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「ゲームアプリ満足度ランキング」の発表を機にオリコンに聞く――“スマホゲームのヒットを可視化”するということ
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印刷2015/11/13 12:00

インタビュー

「ゲームアプリ満足度ランキング」の発表を機にオリコンに聞く――“スマホゲームのヒットを可視化”するということ

これまでになかった「ゲームアプリ」の顧客満足度を可視化する意味


4Gamer:
 さて,ここからようやく本題に入りますが,なぜそのOCSでゲームアプリのランキングを始めようと思ったんでしょう。

画像集 No.023のサムネイル画像 / 「ゲームアプリ満足度ランキング」の発表を機にオリコンに聞く――“スマホゲームのヒットを可視化”するということ
染谷氏:
 昨今のスマホのゲームって,その多くは多かれ少なかれオンライン要素を持ってますから,作っておしまい/売っておしまいというものではなくて,その後の運営が大切ですよね。そのあたりが,これまでのコンシューマゲーム市場に比べ,PCのオンラインゲーム同様にサービス業としての色が強いと思ったんです。サービス業と位置付けるのであれば,顧客満足度の重要性が高いだろうと。

4Gamer:
 確かにネット上の評価やストアのレビュー,4Gamerのユーザーレビューにも運営についての話題は多く,それが1つの評価基準にはなってますね。

染谷氏:
 ですよね。そこで“サービス業”としてゲームアプリを見たときに,ではユーザーはどんな情報を参考にしてゲームを選んでいるんだろう? ということを調べてみると,これはOCSの調査にも結果として出ているんですが,やはりApp StoreやGoogle Playのマーケットのランキングが多いんですね。

4Gamer:
 予想どおりではありますが,なんかちょっとモヤモヤしますね。

染谷氏:
 ほかは情報サイトなどのランキングや,TVCMを観て……という感じでしょうか。

4Gamer:
 プラットフォーマー側もある程度は手を入れているようですが,やっぱりあのランキングって基本的には「正確にユーザーの意志を捉えている」ものではないと思うんですよね。最近はだいぶ状況は良いようですが,人為的にある程度操作できる部分でもあるし。
 また,もっと本質的な問題として「全部のジャンルをひとまとめにしてランキング化する」という部分に無理がある気もします。

染谷氏:
 ちゃんとジャンル別にも見られるんですけどね(笑)。

4Gamer:
 ええ。でもあれ,気付いてない人も多いと思います……。

染谷氏:
 なるほど,たしかにそうかもしれませんね。OCS改善の参考にさせていただきます。
 まぁでもいまおっしゃったように,これだけゲームのジャンルがあるいま,当然ユーザー側の価値観も細分化してると思うんです。しかし現状は,人為的に操作できてしまうものばかりが,選択するうえでの参考材料になっているわけです。

4Gamer:
 残念ながらそうですね。

染谷氏:
 ですので,信頼性の高い調査方法で集められ,ユーザー自身が自分の求めるものを選んで参考にできるように細分化されたデータを打ち出せれば,かなり需要があると考えたわけです。

4Gamer:
 ではサービスを提供する制作会社側に対しては,どのような思いでこのデータを打ち出しているのでしょうか。

染谷氏:
 制作側がKPI(※1)を作成するときに参考となる,インストール数,無料プレイのコンバージョン,UU(※2),課金率,ARPPU/ARPU(※3)などといった数値がもろもろあるじゃないですか。それはそれで必要だと思います。
 でも本当にその数値だけで,ゲームのプロダクト戦略って作れるんでしょうか? 本当にプレイしているユーザーの声が,ちゃんとKPIの数字として表れているのかどうか分からないわけです。

※1:重要業績評価指標(Key Performance Indicators)
※2:UU=Unique Users(ユニークユーザー)……特定の期間中,ウェブサイトやそのサイト内のページを訪問した人数
※3:ARPU=Average Revenue Per User(ユーザー1人当たりの平均売上金額),ARPPU=Average Revenue Per Paid User(課金ユーザー1人当たりの平均売上金額)


4Gamer:
 んー,そうですね。意味がないとは言いませんが,それをもってユーザーの製品の満足度が本当に分かるのかというと微妙な感はありますね。しかしそもそも“満足度”というのは,もっと曖昧なものなんじゃないでしょうか。数値化できるようなものではなくて。

染谷氏:
 そうです。そういった数値化されていない,もう少しファジーなところ……「面白いの? 面白くないの?」とか「飽きるの? 飽きないの?」とか「ワクワクするの? しないの?」とかを,実際の声を聞いて切り出したら面白いし,制作側の役にも立つんじゃないかという仮説をたてて,じゃあやろうと始めたわけです。

4Gamer:
 ゲームの出来を数値化するという意味ではMetacriticが割と有名ですが,それよりもっと……なんというか“泥臭い”ものなんですね。むろん,いい意味で。

染谷氏:
 そうですね。それが確かに言い得て妙かもしれません。

例えばこの「課金契機」。「レアアイテムが欲しい」「強くなりたい」という理由はもちろん,「自慢したかった,優越感を感じたかった」「運試しをしたかった」などという理由まで,KPI分析の新たな指標となりうる“ファジーなところ”が細かく数値化されている
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4Gamer:
 しかしもちろんこのゲームアプリ部門にしても,塾の例でお話しいただいたようなプロセスを経てランキングが作られているわけですよね。ゲームアプリってそれこそ塾などとは違って,毎日のように事実上無尽蔵に増えていくものなので,調査対象や項目を絞り込むだけでも大変そうだなあ,と思います。

染谷氏:
 いまゲームアプリのメインは,基本プレイ無料のアイテム課金型モデルですよね。なので,調査対象の大前提は基本プレイ無料です。そして調査対象者は,過去3か月以内にゲームアプリを利用した人に限られます。ランキングの集計間隔はちょっと特殊で,OCS調査は基本的に年1回なんですが,ゲームアプリ部門はイレギュラーで,年4回ランキングを作って発表しています。

4Gamer:
 ……そういえばそうですね。言われてみれば,アプリだけ年複数回出てますね。

染谷氏:
 各メーカーにヒアリングへ行ったとき,「年に1回の調査をかけようと思います」と言ったら「そんなの意味ない」と散々言われたんですよ(笑)。どんどん新しいタイトルが生まれているような業界ですから,もちろんある程度は覚悟もしていましたが……。

4Gamer:
 確かに,1月に出たアプリの詳細ランキングを11月に見せられても,これだけ“動いてる”業界においてはちょっと意味合いが薄くなるかなぁ,という気はします。

染谷氏:
 しかし,3か月に1回行うというのはなかなか大変なんですよ!

4Gamer:
 まぁそうですよね……。
 2015年冬版(2015年1月発表)からスタートして,2015年春(同4月),2015年夏(7月),そして10月27日に発表の2015年秋で1年を迎えるわけです。これまでの評価項目総合満足度1位を見ると……冬と春は「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」iOS / Android)が2期連続,夏は「SHOW BY ROCK!!」iOS / Android)と,もちろん人気タイトルではありますが,4Gamer的には「え,それ本当?」という結果なんですよね。ベスト10にしても,普段見ているApp StoreとかGoogle Playのランキングからすると意外なタイトルが並びます。

染谷氏:
 そうですよね。売上とかマーケットシェアでランク付けしているのではなく,“使っているユーザーがどう思っているか”を数値化したもので集計しているから,通常のランキングと違う結果になるんです。調査対象の条件をクリアしていて,統計的に問題のないn数(評価項目総合満足度は40,そのほか部門別は20)が取れたら,どんなゲームでもランクインする可能性があるわけです。

2015夏の総合ランキング。この集計時期にアニメ放映され,2期連続1位だった「スクフェス」を抑え1位を獲得した「SHOW BY ROCK!!」。こうした話題性や流行も,OCSではちゃんと数値で表れている
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4Gamer:
 毎回順位が大きく変動するのも特徴ですよね。しかし,これまで総合1位となったラブライブ!とShow BY ROCK!!ですが,ともにメディアミックス作品として,人気と知名度もかなり高いタイトルです。
 「これって要はただの人気投票なんじゃないの?」と思われてしまいそうだなぁ,という気もします。

染谷氏:
 そう思ってしまうのも理解できますが,もちろん人気投票ではないですよ。というか単なる人気投票だったらどれだけ楽か(笑)。

4Gamer:
 確かに……。

染谷氏:
 「調査対象自体をカジュアル層に絞っているんじゃないのか?」と言われることもあるんですが,これも属性欄にあるように,性別,年代,職業はもちろん,婚姻状況や扶養の有無にいたるまで,アベレージを意識して取ったデータです。
 そうやって,まんべんなく各属性のユーザーの声を聞いたその中で,それぞれの部門での点数をきっちり割り出して,全項目をクロス集計した結果がこの総合ランキングです。単純にタイトルの人気や知名度の順ではなく,あくまでゲームとして,ユーザーが下した総合的な評価でランキングが作られているわけです。

調査対象の属性を表した円グラフ。写真上の「職業」,下の「性別×年代」のほか,家族構成や扶養の有無といったところまでが,データとして集計されている
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4Gamer:
 なるほど。
 (データを見ながら)メインとなるのは「満足度項目」という13項目ですね。ストーリーやシステム,ゲーム性,ハマり度や取っ付きやすさ,達成感……いろいろと細かく設定されてるんですねえ。

染谷氏:
 あと,「他者推奨意向」という,何か商品やサービスなどを他者に勧めるときに,非推奨者,どちらでもない,推奨者という数段階の評価を元に,いくつかのグループに分けて,経営指標に役立てるという分析手法があるのですが,この数値もOCSで出しています。

4Gamer:
 顧客のロイヤルティを測る上で,重要視されているという指標ですよね。

染谷氏:
 この他者推奨意向を単体で見たときに,OCSを使えば必要な改善箇所を数値的に見ることができるようにもなってます。つまりOCS調査の各項目を見て,「この数値を上げるには,この項目とこの項目を改善すれば,他者推奨意向を何ポイント上げられるな」というのが分かるんです。その結果,OCS内で出している他者推奨意向の得点も上がるわけですから,OCSの総合得点も上がると。

4Gamer:
 ははぁ,なるほど。そこがリンクしてるのはちょっといいですね。単に「どう思われてるか」が分かるだけでなく,改善点も同時に分かる,と。

画像集 No.013のサムネイル画像 / 「ゲームアプリ満足度ランキング」の発表を機にオリコンに聞く――“スマホゲームのヒットを可視化”するということ
染谷氏:
 しかもこれらの調査項目は各プロダクトごとに切ることもできるので,企業側は,自社のゲーム以外にみんな何本くらい遊んでるのかなとか,年代別に分けるとどこがボリュームゾーンなのかなとか,さらに,どの職業に就いている人が多いのかなといったことも調べることができます。
 そうやって集めた各項目の情報を並べて,「なるほど,こういうデータになるんだなあ」なんて眺めているだけでも,これがけっこう面白いんですよ。

4Gamer:
 データ見るのは結構楽しいですよね。……数値の波に飲まれない限りは(笑)。
 しかし確かにこれ,1つ1つの詳細な数字を見たり,競合となるゲームと比較して見ているだけで面白いし,いろいろ気付かされることもありますね。いままでにあんまり考えなかったような方向で。

染谷氏:
 例えばどんなのですか?

4Gamer:
 さっきパラパラと見ているときに思ったのは,上位のゲームに「ストーリー部門」の得点が低いものが多いということでしょうか。そのまま素直に解釈すると,ストーリーってあんまり重要視されてないのかな? という印象を受けます。

染谷氏:
 ……なるほど。確かにデータではそうなってますね。
 本当のところがどうなのかは分かりませんが,これって作り手とユーザーの意識のかい離ですよね。作品の深みを出すうえにおいても,ストーリーが大事だと多くのクリエイターが考えるわけじゃないですか。

4Gamer:
 まぁそうでしょうね。

染谷氏:
 でもその一方で,スキップボタンも用意して話を飛ばすことができるようにもしているわけです。それでも作り手の意地というか……もしかしたら“コンシューマ コンプレックス”とも呼べるのかもしれませんが,コンシューマゲームのようにストーリーで感動してほしいと思って作っているのに,ユーザーは(少なくとも今は)そこまで求めていない。そういった事象が数字として表れているんだと思います。

4Gamer:
 でもそんな中で,「チェインクロニクル」iOS / Android)は,ストーリー部門も総合も,常に安定して上位にランクインしてますよね。あとは「消滅都市」iOS / Android)とかかな。
 ストーリーがよくできていてゲーム性も高い作品は,やはり正当に評価されているわけで,ちゃんと上位にランクインしている。つまり一定の需要はちゃんとあるんだということも,このデータから見えてきますね。

染谷氏:
 本当の意味での“世間一般”で,年齢層なんかを広く意識して大きな網をかけると,こういうデータになりますよということが,分かりやすい形で結果が出たのは,利用シーンの項目かもしれませんね。

4Gamer:
 どれどれ……。

空いた時間にサクッとプレイでき,手軽に達成感を得られるリズムゲームは,時代のニーズに合致している?「音楽」満足度ランキング上位3タイトルは,総合でも10位以内にランクインしている
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染谷氏:
 「自宅で暇なときに」が最も高くて,「乗り物などでの移動中」「仕事の休憩時間」と続くんですが,要するにゲームは“暇つぶし”だという回答なんですね。この時点で既存のゲーム業界がターゲットにしていたユーザーさんとは違うわけです。
 これまでのゲームは,暇つぶしの時間を奪い取ろうとしていたわけではないですよね。例えばそれは“vs.テレビ”であったり,“vs.映画”であったり,あとはそうですね……“vs.バーベキュー”だったりかもしれません(笑)。
 そういった「何かを楽しむ時間」を取り合っていたのがゲーム業界だったわけですが,アプリを使っている人達の発想はそもそも違うわけです。

4Gamer:
 でも,それはさすがに,業界の人も皆薄々気付いていたんじゃないでしょうか。
 これまでのゲームはエンターテインメントとして「楽しむために時間を作るもの」だったのが,スマホという巨大なゲームプラットフォームの登場と共に言うならばコモディティ化してしまって,単に「何もしていない時間を埋めるだけのもの」という要素が強くなりつつあるわけで。

染谷氏:
 良かれ悪しかれそういう部分はあるかもしれませんね。

4Gamer:
 やはり「ゲーム」が好きな者として,このままゲームというものが,ただの暇つぶしのためだけに消費されるコンテンツになっていくんじゃないかという不安がないといったら嘘になります。

染谷氏:
 しかも,そのサイクルも早いですよね。
 でも制作側はちゃんと,飽きずに長く続けてもらうために,さまざまな工夫や努力をしているわけで,そのあたりはうまく機能してるんじゃないかと思っていますが。

4Gamer:
 まぁ見る方向を変えたら,暇つぶしくらいのものとして楽しんでいる方が,ある意味健全なのかもしれませんけど……。
 ともあれ制作側は,今のユーザーがどのような意識を持っているのかということを踏まえて,これまでのゲーム市場とは違う戦略を立てなければいけないわけで,そこでこのデータは確かに役立ちそうですね。

染谷氏:
 少なくともこのデータを見てもらうことで,自社が伸ばさなければいけないのはどこで,頑張っているのにユーザー評価が低いところはどこで,逆にそれほど力は入れていなかったのにユーザー評価が高いのがどこで……ということが明らかになるわけです。それを理解したうえで,競合に対して自社のどこが優れていて,どこが劣っているのかという比較をして戦略を立てられると思います。

この画像にある「最もよく利用しているゲームアプリにおける好きなポイント,嫌いなポイント」をはじめ,各項目のデータはゲーム別で切り出して見ることができる。さらに,属性別にクロス集計した詳細なデータも出せるので,自社のゲームの優れた面 / 劣っている面を理解したうえで競合と比較し,今後の戦略を立てることが可能だ
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信用できるデータであるという認知を広げ,純粋に“楽しいゲーム”をつくるための指標に


4Gamer:
 ところで,最終的にはこのランキングをどういうものに育てたいんでしょうか。

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染谷氏:
 そうですね……。ここで設けた項目のデータを継続して取り続けること。今はまず,それが重要だと考えています。メーカー側が「あの時,どういうアプローチをしたんだっけ?」「どんなキャンペーンやったんだっけ?」と,過去のデータと現在のデータの比較を詳細にできるようになれば,それに対してどう変化があったのか,どのように数字が動いていたのかを追うことができるようになりますよね。

4Gamer:
 そうですね。途中で内容の変わるデータほど使いようのないものはないですし。

染谷氏:
 そうやって丁寧にしっかりと育てあげて,運営の中身や成否をARPPU/ARPUや課金率以外の軸で評価できるデータとして,信用を得ることができればと思っています。

4Gamer:
 今までにない,ユーザーの姿が分かるデータで,理想を高いところに置いているなとは感じるんですが,でもこれ,時代――というか需要――が追いつくのにちょっと時間がかかりそうですよね。

染谷氏:
 そう思います?

4Gamer:
 そもそもゲームにおける「顧客満足度」というのが,やっぱり咄嗟には理解しきれないというか。いや,理解はできるんですが納得しきれない,というのが正しいのかな。ファミ通さんのクロスレビューとか,4Gamerのユーザーレビューとか,海外で著名なMetacriticとか,そういうものとはまたちょっと違う,とても具体性のあるデータですし。というか具体性がありすぎるというか……。

染谷氏:
 そうなんですよね。しかもやはり調査が大変なので,「もうちょっと業界に浸透するまで,年1回にしようかな……」とかいう弱音も出たりしますけど(笑)。

4Gamer:
 たった今,データは継続して取り続けることが重要って言ってたじゃないですか(笑)。
 というか,実は4Gamerでも割と詳細なログデータを取ってるので薄々想像できるんですが,このデータって,必要性や重要性が分かる人が意外と少なかったりしませんか?

染谷氏:
 ……そうなんです。
 これはほかの業種のランキングでもよくある話なのですが……本当に経営層まで話を持って行かないと,このデータの必要性が分かってもらえないことが多いんですよね。逆に現場に持っていくと,まぁさすがに怒られることはないですが「なんという面倒なものを持ってくるんだ」と言われることもあったりで,知りたくない,隠したいくらいに思っている部分はあるのかな? なんて(笑)。

4Gamer:
 いやさすがにゲーム業界は“デジタル”ですから,そこまでのことはないでしょうけど(笑)。でも意外に数値データって信用されないことが多いですよね。まだまだフィーリングのほうが現場感覚としても勝っているように感じることも多いですし,その気持ちも重々分かります。

染谷氏:
 そうかもしれませんね。
 年に1度「Oricon CS Award」という,顧客満足度調査の認知拡大と価値向上のための表彰式を行っていて,メディアや専門誌に結構取り上げられるようになってきてるんですが,それでもやはり「なんで勝手にそんな表彰をしてるんだ!」って怒られたり(笑)。

4Gamer:
 一方でこういう情報を待っていたという人も多いかと思うんですが,このデータは購入の必要がある商品として販売しているわけですよね。違うアプローチとして,アナリストを置いたりコンサルタントを業務として請け負ったり,そういうことは考えたりしないんでしょうか。
 数値データって「ただの数字」であるうちは,なんの意味もなさない文字の羅列なんですが,ひとたび分かる人がそれを見たら,宝の山ですよね。でもそれを生かすのもなかなか難しいのかなぁ,と思ったり。

染谷氏:
 それはゲーム業界に限らずよく言われますが,弊社でコンサル業務はやりません。やらない理由は非常にはっきりしていて,特定のメーカーからデータ以外の部分でお金をもらったりしてしまうと,ランキング結果に対する信頼性が損なわれることになりえますし,公平性がなくなっているという誤解も生じますからね。

4Gamer:
 シンプルかつ分かりやすい理由ですね。

染谷氏:
 弊社も株式会社ですから,収益を得なければなりません。ですのでデータは買ってもらいますし,例えば“オリコン日本顧客満足度1位!”とテレビCMで打つときのロイヤリティとか,そういう部分についてのビジネスモデルはあります。
 しかし買っていただいたデータは,使うも使わないも自由なので,コンサル会社がデータを購入して使うことはあるかと思いますけど,弊社自身がコンサルを始めるということはありません。

ランキングのより詳細なデータの販売は,表にある4つのプランから選べるほか,タイトル個別のデータを購入することも可能
画像集 No.018のサムネイル画像 / 「ゲームアプリ満足度ランキング」の発表を機にオリコンに聞く――“スマホゲームのヒットを可視化”するということ

4Gamer:
 なるほど,分かりました。
 それではそろそろお時間なので最後に――うーんそうですね,ゲームを実際に作っているメーカーに向けて,何かアピールメッセージはありますか。

染谷氏:
 データを買ってください! ……というのはいいとして(笑)。
 ゲームを作っているメーカーさんは皆さんそうだと思いますが,「何のためにゲームを作ってるんだっけ?」とか「何のためにゲーム事業やってるんだっけ?」とか,そういう根幹の部分に立ち返ることってありますよね。
 ビジネスとしてやっている以上,利益を上げなければならないのはもちろんなんですが,やはり純粋にユーザーに楽しんでもらって,そのうえで利益が上がるのが一番いいですよね。単なる理想論かもしれませんが。

4Gamer:
 理想は大事ですよ。

染谷氏:
 仮にそういう部分に立ち返ったときに,KPIとかみたいなああいう数字情報だけでは,うまい方向に舵は切れないのではないかと。
 ゲーム作りって,本当にこういうものなんだっけ? というのは,コンシューマゲームから来た人達ばかりではなく,多かれ少なかれ,みんなそういう疑問を抱いていると思うんです。ソーシャルゲームというものが登場して「課金率だKPIだ。そうだ全部数値化しよう」といって,その数字を意識しながらゲームを作ることになりました。それはそれで間違ってはいないのですが,それに支配されすぎているようにも見えます。

4Gamer:
 そこをうまく埋めるものである,と。

染谷氏:
 そうです。昨今の“ゲーム作り”の方向で何が抜けているのかというと,ユーザーがどう考えているのかとか,どう感じているのかとか,楽しんでくれてるのかとか,そういうところだと思うんです。ゲームを作るうえで,もう少しその部分について考える時間を割いていいでしょうし,そのための助けになれると思っています。

4Gamer:
 昨今はレッドオーシャン化してるのでちょっとは落ち着きましたが,ちょっと前までホントにひどかったですからね……。

染谷氏:
 古くからゲーム業界にいる人は,「ゲームは暇つぶしのモノ」という扱いが是か非か,そういう部分が気になるかもしれませんが,そこは問題ではないのです。単なる暇つぶしが理由であったとしても,ゲームの面白さという部分は考えるべきところだと思うんです。
 そのあたりを鑑みると,ユーザーが何を求めているのか,セールスランキングというものとは違う数字で可視化するというアプローチは,オリコンでしかできないことだと思いますし,なにより面白いじゃないですか。
 このデータは全てにおいて正しいので,これだけを参考にすれば理想通りの結果になりますよ……などと言うつもりはもちろんありません。でも,ここに出ている数字を生かして,面白いゲーム作りのお役には立てると思ってますので,ぜひ一度見てみてください。

4Gamer:
 最後に熱く語られましたが,本日はありがとうございました。1年に1回にならないことに期待しています(笑)。

――2015年10月20日 収録

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「オリコン日本顧客満足度調査」ゲームアプリ部門 2015秋


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