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[CEDEC 2012]「パズル&ドラゴンズ」成功のポイントは「嫁レビュー」。プロデューサー山本大介氏の語る人気アプリが生まれた背景とは
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印刷2012/08/21 14:14

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[CEDEC 2012]「パズル&ドラゴンズ」成功のポイントは「嫁レビュー」。プロデューサー山本大介氏の語る人気アプリが生まれた背景とは

プロデューサー 山本大介氏
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 ゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2012の1日目,ガンホー・オンライン・エンターテイメントのパズルゲーム「パズル&ドラゴンズ」(以下,パズドラ)の講演が行われた。登壇者はプロデューサーの山本大介氏で,テーマは「嫁と開発と私」。iOS版で110万ダウンロードを達成した人気アプリが生まれた背景には,何があったのだろうか。


「パズドラ」の10の方針


 まず山本氏は,パズドラは「勢いとノリで作ったもので,今から言うことはおおむね後付け」と前置きしつつ,その成功の理由をいくつかに分類していった。山本氏がパズドラの開発にあたって指針としたことは,以下の10項目にまとめられるのだという。

指針とした10項目は「犬と私の10の約束」風にまとめられていた
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1.「この企画は面白い! 作りたい!」という思い
 パズドラは,山本氏が「これは絶対に面白い」と思うものを作っているという。そのため,サービスが続く中で継続的なアップデートを行う今でも,楽しく開発し続けられている。

2.ゲームの面白さを追求
 ソーシャル性や射幸心を煽る要素に注力するのではなく,純粋に「ゲームとして面白い」という部分を追求して開発されている。

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3.どうやってマネタイズするかの骨格を先に作っておく
 あくまで骨格だけを作ることが重要。収益化部分だけを先行させると,あとあとゲームのレベルデザインなどに悪影響を与えてしまう。

4.プレイ前にやめたくなる要素を排除
 メールアドレスを使ったアカウント登録,宣伝Webページへの遷移など,ゲームを始める前のハードルとなる部分をすべて排除した。

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5.無料ゲームであっても,有料ゲームのクオリティで開発
 パズドラは,App Storeにて170円で販売することを想定して開発された作品(実際には基本プレイ無料)。App Storeでは高めの料金設定だが,だからこそ,それだけの価値あるクオリティを提供できるよう,最後まで作りきった。

6.ソーシャルゲームをプレイしておく
 現状のソーシャルゲーム市場にはカードバトルばかりが並んでいるが,だからといってまったく触らないのではなく,ゲーム開発者はそこにある楽しさを体験しておくべき。パズドラにもその面白さを取り込んでいる。

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7.ゲームにとって重要な部分はサーバー側で管理
 ダンジョン生成のアルゴリズムなど,パズドラのキモになるデータは,ローカルではなくサーバー側で管理している。App Store経由でアップデートしようとすると,審査に2〜3週間かかり,対応に遅れが出てしまうためだ。

8.過度なチュートリアルや攻略ガイドは外部に
 過度なチュートリアルや情報発信は嫌がられる。その代わりに,公式TwitterやWeb上のゲームメディアで展開されている攻略記事へのリンクを用意し,プレイヤーが必要なときに情報へアクセスできるようにしておく。

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9.「嫁レビュー」を重視
 ガンホーでは社内スタッフからの意見取りを重視するが,パズドラでは開発スタッフの配偶者にも積極的に意見を聞いた。これにより,カジュアルゲーマーの生の声や行動を把握できたことが,パズドラ成功の最大のポイントである。

10.パズドラをコピーしないでほしい
 ヒットしたゲームをコピーする風潮が強いが,こればかりを繰り返していると,自分の好きなゲームが作れる可能性はどんどん小さくなっていく。自分達が自分達の好きなゲームを作り続けられる市場が存続し続けるために,コピーは避けてほしい。

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パズルのUIで,新しいゲームを


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 パズドラの企画の発端は,山本氏がApp Storeで「Dungeon Raid」というゲームに出会ったことにあるという。この作品は山本氏を魅了し,数か月にわたってDungeon Raid漬けにされてしまったが,それが「このゲームに負けない日本製ゲームを作る」という大きなモチベーションとなったそうだ。

 また,Dungeon Raidをプレイするなかで,山本氏はこれからのスマートフォンゲームにおける一つの指針を見つけたという。それは,「これまで流行ったゲームをスマートフォン向けのUIにしてプレイさせる」のではなく,「スマートフォン特有の操作がマッチするUIを作り,それとマッチするジャンルで,従来にないゲームを体験させる」ことだ。

 山本氏は,Dungeon Raidを「パズルとRPGが融合したのが凄いわけではなく,パズルのUIでローグライクRPGをプレイさせているところが凄いのだ」と評している。その影響を受けたパズドラは,「パズルゲームで,RPGのバトルを表現する」ことを目標に開発されたのだそうだ。

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 そしてこの企画をガンホーの代表取締役社長 CEOである森下一喜氏に話したところ,森下氏からは「日本人にとって,RPGといえば『ドラゴン』」「携帯電話はみんな縦持ちしているのだから,スマートフォンを縦持ちした状態でプレイできるゲームにすべき」といった指摘を得たという。
 山本氏は,自らを「一般受けするゲームを作る人間ではない」と考えているそうで,あまり人の意見を受け入れないタイプなのだそうだが,ここでは森下氏の指摘に素直に頷いたそうだ。その理由として,「まず面白いゲームであること,売り上げはその次」と断言する森下氏に共感したこと,また「子供ができて,ちょっと大人になった」ことを挙げていた。「ですので,ヒットするゲームを作れない開発者の方は,まず子供を作ってみてはいかがでしょうか」というのは山本氏の弁である。

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衝撃を受けた嫁レビュー


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 パズドラのプロトタイプを開発するにあたって,山本氏が最も重視したのがパズルのルールだった。ターゲットとするユーザーを明確化し,そのターゲット層が手軽に楽しめるルールにしなくては,受け入れてもらえない。
 パズドラが当初ターゲットとしたのは,20〜30代の男性社会人(昔はRPGを遊んでいたゲーマーだが,最近は複雑なゲームはあまりプレイしない層)と,女子中高生・主婦(カジュアルなゲーマー)で,いわばゲームの初心者から中級者といった層だった。

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 こういったカジュアルな層に受容されるパズルのルールとして,山本氏は「3マッチパズルがベスト」と判断する。3マッチパズルとは「Bejeweled」や「Zoo Keeper」のように「同じオブジェクトが縦横いずれかで3つ並んだら消える」というシステムである。
 そこで山本氏は早速プロトタイプを作り,「同じ色を3つ揃えるだけのゲーム」とだけ説明して,山本氏の奥方にプレイしてもらった……が,そこで行われたのは,山本氏の想像を完全に超越する操作だったという。
 というのも,氏の奥方は3マッチパズルにおける常識である「オブジェクトは隣り合ったものしか交換できない」を知らなかったため,「オブジェクトを1つ選ぶ→それを離れたグリッドにあるオブジェクトと交換しようとする」という操作を行おうとしたのだ。
 この操作に衝撃を受けた氏は,その後ゲーム内容が更新されるたびに,奥方にプレイしてもらい,調整を進めていったとのこと。

 また,パズドラの重要なギミックである「コンボ」は,この突拍子もない操作をヒントにして生まれたという。ただ,開発当初は,コンボが発生しすぎてゲームバランスが崩れてしまい,再調整に試行錯誤することになったようだ。
 調整段階において,どういったギミックでゲームを制御するかという問題も出てきたが,ここでは「パズルゲームで,RPGのバトルを表現する」という指針を最大限に重視し,3マッチパズルの定番である「一定時間内に◯◯する」というルールを排除することが決定している。

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身近な人を楽しませるゲームを作る


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 結果として,パズドラは当初ターゲットとしたカジュアルなゲーマーだけでなく,普段ほとんどゲームを遊ばないゲーム初心者を取り込むことにも成功した。また,コンボ要素は「ぷよぷよ」などの技量を磨くタイプのパズルを好むゲーマーへのアピールにもつながり,パズドラは当初の想定をはるかに超える市場を獲得することになった。

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 パズドラは,さまざまなゲームメディアに取り上げられ,連載・特集が組まれている。また,他社作品とのコラボも進んでおり,「太鼓の達人」や,スクウェア・エニックス作品との連携も進行中であると発表された(具体的な情報はこれからとのこと)。
 こういった展開に対し「ものすごい広告宣伝費をかけているんでしょう?」という質問をされることもある,と山本氏は語る。だがWebの記事に関して言えば,ガンホー側から働きかけることはなかったという。記者が本当に面白いと思ったゲームを応援した結果が現状なのだそうだ。

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 また山本氏は,カードバトル型ソーシャルゲームが繁茂する現状を危惧する一方で,「ユーザーがそれを求めているのだから仕方ない」とあきらめるのではなく,作り手のアプローチによって現状を変えていけると述べる。これが机上の空論ではなく,実際に成功しているのだから,パズドラは大変に重要な事例といえよう。
 なお,パズドラは今夏を目標にAndroid版がリリースされるほか,コンシューマゲームとしての展開も予定されているという。コンシューマ進出にあたっては「iOS版での利益を全部投入していい」と森下氏が語っているらしく,山本氏は「変な社長です」と苦笑しつつも,パズドラの更なる展開を目指すとして,本公演を締めくくった。

「パズル&ドラゴンズ」公式サイト

  • 関連タイトル:

    パズル&ドラゴンズ

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    パズル&ドラゴンズ

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