面を公開していないのは,公式で用意したキャラクターのイメージが定着してしまわないようにするためです。英雄クロニクルの主人公はプレイヤーの作ったキャラクター自身なので,そのイメージを束縛するようなものは極力公開したくないのです。
本当は,キャラクターのイラストなども公式の素材を使わずに,プレイヤー自身ですべて用意してもらえたら,と思っています。
オッド氏:
あまり多くはありませんが,自分のキャラクターをスライムやドラゴンに設定しているプレイヤーもいるほどですからね。そういったロールプレイも尊重するためには,ゲーム画面は極めてシンプルにして,プレイヤーの想像力に任せる部分が必要となってきます。
すると,昨今の他社さんのタイトルのように,「ブラウザゲームながらグラフィックスが綺麗で」というようなアピールはできないので,単純にゲーム画面を見せて紹介しても,面白さが伝わりにくいのです。
稲川氏:
昨今のブラウザタイトルって,どれもグラフィックスが綺麗ですよね。英雄クロニクルは,最初にそこをスパッと切ってしまいました。
オッド氏:
これが普通のシミュレーションRPGであれば,戦闘中は戦闘シーンに切り替わってキャラクターが動いて……みたいなことになるのかもしれませんが,それをやってしまうと,やはり「自分のキャラクターと違う」という部分が出てきてしまいますからね。グラフィックスのクオリティは,今のブラウザゲームで何とか許されるレベルまで落としてしまっても,英雄クロニクルには合うだろう,と。
稲川氏:
企画段階ではもっとチープな画面になる予定でしたからね。枠線とテキストくらいしか表示されないゲームにしようかと考えていたほどです。
さすがにそれはまずいと,急遽今の形に作り直しましたが(笑)。
4Gamer:
ゲーム画面だけでなく,シミュレーションRPGでキモとなるはずの戦闘システムもまったく紹介されていませんよね。これも「キャラ作りやロールプレイがメイン」というのが理由ですか?
オッド氏:
そうですね。誤解を恐れずに言ってしまうと,これまた大いに語弊のある表現ですが,私達はシミュレーションRPG部分をオマケだと考えているんです。もちろんシミュレーションRPGとしてもきちんと作っていますし,一生懸命攻略してくださっているプレイヤーの皆さんには感謝しています。ただ,やはりロールプレイや,このゲームを自由に使った遊びを楽しんでもらいたいのです。
4Gamer:
本当に徹底していますね。ただ,ゲーム画面を見せずにプロモーションを行うのは,かなり難しいと思うのですが。
横山氏:
ええ。どうやってゲームの内容を伝えようか,本当に悩みました。一度,キャラクターを作って遊んでみて,その魅力に気付いていただければ長く楽しんでもらえるのですが,そこまでのハードルは高いと思います。
そのため,いかにして今遊んでいるプレイヤーに面白さを伝えてもらうかというのが,目下の課題です。
4Gamer:
現在,新規プレイヤーはどういった形で流入しているのでしょう。やはり口コミですか?
横山氏:
最近とくに多かったのはpixivを通じての流入ですね。
4Gamer:
また珍しいところから入ってきていますね。
サービス開始当初に,pixivとタイアップしてイラストコンテストを行ったのですが,その結果,コンテストを見た方やシミュレーションRPG好きの絵描きさんが入ってきたのです。
しかもその後,絵描きさんの中には,ゲーム内で仲良くなったほかのプレイヤーや,同じ陣営に所属するプレイヤーのイラストを描く方が出てきて,かなり盛り上がりましたね。また,イラストコンテストを見て始めた人が多かったおかげか,mixiアプリ版は女性プレイヤーが全体の25%を占めていたりします。
オッド氏:
あとは,12月1日20:00(※)から開始される第2シーズンも,新しく英雄クロニクルを始めるいいタイミングになるのではないでしょうか。
英雄クロニクルでは,リアルタイムの3か月が1シーズンとして1つの区切りになっています。シーズン中,プレイヤーはゲーム内の3年間をプレイすることになるのですが,シーズン終了後はキャラクターのレベルや選択した陣営などがすべてリセットされ,またゲーム内の1年目から再スタートという形になります。
※インタビューは第1シーズン終了近くの,11月22日に行った。
4Gamer:
それは新たにキャラクターを作るには適したタイミングかもしれませんね。ただ,それは逆に,新シーズンの開始時でなければ始めにくい,ということもなりませんか?
麓川氏:
それについては,途中から入っても遊べるよう,システム面でサポートしています。
例えば,本作ではキャラクターのレベルが30に達すると,またレベル1の状態に「転生」して,少し強い状態から再育成できるようになっています。そのため,どのタイミングで新規プレイヤーがゲームを始めても,転生してレベルの低いプレイヤーが存在するので,レベル差が生じて遊べない,ということにはなりません。
オッド氏:
ゲーム的な話をすると,英雄クロニクルは基本的に攻め手が有利で,かつ補助タイプのキャラクターをうまく使えば,どんなキャラクターでも活躍できるバランスになっています。
したがって始めたばかりのプレイヤーが攻め込んだときに,防衛側に有料コンテンツをふんだんに利用した強力なキャラクターがいたとしても,「ちょっと手強いな」程度の強さにしか感じないはずです。それに,自分のキャラクターが弱くても,同じ陣営の強い人を傭兵として雇ってしまえば,たいてい何とかなります(笑)。
4Gamer:
それはそれで,極端ですね。プレイヤーの感想の中には,「AIが優秀ではないので,防衛側は厳しい」という意見も見られるのですが,これはわざとAIを弱めにしているのでしょうか。
オッド氏:
AIが弱いのも意図的なものですね。プレイヤーの皆さんは,自分の作り上げたキャラクターが活躍するところを見たいのだと思うんですよ。それなのに,防衛側が強くて勝てないようでは,フラストレーションが溜まってしまいます。負けるのが嫌で誰も攻め込まなくなっても面白くありませんし,わざと攻め手有利で補助を強めに設定しています。
横山氏:
対戦相手の情報は事前に確認できますから,少し慣れてくると勝てるかどうかもすぐに判別できるようになります。
4Gamer:
基本的に,戦闘は勝てることがある程度前提になっているというわけですか。
麓川氏:
そうですね。むしろベテランがよく情報を吟味せずに,「勝てるだろう」と攻め込んで負けたりもしますが(笑)。
オッド氏:
よくありますね。中には,強力なキャラクターを微妙な性能のNPCと同じ顔アイコン,同じ名前,同じ説明にしておいて,「あのNPCだから,簡単に勝てるだろう」と油断して攻め込んできたプレイヤーを返り討ちにするような,頭の良い方もいますので。
4Gamer:
それは酷い(笑)。
稲川氏:
システム的に防衛側が不利なので,どうにかして一矢報いてやろうと工夫しているみたいですね。
オッド氏:
ほかにも,弓の名前や説明を剣と書き替えていたケースもありましたね。「どうして剣でこんな距離から攻撃できるの?」と思ってよく確認してみたら,実は弓だったという。
4Gamer:
そういった遊び方は,ある意味,システムの盲点を突いているわけですよね。運営・開発的には許容しているんですか?
横山氏:
ええ。見ていて面白いので,どんどんやってほしいです。
オッド氏:
それに,もしかしたらその武器は,「刀身が飛んでいく剣」という設定なのかも知れませんからね。「なるほど」と思わせてくれるような,上手い設定が付いていれば賞賛ものです。
第2シーズン以降は新たなストーリー展開が
4Gamer:
さて,第2シーズンが12月1日から開始されるということですが,アップデートやゲーム内の変化はありますか?
一番大きな変化は,第1シーズンで実装を見合わせていた,ゲーム内の歴史やバックボーンに関わるイベントとクエストが登場することです。ゲーム内では5か国が争っていますが,「第2シーズンからはどことどこの国の争いが激しいか」というようなデータをフラグにして,それにまつわるイベントが発生するようになります。
仮に2国間の大規模戦争イベントが発生したとすると,その両国に関連クエストが発生して,クリア率で勝敗が決まる,といった感じですね。
4Gamer:
ということは,第2シーズン以降は,毎回,プレイヤーの動向によって展開が変わる可能性があるということでしょうか。
オッド氏:
そうですね。シーズンの序盤ではあまり機能しませんが,おそらく中盤ぐらい,早ければ12月中旬から歴史イベントが発生するのではないでしょうか。
場合によっては,重要なNPCが死んでしまったりもします。あの人気NPCが死んでしまったら,ファンはどうなるんだろうというイベントもあったりして……。
麓川氏:
まあ3か月ごとに新しいシーズンが始まりますから,もし好きなNPCが死んでしまったというプレイヤーは,次のシーズンで「こうすれば別の展開になるんじゃないか」といろいろ試していただけるのではないでしょうか。
オッド氏:
「あのイベントを,この陣営から見たらどうなるだろう?」とシーズンごとに陣営を変えたり,「あのイベントで,この陣営が勝っていたらどうなったんだろう?」と試したりしてもらえると嬉しいですね。
実際,掲示板で「どこそこの国から誘いを受けているので,次のシーズンではそこでプレイする」というような話をしている方も見られます。
4Gamer:
陣営が変わるということは,次のシーズンが始まるときにフレンドリストなどもリセットされるんですか?
横山氏:
そうです。歴史が振り出しに戻るので,前のシーズンの出来事はすべてなかったことになります。キャラクターも基本的には作り直して,新たにロールプレイを楽しんでもらう形になります。
オッド氏:
前シーズンと同じ設定のキャラクターで次のシーズンに参加することも可能ですが,その場合,前シーズンで知り合ったキャラクターを持つプレイヤー同士なら,「以前,会った気がするのだが」といったロールプレイをしてくださる方もいるのではないでしょうか。
もちろんロールプレイに関係なく,主にプレイヤーとして「前シーズンはこうだった」という話になるかもしれません。我々からは「歴史が振り出しに戻る」「年号が戻る」という情報しか提示しないので,そこはプレイヤー次第になると思います。
4Gamer:
しかし,シーズンごとにリセットがかかるのは,ゲームからプレイヤーが離脱してしまう契機となりかねませんか?
オッド氏:
そこは危惧していた部分なのですが,予想以上にゲーム内は次のシーズンをどう楽しむかで盛り上がっているので,非常にありがたいです。新しいキャラクターでもう一度遊べるということで,リセットを前向きに受け止めてくださっているようです。
第2シーズンでギルドシステムやダンジョンなども実装
4Gamer:
第2シーズン追加されるそのほかの要素についても教えてください。
オッド氏:
第2シーズン開始時に導入されるのは,いくつかの特殊能力やスキル,そして実装が遅れていたギルドシステムですね。
麓川氏:
ギルド設立のためにプレイヤーが階級を上げる必要があるので,おそらく第2シーズン開始から1週間後ぐらいに,最初のギルドが誕生するのではないかと思います。
ギルドメンバーは,傭兵として雇用するのに必要な初期費用が半減するので,かなりお得です。また,メンバー間でゲーム内通貨とアイテムを共有できる金庫と倉庫が使えるようになります。
オッド氏:
さらに,ギルドメンバーが遠征したときに得られる功績ポイントの累計をほかのギルドと競う,「ギルド対抗戦」も導入されます。
遠征は他国に攻め込みますが,ギルド対抗戦では自国/他国を問わず,サーバー内の全ギルドの中からランダムにマッチングされます。勝敗は4段階あって,より差をつけて勝つほど報酬の内容もよくなる仕組みです。もっとも酷い負け方をしない限り,負けたギルドにも何らかの恩恵があります。
ギルドのレベルが高いとメンバー数が増えるので,それだけ功績ポイントを稼ぎやすくなりますから,ぜひ多くの仲間を集めて参加してほしいですね。
オッド氏:
ほかにも,2011年内の実装は厳しいかもしれませんが,「黄昏ダンジョン」と仮称しているコンテンツを準備中です。これは,モバイルゲームのRPGっぽい形の,簡易ステータス表示とテキストからなるコンテンツで,「先に進む」「戻る」といった選択肢を選ぶだけで進められる簡単な内容です。シミュレーションRPG用の部隊とは別に,最大6人のチームを組んで冒険していくのですが,キャラクターの能力はきちんと反映されますし,ダンジョンに潜るほど経験値やゲーム内通貨が得られます。
稲川氏:
これは,シミュレーションRPG部分ばかりでは疲れてしまうという意見に応えて導入しました。
4Gamer:
2011年内ということは,シーズン2の途中から入ってくる新コンテンツということですか?
稲川氏:
そうなります。本当はシーズン開始時に実装したかったのですが,少し遅れてしまいそうです。
オッド氏:
コンテンツ実装のスケジュールは事前に組んでいるのですが,ゲーム内の動向を見ながら実装する順番を入れ替えていますし,プレイヤーの声をもとに予定になかったコンテンツを急遽開発したりもしているので……。
4Gamer:
今後のアップデート内容や中長期的な展開で,ほかにお話いただける点はありますか?
オッド氏:
しばらくはシーズン2からのキモとなる歴史イベントや,それにまつわるNPCの追加に注力していきます。もちろん,黄昏ダンジョンのような新コンテンツの準備も進めていきますので,そちらも楽しみにしていただければと思います。
あとは,十分な売上が上がるようであれば,個人的にはコンシューマゲーム版の英雄クロニクルや,コミック,映像などにチャレンジしてみたいですね。実現できるかは分からないですが。
4Gamer:
コンシューマゲームですか。確かにサクセスはコンシューマゲームの開発も手掛けていますし,ノウハウもありそうですね。どういった内容のものを考えているのでしょう?
そうですね……。例えばPSPで出すとすれば,アドホック通信を利用して友達のキャラクターを傭兵にストックできたり,自分で描いたイラストを取り込んだりといった感じで,ハードの機能をうまく作ったゲームにしたいです。
麓川氏:
可能なら,今ブラウザゲーム上で活躍しているプレイヤーのキャラクターをNPCとして登場させたいですね。魅力的なキャラクターはたくさんいますから。
オッド氏:
それ,いいですね。ずっと遊んでくださっている方はニヤニヤできるし,新規で始める方にも世界観を楽しんでいただけそうです。ともあれ,可能ならチャレンジしたいことはたくさんあります。
4Gamer:
今後の展開に期待しています。
それでは最後に,4Gamerの読者や英雄クロニクルプレイヤーに向けて,メッセージをお願いします。
横山氏:
私は告知などを担当しているのですが,これまで説明が足りない部分があったかと思います。順次,改善していますので,今後ともよろしくお願いします。
麓川氏:
第2シーズンでは,歴史イベントなどをとおしてNPC達がより魅力的に見えるようになると思います。私はシナリオ担当として,NPC達がもっと皆さんに愛されるよう努力していますので,ぜひ遊んでみてください。
稲川氏:
私は逆に,自分のキャラクターを重視するタイプで,あまり世界観やNPCに魅力を求めていなかったりするのですが……。私と同じタイプの方であっても,ロールプレイとほかのプレイヤーとの交流で楽しんでいただけると思います。
オッド氏:
私はプレイヤーそれぞれのキャラクターが主人公だと考えて作っていますので,この世界で自分の理想のキャラクターに愛情を注ぎ,生き生きと動かしてもらえれば,それだけで十分です。とにかく自分のキャラクターを愛してあげてください。その先で,ちょっとお金を使っていただければ,なお嬉しいです(笑)。
4Gamer:
ありがとうございました。
“システムとルールと場を用意して,その上でプレイヤーを自由に遊ばせる”という英雄クロニクルの設計は,テーブルトークRPGや黎明期のオンラインRPGを好むコアゲーマーにとっては非常に魅力的に見えるのではないだろうか。
こうしたゲームはこれまでにも,同人ゲームなどでは存在していたが,どちらかといえば同好の士が集まって楽しむものとして完結していたので,商業的なサービスとして登場してきたことはなかなか興味深い。
運営・開発チームも,プレイヤー各自のロールプレイを阻害しないよう,プロモーションや有料サービスの提供にかなり慎重な様子で,本当に「キャラクターメイクにとにかく特化」という方向が突き詰められている印象だ。
インタビュー中にあるとおり,新たな展開を向かえる第2シーズンは,本日(12月1日)20:00から開始される。本作に興味を持った人は,新たに自分のキャラクターを作り出して英雄クロニクルの世界に足を踏み入れてみよう。
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