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Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
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印刷2013/05/23 13:01

テストレポート

Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

Kabini評価機
画像集#006のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
 別途お伝えしているとおり,2013年5月23日13:01,AMDはタブレット端末およびローエンドノートPC向けAPU「Temash」(タメシもしくはテマシュ,開発コードネーム)とエントリークラスノートPC向けAPU「Kabini」(カビニ,同)を,AMD A-Series APU(以下,A-Series)およびAMD E-Series APUの新製品として発表した。

 今回4Gamerでは,そのなかから,Kabiniのラインナップで上から2番めにあたる「A4-5000」が組み込まれたAMD製のノートPC型評価機を入手したので,取り急ぎ,動かしてみた結果をレポートしたい。エントリークラスのノートPC向けとされるAPUで,3Dゲームはどこまで動くだろうか。


JaguarベースのCPUコア4基にGCNベースのGPUコア128基を搭載。評価機は14インチ,フルHD液晶搭載モデル


TemashおよびKabiniのSoCパッケージ。これは本テストレポートとは別の機会に撮影したものだが,エンジニアリングサンプルとなっていた
画像集#022のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
 TemashとKabiniはいずれも,TSMCの28nmプロセス技術を用いて製造される同一のダイをベースとした,APUベースのSoC(System-on-a-Chip)だ。「Bobcat」(ボブキャット)アーキテクチャの後継となるCPUアーキテクチャで,従来比で20%の性能向上を実現したもの……と紹介するより,「PlayStation 4のAPUに採用されて話題を集めたCPUアーキテクチャ」と紹介したほうが早いような気もするが,ともあれ両APUでは「Jaguar」(ジャガーもしくはジャギュア)という開発コードネームで呼ばれてきたアーキテクチャを採用したCPUコアを最大4基統合するのがポイントである。共有L2キャッシュ容量は最大2MBだ。
 A4-5000の場合,コア数,共有L2キャッシュ容量はともに最大。動作クロックは1.5GHzとなる。

Kabiniのキーワードとなる「数字」一覧。GPUの演算性能はBrazos 2.0比で最大32%向上したという
画像集#016のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
 GPUコアは,Radeon HD 7900〜7700シリーズと同じ「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャで,Temash,Kabiniともシェーダプロセッサ数にして128基となる。GCNで,演算ユニット「GCN Compute Unit」は,64基のシェーダプロセッサが,スカラユニット×1やテクスチャユニット×4,L1キャッシュなどとセットになって構成されるため,GCN Compute Unit数は2基ということになる。要するに,GPUの規模は,GCNベースの単体GPUで最下位モデルとなる「Radeon HD 7750」の4分の1というわけだ。
 ディスプレイ出力は最大4画面に対応し,4096×2160ドットでも最大2画面出力が可能。また,最新世代の「AMD Wireless Display」(以下,AWD)に対応し,Wi-Fi Direct(≒Miracast)対応のディスプレイデバイスにワイヤレス出力も行うことができるようになっている。
 ちなみにA4-5000の場合,GPUコアの動作クロックは450MHz。ブランド名は「Radeon HD 8330」だ。グラフィックスメモリはUMAで,CPUコアと共有になる。

 というわけでメモリコントローラだが,Temashが最大DDR3L-1333,Kabiniで最大DDR3L-1600であり,いずれもシングルチャネルアクセス対応。A4-5000はKabiniの最大スペックとなるDDR3L-1600対応なので,メモリモジュールはPC3-12800 DDR SDRAM SO-DIMMが組み合わせられる。

Kabiniの製品ラインナップ
画像集#017のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

 そのほかTemashおよびKabiniでは,汎用のPCI Express 2.0 x1 ×4,Serial ATA 6Gbps×2,USB 3.0×2+USB 2.0×8(もしくはUSB 2.0×10),SDカードリーダーコントローラを統合。それでいてTDP(Thermal Design Power)は,Temashが3.9〜9W,Kabiniが9〜25Wとなっている。A4-5000は15Wだ。

Kabiniのブロック図と製品概要
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 評価機を見てみよう。評価機は14インチ,解像度1920×1080ドットの液晶パネルを備えたノートPCで,筐体にメーカー名を窺わせる刻印などはない。

入手したKabini評価機
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 インタフェースは,本体向かって左側面には1000BASE-T LANとアナログRGB(D-Sub 15ピン),Mini HDMI,USB 3.0,右側面にはマイク入力およびヘッドフォン出力(3.5mmミニピン×2),USB 2.0×2と光学ドライブが用意されていた。

Kabini評価機の4側面
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 本体の分解は許可されなかったので,できたのは底面カバーを開けることくらいだが,メモリモジュールが1枚で,APUの発熱はヒートパイプによって運ばれ,ブロワーファンで排気される仕様になっていることは分かる。

本体底面(左)と底面カバーを開けたところ(右)
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 そのほか評価機の主なスペックは表1のとおりだ。

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 ちなみに評価機にプリインストールされていたのは64bit版Windows 8(※これに日本語の言語パックを導入済み)で,別途AMDから全世界のレビュワーへ配布されたグラフィックスドライバ「Catalyst 13.101 Beta3」(13.101-130507a-156998E)をインストールすると,「AMD Feature Manager」というアプリケーションが利用可能になった。
 このAMD Feature Managerには,「Catalyst 11.6」で搭載された,「家庭用ビデオカメラで撮影したムービーの手ブレを再生時に補正する機能」である「AMD Steady Video」と,前出のAWDに関する設定が用意されている。

AMD Feature Manager。一部日本語化されている
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3D性能は「カジュアルなオンラインゲーム向け」

システム全体の消費電力は極めて低い


 別記事でも紹介しているように,AMDは,Kabiniを,ノートPC向けCore i3〜ノートPC向けCeleronの対抗馬と位置づけている。本稿の主役となるA4-5000の場合,AMDが競合認定しているのはノートPC向けPentiumだ。
 ただ,だからといってPentium搭載のノートPCを持ってきて比較しても,4Gamer読者にメリットがあるとは到底思えない。そこで今回は,手元にあったデスクトップPC用CPU,具体的にはIvy Bridgeコアの「Core i3-3225/3.3GHz」(以下,i3-3225)と,Sandy Bridgeコアの「Core i3-2100/3.1GHz」(以下,i3-2100)と比較してみたいと思う。

 比較対象として用意したデスクトップ機のスペックは表2のとおりで,UMAの性能を大きく左右するメモリアクセルはデュアルチャネルだ。そのためシングルチャネルアクセスとなるKabiniは不利となるが,そのなかでKabiniがどれだけのものを示せるか見てみようというわけである。
 ちなみに統合型グラフィックス機能のブランド名は,i3-3225が「Intel HD Graphics 4000」,i3-2100が「Intel HD Graphics 2000」となる。

画像集#024のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0準拠。ただし,描画負荷が極めて高い「Far Cry 3」と「Crysis 3」は省略し,代わりに「PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0」(以下,PSO2 Ver.2)のベンチマークモードと,「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(以下,新生FFXIVベンチ)を追加した。
 PSO2 Ver.2では「簡易描画設定2」と「簡易描画設定1」,新生FFXIVベンチでは「標準品質」を選択し,2回実行してその平均をスコアとして採用することにした。また「3DMark」(Version 1.1.0)では「Fire Strike」の「Extreme」プリセット実行を取りやめ,代わりにエントリーPC向けの「Cloud Gate」テストを行うことにしている。
 テスト解像度は1280×720ドットと1600×900ドット。前述のとおり,評価機のネイティブ解像度は1920×1080ドットだが,現実的な解像度として,低めの2パターンを選択した次第だ。

 ……と,いつもどおりテスト環境について説明したが,まずはグラフ1,3DMarkの結果を見てほしい。A4-5000は,デュアルチャネルメモリアクセスを行っており,メモリバス帯域幅では圧倒的に優勢なi3-2100に対して約37%高いスコアを示している。1世代前とはいえ,デスクトップPC向けCPUの統合型グラフィックス機能を上回るのは立派だ。
 ただ現実問題としてi3-3225の約51%に留まっているわけで,「最新世代の3Dゲームを満足にプレイできる」と期待するのは酷なのもまた確かである。
 なお,Intel HD Graphics 2000がDirectX 11に対応していないため,i3-2100のFire StrikeはN/Aとなった。

画像集#025のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

 Cloud GateとFire Strikeのスコア詳細は表3,4に示したので参考にしてほしい。Cloud Gateで比較すると,CPUベースの物理シミュレーションを行うPhysics testにおいて,A4-5000はi3-3225の約45%,i3-2100の約51%というスコアしか示せていないが,Graphics testではi3-2100比で約172〜188%のスコアを叩き出しており,これが逆転を生んでいるわけだ。一方,i3-3225と比べると,グラフィックス性能でもA4-5000は歯が立たないことになる。

画像集#026のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
画像集#027のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

 続いてゲームにおけるテスト結果だが,ここではA4-5000のものだけ表5にまとめた。理由はスコアを見てもらうと一目瞭然だが,PSO2 Ver.2の簡易描画設定1でこそ満足にプレイできるスコアになっているものの,簡易描画設定2に変えたとたん,スコアは大きく落ち込んでしまう。

画像集#028のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

消費電力のテスト時はバッテリーパックを外し,19V-3.42Aという,ノートPC用によくある仕様の付属ACアダプターによる給電を行った
画像集#011のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
 ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」で,システム全体での消費電力を測定した結果が表6だ。テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としているのだが,A4-5400はアイドル時が12W,各アプリケーション実行時でも24〜26Wに収まっている。液晶ディスプレイの消費電力が含まれることを考えれば,消費電力は相当に低いと述べてよさそうだ。

画像集#029のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

 そんな消費電力の低さがメリットとして強く出たのはバッテリー駆動時間だ。Futuremark製バッテリーベンチマークソフト「PowerMark」(Version 1.1.1)は,バッテリー残量が100%から5%に減るまでの時間を,

  • Productivity:ワープロソフトによる文書編集とWebブラウジング
  • Performance:3Dアプリケーションの実行とビデオ再生
  • Balanced:ProductivityとPerformanceの交互実行

評価機が搭載するバッテリーパック
画像集#014のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
という3つのワークロードを使って計測するもので,バッテリーのみでゲームをプレイし続けたときの駆動時間を推し量るにはEntertainmentワークロードの結果が参考になる。
 そこでグラフ2を見てみると,Entertainmentワークロードのスコアは214分となった。評価機が搭載するバッテリーパックは15V 3000mAh 45Whという仕様で,決して大容量とはいえないのだが,それでも3時間半はバッテリー駆動で3Dゲームをプレイし続けられることになる。

画像集#030のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか

 最後に,Futuremark製のPC総合ベンチマークソフト「PCMark 7」(Version 1.4.0)を用い,システム全体の性能を見たものが表7となる。エントリークラスのノートPC向けで,CPUクロックが1.5GHzのA4-5000と,デスクトップPC向けでCPUクロックが3GHzを超えるi3-3225やi3-2100との比較にあまり意味はないので,参考程度に留めておいてもらいたい。

画像集#031のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか


カジュアルなオンラインゲームやソーシャルゲーム程度なら動作を期待できる


画像集#008のサムネイル/Kabini「A4-5000」テストレポート。エントリーノートPC向けAPU SoCはゲームプレイに堪えるか
 以上,簡単ではあるがA4-5000の性能を見てきた。最新世代のGCNアーキテクチャを採用するとはいっても,GCN Compute Unit数は2基であり,その性能に過度の期待はできない。PSO2 Ver.2でグラフィックス設定を徹底的に落とせば十分なスコアが得られることからすると,カジュアルなオンラインゲームやソーシャルゲームであれば,快適にプレイできる可能性を論じられるので,そこに魅力を感じるなら,といったことになりそうだ。

 システム全体の消費電力はかなり低いので,安価な(=メーカーレベルでコストをかけた省電力対策がなされていたりしない)ノートPCでも,かなりの時間,ゲームをプレイし続けられるのは魅力。コンパクトなノートPCが安価で登場してきた場合,“2アカめ”用マシンや,脇に置いておきながらちまちまプレイするソーシャルゲーム用マシンとしては,検討に値するものと思われる。

AMDのノートPC向けAPU製品情報ページ(英語)

  • 関連タイトル:

    AMD A-Series,AMD E-Series,Athlon,Sempron(Temash,Kabini)

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