インタビュー
古代祐三氏とsasakure.UK氏に聞く,ゲームミュージックとボーカロイドの昨日,今日,明日。「『セブンスドラゴン2020&2020-II』初音ミク・アレンジトラックス」発売記念対談
これを記念して,古代祐三氏(オリジナルBGMの作曲者)と,sasakure.UK氏(両タイトルの主題歌と,「DIVAモード」4曲のアレンジと作詞を担当)の対談が行われたので,その模様をお伝えしていこう。
古代祐三氏 1967年東京都生まれ。高校生時代の雑誌投稿をきっかけにゲーム音楽家の道へ進み,若くからその名を轟かせる。クラシックを背景とした印象的な楽曲は,ファンから“古代節”と呼ばれる。主な代表作だけでも「イース」「アクトレイザー」「ザ・スーパー忍」「シェンムー」「湾岸ミッドナイト」と枚挙にいとまがなく,楽曲自体も多ジャンルにわたる。また,エインシャント代表取締役社長として,ゲーム制作者の顔も持つ。実は歌モノの仮歌にボーカロイドを使おうとして,挫折した経験があるのだとか | sasakure.UK氏 福島県生まれのファミコン世代。初音ミクに代表されるボーカロイドの楽曲投稿を通じてメジャーへと躍り出た“ボカロP”の一人。「SF」と「寓話」をモチーフにした8 bitテイストあふれるキュートな世界観で知られ,その持ち味は,楽曲だけでなくドット絵でのミュージックビデオなどでも表現される。2011年には自身がプロデュースするバンド「有形ランペイジ」を結成するなど,活動の幅を広げている。最近は,作りやすさがアップしたといわれるボーカロイド3エンジンのミクが気になっているそうだ |
「『セブンスドラゴン2020&2020-II』初音ミク・アレンジトラックス」
商品情報
DIVAモードを想定しないで
作曲作業は進められていた!?
本日はよろしくお願いします。
お二人の出会いは,この「セブンスドラゴン2020」シリーズと聞いていますので,まずはそこから伺ってみたいのですが。
古代祐三氏(以下古代氏),sasakure.UK氏(以下sasaskure氏):
(2人で)そうですね。
sasakure氏:
僕は小学生くらいから古代さんの曲をずっと聴いていて,一方的に憧れていましたが。
古代氏:
小学生か〜,ちょっとショックですね。
しかも生まれた時には,もうファミコンがあったと聞いて,これまたショックですよ(笑)。
sasakure氏:
コラボが決まって打ち合わせをしましょうということになって初めてお会いしたんですが,それはもう緊張しました。
そうそう,ミクを使った主題歌の話が持ち上がったのは,古代さんの楽曲がほぼ出来上がったあとのことだったんですよ。
4Gamer:
最初から決まっていたわけではないんですか。
古代氏:
実はこのコラボはちょっと変わった経緯で形になったんです。
ニンテンドーDS版「セブンスドラゴン」の楽曲は,シンフォニックで分かりやすいものを目指していたんですが,PSPでセブンスドラゴン2020(以下,2020)を出すにあたって,ディレクターの新納さん※から,「クールで退廃的な感じ」にしようという指針が提示されたんですね。
※新納一哉氏:「セブンスドラゴン2020」や「世界樹の迷宮」などが代表作
4Gamer:
クールで退廃的というのは,何となく分かるような,分からないような……。
具体的には,“歌”や“泣きのギター”といったなじみやすいメロディを排除しようということで,耳には残るけど口ずさみにくいものを作ろうという,非常に難解なオーダーだったんです。
それが7〜8割完成したところで,「実はDIVAモードがあるんですが」と切り出されました。
4Gamer:
ええっ!(笑)
古代氏:
歌っぽいのはダメって話で進んでいたのに,どうやってミクを使うんだろう? そもそも楽曲自体,歌を載せる構造になってないんだから,それはさすがに無理ゲーだろう……と思いましたね。
sasakure氏:
(笑)。
古代氏:
とはいえ決まったことですので,一度打ち合わせをしましょうということにはなったんですが,そもそもミクの歌声が載ることを考慮しないで作ったので,どうなるんだろう? ……と。
sasakure氏:
でも,僕らアレンジする側としては,古代さんの楽曲がある程度完成した状態からスタートできたので,そういう意味では,比較的スムーズに作業を始められたんです。ただ,実際に作業をしていくときには,難題が山積みでした。
4Gamer:
アレンジ作業はどうやって進めていったんですか?
sasakure氏:
僕の場合は,古代さんからMIDIデータだけをもらって,自分の音にコンバートしながら作り直しました。普段,ほかのアレンジの仕事をするときと同じ手法です。
古代氏:
MIDIデータも最近では,単に音を鳴らすトリガーになっているだけだったりして,アテにならないことがあるんですけど(笑)。
4Gamer:
その時,ミクに歌わせやすいようなメロディはデータとして存在していないわけですよね? それをご自身の音に置き換えるのは,なかなかたいへんな作業だったんじゃないかと思うんですが。
sasakure氏:
最初に古代さんからいただいたデータを聴いた時は,正直なところ「どうしよう……」と青ざめました。これはなにかの試練が課せられているんじゃないかと思うくらいで(笑)。
4Gamer:
ですよねぇ。
sasakure氏:
作業を始めてからは,メロディや歌詞を当てるためのバランス取りに苦労しました。古代さんからいただいた曲は確かにBGM的で,単に歌を乗せるだけだと曲が輪郭を持ってしまって,ゲームの中で浮き上がってしまうんです。それを避けて,あくまでBGMとして成立するアレンジを心掛けました。
4Gamer:
子供の頃から憧れていた人の楽曲を編曲するにあたって,精神的なプレッシャーはありませんでしたか?
プレッシャーよりもワクワクした感情のほうが強かったです! 自分の好きなゲームミュージック作家の楽曲を使って,自分を表現していける企画に携われたんですから,非常に光栄ですし。
アレンジを終えてみて思ったんですが,古代さんの楽曲は,今の時代のエッセンスを含んでいるんですよ。例えば,音符の配置が細かくて同じメロディを繰り返す部分だったり。結果的に,原曲もアレンジも際立つ,いいコラボレーションができたと思います。
古代氏:
現代的な曲作りという点は確かに狙っていたことなんですけど,2020のときは,実は楽曲の方向性を試行錯誤していたんです。
新納さんも作風にこだわりのある方なので,作っては壊しを何度も繰り返しました。そうやって悩み抜いて生まれた結果が,アレンジャーさんたちに受け入れてもらえたのなら幸いです。
4Gamer:
古代さんにとっても,新しいチャレンジだったんですね。
古代氏:
いやぁ,暗闇の中をさまよっているようでしたね(苦笑)。制作時間は限られていますから,「◯◯みたいなの」と言ってくれたほうが早く終わる場合もあります。2020のときは新納さんとの打ち合わせをしている言葉の断片から,一緒になって探すということをしていましたし。
でも,「セブンスドラゴン2020-II」(以下,2020-II)のときには,前作での苦労や,アレンジャーさん達の解釈からフィードバックされたものもあったので,だいぶスムーズに作業できました。
sasakure氏:
古代さんは,過去に縛られることなく,今の音を作ろうとされている姿勢が楽曲に表れているので,それが古代さんの音楽が世代にとらわれない理由なんだと思いました。僕は新しい曲を作るときに昔のフレーズを使ってアレンジを施すことが多いので,余計にそう感じます。
作詞をするときもそうで,自分が昔に書いた日記を参考にして,その時代の空気や感覚を思い出しながら作業するんです。そうすることで,その当時を体験した人にまで,気持ちが届くんじゃないかと思うんです。
古代氏:
一緒に仕事をさせてもらって思ったんですけど,sasakureさんは文学的なセンスを持っていますよね。
sasakure氏:
(照れながら)ありがとうございます。
古代氏:
曲を聴いていると,絵や文字からの影響がかなりあることが分かるんです。
僕の場合はクラシック畑の出身なので,音楽はあくまで音楽であるという,“絶対音楽”と呼ばれる考えの影響から抜け切れないんですね。
なので,絵や文字からインスピレーションを得て曲を作るのが,昔は苦手だったんですよ。これはねぇ……モテない曲の作り方なんですよ。
(一同笑)
sasakure氏:
確かに僕は音楽よりも,映画や文学作品からインプットすることのほうが多いですね。
古代氏:
でしょう? すごくそういう音をしていますよ。羨ましい。
話を2020に戻すと,私の(文学的に)真っ白な部分に,彼らの文学的センスが加わって,プラスマイナスでうまくマッチしているのかもしれません。自分の世界が過剰に出ない分だけ,BGMとしてはマッチしやすいですから。
ゲームミュージックにおける
ボーカロイドの可能性
初音ミクアレンジされたご自身の楽曲を初めて聴いたときの印象を,古代さんは覚えていらっしゃいますか?
古代氏:
とてもよく覚えています。というのも,それまで僕は初音ミクにそれほど興味がなくて,2020のコラボをきっかけにいろいろと聴くようになったんです。
すると,ボーカロイドというジャンル独特の文化,独自のサウンドが形成されているのが分かったんですよね。
例えば,ロックの中にもいろんなジャンルがありますが,ロックとしての共通点はありますよね。そういう軸とでもいうようなものが,ボーカロイドというジャンルにもきちんとあるんだなと,そこに感動しました。
4Gamer:
感動ですか!
古代氏:
ええ。その時点の自分がミクアレンジを作ろうとしても,うまく出来なかったと思うんです。それでもアレンジされた楽曲は,どれを聴いてもミクワールドの色に染まっていたんですよ。これは素直に嬉しかったですね。
4Gamer:
ああ,なるほど。
古代氏:
実は10年前以上昔の自分は,アレンジバージョンが好きじゃなかったんです。でもここ数年は,自分の楽曲をほかの人が客観的に見て再構築してくれることが,すごく面白く感じられるようになったんです。
若いアレンジャーの方達は,いい意味で遠慮がなく,好き勝手にアレンジしてくれるので,それが「この先自分がどういう曲を作っていったらいいか」のヒントにもなっているんです。自分の持っているモノに,まだこういう可能性があるんだよ,と。
sasakure氏:
今,僕もうなずきながら聞いていたんですが,8 bit時代の音をオーケストラで再現しても,当時のニュアンスが出るわけではなく,また別のものになってしまうんですよね。当時の人はオーケストラの代替物として音源を使っていたのかもしれませんが,オリジナルにはオリジナルにしかない良さがあって,だからこそ生まれた文化があると思うんです。
ボーカロイドの文化もそれと同じで,最初は仮歌ソフトと言わることもありましたが,ボーカロイドはボーカロイドでちゃんと音楽として成立させられるようなポテンシャルを持っていて,それをみんなが聴ける環境ができてきた。そこがいいんです。
古代氏:
ボーカロイド曲の何がスゴイって,日本人じゃないと発想できなかったことだと思うんですよね。海外のどこを見回しても,こんな音楽シーンは存在しません。
実は雅楽以降で,西洋の真似事ではない文化を作り上げたのは,初音ミクじゃないかな,と思うくらいです。クラシックやテクノで世界に響いているコンポーザーはいますが,そうでなく“他に類を見ないジャンル”ですから。
4Gamer:
興味深いです。そういったボーカロイド文化が生まれたのは,どういった背景があるとお考えですか?
古代氏:
さまざまな要因があると思います。音声合成技術と声優さんのボイスのマッチング,キャラクターへの愛着,それにニコニコ動画というコミュニティを形成する場があった。それらのタイミングが合って生まれた,偶然にして奇跡の産物だと思います。
sasakure氏:
(深く頷く)
古代氏:
それに日本人って,モノを使い込むのが得意じゃないですか。アスキーアートだったり「Forza」のペイント機能で痛車を作り上げたり(笑)。
ミクの場合だと発声の良し悪しを“調教”という言葉で表現するんですけど,それにも驚かされますね。事実,2020から2020-IIの間だけでも,歌わせぶりがものすごく進化していますから。
sasakure氏:
クリエイター同士で情報共有をしていく中で,人の歌声に近づける方法や,ボカロの音としての心地良さを際立たせる方法などが,確立されてきていますからね。
古代氏:
確かに同じボーカロイドでも,「可愛いな」とか「色っぽいな」と思ったりするんですよ。ホントすごいです。
4Gamer:
古代さんご自身として,直接ボカロ曲を手がけてみようということは考えていませんか?
古代氏:
ボーカロイドを使って曲を作ってみたいとは思っています。でも,自分でボカロの調教はしないと思いますね。作った曲を自分より演奏が上手なミュージシャンに奏でてもらうのと同じように,すでにノウハウのあるクリエイターさんに任せて,トータルの完成度を追求したいです。
そしてどうせやるなら,ゲームの曲としてやりたいと思っています。
4Gamer:
おお,そういったオファーがあったら,やってみたいということですね?
古代氏:
ええ,やりたいです。とくに,打ち込みではなく生楽器でやりたいんですよ。フル生演奏でのボカロ曲って少ないですから,それで独自の世界観が生み出せるんじゃないかな,と。一人のボーカリストとしてフィーチャーするのに近い感じですね。
ただ,さっきも言ったとおり僕には文学的なセンスがないので,この企画意図をくんで協業のできるクリエイターさんと組めたら,きっと面白いんじゃないかと思ってます。
4Gamer:
sasakureさんは,そういった夢の企画はお持ちですか? 以前は「初音ミク -Project DIVA-」でご自身の楽曲「*ハロー、プラネット。」のミニゲーム化に関わられていますが(関連記事)。
sasakure氏:
そうですね。楽曲以外で世界観を広げるようなことは,やってみたいですね。
ボーカロイドって主人公が人ではないので,そういうSF性を打ち出した,例えばミクの背景までを大切にしたゲームが作れたら……という野望は持っています。
4Gamer:
それは遊んでみたいですね。実現する日を楽しみにしています。
唯一無二のジャンル
“ゲームミュージック”に惹かれて
さて,お二人ともゲームミュージックというジャンルへ,強い思い入れを持たれているようですが,その理由はどこにあるんでしょうか。
古代氏:
僕はもう,ビデオゲーム黎明期からゲームで遊ぶことが大好きで,そこで鳴り響いている電子音にめちゃくちゃ惹かれたんですよ。1980年代以前って,電子音自体を耳にすることが少なくて,街で流れる曲でシンセが目立つこともありませんでした。そんな中,むき出しの電子音が飛び出してくるのが,ゲームミュージックだったんです。しかも,回路から直接鳴ってるじゃないですか。
4Gamer:
当時は音源チップなんて存在しませんでしたからね。
古代氏:
そのレンジ感が凄まじくて。そこに漂う色気みたいなモノにやられてしまったんです。それが原点で,今で言うチップチューンに対する愛情の始まりでもあるんです。回路が鳴らす音のライブ感がよかった。
それを自分で触れるようになった,PC-8801 mkII SRの登場は革命的で,そりゃあ夢中にもなりますよ(笑)。
sasakure氏:
僕はファミコン世代なんですけど,回路から出てくる唯一無二の音の魅力というのは分かります。僕がゲーム音楽を好きだと意識したのは,サントラを購入した「聖剣伝説」なんですね。大人になってから,制限された中で作られる楽曲や,コンピュータ音源ならではの立ち上がりの速いアタック感に惹かれたんだろうな,と自分で理解できるようになりました。
古代さんの曲で一番聴いたのは「アクトレイザー」の1ステージ,フィルモアの曲ですね。
4Gamer:
あれはスーパーファミコン発売直後にリリースされたソフトの曲とは思えないほど,出色のクオリティでした。伊藤賢治氏は,「ファイナルファンタジーIV」の音楽にも影響を与えたとおっしゃっていましたし(関連記事)。
古代氏:
アクトレイザーに関しては,今でこそ「好きだった」とよく言われるんですけど,当時はそんなことは知るよしもなかったんですよ。あの頃は,「絶対に誰にもできないことをやってやろう」と鼻息を荒くしてまして(笑)。
FM音源では出せなかったストリングスの音が,スーパーファミコンの内蔵サンプリング音源では出せることが分かっていたので,「だったらオーケストラ楽曲をやろう」となったんです。
4Gamer:
おお……。
古代氏:
当然,プログラマーだった橋本さん※の協力がなければあのサウンドは実現しなかったんですけど,それでもイキってた僕は「この音を鳴らせるメーカーは,あと5年は出てこないだろう」と勝手に予想していたんです。ろくにほかの曲を聴きもしないのに(笑)。
※橋本昌哉氏:「イース」のメインプログラム担当としても知られる
4Gamer:
それは鼻息が荒い(笑)。
古代氏:
その後,自分が作った曲以外で初めて「コレはすげぇ!」と思ったのが「クロノトリガー」だったんです。アクトレイザーから4年後だったんですけど,ため息が出るほど悔しくて,作曲者のお名前を初めてチェックしましたからね。「光田康典っていうのか……やるなぁこの人」って。これ,初めて話すエピソードで,ご本人にも話していません(笑)。
4Gamer:
光田さんも驚くでしょうね(笑)。
その時代ですと,メガドライブでのお仕事も多かったですよね。
古代氏:
メガドライブでの仕事は,PC-8801mk II SRの制作環境をそのまま持ってくることができたので,自分のプログラミングテクニックまで存分に発揮できたのが良かったですね。
それもあってか,今でも海外では僕の代表作が「ベア・ナックル」シリーズなんですね。今年の1月にアメリカで開催されたMAGFestというイベントで,DJをやってきたんですけど,ベア・ナックルの曲が流れた瞬間,何百人ものオーディエンスがドッカーンと沸いたんです。
4Gamer:
そんなに大勢の人が! ベア・ナックル恐るべしですねぇ。
一方,sasakureさん世代の音楽制作では,ハードの制限を受けることはないかと思いますが,古代さんのお話しを聞いてどう思われますか?
sasakure氏:
いや,実は僕が作曲を始めたのって,携帯電話の着メロ制作アプリからなんです。それが同時に4音しか鳴らないので,ドラムトラックに1音使ったら,残りに使えるのはファミコンとほぼ一緒の3音なんです。それが今の作風につながっていると感じています。
4Gamer:
そんなバックボーンがあったんですね!
sasakure氏:
その限られた制約の中で楽曲をカバーするうちに,トリルを使ったり,シーケンスを細かくちぎったりと,少ない音数でも曲が豊かに聞こえる手法を学んでいきました。
4Gamer:
やはり知識じゃなくて自分の手で学んだからこそ,血肉になったと。
sasakure氏:
そうだと思います。携帯アプリの次のステップとして,初めて買った音源がQY-100というモバイルシーケンサーでした。
僕は機械が苦手だったので,PCを使わずに作曲ができるQY-100を選んだんですけど,当時としても制約の多いマシンだったんです。
その制約がある中で作っていた経験が,音の広がりを作るのに役立っているのかもしれません。
古代氏:
年齢は離れているんですけど,不思議な共通項を感じますよね。でも,sasakureさんの曲からは「ピュア」だったり「乙女」だったりといったキーワードが浮かんできて,僕にない可愛いセンスで羨ましいです。
sasakure氏:
ありがとうございます。うまく自分の世界がアウトプットできているようでよかった(笑)。
4Gamer:
お二人の共通点として8 bit的,チップチューン的な楽曲がありますが,その魅力はどこにあるんでしょうか。
古代氏:
先ほどお話ししたように原体験が電子音ですので,チップチューンだからという特別な思いはないんです。単に,そこからすべてが始まっているというか。
sasakure氏:
僕は多感な時期に一番影響を受けた音楽なので,思い入れは強いです。古代さんの世代に生まれることができたら……なんて妄想することもありますけど,それは叶わないですから(笑)。
あと,やっぱり,自分が「良い」と感じたモノを,次の世代に伝えていきたい気持ちが強いんです。
古代氏:
それはありますね。
現代のアプローチで作った古代節が
新鋭クリエイターの再構築で輝きを増す
アルバムに話を戻しますが,アレンジされた楽曲の中で,古代さんがとくにお気に入りの曲は,ずばりどれでしょう?
古代氏:
まず前提として,参加してくれたクリエイターさんのアレンジは「みんないいな!」と思ってます。
ただ,ゲーム中の楽曲で,DIVAモードの曲をデフォルトにしてほしいとまで思えたのは,戦闘曲「戦場−駆け抜ける命」でした。
アレンジのうまさもあるんですけど,実はこの曲を作るときにものすごく悩んだので,「どうして自分にこのアプローチができなかったんだ〜!」と思わされましたね。
4Gamer:
目から鱗状態だったと。
古代氏:
あとから聞いたら,アレンジを担当してくれたSHIKIさんの得意ジャンルだったそうなんですけど,絶妙にマッチしていましたね。
通常戦闘の曲ってよく悩むんですけど,それは「盛り上がりすぎちゃいけない」という考えがあるからなんです。かといって,ノレなかったら戦闘曲にはならないので,そのバランス取りは,何度手がけても頭を抱えますね。
作曲をしていくうちにどんどん盛り上がってしまって,あとから泣く泣く盛り上がりを削るようなことも,よくあるんですよ(笑)。
4Gamer:
頻繁に耳にすることになる曲でもありますし。
古代氏:
そうなんです。汎用的に使われる曲は,本当に難しいんです。(ディレクターから提示される)いろんなシチュエーションを汲み取らなくてはいけませんからね。例えば街の曲なら,すでにドラゴンに荒らされた街なので,メロディがキャッチーだと荒廃感が出ません。でも,街中の絵を見るとすごく明るい雰囲気だったりして……複雑ですよね(笑)。
しかもディレクターとのニュアンスの違いもありますから,もうね。
sasakure氏:
戦闘曲のテンションのコントロールというのは,ゲームミュージッククリエイターならではの悩みですよね。
実は,似たようなことは僕にもあって,ボーカルが主張しすぎてボーカル曲にならないようには意識しました。ボーカルが乗るとどうしても芯が立ってしまうので,それをならすための楽器の乗せ方などを工夫しました。
4Gamer:
ゲームに寄り添う音楽を作るうえでの悩みといったところでしょうか。
今回のアルバムでsasakureさんは,新曲「トウキョウ・シークエンス」を作詞,作曲,編曲を担当されていますが,これはいわゆるゲームミュージックとは違う作り方をしたんですか?
sasakure氏:
そうですね。この曲に関しては,古代さんへのリスペクトをたっぷり込めて作りました。具体的には,2020のダンジョン曲のフレーズや,アレンジの依頼が来たときに古代さんをイメージして作った楽曲の要素を盛り込んでいるんです。
とくに「渋谷−密林航行」という,DSのセブンスドラゴンからある曲が大好きで,フレーズを引用してオマージュしています。
4Gamer:
となると,古代サウンドのファンやセブンスドラゴンシリーズのファンならば,アルバムを買って聴いてみるしかないですね!
といったところで,最後にこのアルバムが気になっている方へのメッセージをお願いします。
古代氏:
僕が現代のアプローチで作った楽曲を,活きのいいクリエイターが再構築してくれた,新感覚の楽曲が詰まっています。長年ゲームミュージックに関わらせていただいていることもあって,古くからのファンの方も多いのですが,その「愛すべきオヤジ達」にも,ぜひこのアルバムを聴いてもらいたいです。
sasakure氏:
古代さんをリスペクトするクリエイター達が古代さんの楽曲を,さまざまなジャンルや“今”の音にアレンジしています。
2020は,初音ミクというキャラクターの立ち位置が,すごくうまく考えられているゲームだと思うんです。そういうところにも意識を向けながら聴いてもらえたら嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
『「セブンスドラゴン2020&2020-II」初音ミク・アレンジトラックス』
2013年7月24日リリース
■定価:¥3,500 (taxin)
■品番:UMA-1019〜1021
■レーベル:U/M/A/A
■パッケージ仕様:三方背スリーブケース+CD3枚組ジュエルケース
【参加クリエイター(五十音順・敬称略)】
ATOLS, HMO とかの中の人。(PAw Laboratory.), kiichi, keeno, Clean Tears, koyori, sasakure.UK, SHIKI, take, nak-ami, 八王子P, whoo, baker, millstones, monaca:factory, yuxuki waga, lasah, Lemm, Wonderlandica
【トラックリスト】
DISC 1
01. 始まりの異能者 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:kiichi
02. 某月某日、新宿にて [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:Wonderlandica
03. 戦場−ことごとく疾く [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:八王子P
04. 再び、討ち果たす [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:millstones
05. 都庁−逆サ日蝕 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:whoo
06. 緊急警報! [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:nak-ami
07. 戦場−七の死闘 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:ATOLS
08. 束の間の安息 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:Wonderlandica
09. 都庁の夜明け [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:sasakure.UK / 編曲:sasakure.UK
10. レッツワーキン! [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:millstones
11. 2020TOKYO [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:kiichi
12. 渋谷−密林航行 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:whoo
13. クセモノども、集合 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:HMO とかの中の人。(PAw Laboratory.)
14. 池袋−上空戦線 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:yuxuki waga
15. 進め、策は成り [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:Wonderlandica
16. 亡くしびと [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:nak-ami
17. 四ツ谷−月下墓地 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:monaca:factory
18. 戦場−更に荒れ狂うもの [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:sasakure.UK / 編曲:sasakure.UK
19. 国分寺−熱砂工場 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:yuxuki waga
20. 戦場−ライバルアライバル [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:八王子P
21. 世界は問う [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:nak-ami
DISC 2
01. 狂気の開花 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:HMO とかの中の人。(PAw Laboratory.)
02. 最後の人類拠点 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:sasakure.UK / 編曲:sasakure.UK
03. 地下道−洞穴調査 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:yuxuki waga
04. 戦場−暗雲を穿て! [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:ATOLS
05. 台場−氷結都市 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:whoo
06. 戦場−吼え猛る暴威 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:sasakure.UK / 編曲:sasakure.UK
07. ムラクモ13班と [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:kiichi
08. 決戦−東京タワー [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:monaca:factory
09. 荒神ニアラ [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:ATOLS
10. 人と竜の物語 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:Wonderlandica
11. 物語は、終わった。 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:baker / 編曲:baker
12. 追憶の幻影 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:monaca:factory
13. 人類戦士タケハヤ [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:八王子P
14. 楽園に至る記憶 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 編曲:baker
DISC 3
01. 繰り返す営み [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:keeno
02. 戦場−駆け抜ける命 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:SHIKI
03. 丸ノ内−亜空領域 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:nak-ami
04. 戦場−再襲する翼 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:Clean Tears
05. 六本木−融解都市 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:nak-ami
06. 戦場−7の脅威 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:Clean Tears
07. [F]の衝撃 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:Lemm
08. 消える、灯火 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:Lemm
09. 議事堂の夜明け [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:take
10. 地下道−巨大遺跡 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:millstones
11. 首都高−螺旋迷宮 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:millstones
12. 意志の輝き [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:Wonderlandica
13. 決戦−東京スカイタワー [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:SHIKI
14. 呪神フォーマルハウト [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:kiichi
15. 人と竜の物語(2021 Ver.) [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:Wonderlandica
16. 星の系譜 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:koyori
17. つむがれる物語 [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:koyori
18. 僕らのセカイ、君のミライ [DIVA Ver.] 作曲:古代祐三 / 作詞:lasah / 編曲:kiichi
19. トウキョウ・シークエンス 【新曲】 作曲・作詞・編曲:sasakure.UK
「『セブンスドラゴン2020&2020-II』初音ミク・アレンジトラックス」
商品情報
※VOCALOIDならびにボーカロイドはヤマハ株式会社の登録商標です。
- 関連タイトル:
セブンスドラゴン2020-II
- 関連タイトル:
セブンスドラゴン2020
- 関連タイトル:
セブンスドラゴン
- この記事のURL:
キーワード
(C)SEGA
(C) SEGA
(C)Crypton Future Media, Inc. www.crypton.net VOCALOIDはヤマハ株式会社の登録商標です。 Lisenced by TOKYO TOWER
(C) SEGA