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[COMPUTEX]あの「Ruby」が中年サイボーグになって帰ってきた!? 次世代ゲーム機を制したAPUとRadeonの優位性を訴えたAMD講演レポート
同一のプロセッサダイをベースとするTemashとKabini。TemashはタブレットPCやNetbook向け,KabiniはエントリークラスノートPC向けAPUとなる |
これら新製品の説明を担当したのは,AMD上級副社長のLisa Su(リサ・スー)氏。Su氏は,同社製APUのセミカスタム版が,ソニーの次世代ゲーム機「PlayStation 4」(以下,PS4)だけでなく,Microsoftの次世代ゲーム機「Xbox One」にも採用されたことを,誇らしげに披露した(関連記事)。
MicrosoftがXbox Oneを発表した時点では,CPUに関しては「x86アーキテクチャの8Core CPU」としか公表されておらず,それがAMDのAPUであるとは明らかになっていなかった。そのため,Xbox OneのCPUがAMD製であることは,ここで初めて発表されたわけだ。
Xbox OneのAPUについて,発表後にSu氏へ確認したところ,「詳細はお話しできないし,PS4とXbox OneのAPUはまったく異なるものである(ので,明らかになっているPS4用APUのスペックでXbox Oneを語ることはできない)。しかし,同一世代のテクノロジーで開発されたものではある」と回答された。同一世代という言葉からすると,Xbox Oneに採用される「8Core CPU」とは,「Jaguar」アーキテクチャを採用した8コアCPUと,「Graphics Core Next」(GCN)アーキテクチャを採用したGPUとを統合し,28nmプロセス技術で製造されるものということになるだろう。
Kaveriは,CPUコアとGPUコア間で完全に同一のメモリ空間を利用できるようになる「HSA」(Heterogeneous System Architecture,関連記事)を実現させるAPU SoCだ。Kaveriの登場により,AMDが追い求めてきた「APU本来の形」が,ひとまずは結実することとなる。
2013年のAPUロードマップ。高性能APUの本命はKaveriで,Richlandは“つなぎ”的存在だ |
Kaveriのテストシリコン。左がPGAパッケージで右がBGAパッケージだ。ダイサイズはおおよそ14.5×15.5mmくらいだろうか? |
APUベースのPCは近未来の戦場だ!?
新作イメージムービー「Be Invincible」
Su氏による講演の最後には,APUの新作イメージムービー「Be Invincible」が公開された。その全編はYouTubeでも公開されている。
このムービーは映画「トロン」を彷彿とさせるもので,一言で言えば「PCの中は戦場だ」という話。PCの中ではアプリケーションタスク軍と,これを迎え撃つPCハードウェア軍が終わりなき戦争を続けているという話を,SFアクションムービー仕立てで描いているものだ。
CPUコア戦士が戦場に下り立つと,無数のアプリケーションタスク軍が襲いかかってくる。それにしても,アプリケーションタスク軍の兵士は「かなり悪そうなツラ構え」をしており,手強そうだ。
すると,「お前らじゃ話にならん」と言わんばかりに,雑兵を掻き分けるようにして,マッチョなボスキャラ的アプリケーションタスク重歩兵が登場してきた。さしずめ「Adobe Premiere」とか「TMPGEnc」あたりだろうか(笑)。
このヘビータスクな重歩兵はかなり手強く,4コアCPU戦士達も,先ほど闘ったタスク歩兵を前にしたときのようには華麗に戦えない。苦戦,というよりはタジタジだ。
CPUコア戦士達は,「AMD Turbo CORE Technology」よって動作クロックを引き上げ,高周波ブレードはすでに4.4GHzに達しているが,依然苦戦中。
すると,4人のCPUコア戦士達の高周波ブレードがムチに変化。ムチ状武器でやる気を取り戻したCPUコア戦士達はパワーアップし,ヘビータスクの体をムチで縛り上げ,容赦なくバラバラに粉砕してしまうのだ。
なぜHSAによってCPUコアとGPUコアとで共通のメモリ空間が利用可能になると,CPUコア戦士達の武器がムチに変化するのかはよく分からないが,まあとにかく強いらしい。
APUのイメージビデオとしては突っ込みどころも多いのだが,SFアクションとしては快作で完成度も高いので,ぜひ続きを見てみたいところ。Radeonコア戦士達が活躍する日は来るのか,続編に期待したいところだ。
AMDとゲームデベロッパのコラボはいっそう強化
「Thief」PC版も「Gaming Evolved」で開発中
話をプレスカンファレンスに戻そう。Su氏に続いて登壇したのは,グラフィックス部門の上級副社長を務めるMatt Skynner(マット・スキナー)氏で,話は昨今のゲーム機事情からスタートした。
Matt Skynner氏(Corporate Vice President and Global Manager, Graphics Business Unit, AMD) |
Microsoftと任天堂,ソニーのいずれもが,AMDのグラフィックス技術を採用したとSkynner氏は強調 |
Xbox OneのAPUがAMD製であると公表されたことで,Microsoftと任天堂,ソニーから発売される据え置き型ゲーム機は,すべてAMDのグラフィックス技術を採用することが明らかになり,Skynner氏はゲーム機市場での勝利を宣言する。
そして,据え置き型ゲーム機すべてが採用したということは,PCゲームでもRadeonを前提とした開発が容易になることにもつながり,これまでは時間のかかった「異なるプラットフォームやグラフィックス技術に向けた最適化」が,今後は不要になるとSkynner氏は主張する。
要するに,Radeonを前提にゲームグラフィックスを設計しておけば,ゲーム機とPCのどちらにも完璧なグラフィックスのゲームを作れる,と言いたいわけだ。
こうした「AMD×ゲームデベロッパ」の最新コラボレーション事例として紹介されたのが,旧Eidos作品のPC向け移植を手がけているNixxes Software(以下,Nixxes)との開発協力である。Nixxesはゲーム機向けタイトルを,グラフィックスが強化されたPC版に作り直すことを得意とする,オランダのゲームデベロッパだ。
Jurjen Katsman氏(CEO,Nixxes Software)。 |
ThiefもNixxesが移植を担当。TressFXのようなAMDの技術が盛り込まれるらしい |
Katsman氏によれば,AMDとの協力体制は今も継続中だそうで,その成果が見られる次のゲームが「Thief」シリーズの新作であると発表された。Thiefは旧Eidosが版権を持つ往年の名作ステルスアクションで,現在新作の開発が進められている。Thiefの新作でも,AMDの技術を利用した何かが見られることになりそうだ。
Radeonファンのアイドル,Rubyが帰ってきた!
でもちょっと待って,その造形は……
Skynner氏は講演の最後に,「Ruby」の最新リアルタイムデモを,開発途上版として披露した。2013年3月に開かれたGame Developers Conference 2013でちら見せされたデモが,完成前とはいえ全編通して見られるようになったわけだ。なお,今回このデモを動作させたグラフィックスカードは,Radeon HD 7990とのことだった。
Rubyシリーズはこれまで4作品がリリースされている。今年は彼女の生誕10周年ということで,復活デモの開発プロジェクトが立ち上げられたのだそうだ |
新RubyデモはIllfonicが開発を担当した。CryENGINE 3ベースとのこと |
Rubyに採用された新技術のリスト。スライドでは一部要素が重複しているが,「コピー&ペーストのミスで,新技術はちゃんと15種類使っているよ」とのこと |
開発を担当したのは,米国コロラド州に本拠を構えるゲームデベロッパのIllfocnic。開発進捗度は90%以上で,あとは表現の詳細調整を行うだけとのことだ。ただし,正式なリリース時期は未定となっている。
AMDによれば,新しいRubyは同社のマルチディスプレイ技術「Eyefinity」に対応しているほか,DirectX 11世代のテッセレーション技術を効果的に活用しているとのことだ。CryENGINE 3で採用される,ポストエフェクトをベースとした鏡面反射の鏡像テクニックである「RLR」(Realtime Local Reflections)や,AMDイチオシの毛髪レンダリング技術であるTressFX Hairが採用されるなど,CrytekとAMDが持つ技術を集約させた,肝いりの作品であることが窺える。
作中で描かれる戦闘も,ATI時代の流麗なアクションとは様変わりし,肉弾戦によるどつき合いという,泥臭い戦いになっている。
ATI時代のクールビューティなRubyに対し,中年(?)になったAMDのRuby。確かに違いは分かりやすいのだが,「アイドル」的な雰囲気がカケラもないことから,賛否両論が起こる気もする。ただ,そうしたコミュニティ側の盛り上がりも期待しての戦略という可能性もあるだろう。
AMD 公式サイト
COMPUTEX TAIPEI 2013取材記事一覧
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