イベント
[CEDEC 2012]「パズル&ドラゴンズ」成功のポイントは「嫁レビュー」。プロデューサー山本大介氏の語る人気アプリが生まれた背景とは
「パズドラ」の10の方針
まず山本氏は,パズドラは「勢いとノリで作ったもので,今から言うことはおおむね後付け」と前置きしつつ,その成功の理由をいくつかに分類していった。山本氏がパズドラの開発にあたって指針としたことは,以下の10項目にまとめられるのだという。
パズドラは,山本氏が「これは絶対に面白い」と思うものを作っているという。そのため,サービスが続く中で継続的なアップデートを行う今でも,楽しく開発し続けられている。
2.ゲームの面白さを追求
ソーシャル性や射幸心を煽る要素に注力するのではなく,純粋に「ゲームとして面白い」という部分を追求して開発されている。
3.どうやってマネタイズするかの骨格を先に作っておく
あくまで骨格だけを作ることが重要。収益化部分だけを先行させると,あとあとゲームのレベルデザインなどに悪影響を与えてしまう。
4.プレイ前にやめたくなる要素を排除
メールアドレスを使ったアカウント登録,宣伝Webページへの遷移など,ゲームを始める前のハードルとなる部分をすべて排除した。
5.無料ゲームであっても,有料ゲームのクオリティで開発
パズドラは,App Storeにて170円で販売することを想定して開発された作品(実際には基本プレイ無料)。App Storeでは高めの料金設定だが,だからこそ,それだけの価値あるクオリティを提供できるよう,最後まで作りきった。
6.ソーシャルゲームをプレイしておく
現状のソーシャルゲーム市場にはカードバトルばかりが並んでいるが,だからといってまったく触らないのではなく,ゲーム開発者はそこにある楽しさを体験しておくべき。パズドラにもその面白さを取り込んでいる。
7.ゲームにとって重要な部分はサーバー側で管理
ダンジョン生成のアルゴリズムなど,パズドラのキモになるデータは,ローカルではなくサーバー側で管理している。App Store経由でアップデートしようとすると,審査に2〜3週間かかり,対応に遅れが出てしまうためだ。
8.過度なチュートリアルや攻略ガイドは外部に
過度なチュートリアルや情報発信は嫌がられる。その代わりに,公式TwitterやWeb上のゲームメディアで展開されている攻略記事へのリンクを用意し,プレイヤーが必要なときに情報へアクセスできるようにしておく。
9.「嫁レビュー」を重視
ガンホーでは社内スタッフからの意見取りを重視するが,パズドラでは開発スタッフの配偶者にも積極的に意見を聞いた。これにより,カジュアルゲーマーの生の声や行動を把握できたことが,パズドラ成功の最大のポイントである。
10.パズドラをコピーしないでほしい
ヒットしたゲームをコピーする風潮が強いが,こればかりを繰り返していると,自分の好きなゲームが作れる可能性はどんどん小さくなっていく。自分達が自分達の好きなゲームを作り続けられる市場が存続し続けるために,コピーは避けてほしい。
パズルのUIで,新しいゲームを
また,Dungeon Raidをプレイするなかで,山本氏はこれからのスマートフォンゲームにおける一つの指針を見つけたという。それは,「これまで流行ったゲームをスマートフォン向けのUIにしてプレイさせる」のではなく,「スマートフォン特有の操作がマッチするUIを作り,それとマッチするジャンルで,従来にないゲームを体験させる」ことだ。
山本氏は,Dungeon Raidを「パズルとRPGが融合したのが凄いわけではなく,パズルのUIでローグライクRPGをプレイさせているところが凄いのだ」と評している。その影響を受けたパズドラは,「パズルゲームで,RPGのバトルを表現する」ことを目標に開発されたのだそうだ。
そしてこの企画をガンホーの代表取締役社長 CEOである森下一喜氏に話したところ,森下氏からは「日本人にとって,RPGといえば『ドラゴン』」「携帯電話はみんな縦持ちしているのだから,スマートフォンを縦持ちした状態でプレイできるゲームにすべき」といった指摘を得たという。
山本氏は,自らを「一般受けするゲームを作る人間ではない」と考えているそうで,あまり人の意見を受け入れないタイプなのだそうだが,ここでは森下氏の指摘に素直に頷いたそうだ。その理由として,「まず面白いゲームであること,売り上げはその次」と断言する森下氏に共感したこと,また「子供ができて,ちょっと大人になった」ことを挙げていた。「ですので,ヒットするゲームを作れない開発者の方は,まず子供を作ってみてはいかがでしょうか」というのは山本氏の弁である。
衝撃を受けた嫁レビュー
パズドラが当初ターゲットとしたのは,20〜30代の男性社会人(昔はRPGを遊んでいたゲーマーだが,最近は複雑なゲームはあまりプレイしない層)と,女子中高生・主婦(カジュアルなゲーマー)で,いわばゲームの初心者から中級者といった層だった。
そこで山本氏は早速プロトタイプを作り,「同じ色を3つ揃えるだけのゲーム」とだけ説明して,山本氏の奥方にプレイしてもらった……が,そこで行われたのは,山本氏の想像を完全に超越する操作だったという。
というのも,氏の奥方は3マッチパズルにおける常識である「オブジェクトは隣り合ったものしか交換できない」を知らなかったため,「オブジェクトを1つ選ぶ→それを離れたグリッドにあるオブジェクトと交換しようとする」という操作を行おうとしたのだ。
この操作に衝撃を受けた氏は,その後ゲーム内容が更新されるたびに,奥方にプレイしてもらい,調整を進めていったとのこと。
また,パズドラの重要なギミックである「コンボ」は,この突拍子もない操作をヒントにして生まれたという。ただ,開発当初は,コンボが発生しすぎてゲームバランスが崩れてしまい,再調整に試行錯誤することになったようだ。
調整段階において,どういったギミックでゲームを制御するかという問題も出てきたが,ここでは「パズルゲームで,RPGのバトルを表現する」という指針を最大限に重視し,3マッチパズルの定番である「一定時間内に◯◯する」というルールを排除することが決定している。
身近な人を楽しませるゲームを作る
パズドラは,さまざまなゲームメディアに取り上げられ,連載・特集が組まれている。また,他社作品とのコラボも進んでおり,「太鼓の達人」や,スクウェア・エニックス作品との連携も進行中であると発表された(具体的な情報はこれからとのこと)。
こういった展開に対し「ものすごい広告宣伝費をかけているんでしょう?」という質問をされることもある,と山本氏は語る。だがWebの記事に関して言えば,ガンホー側から働きかけることはなかったという。記者が本当に面白いと思ったゲームを応援した結果が現状なのだそうだ。
また山本氏は,カードバトル型ソーシャルゲームが繁茂する現状を危惧する一方で,「ユーザーがそれを求めているのだから仕方ない」とあきらめるのではなく,作り手のアプローチによって現状を変えていけると述べる。これが机上の空論ではなく,実際に成功しているのだから,パズドラは大変に重要な事例といえよう。
なお,パズドラは今夏を目標にAndroid版がリリースされるほか,コンシューマゲームとしての展開も予定されているという。コンシューマ進出にあたっては「iOS版での利益を全部投入していい」と森下氏が語っているらしく,山本氏は「変な社長です」と苦笑しつつも,パズドラの更なる展開を目指すとして,本公演を締めくくった。
「パズル&ドラゴンズ」公式サイト
キーワード
(C) GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
(C) GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
- パズドラクロス 神の章 - 3DS
- 価格:¥4,237円
- ビデオゲーム
- 発売日:2016/07/28
- パズドラクロス 龍の章 - 3DS
- 価格:¥2,660円
- ビデオゲーム
- 発売日:2016/07/28
- パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズ エディション - 3DS
- 価格:¥1,644円
- ビデオゲーム
- 発売日:2015/04/29