プレイレポート
HD画質で復活した名作「ジェットセットラジオ」のプレイレポートを掲載。PS3版とPS Vita版はセーブデータの連動が可能,Xbox 360版には独自の実績を用意
本作は,ドリームキャスト用ソフトとして2000年にリリースされた同名タイトルを,HD画質でリメイクした作品。舞台となる架空の都市“トーキョー”は,自由に行き来ができる3Dの箱庭世界となっており,“オーバードライブ・スケートシューズ”を履いた悪ガキたちがストリートを走り回り,ケーサツの追跡をかいくぐりながら,街の要所にグラフィティ(スプレーによる壁画)を描いていくという内容になっている。
ストリートカルチャーをモチーフにしたポップな世界観が特徴で,“マンガディメンション”と呼ばれるトゥーンレンダリング調のキャッチーなグラフィックス,ラジオのようにミックスされ流れてくるBGMなどが高く評価され,発売から10年以上経った現在も,国内外に多くのファンが存在している。
蛇足だが,実は筆者も本作のファンの1人で,当時は日本語版のみならず海外版まで購入し,ドリームキャストのコントローラが壊れるまでやり込んだのは,いい思い出である。それだけに,今回,HD版がPS3/Xbox 360/PS Vitaでリリースされるという発表を受けてからは,リリースを心待ちにしていたのだ。
今回は,PS3版とPS Vita版をプレイし,HD化にあたって追加された要素や,そのプレイフィールなどをレポートしていこう。なお,記事内では特別な記述がない限り,すべてPS3版に準拠している。
セガ「ドリームキャスト復刻プロジェクト」特設サイト内
「ジェットセットラジオ」紹介ページ
従来の操作に加え,右スティックでカメラ操作が可能に
あらためて説明すると,今回配信される「ジェットセットラジオ」は,2001年にドリームキャストで発売された北米版のマイナーチェンジバージョン,「デ・ラ・ジェットセットラジオ」をもとにしている。
「デ・ラ・ジェットセットラジオ」は,初代「ジェットセットラジオ」に2つのステージや数曲のBGMが追加された。また,ゲーム全体のバランスが見直されたほか,一部シナリオやキャラクター設定なども若干異なっている。とはいえ,無印からカットされた要素はほとんどないので,HD版をプレイしていて不満は感じないはずだ。
ステージ選択後,プレイするキャラクターを選ぶ。見た目だけでなく,体力や動き,そしてグラフィティを描くときのコマンドの難しさなど,キャラクターごとにパラメータが異なる |
ストーリーモードのステージは,ゲームをクリアするまで(最初からやり直さない限り)再挑戦はできないので,高ランクでのクリアを目指すなら,その場でリトライするのも手だ |
操作方法は,左スティックでキャラクターの移動,×ボタンでジャンプ,R2ボタンで加速,L2ボタンでグラフィティアクションおよびカメラのセンタリングという感じだ。操作方法自体はそれほど難しくないので,初めての人でも問題なくプレイできるだろう。
また,HD版では右スティックで任意にカメラ操作が可能となった。ドリームキャスト版では,カメラ操作がゲーム難度を上げる要因の一つとなっていただけに,今回のリメイクで,よりプレイしやすくなったといえるだろう。
なお,操作系のキーアサインは固定で,オプションで変更できるのは,カメラ操作のXY軸を反転させられる程度である。
PS Vita版のほうは,スティックやボタンのストロークが短く,PS3版より操作しやすい印象だ。また,タッチスクリーンによるグラフィティ入力やカメラ機能を使ったグラフィティの取り込み(詳細は後述)など,独自機能も個性的で面白い。
なお,PS Vita版では,右スティックまたは背面タッチパッドでカメラ操作が可能となっている。背面タッチパッドでの操作は,誤操作も起きうるので好みが分かれるところだが,オプションでオン/オフを切り替えられるようになっている。
PS3版とPS Vita版はセーブデータの連動が可能。PS Vitaのカメラ機能で撮影した画像をPS3版のグラフィティにできる
ちなみに,PS Vitaのメモリーカードに「ジェットセットラジオ」のオリジナルグラフィティのフォーマットに準拠した画像を入れておけば,撮影画像以外をグラフィティにすることが可能だ。
なおXbox 360版では,PS3版とPS Vita版の連動要素のような機能はないが,その代わり,実績が他機種版より30種多く用意されているそうである。
「ジェットセットラジオ」は,オリジナルが13年前に発売されたゲームながら,街の構造は非常に凝ったものになっていて,トリックを決めながらストリートを自在に走り回るのをひたすら楽しむといった,いわばオープンワールドのゲームのような楽しみ方もできた。それは本作でも変わっていない。
たとえば,ストーリーモードのステージは,「シブヤチョウ」「コガネチョウ」「ベンテンチョウ」といった街の一区画が切り取られて構成されているのだが,ある程度ゲームを進めると,ストリートを自由に走ってグラフィティを描く「ジェットグラフィティ」,仲間のキャラクター達とレースをする「ジェットクラッシュ」など,街全体をステージにしたモードが開放される。
なお本作では,各ステージのリトライが可能になるのはストーリーモードのクリア後となるのだが,セーブデータは最大10個保存可能なので,セーブデータを複数保存し,ステージごとにリトライをしてテクニックを磨くこともできる。
サウンド関連も充実。新規撮り下ろしの「スペシャルドキュメント映像」は要チェック
「ジェットセットラジオ」の収録BGMは,ドリームキャスト版ではバージョンによっては収録されなかった曲なども収録された豪華仕様だ。以下の楽曲リストを見れば分かるとおり,オリジナル版や「デ・ラ・ジェットセットラジオ」収録曲など,ほぼすべての楽曲が収録されている。
なかでも,本作のサウンドディレクターである長沼英樹氏の楽曲や,本作のファンにとっては馴染み深い,アーティストのギターベイダー(Guitar Vader)が提供した曲が収録されているのは,ファンにとっては嬉しいところだ。
ちなみに,諸事情により収録できなかった楽曲が2曲あるとのこと。とはいえ,ゲーム中のBGMはラジオ風の演出で切り替わる形になっているので,プレイして気になるほどではないだろう。
なお,ゲーム中に特定の条件を満たすと,「ボーナス」モードで本作の続編である「ジェットセットラジオフューチャー」の楽曲が聴けるようになる。ゲーム本編で聴くことができない仕様なのは残念なところだが,「長沼サウンド」の楽曲をオリジナル版以上に楽しめるのは嬉しいところだ。
曲名 | アーティスト | 備考 |
Let Mom Sleep | Hideki Naganuma | |
Humming the Bassline | ||
That's Enough | ||
Sneakman | ||
Moody's Shuffle | ||
Rock It On | ||
Grace and Glory | ||
Sweet Soul Brother | ||
Magical Girl | Guitar Vader | |
Super Brothers | ||
Dunny Boy Williamson Show | Deavid Soul | 初代ジェットセットラジオのみで使われた曲 |
Miller Ball Breakers | ||
On the Bowl (A.Fargus Remix) | ||
Up-Set Attack | ||
Everybody Jump Around | Richard Jacques | |
Bout the City | Reps | |
Mischievous Boy | Castle Logical | |
Yellow Bream | F-Fields | |
Electric Tooth Brush | Toronto | |
Funky Radio | B.B. Rights | |
OK House | Idol Taxi | |
Just Got Wicked | Cold | 北米版(Jet Grind Radio)専用追加曲(デ・ラでは未使用) |
Dragula | Rob Zombie | |
Slow | Professional Murder Music | |
Improvise | Jurassic 5 | デ・ラ・ジェットセットラジオ用追加曲(北米版でも使用) |
Patrol Knob | Mixmaster Mike | |
Recipe For The Perfect Afro | Feature Cast | |
Funky Plucker | Semi Detached |
曲名 | アーティスト |
The Concept of Love | Hideki Naganuma |
Fly Like a Butterfly | |
Funky Dealer | |
Shape Da Future | |
Teknopathetic | |
Oldies But Happies | |
Like It Like This Like That |
もう一つ特筆しておきたいのが,ドリームキャスト版「ジェットセットラジオ」の開発スタッフが制作当時を振り返る,約13分のスペシャル映像だ。
これは,本作のために新たに収録されたドキュメンタリー映像で,オリジナル版の開発スタッフらへのインタビューを中心に構成されている。映像には,菊池正義氏(ディレクター),植田隆太氏(アートディレクター),長沼秀樹氏(サウンドディレクター)といった当時の開発メインスタッフ,そしてグラフィティを提供したストリートアーティストのエリック・ヘイズ氏などそうそうたるメンバーが出演している。
オリジナル版を知っている人はもちろん,知らない人にとっても興味深い内容なので,購入した人はぜひチェックしてみてほしい。
あくまでも“昔のゲーム”のリメイクということもあって,多少なりともアクションゲームに慣れた人でなければとっつきにくい部分があることは否めないが,チュートリアルやプラクティス要素も用意されているので,プレイに必要な操作やテクニックを覚えれば,ゲームの楽しさがグッと増すはずだ。
オリジナル版がリリースされたのは13年も前のことだが,ステージの緻密なレベルデザインや世界観の設定などは,“今のゲーム”と比べても遜色のないクオリティを持った名作だったと筆者は常々考えていた。そして今回,リメイク版をプレイして,その考えが間違っていないことを再認識した次第である。
本作の体験版が,本日2月20日から配信開始となるので,ドリームキャスト版をやり込んだ往年のファンはもちろん,本作を未経験の人も,まずは体験版をプレイして,その面白さと独特のセンスを味わってみてほしい。
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