テストレポート
Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
今回4Gamerでは,そのなかから,Kabiniのラインナップで上から2番めにあたる「A4-5000」が組み込まれたAMD製のノートPC型評価機を入手したので,取り急ぎ,動かしてみた結果をレポートしたい。エントリークラスのノートPC向けとされるAPUで,3Dゲームはどこまで動くだろうか。
JaguarベースのCPUコア4基にGCNベースのGPUコア128基を搭載。評価機は14インチ,フルHD液晶搭載モデル
A4-5000の場合,コア数,共有L2キャッシュ容量はともに最大。動作クロックは1.5GHzとなる。
ディスプレイ出力は最大4画面に対応し,4096×2160ドットでも最大2画面出力が可能。また,最新世代の「AMD Wireless Display」(以下,AWD)に対応し,Wi-Fi Direct(≒Miracast)対応のディスプレイデバイスにワイヤレス出力も行うことができるようになっている。
ちなみにA4-5000の場合,GPUコアの動作クロックは450MHz。ブランド名は「Radeon HD 8330」だ。グラフィックスメモリはUMAで,CPUコアと共有になる。
というわけでメモリコントローラだが,Temashが最大DDR3L-1333,Kabiniで最大DDR3L-1600であり,いずれもシングルチャネルアクセス対応。A4-5000はKabiniの最大スペックとなるDDR3L-1600対応なので,メモリモジュールはPC3-12800 DDR SDRAM SO-DIMMが組み合わせられる。
そのほかTemashおよびKabiniでは,汎用のPCI Express 2.0 x1 ×4,Serial ATA 6Gbps×2,USB 3.0×2+USB 2.0×8(もしくはUSB 2.0×10),SDカードリーダーコントローラを統合。それでいてTDP(Thermal Design Power)は,Temashが3.9〜9W,Kabiniが9〜25Wとなっている。A4-5000は15Wだ。
評価機を見てみよう。評価機は14インチ,解像度1920×1080ドットの液晶パネルを備えたノートPCで,筐体にメーカー名を窺わせる刻印などはない。
インタフェースは,本体向かって左側面には1000BASE-T LANとアナログRGB(D-Sub 15ピン),Mini HDMI,USB 3.0,右側面にはマイク入力およびヘッドフォン出力(3.5mmミニピン×2),USB 2.0×2と光学ドライブが用意されていた。
本体の分解は許可されなかったので,できたのは底面カバーを開けることくらいだが,メモリモジュールが1枚で,APUの発熱はヒートパイプによって運ばれ,ブロワーファンで排気される仕様になっていることは分かる。
そのほか評価機の主なスペックは表1のとおりだ。
このAMD Feature Managerには,「Catalyst 11.6」で搭載された,「家庭用ビデオカメラで撮影したムービーの手ブレを再生時に補正する機能」である「AMD Steady Video」と,前出のAWDに関する設定が用意されている。
3D性能は「カジュアルなオンラインゲーム向け」
システム全体の消費電力は極めて低い
別記事でも紹介しているように,AMDは,Kabiniを,ノートPC向けCore i3〜ノートPC向けCeleronの対抗馬と位置づけている。本稿の主役となるA4-5000の場合,AMDが競合認定しているのはノートPC向けPentiumだ。
ただ,だからといってPentium搭載のノートPCを持ってきて比較しても,4Gamer読者にメリットがあるとは到底思えない。そこで今回は,手元にあったデスクトップPC用CPU,具体的にはIvy Bridgeコアの「Core i3-3225/3.3GHz」(以下,i3-3225)と,Sandy Bridgeコアの「Core i3-2100/3.1GHz」(以下,i3-2100)と比較してみたいと思う。
比較対象として用意したデスクトップ機のスペックは表2のとおりで,UMAの性能を大きく左右するメモリアクセルはデュアルチャネルだ。そのためシングルチャネルアクセスとなるKabiniは不利となるが,そのなかでKabiniがどれだけのものを示せるか見てみようというわけである。
ちなみに統合型グラフィックス機能のブランド名は,i3-3225が「Intel HD Graphics 4000」,i3-2100が「Intel HD Graphics 2000」となる。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0準拠。ただし,描画負荷が極めて高い「Far Cry 3」と「Crysis 3」は省略し,代わりに「PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0」(以下,PSO2 Ver.2)のベンチマークモードと,「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(以下,新生FFXIVベンチ)を追加した。
PSO2 Ver.2では「簡易描画設定2」と「簡易描画設定1」,新生FFXIVベンチでは「標準品質」を選択し,2回実行してその平均をスコアとして採用することにした。また「3DMark」(Version 1.1.0)では「Fire Strike」の「Extreme」プリセット実行を取りやめ,代わりにエントリーPC向けの「Cloud Gate」テストを行うことにしている。
テスト解像度は1280×720ドットと1600×900ドット。前述のとおり,評価機のネイティブ解像度は1920×1080ドットだが,現実的な解像度として,低めの2パターンを選択した次第だ。
……と,いつもどおりテスト環境について説明したが,まずはグラフ1,3DMarkの結果を見てほしい。A4-5000は,デュアルチャネルメモリアクセスを行っており,メモリバス帯域幅では圧倒的に優勢なi3-2100に対して約37%高いスコアを示している。1世代前とはいえ,デスクトップPC向けCPUの統合型グラフィックス機能を上回るのは立派だ。
ただ現実問題としてi3-3225の約51%に留まっているわけで,「最新世代の3Dゲームを満足にプレイできる」と期待するのは酷なのもまた確かである。
なお,Intel HD Graphics 2000がDirectX 11に対応していないため,i3-2100のFire StrikeはN/Aとなった。
Cloud GateとFire Strikeのスコア詳細は表3,4に示したので参考にしてほしい。Cloud Gateで比較すると,CPUベースの物理シミュレーションを行うPhysics testにおいて,A4-5000はi3-3225の約45%,i3-2100の約51%というスコアしか示せていないが,Graphics testではi3-2100比で約172〜188%のスコアを叩き出しており,これが逆転を生んでいるわけだ。一方,i3-3225と比べると,グラフィックス性能でもA4-5000は歯が立たないことになる。
続いてゲームにおけるテスト結果だが,ここではA4-5000のものだけ表5にまとめた。理由はスコアを見てもらうと一目瞭然だが,PSO2 Ver.2の簡易描画設定1でこそ満足にプレイできるスコアになっているものの,簡易描画設定2に変えたとたん,スコアは大きく落ち込んでしまう。
そんな消費電力の低さがメリットとして強く出たのはバッテリー駆動時間だ。Futuremark製バッテリーベンチマークソフト「PowerMark」(Version 1.1.1)は,バッテリー残量が100%から5%に減るまでの時間を,
- Productivity:ワープロソフトによる文書編集とWebブラウジング
- Performance:3Dアプリケーションの実行とビデオ再生
- Balanced:ProductivityとPerformanceの交互実行
そこでグラフ2を見てみると,Entertainmentワークロードのスコアは214分となった。評価機が搭載するバッテリーパックは15V 3000mAh 45Whという仕様で,決して大容量とはいえないのだが,それでも3時間半はバッテリー駆動で3Dゲームをプレイし続けられることになる。
最後に,Futuremark製のPC総合ベンチマークソフト「PCMark 7」(Version 1.4.0)を用い,システム全体の性能を見たものが表7となる。エントリークラスのノートPC向けで,CPUクロックが1.5GHzのA4-5000と,デスクトップPC向けでCPUクロックが3GHzを超えるi3-3225やi3-2100との比較にあまり意味はないので,参考程度に留めておいてもらいたい。
カジュアルなオンラインゲームやソーシャルゲーム程度なら動作を期待できる
システム全体の消費電力はかなり低いので,安価な(=メーカーレベルでコストをかけた省電力対策がなされていたりしない)ノートPCでも,かなりの時間,ゲームをプレイし続けられるのは魅力。コンパクトなノートPCが安価で登場してきた場合,“2アカめ”用マシンや,脇に置いておきながらちまちまプレイするソーシャルゲーム用マシンとしては,検討に値するものと思われる。
AMDのノートPC向けAPU製品情報ページ(英語)
- 関連タイトル:
AMD A-Series,AMD E-Series,Athlon,Sempron(Temash,Kabini)
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