インタビュー
「ファンタシースターオンライン2 es」,シリーズプロデューサーの酒井智史氏とディレクターの陳 智政氏にインタビュー。“境界を超えるRPG”が完成するまでの道のりとこれから
Android版が2014年4月7日に,iOS版が5月14日に正式サービスを開始した本作は,「PSO2」と連動を行うことで,同じキャラクターを使って「PSO2」「PSO2es」の両方をプレイできるのに加え,獲得した経験値の一部やアイテムなどを共有できるという,“境界を超えるRPG”を実現しているのが最大の特徴だ。ゲームの内容は「こちら」の記事で紹介しているので,詳細を知りたい人はチェックしてほしい。
今回は,「PSO2」シリーズプロデューサーの酒井智史氏と「PSO2es」ディレクターの陳 智政氏にインタビューを実施し,プロジェクトの経緯から今後の展開まで,いろいろな開発秘話を聞かせてもらった。「PSO2」のプレイヤーはもちろん,「PSO2」をプレイしたことがない人もぜひ目を通してほしい。
「ファンタシースターオンライン2 es」公式サイト
Google Play「ファンタシースターオンライン2 es」ダウンロードページ
App Store「ファンタシースターオンライン2 es」ダウンロードページ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。陳さんは,ニコニコ生放送の「PSO2放送局」視聴者にはおなじみだと思いますが,4Gamerには初登場となりますので,まずは「PSO2es」との関わりから教えてください。
陳氏:
僕はもともと「PSO2」チームにいて,2012年7月にPC版「PSO2」をリリースした直後くらいに「PSO2es」チームに合流したので,もう1年半以上になります。「PSO2」との連動に試行錯誤してきて,スマホアプリとしてはかなり長い時間かかってしまいました。
最初に,「PSO2」のスマートフォン版としてプロジェクトを発表したのが2012年3月の「メディアブリーフィング2nd」でしたから,2年くらい経ってしまいました。すごく長い間お待たせしてしまい,申し訳ありませんでした。
4Gamer:
「PSO2」のサービス開始前から発表されていたこともあって,余計に長く感じられたのかもしれませんね。
「PSO2es」の登場で,メディアブリーフィング2ndで謳っていたすべての“革命”がついに実現したわけですが,現在の心境を聞かせてください。
陳氏:
「PSO2」で掲げた「境界を超えるRPG」として目指した楽しさを考えればまだまだですが,グラフィックスや操作性を含めて,スマートフォン向けゲームとして一定のクオリティは達成できたと思っています。
ただ,当初のコンセプトから考えると,新規のユーザーさん向けの部分と「PSO2」と連動する部分のどちらも,本当は今の2倍くらいの要素が必要だと思っています。まだまだ頑張っていかなければいけない部分は多いので,これからも一歩一歩,できるところから改善していきたいです。
「PSO2es」の“es”にはエッセンスという意味が含まれているんですけど,本質を咀嚼しながらもちょっと違う,「PSO2」の世界観を知っていただけるゲームにできたんじゃないかなと思います。ゲーム的にほぼ完成してようやく遊んでいただける形になって,ちょっとホッとしています。
ただ,陳も言いましたけど,まだ「PSO2es」と「PSO2」の連動要素というのは限られています。「PSO2」は今後もアップデートされていくので,「PSO2es」も当然,それにしっかりと追いつけるようアップデートをしていきますし,連動という意味でも,もっと良いものにしていくつもりです。
単体で遊べるゲームの「PSO2es」としても,ウリの一つである「PSO2」との連動でも,しっかりとブラッシュアップしていけたらいいなと思っています。
4Gamer:
「PSO2es」と「PSO2」は別のゲームになると発表当初から言われていましたが,「PSO2」をそのまま移植しなかった理由をあらためて教えてください。
酒井氏:
ゲームを作るときって,いろいろな選択肢があると思うんですよ。
「PSO2」っぽいものをスマートフォンで作るという選択肢もあったとは思うんですけど,それではどうしても劣化版にしかなりません。それよりも本来の主旨である,「PSO2」を知らない,主にスマートフォンのゲームをプレイするユーザーさんに向けた,「PSO2」への入り口となるものを作るという方向に特化させたかったんです。
「PSO2es」では,スタイリッシュなアクションRPGである「PSO2」と,ソーシャルゲームの気軽さを融合させることを目指し,「PSO2」チームにアドバイスやサポートを受けながら開発してきました。
また「PSO2es」は,「作ったキャラクターがそこで終わりじゃない」というところが一番の特徴です。スマートフォンのゲームは単体で完結するのが普通ですけど,「PSO2es」では自分のキャラクターが「PSO2」でも活躍できるようになっています。連動するメリットも用意したので,いずれは両方とも楽しんでいただけるようになれば嬉しいですね。
4Gamer:
ゆくゆくは,「PSO2」のプレイヤーになることも期待していると。
酒井氏:
普段はソーシャルゲームしか遊ばないような方々に,「PSO2」も遊んでほしいという気持ちはありますけど,必須ではないんですよ。
やはり,「PSO2」という本格的なオンラインゲームを遊んでもらうハードルはけっこう高いですから,見込みとしてはそれほど多いと思っていません。「PSO2es」から始めた方に「PSO2」をプレイしていただける割合は,数%くらいだと考えています。
そういう意味では,キャンペーンなどの取り組みを考えて,その割合をうまく上げていくのがこれからの課題ですね。
4Gamer:
「PSO2」に触れてもらうきっかけ作りがポイントになりそうですね。
酒井氏:
「PSO2es」から始めた方にぜひ見てほしいのが,「PSO2」のキャラクタークリエイトです。
「PSO2es」のキャラクタークリエイトは,普通のソーシャルゲームでは考えられないレベルで相当細かくカスタマイズができますが,「PSO2」ではさらに,「こんなにできるのか」と驚くほどの違いがあります。
アンケートの結果などを見ると,「PSO2」プレイヤーの皆さんには物足りないと言われてしまうのですが,ソーシャルゲームを遊んでいる人には,「PSO2es」のキャラクタークリエイトは,すごく頑張っているという評価をいただけています。
「PSO2es」から始めた方は,連動をしてから「PSO2」にログインすると,初回は無料でキャラクタークリエイトができます。その結果は「PSO2es」にも反映されますし,同時にアイテムパックの最大所持数が最大50になるというメリットもあるので,ぜひ試してもらいたいです。
Android版を先行して開発した理由とは――あえて茨の道から進む心意気
4Gamer:
「PSO2es」はAndroid版がiOS版より先にリリースされましたが,なぜAndroid版からリリースすることになったのでしょうか。
陳氏:
Android版のほうを先にしたのは,いくつか理由があるんです。
まず,サービス初期段階ではとくに,即座に対応しないといけない問題が発生することを考慮しないといけません。そういう意味だと,アプリの更新がいつでもできるGoogle Playのほうが,いろいろな対応をしやすいんです。そういった事情が,Android版を優先した理由の一つに挙げられます。
また,Android端末はスペックが多岐にわたるので,現実問題として,ほとんどの端末で動作するプログラムでも特定の機種だけで問題が発生する,ということがあり得ます。ですので,開発の難度が高いほうを先に対処してしまおうと考えたんです。
4Gamer:
あえて茨の道から進むことを選んだわけですね。
また,AC(アークスキャッシュ)をユーザーさんに望まれる形に近づけられるという点もポイントでした。iOS版では諸事情があってACを「PSO2」とは独立した形にせざるを得なかったのですが,Android版ではACを共有できるので優先したという事情もあるんです。
4Gamer:
Android版のほうが,「PSO2es」が理想とするコンセプトに近かったと。
酒井氏:
それと,「PSO2es」が企画されたのが2年くらい前なので,当時はAndroid全盛の時代が来ると予想していたところもあるんですよ。今ではだいぶ状況が変わっていますが(笑)。
4Gamer:
世界的にはAndroidのシェアのほうが大きいですが,日本だけは異様なまでにiPhoneのシェアが大きいですからね(笑)。ちなみに,「PSO2」プレイヤーのスマートフォン所有比率は,どのようになっているのでしょうか?
陳氏:
以前のアンケート結果だと,ユーザーさん全体のうち3〜4割がAndroidで,iPhoneは2割くらいといったところですね。
4Gamer:
iPhone版は,どの程度のスペックがあれば動作するのでしょうか。
陳氏:
端末としてはiPhone4S以降のiPhoneと,第3世代以降のiPadとiPad Air,iPad miniに対応しています。iOSのバージョンは6.0以降対応となります。
4Gamer:
スペックとしては,初代iPadとiPad2のみが非対応で,2012年以降に発売された製品ならプレイ可能ということですね。
一方のAndroid版では,Google Playの「PSO2es」紹介ページで,「推奨端末」と「ダウンロード可能端末」に分けて掲載されています。これは検証が済んでいるかどうかの違いということでしょうか。
そうですね。検証は随時進めていて,推奨端末は今後順次拡大していく予定ですが,Androidは端末のバリエーションが多いこともあって,まだしっかりとした検証が済んでいない端末もあります。
2013年の夏モデルあたりの端末を水準にしているので,Galaxy SIIIやXperia AXと同程度のスペックであれば,動作自体は可能だと思います。ただ,我々が予期しない不具合などが発生する可能性もあるので,検証が済むまでは「ダウンロード可能な端末」とさせていただいているんです。
4Gamer:
その世代であれば,Android OS 4.0.0以降に対応していて,CPUがデュアルコアの1.5GHz以上というのが,推奨スペックのボーダーラインになりそうですね。
陳氏:
それと,ゲームをインストールするのに必要な空き容量は400MB以上となっていますが,端末としては1GB以上のRAMを搭載している必要があるのでご注意ください。
4Gamer:
アプリ本体の容量はそれほど大きくないですよね。
陳氏:
やはり,アプリの容量が大きいとダウンロードに時間がかかりますし,ゲームを遊んでもらえないケースも増えてしまいます。ですので,アプリ本体の容量を節約するために,アイテムアイコンやコスチューム/パーツなどの3Dモデルといった,ゲーム性に直接関係ないデータをオプション扱いにしました。
4Gamer:
追加データをインストールすると,全体の容量はどのくらいになるのでしょうか。
データダウンロードには「アイテムアイコン」と「全てをダウンロード」の2種類があるのですが,アイコンだけだと600MB以上,全データをダウンロードすると3GB以上の容量が必要になります。
4Gamer:
アイテムアイコンはまだしも,全データをダウンロードすると容量をかなり使いますね……。
陳氏:
「PSO2es」では,「PSO2」と同じ武器やコスチュームが使えるのがウリの一つですが,アイテムが2000種類以上あるので,スマートフォン向けに最適化してもデータ量が相当大きくなってしまうんです。
正直,スマートフォンアプリとしては容量が大きすぎると感じるところもあるんですけど,キャラクター体型の反映と同様,ユーザーさんのニーズが高い部分ですから,使用状況に合わせてアップグレードできるような形にしました。
4Gamer:
追加データを適用すると,それぞれ見た目はどのように変わるのでしょうか。
デフォルトだと,アイテムアイコンがカテゴリごとに共通化されていますが,データをインストールすると,「PSO2」と同じようにアイテム固有のアイコンになります。
全データをインストールすると,クエストに同行するキャラクターが,そのキャラクター本来の武器やコスチュームで表示されるようになります。
基本的にはどちらも,見た目をより「PSO2」に近づけるためのものなので,インストールしなくてもゲームプレイに支障はありません。
4Gamer:
今後,アップデートを重ねるとアイテムも追加されていくと思いますが,「PSO2es」の使用容量は,どのくらいのペースで増えていくのでしょうか。
酒井氏:
3Dモデルを扱うゲームの宿命なので,フィールドが追加されたりすると容量が大きくなってしまいますが,あまり増えないような配慮はしています。
陳氏:
基本的には,自分のキャラクターが持っている武器やコスチュームなどのデータだけがインストールされるようになっていますから,使用容量が急激に増えるようなことはないはずです。
ただ,追加データをすべてインストールしている場合は,差分のアイテムデータが自動的に追加されるので,空き容量に余裕を持たせたほうがいいかもしれません。
4Gamer:
追加データをすべてインストールしていなければ,アップデートで容量が足りなくなるようなことはなさそうですね。とはいえ,端末によっては容量が足りなくなるケースもいずれ発生しそうですが,インストールした追加データを削除して元に戻すことはできますか?
陳氏:
今のところは,いったんアプリを削除して,再インストールしていただくことになります。「PSO2es」のデータは,端末と紐づいてサーバーに保存されているので,アプリを削除してもセーブデータは消えないので,ご安心ください。
プレイヤーのニーズに応えるために,推奨端末のスペックを上げてでも再現度を向上
4Gamer:
2013年8月に実施されたクローズドβテストの段階で,根本的なゲームシステムの部分はでき上がっていたという印象だったのですが,それからリリースまで,どの部分をブラッシュアップしてきたのでしょうか。
クローズドβテスト以後は「PSO2」との連動部分を中心に,一つ一つしっかりと検証と改善をしてきたのですが,一番大きいのはキャラクター造形の再現度ですね。アンケート結果からすると,体型も反映させてキャラクターをもっと「PSO2」に近づけないとリリースはできないだろうと判断しました。
4Gamer:
クローズドβテストのときは,推奨端末もAndroid OS 2.3以上と今より低かったですし,参加者は「PSO2」のプレイヤー限定だったので,見る目もとくに厳しかったのかもしれませんね。
確かに,我々も造形の反映度が甘いと感じるところはあったのですが,クローズドβテスト当時に推奨端末としていたスマートフォンのスペックだと,あれが限界に近い状況だったんです。
ただ,テストに参加したユーザーさんからたくさんのご意見をいただいて,その中で一番多かったのが,キャラクタークリエイトの反映が甘すぎるというお叱りでした。先のことを考えるなら,今のうちに舵を切ったほうがいいだろうと思い,体型を含めた部分をどこまで再現できるか,テストをしてみたんです。
推奨端末の必要スペックを上げることになりましたが,かなりのレベルまで「PSO2」のキャラクターを再現できる目処がなんとかついたので,ちょっとお時間をいただいて改修する形になりました。
4Gamer:
キャラクターの造形以外で,とくに変わった部分はありますか?
酒井氏:
ゲームが単調だという厳しい意見をいただいたので,飽きが来ないようにレベルデザインを考え直しました。今はしっかりと楽しんでいただける形になっていると思います。
陳氏:
ジャストアタックも発動しやすくなっているので,アクション面もかなり改善されています。
また,クローズドβテストのときは使えるチップの数が限定されていたので,戦闘がやや単調に感じられた方もいたかと思います。正式サービス以降,チップの数が大幅に増えたことで,戦略性もかなり高くなっています。
4Gamer:
チップの数は何種類くらいあるんですか?
陳氏:
解放後のチップも含めると,正式サービス開始時点で200種類以上あります。今後も随時増やしていきますが,「PSO2」にはないような独自のチップも入れていけたらなと考えているところです。
チップといえば,「PSO2」の登場人物のレアチップにキャラクターの説明がないですよね。せっかく「PSO2」というバックグラウンドがあるのに,「PSO2es」しかプレイしていない人に伝わらないのは,もったいない気がするのですが……。
酒井氏:
そのあたりは今後の課題だと思っています。「PSO2es」のストーリーにはそれを補足する意味があるので,そこから「PSO2」という世界自体に興味を持っていただければと。
「PSO2es」でできることって,「PSO2」と比べるとすごく限られているので,まずはキャラクターであったりエネミーであったりといったエッセンスから,いろんな世界が広がっているんだという雰囲気を楽しんでもらえればいいかなと思っているんです。
陳氏:
「PSO2es」独自要素であるチップもストーリーに絡めているので,なぜ「PSO2es」にはチップというものが存在するのかも,プレイすると分かるようになっています。
4Gamer:
「PSO2es」で展開されるストーリーは,どのように「PSO2」とリンクしているのでしょうか。
陳氏:
世界観やフィールドは「PSO2」と共有していますが,エピソード1やエピソード2とは絡まない,違う時間軸のアナザーストーリーが展開されることになります。
リンクといえば,「PSO2es」の人気が出たらセラフィを「PSO2」にも出してほしいと,シリーズディレクターの木村※にお願いしています(笑)。
※「ファンタシースターオンライン2」シリーズディレクターの木村裕也氏
「PSO2es」では,オリジナルキャラクターのセラフィとプレイヤーの間で物語が進んでいくというシンプルな構成になっているので,それを楽しみながらプレイしていただくのもいいかなと。
ちなみに,「PSO2」では,しっかりとしたイベントシーンとストーリークエストがあるんですけど,「PSO2es」の場合,クエストの合間にミニストーリーが展開されるような感じです。
少しづつ真実が見えてくるような部分は,イメージとしてはメッセージパックを見つけながら話が進んでいく,「ファンタシースターオンライン」にちょっと近いですね。
4Gamer:
クエストの種類には,どのようなものが用意されていますか?
陳氏:
ストーリーを進めていく「アークスクエスト」と,期間限定の「スペシャルクエスト」の2種類ですね。レアな武器を入手できる期間限定のクエストであったり,チップの強化素材を集めやすい日替わりのクエストであったりと,何度もプレイしていただけるメリットのあるものを用意しています。また,「スペシャルクエスト」の中には「PSO2」の緊急クエストのような時間限定タイプのクエストもあります。このようなクエストは,今後も継続的に追加していく予定です。
4Gamer:
実装済みのクエストで,全体のボリュームはどのくらいなのでしょうか。
陳氏:
「PSO2」と「PSO2es」の両方をプレイしているとちょうどいいくらいのボリュームです。もちろん,今後もクエストを追加していきますが,ユーザーさんのコンテンツ消費速度はかなり早いので,「PSO2es」に集中して進めたら追い付かれてしまうと思いますが。
酒井氏:
「PSO2」もそうなのですが,レアアイテムのドロップを狙うのがメインの遊びになっています。そういう意味では,クエストを何度もプレイしていただくことになると思いますので,普通のPRGのように1回クリアして終わりという性質のものではないんですよ。
武器やコスチュームは,「PSO2」と同じタイミングで「PSO2es」にも実装されますから,新しいアイテムを探す楽しみは,アップデートごとに追加されていきます。
フィールドについても,今後も追加していきますので,楽しみにしていただければと思います。
陳氏:
アイテムは2000種類を超えていますし,アップデートごとに200から300種類は追加されています。もし全部手に入れようとしたら,いくら時間があっても足りないと思います。これは,「PSO2」を母体にしているからこそ実現できた,普通のスマートフォンゲームの規格を超えたボリュームだと言えます。
ドロップしたアイテム,メセタやFUNは「PSO2」と「PSO2es」で共有されるので,ちょっとした空き時間にレアアイテムを探せるようになるのが,「PSO2」プレイヤーには一番大きいのではないでしょうか。経験値も共有されるのでクラスの育成もやりやすくなりますし,マグにアイテムを与えられるので,マグを育成中の方には絶対にオススメです。
4Gamer:
レアアイテムのドロップ率は「PSO2」と「PSO2es」で同じですか?
陳氏:
厳密に言うと,まったく同じ確率ではありません。基本的に「PSO2es」はソロプレイですし,システムが「PSO2」とは異なる部分がありますから,木村とも相談して,それらを考慮して調整しています。
具体的な数字は伏せさせていただきますが,時間効率で言えば「PSO2」と近い形になっていると考えていただければと。
4Gamer:
あと,連動機能の中にあった「PSO2」の緊急クエスト事前告知が意外だったのですが,これはなぜ優先的に実装されたのでしょうか。
緊急クエストの事前告知は,僕が「PSO2es」のプロジェクトに参加したときから,絶対やりたかったことなんです。
「PSO2」のゲーム内でも,緊急クエストの事前アナウンスが入りますけど,出先とかだと15分じゃ間に合わないじゃないですか。でも,1時間前に分かれば家に帰ることもできるだろうと(笑)。
2年前くらいから木村と相談していたのですが,ようやく日の目を見るに至りました。
4Gamer:
外出中だと,プレイ中の友達に教えてもらっても,PS VitaとモバイルWi-Fiルーターを持ち歩いている人くらいしかログインできませんからね。
陳氏:
自分自身が「PSO2」をプレイしていて,「こういうことができればいいのに」と思うことがいろいろあったので,「PSO2es」にはスマートフォンならではの「PSO2」サポート機能を入れたかったんです。
ただ,告知メールとはいえサーバーに負荷がかかるので,いろいろと検討した結果,プレミアムセットを利用している方限定のサービスとさせていただきました。
酒井氏:
ただ,プッシュ通知には対応していないので,そのあたりをどうするのか,今後の課題として検討しているところです。
4Gamer:
「PSO2」との連動について,今お話してもらったほかに,ボーナス要素はありますか?
陳氏:
「PSO2」でチュートリアルが終わるまでゲームを進めると,初期コスチュームから所持していないものがもらえます。
また,「PSO2」でクラスレベルをレベル10まで上げるとラッピーメダルを5枚,レベル20まで上げるとラッピーメダルを10枚プレゼントさせていただきます。
4Gamer:
当初の計画にあった連動要素の中で,まだ実装されてないものは何かありますか?
ひと通りは実装できているんですけど,マイショップがまだなので,いずれ実装したいと思っているところです。
正直にお話ししますと,マイショップはサーバーにけっこう負荷がかかるのが悩みどころなんです。「PSO2」では,ACスクラッチのラインナップを更新した直後などに,マイショップの処理が重くなることがあるくらいなんですよ。
陳氏:
「PSO2es」と「PSO2」のサーバーは共通なので,今の状態で「PSO2es」にもマイショップを実装すると「PSO2」にも影響が出てしまうんです。申し訳ないのですが,実装までしばらくお待ちください。
4Gamer:
マイショップ以外に,連動機能を今後増やしていく予定はあるのでしょうか。
酒井氏:
もちろんあります。
開発中も,「PSO2es」のプランニングをしているそばから「PSO2」に新しい機能が入っていったので,まだ追いつけていない部分があります。「PSO2」では常にアップデートが続いていくので,今後も新しい機能がどんどん入っていきますから,今後はそちらもフォローしつつ,しっかりやっていきたいと思っています。
ただ,追加するペースについては,運営をしながらもうちょっと見極めていきたいなと考えているところです。
4Gamer:
どのような点が見極めのポイントなんですか?
酒井氏:
「PSO2」と連動してアップデートしていく部分もありますから,開発に割ける時間は限られています。「PSO2」との連動要素を求めている方が多いのか,独立したゲームとしての完成度をより高めることを求めている方が多いのか,どこに需要があるのかユーザーさんの動向を見ながら決めていこうということですね。
陳氏:
「PSO2」の計画に沿って進めていくコンテンツもある関係上,ユーザーさんが求めているものを即座に提供できるとは限らないのですが,常に最善の選択をしていきたいと考えています。
「強さを買えない」というポリシーは変えず,面白さの根幹は無料で楽しめるゲームを目指して
4Gamer:
ここからは,課金要素について質問させてください。「PSO2es」は基本プレイ無料ですが,ビジネスモデルとしては,ゲームのどの部分で収益を上げていく見込みなのでしょうか。
「PSO2es」はスマートフォンのゲームということで,行動力の回復やパックの拡張といったところも課金アイテムを用意していますが,主な課金要素はスクラッチになると考えています。
酒井氏:
課金要素としては,es スクラッチやACスクラッチがメインになると思いますが,「強さを買えない」というポリシーは「PSO2」と同じです。
強さという部分では,プレイヤーがクラスレベルを上げていくことで,武器の性能が強さのポイントになるようにゲームを作っていますし,性能の高い武器などのアイテムは,基本的にクエスト中のドロップでしか手に入らないようになっています。
陳氏:
まだ至らない部分があるので課題は残っていますが,最終的には「PSO2」同様に,面白さの根幹は無料で,ずっと楽しめるというゲームに近づけていきたいと思っています。
4Gamer:
チップは,クエスト報酬やFUNスクラッチでも手に入りますし,ACスクラッチで手に入るチップは,戦略のバリエーションをより豊かにするためのものと考えていいのでしょうか。
酒井氏:
そうですね。それと,最近のトレンドにならった形になりますが,ラッピーメダルでメダルスクラッチを引けたり,行動力の回復やチップパックの拡張ができたりします。
ラッピーメダルは,クエストのクリア報酬やゲーム内イベントなどで入手できますから,無料でも十分遊んでいただけると思います。また,プレミアムセットを利用している方には,1日1枚ラッピーメダルを配布させていただきます。
陳氏:
プレミアムセットは,同じSEGA IDであれば「PSO2」と「PSO2es」の両方に適用されますから,両方に課金する必要はありません。また,FUN獲得ポイントやログインボーナスの増量といった特典は「PSO2es」でも自動的に付与されます。
4Gamer:
プレミアムセットは1300ACで30日間有効ですから,毎日ログインすればラッピーメダルが合計30個もらえるわけですね。行動力回復(100AC)なら30回分,メダルスクラッチ(200AC)なら10回分に相当する計算ですし,「PSO2es」だけプレイする場合でも,プレミアムセット購入を検討してもよさそうですね。
スクラッチでは,ACスクラッチやACスクラッチゴールドもありますが,これらの中身は「PSO2」と同じですか?
陳氏:
利用には,SEGA IDを登録してキャラクター連動をしていただく必要があるんですけど,それ以降は,完全に同じラインナップでスクラッチを利用できます。
酒井氏:
あわよくば「PSO2」にも来てほしい,みたいな意図が見え隠れしていますけど(笑)。ラインナップの中には,「PSO2」でしか使えないものがあったり,種族に適合しない場合があったりしますから,連動したくなってしまうかもしれませんね。
4Gamer:
ただ,「PSO2es」から始めた人だと,そういったアイテムが出たときにどうしたらいいか,分かりづらいところがあるかもしれませんね。
その点は開発でも課題として捉えていて,今後のアップデートでさらにベストな答えを出せるよう,いろいろと模索しているところです。
最近では,チップとコスチューム/パーツの両方が入っているes スクラッチの販売を開始しました。こちらでは,「PSO2」で過去に配信されたコスチューム/パーツなどが手に入れられます。
また,あまったチップや「PSO2」でしか使えないACスクラッチのアイテムなどをほかのアイテムと交換できる「リサイクルショップ」を追加しましたので,より効率的にスクラッチを利用いただけるようになってきていると思います。
4Gamer:
コスチューム/パーツ以外で出るアイテムが,「PSO2」の便利アイテムがいい人はACスクラッチ,「PSO2es」のチップがいい人はes スクラッチ,という棲み分けができるわけですね。コスチューム/パーツだけがいい人はACスクラッチゴールドを選ぶでしょうし。
陳氏:
それから,普通のスマートフォンアプリだと,リアルマネーを出さないとガチャ限定のアイテムを入手できないというのが常識だと思いますが,ユーザーさんには,「PSO2」のマイショップで,他プレイヤーが販売しているコスチュームなどをメセタがあれば手に入れられる,ということを知っていただきたいんです。
ゆくゆくは,マイショップで好きなコスチュームを手に入れて,自分のキャラクターに着せてもらえるようになってくれたらいいなと思っています。
4Gamer:
他プレイヤーの出店状況に左右される部分はありますが,マイショップからメセタで課金アイテムが買えるのは,無課金プレイヤーにはありがたいですよね。
酒井氏:
ただ,先ほどの「劣化版を作っても仕方がない」という話にもつながるんですけど,「PSO2es」で「PSO2」のマイショップと同等のものを提供するのは難しい部分があります。理想を言えば,しっかりとした仕組みがすでにある「PSO2」で利用していただけると嬉しいですね。
4Gamer:
せっかくなので,「PSO2」シリーズ全体としての今後の展開を教えてください。
「PSO2」全体という意味で言うと,「PSO2es」のサービス開始で,2年前から言っていた“境界を超えるRPG”が完成したというか,やっと入り口に立てたという感じです。これからは,「PSO2」全体をどう広げていくのかさらに考えていって,今後のアップデートに反映していきたいです。
6月からは,2周年記念アップデートの「ファンタシースター感謝祭2014 ONLINE」を前編と後編に分けて実装し,2周年に向けて進んでいきます。昨年同様,オフラインイベントの「ファンタシースター感謝祭2014」も全国5都市でやらせていただきます。
前回は,我々が見込んでいた来場者数をはるかに超える人数の方に来ていただいて,入場制限などの問題が発生してしまいましたが,今回はその点も改善して,より多くの方に前回以上にもっと楽しんでいただけるイベントにしようと,頑張ってプランニングしています。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてのメッセージをお願いします。
陳氏:
「PSO2es」では,新規に始める方には,スマートフォンでも「PSO2」の魅力がしっかりと伝わるものに,「PSO2」を遊んでくださっている方には,いつでも触ってもらえるものにすることを目指し,「PSO2」チームの協力を得ながらチーム一丸となって頑張ってきました。
東京ゲームショウ2012や2013年8月のクローズドβテストでいただいたユーザーさんの意見を受け,どこまで連動できるか試行錯誤してきましたが,ここまで走って来ることができたのは,ユーザーさんの反応が力の源になったからだと思っています。
今後も走り続けていきますので,これからも応援をよろしくお願いします。
酒井氏:
先ほどもお話しましたが「PSO2es」には,今「PSO2」をやっている方に向けた新しいサービスの一つという役割と,「PSO2」というコンテンツ全体としての新しい入口という役割があります。
とくに新しい入口という意味では,いろいろな限界に挑戦してきたので,「PSO2」をやっていない方に,スマートフォンアプリとして新しいというか,面白いものを見せられるのではないかと思っています。
また,「PSO2」に興味を持っていただいて,PC版やVita版に触っていただければ,さらにすごい世界が広がっていますので,ぜひ,触っていただければ嬉しいですね。
これからも,「PSO2」「PSO2es」ともに全力で走っていくので,まだまだ楽しんでいただけると思います。ぜひ,ご期待いただければと。
4Gamer:
ありがとうございました。
「ファンタシースターオンライン2 es」が発表されたのは,母体となる「ファンタシースターオンライン2」のサービスが始まる前の2012年3月に開催されたイベント「メディアブリーフィング2nd」だった。
配信までの流れを簡単に振り返ると,当時のリリース予定は2012年冬とPS Vita版よりも先だったのだが,全体的に見直しを図ることになり,リリースが延期されることになったのが2013年11月のこと(関連記事)。その後,2013年8月に実施されたクローズドβテストの結果を踏まえて,クオリティアップが必要との判断から,サービス開始時期が2014年春に変更された。
そして,今回ついにAndroid/iOSの両方でアプリがリリースされ,PC/PS Vitaの「PSO2」の世界とスマートフォンが,“境界”を超えてつながったわけである。
「PSO2es」を,外出中でもキャラクターの育成やアイテム探索ができる,というコンパニオンアプリとして考えた場合,経験値やメセタ,FUNなどを共有できるのはありがたいところ。筆者の場合,「PSO2es」は主に2体目のキャラクター(※「PSO2」では無課金でも2キャラまで作成可能)でプレイしているのだが,「PSO2es」だけプレイしていても初期クラスをすべてレベル20以上にできるなど,お手軽に育成できるので重宝している。
とはいえ,4月23日のアップデートで追加された「ソールレセプター」のように,ドロップアイテムに付与される特殊能力に「PSO2es」限定のものが登場するなど,ベテランプレイヤー向けの施策も実装され始めている。
「PSO2es」は「PSO2」とともに成長していくタイトルであり,今後も単独のゲームとしての機能が充実するのはもちろん,連動要素が増えてより遊びやすくなっていくことに期待したい。
「ファンタシースターオンライン2 es」公式サイト
Google Play「ファンタシースターオンライン2 es」ダウンロードページ
App Store「ファンタシースターオンライン2 es」ダウンロードページ
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン2 es
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン2 es
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン2
- 関連タイトル:
ファンタシースターオンライン2
- この記事のURL:
キーワード
(C)SEGA
(C)SEGA
(C)SEGA
(C)SEGA