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[GDC 2024]「サイバーパンク2077」の街づくりは現実の都市計画と変わらない。“生きている街”ナイトシティはいかにして作られたのか
世界累計2500万本突破が発表された「サイバーパンク2077」,CD PROJEKT REDが実写プロジェクトの開始を明らかに
「サイバーパンク2077」の世界累計販売本数が2500万本を突破したことを明らかにしたポーランドのCD PROJEKT REDだが,このたび「実写プロジェクト」を開始したと発表した。詳細は未発表だが,北米のメディア企業,Anonymous Contentとのコラボによって進められているという。
2024年3月18日(北米時間)に開幕したゲーム開発者カンファレンス,Game Developers Conference 2024(GDC 2024)でもサイバーパンク2077の注目度はなかなかのものだ。本作の開発会社であるCD PROJEKTは10以上のプログラムを予定しており,セッションには多くの聴講者が集まっていた。
世界観,ビジュアル,シナリオ,バトルシステムと成長の仕組みなど,サイバーパンク2077が好評を得ている部分を挙げるとキリがないが,その一つとして忘れてはならないのがナイトシティだろう。地域によってその姿と雰囲気を変えるナイトシティは,まるで現実としてその地に人々の暮らしがあるかのような感覚を与えてくれる。
そんな“生きている街”はどのように作られたのか。GDC 2024で行われた“街づくり”に関する2つのセッションを紹介しよう
「サイバーパンク2077」公式サイト
Level Design Summit: Urban Planning in Games
「Level Design Summit: Urban Planning in Games」はその名のとおり,都市計画をテーマに行われたセッションだ。CDPRのSenior Environment Artist,Ania Bulavina氏がゲームの世界に街を作る際の基本のステップを説明しながら,「ゲーム制作における街づくりへの考えの重要さ」を伝えた。
なぜ,ゲームの世界の街づくりに都市計画が重要なのか。それはゲームキャラクターの解剖学と同じだと話す。プレイヤーが本物の人間のように感じられるキャラクターを作るのと同様,プレイヤーがリアルを感じる「一般的な街」を作るには街の成り立ちや構造を研究しなければならない。Google Mapのコピー&ペーストでは,リアルな街を移せるわけではないのだ。
ゲームの世界の街づくりにおいて,基本的なパラメータとなるのはサイズと比率,詳細度だ。サイズは街の実寸,形,境界と端。比率は道路の長さと幅,街区のサイズと建物のサイズ。詳細度はディテールの量と独特さ,密度がそれぞれ重要となる。
そして隣近所でも雰囲気が変わる街区の個性付け。これにはレイアウト,アーキテクチャ,ランドマークの3点が視覚的多様性の基本になっているという。
レイアウトとは主に比率と都市計画,パターンである。街区は統一感のあるCity Blockか,それとも複数の街区がごちゃっと集まったSuper Blockか。道路はどのように伸びているかなど,街の基礎の部分にあたる。
アーキテクチャは建築様式,建物の色合いと高さ,築年数,コンディション,etc……。どのような街区かを印象付ける,さまざまな要素だ。
3点目のランドマークもそれに近いだろう。その街区らしい独自性と機能性,象徴的なもの,知名度などを考えて作り上げていく。
分かりやすい例だと,高層ビルが林立するハイソサエティな街区のランドマークは,それらのビルから頭を出し,そして(はるか遠くにあるかのように)ボトムの部分が見えず,天を突き刺すようにビームが伸びる超高層タワーなどである。一方,庶民や貧困層の暮らす地域は,交差点にある背の低いボロボロの建物や無骨なゲートといった「地に足がついたもの」が選ばれる。
このように,実際の都市の構成や都市計画を参照することで,完全にオリジナルだが本当にあるかのような街のリアルが生まれ,さらにそこに暮らす人たちの生活の現実味が高まっていくというわけだ。
この街づくりの考え方は,決して大規模なオープンワールドの都市を作るAAAタイトル向けのものではないという。リニアなゲームプレイを伴う小規模の街であっても,都市を定義する主なルールやパラメータ,制作進めるうえでのステップバイステップの考え方は応用できるとまとめていた。
Art Direction Summit: Deciphering Dogtown: How We Built the Last District of Night City
Environment Art DirectorのKacper Niepokólczycki氏,Art DirectorのPawel Mielniczuk氏が登壇したセッションでは,「仮初めの自由」で追加されたドッグタウンがいかにそれまでの課題を克服して作られたのかが語られた。
ドッグタウンの制作時に試みたチャレンジは大きく4つあった。(今ある)ナイトシティへの配置,新鮮で面白いビジュアル,新たなプロダクションのメソッド,技術的な挑戦だ。
まず新たな世界(街)を作り上げるには,起源と歴史,社会構造,派閥,政治経済をしっかり理解したうえで進めなければならない。そのためには信ぴょう性が高く,現実のような論理があり,確立されたルールが必要だ。サイバーパンク2077は原作としてテーブルトークRPGのシリーズがあるため,なおさら重要になる。
それらを下地に,実際の街や建物をリサーチしたり,区画をレイアウトしたりする工程は,前段の「Urban Planning in Games」でも語られたとおりだ。
さらに人口分布図や電力地図,各地のギャングや団体の勢力図も用意し,街区の特性を表現。建築物にはそれぞれ脱構築,荒廃,破壊の跡,再開発といった特徴を与え,そこに住む人たちがイメージできる街の風景が作られていく。また,ドッグタウンは今までの街区とは異なる特殊な地域なので,アール・デコ風彫刻やカジノ,街中の像,巨大な重機なども設置された。
ストーリーテリングのある街づくりから生まれたドッグタウンの完成度の高さは,「仮初めの自由」をプレイした人であればよく知っているはずだ。
なお,形状や色といった視覚的なノイズがどうしても多くなり,アクションゲームとしてはまだ課題が残っていることを認識しているとのこと。サイバーパンク世界を表現するという意味では,終わりのない戦いになりそうだが,開発陣の飽くなき探究心を強く感じた。
唐突だが,筆者は街の成り立ちやそれによって生まれる文化が好きだ。住んでいる街の歴史や成り立ちを調べて,「昔は沼地だったから“沼”や“谷”という地名が多いのか」「迷路のような細くニョロニョロした道が多いのは,複数の川の支流を埋めて道にしたからか」と独り合点したり,空想の街を思い描いたりしてきた。
それもあって,ゲームのオープンワールドを散歩しながら街の成り立ちを考えるのが好きなのだが,これまで歩いた街のなかでもナイトシティには,ほかとは一線を画す“なにか”を感じていた。その答えが一気に提示されたような思いがある。
本稿を読んで,同じような感想を抱いた地図好き,都市計画好きな人は少なくないはず。ともあれ,「久しぶりにまた,ナイトシティに行ってみよう」という気持ちが湧いてくるセッションだった。
「サイバーパンク2077」公式サイト
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Cyberpunk 2077 is a trademark of CD Projekt RED S. A. Cyberpunk 2077 CD Projekt RED S. A. All rights reserved. Cyberpunk 2077 is based on a Pen & Paper Cyberpunk system created by Mike Pondsmith. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.
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