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Paradox Interactive本社旅行記。ファンミーティングに参加して,「March of the Eagles」「Crusader Kings II」などの開発者やCEOに,いろいろな話を聞いた
「Hearts of Iron」(以下,HoI)シリーズや「Europa Universalis」(以下,EU)シリーズで知られるスウェーデンのパブリッシャ/デベロッパ,Paradox Interactive(以下Paradox)が2013年2月21日,本社を置くストックホルムでファンイベントを開催したので,その模様をお伝えしたい。規模や重要性は2013年2月初めにアイスランドで行われた「Paradox Convention 2013」に譲るものの,ストラテジーゲームプレイヤーを中心に世界中に熱心なファンを持ち,日本でも“パラドゲー”として知られる同社タイトルだけに,本社には世界中から熱心なファンが集まり,会場は非常に盛り上がった。筆者もこのファンミーティングに参加し,何人かのスタッフにインタビューをする機会を得たので,その様子をレポートしたい。
日本はすっかり夏の気配だが,2月のストックホルムはまさに厳冬期。ぜひ,凍てつく北欧の雰囲気を感じつつ読んでほしい。また,記事中に挙げられている事柄のうちには,パッチの適用などによって変更された部分もあるかと思うので,そのへんはあらかじめご了承願いたい。というわけで,さっそく始めよう。
筆者は現在,ドイツの北の街キールに住んでいるのだが,Paradoxのタイトルには以前から親しんでおり,ヨーロッパに来てからはβテスターとして同社タイトル開発のお手伝いなどをしてきた。そんな筆者もさすがにストックホルムの本社を訪れた経験はなかったので,ぜひファンミーティングに参加して,スタッフに直接会い,話を聞こうと思ったのだ。日本から参加するのはなかなか難しいが,キールからならまあ,すぐそばとは言えないものの,遠すぎるというほどではない。というわけで,念願のストックホルム行きを実行に移したわけだ。
だが,せっかくなのでストックホルム訪問にはちょっとこだわってみようと思う。数多くの歴史トラテジーを作るParadoxへ行くのだから,普通の旅以上に歴史的な要素を感じながら本社へ向かおうというわけだ。
Paradox Interactiveへと続く道
ご存じのように,この航路はバルト海と北海を結びつける,かつての経済的大動脈であり,バイキングやハンザ同盟諸都市の商船が行き交い,海峡に関税をかけたデンマークが大いに潤った。HoIシリーズのプレイヤーなら,筆者がフェリーに乗り込んだキールはドイツ潜水艦の基地であり,ヨーテボリはドイツに鉄を輸出し続けた貿易港であることをまず思いつくだろう。フェリーの窓からは,なんの変哲もない海が広がっているだけだが,歴史ファンにとって実にそそられる背景ではないか。
ヨーテボリは港湾を中心に発展した都市であるため,街のあちこちで感じられる雰囲気には筆者の住むキールに共通するものが多かった。しかし,スウェーデンを訪問した時期は厳寒期であり,市内を流れる川や運河が凍て付いていたことが,ドイツからやってきた筆者にとって感慨深かった。凍った川面を眺めつつ,そういえば光栄(現コーエーテクモゲームス)の「ランペルール」ではバルト海が凍ったなあと思い出したりした。
この光景は最終目的地のストックホルムも同様で,街を歩く人がことごとく重厚な防寒装備をしていたのが印象的だった(まあ,中には手袋もニット帽もかぶらず,どうみても薄着で出歩いている強者もいたのだが)。
さて,目的地であるParadoxは,ストックホルムの南地区にあたるセーデルマルムのヨートガタン通りに本社を構えている。王宮など古い建物が密集したガムラスタンや,高級ブランドショップが軒を並べるノルマルムなどに比べると,小さな店や住宅街が多く雑多な雰囲気だ。とはいえ,住宅地に密着した地区ならではの活気に満ちており,筆者にとっては親しみやすいものがあった。Paradoxのオフィスは,そんなセーデルマルムでは珍しい高層ビルの中にあった。
Paradox初のナポレオニック・ウォー
「March of the Eagles」開発者インタビュー
最初に紹介してもらったのは,「March of the Eagles」(以下,MotE)の開発者,Olof Björk氏。MotEは,Paradoxとして初めてナポレオニック・ウォー(ナポレオン戦争)を正面から扱ったことで話題になった作品だ。
2013年2月18日に発売されたこのゲームは,ファンミーティング時点ではParadoxの最新作であり,最もホットなタイトルだった。インタビューの順番は事前に知らされていなかったため,最初から最新タイトルの制作者の話を聞けるとあって,軽く驚いた筆者だったが,もっと驚いたのが,Björk氏が日本語で話しかけてきたことだった。聞けば,合気道の修行と日本語の勉強のため名古屋で一夏を過ごしたという。名古屋の暑さにはまいったものの,日本の暮らしは楽しかったよとBjörk氏は日本語で話してくれた。
さて,これまでParadoxゲームに親しんできたファンの誰もが思う,「なぜこの時代と地域を選んだのか?」について。ナポレオニック・ウォーはボードゲームの世界ではスタンダードなテーマであり,「ナポレオン: トータル ウォー」のようなPCゲームもある。そんな中,Paradoxがナポレオンの時代に挑んだ理由とは?
この質問に対して,Björk氏は「従来のシリーズよりもテンポがよく,かつ起伏のあるゲームを作りたかったから」と答えてくれた。これまでのParadox作品は,サンドボックスタイプの自由なゲーム展開が売りだったが,MotEではよりストーリー主体になっており,またプレイ時間も短くなっているという。また,シリーズ作品ではないMotEは新規ファンの獲得および,HoIシリーズなどの,より複雑なゲームのいわば入門編としての役割も期待されている。こうした目的に一番かなっていたのが,ナポレオニック・ウォーだったのだ。
もちろん,この時代を扱った他のゲームとの差異化についても十分に意識されており,戦略級ゲームとして,同盟国や交戦国との間の外交や内政面のデザインにも力を入れているとのことだった。
「March of the Eagles」公式サイト
また,軍事/戦術面での要素についてBjörk氏は,「プレイヤーが選択できるオプションの多さ」を重要なキーワードとして挙げた。MotEは一見すると「Europa Universalis」シリーズのようなインタフェースだが,軍隊の編成や選択できるコマンド,戦争時のファクターの多さなどの点で,MotEはEUよりはるかに複雑化している。
こうした複雑さはマルチプレイモードを十分やりごたえのあるものにしているようだが,Björk氏は「本来なら,軍隊のマイクロマネジメントはもう少し詰めたかった」と話していたので,DLCには,さらなる期待が持てるかもしれない。
ところで,筆者がナポレオニック・ウォーをテーマにしたゲームといわれ,まず思い浮かべるのが,上でもちょっと触れた「ランペルール」(関連記事)だ。ランペルールの面白さは,歴史に実在したキャラクターの運用にあったので,MotEでは史実の人物がどのようになっているのかについて聞いてみたところ,Björk氏は,将軍は500人以上が登録されており,各国の首脳については基本的に固定だが,イベントの選択次第で交代する可能性があるという。
イベントの話が出たところで,MotEのイベントについても尋ねてみた。多くのParadox作品では歴史イベントに重点が置かれる。MotEがストーリー性に基づいたゲームを目指すのであれば,史実のナポレオンの台頭をなぞるようなイベントが組まれているはずだ。
これについてBjörk氏は,当時の世相を演出するランダムイベントが大部分を占めており,史実イベントについてはそこまで多くはないという。また,史実イベントについても,最終的な決定はプレイヤーに委ねられているとのことで,HoIシリーズの一部のイベントのように,強制的な開戦や同盟を強いられるものにはならないようだ。
一例として挙げてくれたのはスウェーデンの王位継承問題で,史実ではフランス将軍ベルナドットが戴冠することになるが,MotEではデンマークから国王を迎えるなど,ほかの「ありえたかもしれない」選択肢も用意されており,プレイヤーは対外関係を考えながらこれを決断することになる。
筆者がもう一つ注目したのが,MotEがヨーロッパから中東にかけての限定された地域を扱っていることだ。これは「Crusader Kings」シリーズを連想させるが,同シリーズでは,モンゴル襲来や鄭和艦隊の来訪といった要素を盛り込むことで,プレイヤーにマップの外の世界を意識させることに成功していた。
MotEにそういう要素は盛り込まれているのか,という問いに対してBjörk氏は,生まれて間もないアメリカ合衆国は開発期間の関係上カットせざるをえなかったと語った。
ただ,イギリスやスペインなど19世紀初頭に世界各地に植民地を持っていた国々には,経済的なボーナスが与えられるとのことで,世界史の大きな枠組みの一部として本作を位置づけようという基本的な試みはなされている。この点もDLCなどの形でさらに強化していきたいということだったので,楽しみにしよう。
最後に,各国ごとのプレイスタイルの違いについて尋ねてみた。ナポレオニック・ウォーを扱ったゲームの通例としてフランスでプレイすることが大前提なのか,それとも対仏大同盟側の諸国ならではのプレイの面白さがあるのかは,ゲーマーとしてどうしても気になるところだろう。
Björk氏は,フランスがMotEの主役であることは確かだが,各国ごとにマンパワーや経済力,地政学的条件が違うため,イギリスなどの国々を選んでもプレイヤーは異なる面白さを体験できると力を込めて説明してくれた。例えば,イギリスの海軍力は,規模や船の建造期間の短さ(これによってイギリス以外の国は「建艦競争」に勝ちにくくなる)などによって再現されているため,イギリスでプレイする人は海軍力を基にした戦略をとりやすくなり,またプロイセンはイギリスと協力しつつ,強大な陸軍力を以てフランスやオーストリア,ロシアに対抗していくことになる。
ロシアは背後に敵がいないという地政学的優位に立っているほか,史実と同様の広大な領土と冬を武器にした焦土作戦もとれるらしい。対抗するスウェーデンは,ロシアとの間にフィンランド問題を抱えているため,ロシアに対する準備をすみやかに整える必要がある。その際,防備を固めるのも手だが他国と組んでプロイセンを分割するのも有効らしく,開発室で行われたマルチプレイでは,本来秘密裏に行われるはずのこれら各国間の交渉が大声で叫ばれていたという。
こうしたプレイの様子を楽しそうに語ってくれたBjörk氏から,軍事,外交に特化したMotEの面白さが筆者にも伝わってきた。日本ではあまり知名度が高くない作品だが,ファンミーティングでプレイしたところ,操作方法はEUシリーズにかなり近く,これまでParadoxの作品に触れたことがある人なら,スムーズにゲームに入り込めると思う。
歴史キャラクターゲーム,
「Crusader Kings II」開発責任者にインタビュー
Björk氏の次に紹介してもらったのが,「Crusader Kings II」(以下,CK2)の開発責任者であるHenrik Fahraeus氏だ。同氏にCK2の成功の理由について尋ねてみたところ,真っ先に挙げてくれたのが,CKシリーズが持つ“キャラクターゲーム”としてのユニークさだ。1作目のCK1でプレイヤーは国王,公爵,伯爵などの封建領主に扮し,世代交代を重ねながら一族を繁栄に導くことになる。こうした,一般のストラテジーにはあまり見られない独自性が評価されたのだろうとFahraeus氏は言う。
また,筆者にとってCK2の大きな魅力は,歴史データの緻密さにもある。このゲームでは1066年から1337年までの各プロヴィンスの支配者がデータ化されており,ローマ教皇やビザンツ皇帝など,一部の称号についてはローマ帝国時代まで遡ることができるほどだ。
このような膨大な情報をどのようにして集めたのかについて聞いたところ,前作の制作で収集したデータをもとに,開発スタッフと有志のファンが協力して構築していったのだという。CK2は前作から続く長期にわたるプロジェクトの産物であり,その厚みはこうしたデータベースの蓄積からも見てとれる。
Fahraeus氏は,史実のデータは一度用意すれば変更する必要がないものであり,もしも「Crusader Kings III」が作られることになっても,CK2のデータベースをそのまま利用できるだろうと語った。Paradoxのほかのシリーズを見ても,歴史データベースの充実は共通して見られることで,こうした積み重ねが同社の強みであることは間違いない。
もう少し詳しく説明すると,安価なDLCを短いスパンで定期的にリリースすることで,多くのプレイヤーに新しいコンテンツを供給するパッチを継続して開発するだけの資金的余裕が生まれ,これによってゲームの寿命を延ばすことができるということだそうだ。基本的にCK2では,DLCの公開と同時にパッチも更新しているが,コンテンツのボリュームを比較すると,DLCよりもパッチの内容のほうが充実している。DLCは主に「今までプレイ不可能だった部分をアンロックする」役割を果たしているとFahraeus氏は言う。
今後のDLCの予定についてもいくつか聞いてみた。まず,バイキングなどの異教を題材にした最新のDLC「The Old Gods」(日本語版での発売は未定)だが,Fahraeus氏によれば,北欧〜東欧の異教徒はCK2本体でプレイ不可能な大きな集団の一つであり,ムスリムおよび海洋共和国でのプレイをアンロックするDLCを発売したあとで,このテーマを選ぶのは自然な成り行きだったという。もちろん,公式フォーラムのファンの意見なども参考にしているそうだ。
「Crusader Kings III」英語公式サイト
「クルセイダーキングスII【完全日本語版】」公式サイト
また,残るプレイ不可能な勢力としてはカトリックの教皇や司教などがあり,ファンの間でこれらをプレイ可能にしてほしいという声も大きいが,現在のところ,そういうDLCの予定はないとのこと。これは,CK2において教皇関係のシステムがすでにできており,これ以上何かを追加することが困難であることに加え,コンクラーベ(教皇選挙)のある教皇では,家門の歴史をシミュレートするCK2のコンセプトに合わないからだという。
その一方Fahraeus氏は,もしカトリック関連で追加するとすれば,テンプル騎士団などの宗教騎士団のDLCを開発したいと話していた。これら宗教騎士団は,主として貴族の子弟によって構成されていたため,これまでのCK2のコンテンツと無理なくマッチしそうなことに加え,十字軍における彼らのインパクトが現状ではそれほど表現できていないという不満もあるから,とのことだ。
DLCに基づいたCK2の成功は,今後のParadox作品のマーケティングの方向性にも大きな影響を与えると思われるだけに,これからの展開にも注目したい。
大規模拡張キットがリリースされた「Victoria II」の開発チーフにインタビュー
三人めは,「Victoria II」(以下,Vic2)の開発チーフであるDan Lind氏だ。2010年に発売されたVic2は,19世紀の複雑な経済や人口をテーマにしたシミュレーションゲームであり,HoIシリーズやEUシリーズほどのセールスは挙げていないものの,背景となる時代やシステムに魅せられたコアなファンの獲得に成功している。
2013年4月16日にリリースされた2番めの拡張キット「Heart of Darkness」も,そうしたファンによる熱い支持に加え,Lind氏を始めとする開発スタッフが,19世紀の世界をより詳しく再現したいと望んだためだ。
というわけでまず,新拡張キットの新要素について尋ねた。Lind氏によれば,3つの大きな変化がこの拡張キットの目玉だという。
第一は,国際関係にさらに深みを与える「危機システム」で,これは,ある地域における中小国間の緊張が高まっていく過程を表現したものだ。このシステムにより,第一次世界対戦以前の比較的小規模な国同士の紛争や独立運動と,そこに介入する列強の関係を描くことができるようになったという。
総じてVic2の外交関係は,史実がそうであったように列強の縄張り争いを中心にデザインされているが,拡張キットではそこに中小国側の視点を追加することになり,中小国が列強をどう利用するかという駆け引きができるようになるのが面白そうだ。
第二の要素が「新聞システム」だ。Vic2に限らずParadox作品の多くは,各地で同時にさまざまなイベントや外交問題などが発生するため,今,世界でどのような出来事が起こっているのか一望することが非常に難しい。新聞システムはこの問題を緩和するためのもので,一年に二回発行される「新聞」には,戦争の勃発や物価の変動などといった情報が掲載される。これは,ほかのウィンドウやパネルを見れば分かるものだが,まとまっているので便利であり,さらに,AI担当国が抱える外交上の問題など,従来はマスクデータであった情報もプレイヤーに公開されるようだ。
これらの情報が実際のプレイに対してどういう影響を与えるのかは不明だが,マスメディアの成長が著しい19世紀の雰囲気を伝えるギミックとしては興味深い。
以上の3点が,新たな拡張キットのポイントとなる。今回の拡張キットによって戦争のパターンが増えると同時に,開戦理由に影響を与える外交システムも複雑化するが,それは開発者達がゲームの背景を「小さな紛争はいくつもあったが,第一次世界大戦という本物のカタストロフィは,列強の巧みな外交によって防がれていた時代」として捉えているからではないだろうか。特定の地域で高まる緊張や国境紛争を列強間の大規模戦争にまで発展させるかどうか。こうした判断は,新しい拡張キットにおいてより重要になってくるに違いない。
最後に,ゲームの本質とはあまり関係ない部分ではあるものの,筆者が気になったこととして「各国ごとのイベントの偏り」について聞いた。Vic2にも各国ごとの歴史イベントが用意されているのだが,中にはベルギーにおける「サックスの発明」やイングランドにおける「サッカー協会(FA)の設立」など,確かに(気になる人にとっては)重要かもしれないが,世界規模での戦略ゲームである本作のスケールからみればかなりローカルなイベントが少なくない。
「Victoria II」公式サイト
「ヴィクトリア2【完全日本語版】」公式サイト
こうしたイベントが入っているのはなぜか? と聞いたところ,Lind氏は笑って,それらは開発スタッフの趣味が色濃く反映しているものだと教えてくれた。例えばFAのイベントは,サッカー好きのスタッフの要望で組み込まれたものだ。ちなみにLind氏自身は恐竜ファンなので,それに関したイベントをこっそり入れたという(確かに19世紀は,恐竜化石の発掘ブームが起きた時代でもある)。この恐竜イベント,残念ながら筆者はゲーム中で見たことがないが,興味のある人は探してほしい。
ParadoxのCEOにインタビュー。PlayStation 4への参入を決めたわけとは
一人は,「The Showdown Effect」のプロデューサー,Karl Leino氏。慶応大学でプログラミングを勉強したというLeino氏は,筆者の質問にも流暢な日本語で答えてくれた。
The Showdown Effectは,2013年2月にリリースされたオンライン対戦アクションゲームで,「Paradox=コアなストラテジーゲーム」というイメージとはちょっとそぐわないが,それもそのはず。実際に開発したのは「Magicka」のデベロッパでもあるArrowheadなのだ。
日本での知名度は低いが,プレイヤーの評判は良好であるとのことだった。筆者もファンミーティングの会場で実際にプレイしてみたのだが,小気味いいテンポとどこか懐かしい雰囲気のあるグラフィックスに引き込まれて,つい長時間遊んでしまった(結果はさんざんだったが)。
「The Showdown Effect」公式サイト
そもそもThe Showdown Effectは,「Soldat」や「Liero」など“知る人ぞ知る”という雰囲気の2.5Dシューターを作りたいというParadoxの希望から始まったという。そこに,Arrowheadが1980年〜1990年代のアクション映画ノリを追加したことで,現在我々が目にするようなゲームのベースが出来上がったそうだ。
Leino氏によれば,こうした本来別の要素がごった煮になっている点が,このゲームの魅力でありユニークさだという。このごった煮感は,ゲームの複雑さ,つまり難度についても当てはまるそうで,根幹となるシステムそのものはクラシックな2.5Dシューターであるためハードルは低いものの,さまざまな武器を使いこなしたり,対象に照準をちゃんと当てて撃つといったテクニックをマスターしたりするなど,プレイヤーがやり込める要素がふんだんに盛り込まれているのだ。
ちなみに本作には,「ネオ・トーキョー」というマップや「ミズ・イチバン」という明らかに日本のサブカルチャーを意識したキャラクターが登場するが,日本に留学した経験のあるLeino氏にとって,こうした要素を組み込むことは非常に楽しかったという。
「Steamのみで展開されているゲームの売れ行きが,日本ではあまり良くないことは知っていますが,日本の皆さんにこのThe Showdown Effectをプレイしてもらえれば,非常に嬉しいです」というメッセージももらっているので,アクションゲームというジャンルに興味がある人は試してみてはいかがだろうか。
Wester氏によれば,この決断は,ハードウェアとしてのPlayStation 4の魅力によるところが大きいという。従来までのコンシューマ機と異なり,PlayStation 4のアーキテクチャはPCに近いものであり,PC向けのハードコアゲームを作ってきたParadoxの要望を十分に満たすという。これまでもコンシューマ機ゲームには注意を払ってきたが,いよいよ実際に制作する時期がきたとWester氏および同社のスタッフは判断したのだ。
ここでパラドゲーのファンとして気になるのは,「彼らがPlayStation 4でどのようなゲームを作るのか?」だろう。これについてWester氏は,Paradoxの強みはストラテジーゲームにある一方で,コンシューマ機の分野ではこうしたコアなゲームが少ないことを指摘。まずは,コンシューマ機用の「Paradoxらしい」ストラテジーゲームを足がかりにし,将来的にはほかのジャンルにもチャレンジしていきたいという。
また,PlayStation 4参入を表明した他社,とくに日本企業との共同プロジェクトなどの可能性について聞いてみたところ,現状では未定だが,Paradoxタイトルのローカライズを担当するサイバーフロントのように,日本のゲーム会社との提携は将来的にありうるとのことだ。
日本のゲーム産業については,日本留学時にアーケードゲームをプレイした経験や東京ゲームショウ,あるいは「モンスターハンター」のような海外でもメジャーなタイトルを通してしか知らないと述べるWester氏だが,日本というゲームマーケットと,そこでの開発については大きな関心を持っているようだった。
Paradoxが,開発チームを独立させた理由は
「ブランド化」にあり
Wester氏はさらに続けて,この10年間の成長の結果,Paradoxの役割をパブリッシャとデベロッパに分ける時期が来たこと,またデベロッパとしても,新たにオンラインゲーム開発のために設立されたParadox Northのように,制作分野を多角化する試みもなされていると語ってくれた。
マルチプレイは,これからも重視していく
Wester氏の答えは,マルチプレイにはシングルモードにはないソーシャル面での面白さがあるからというもので,多人数でのプレイはプレイヤー間の駆け引きによって展開の幅が広がり,それらはAIと違い予測不能であるため,よりチャレンジ性に富んだものになるのだという。
こうしたマルチプレイを重視する姿勢(とはいえ,シングルプレイの部分を軽視することはないとWester氏は言う)は,スタッフ同士が対戦しながらゲームバランスを調整していくParadoxの開発スタイルや,パラドゲーが,どれだけ複雑になろうとも,どこかに多人数でわいわいやることを前提にしたアナログボードゲームの雰囲気を残し続けていることとも無縁ではないのだろう。最新の「Sim City」がオンライン化の道を選んだように,マルチプレイにより重きを置いていくコアなシミュレーションゲームは今後増えていくのかもしれない。
以上,Wester氏へのインタビューは短いものだったが,PlayStation 4の参入を始めとするParadoxの今後の方向性について興味深い話を聞くことができた。
Wester氏はファンミーティングの冒頭でも,PlayStation 4への参入や熱心なファンで賑わう公式フォーラムの盛況ぶりを報告していたが,同氏のスピーチからは,この10年間で着実に成長を続ける企業のトップならではの意気込みが感じられた。
最後になるが,ファンミーティングそのものについても若干述べておきたい。
会場にはスウェーデンなどのヨーロッパ諸国を中心にアメリカやカナダ,そして南米からの200人ほどのファンが集まっていた。とはいえ,そこは趣味を同じくする者同士,会場となったParadox社内ではスタッフを交えての専門的な(別の言い方をすれば,オタクな)会話が広がり,あちこちで大いに盛り上がった。
このような,言ってみれば非常に「ゆるい」交流の場を設け,さらにはインタビューの依頼を快く聞いてくれたParadoxのスタッフには心から感謝したい。このファンミーティングは来年も開かれるそうなので,もしスウェーデンを訪れる機会があるなら,あるいはParadoxに興味のある人なら,参加してみよう。
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