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  • 発売日:2015/05/19
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[GDC 2013]「The Witcher」シリーズのCD Projekt REDから学ぶ,ゲームにアイデアを組み込むためのゲームデザイン八か条
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印刷2013/03/28 18:11

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[GDC 2013]「The Witcher」シリーズのCD Projekt REDから学ぶ,ゲームにアイデアを組み込むためのゲームデザイン八か条

画像集#002のサムネイル/[GDC 2013]「The Witcher」シリーズのCD Projekt REDから学ぶ,ゲームにアイデアを組み込むためのゲームデザイン八か条
 GDC 2013において,CD Projekt REDのリード・ゲームプレイデザイナー,Maciej Szcześnik氏「From a Great Ideas to Game Features」(良いアイデアから良いフィーチャーに)というタイトルで現地時間の2013年3月27日に講演を行った。

 Szcześnik氏は,イマジネーション(想像)を仕事にするというやりがいのある職種に就けたことを誇りに思いながらも,「なぜアイデアを形にするのは難しいのか」という命題に,つねにぶち当たってきたという。
 何もアイデアが浮かばずに,どこから手を付ければ良いのか分からないこともあれば,1日で300種ものアイデアを出さなければならないこともある。自分が惚れ込んだアイテムが開発チームに理解されなかったり,それが元で軋轢が生まれたりといった問題も,チームが大きくなればなるほど露わになってくるというわけだ。

 Szcześnik氏は,そうした「The Witcher」制作以降の経験則から,自分なりに問題を解消し,チームが効率良く作業できるシステムを作り出したようだ。今回の講演では,アイデアをゲームに組み込んでいくための,同社なりの開発プロセスを八か条にまとめて紹介している。ゲームデザイナー向けではあるが,ここにまとめたので参考にしてほしい。


(1) 質問をぶつけろ

 新作を開発するにあたり,「まったく新しいゲームのフィーチャーを取り入れよう」と決めたものの,どこから始めるべきなのかがわからない。そんなときは,そもそも新しいゲームのフィーチャーに対して,疑問を投げかけるのが一番だ。
 CD Projektでは,いわゆる「5W1H」と言われる,When(いつ),Where(どこで),Who(誰が),What(何を),Why(なぜ),そしてHow(どのように)という6つの疑問を,アメリカの保安官が胸につけるバッジから「シェリフの星」と呼び,常にここからゲームデザインの骨格を作り出していくのだという。つまり,

・ When:いつ,プレイヤーがこのフィーチャーを利用するのか
・ Where:どこで,このフィーチャーの素晴らしさが良く伝わるか
・ Who:誰が,このフィーチャーをもっとも楽しむのか
・ What:何が,このフィーチャーを理解しやすくできるか
・ Why:なぜ,このフィーチャーを追加する必要があるのか
・ How:どのように,このフィーチャーがゲームをもっと楽しくするのか


 という6つの質問に明確に答えられないようなら,そのフィーチャーはあまり良いものではないということだ。この結果,「The Witcher 2: Assassins of Kings」PC / Xbox 360)では,戦闘システムと操作システムを重点的に改良することが決まったという。

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(2) 的確なリサーチを

 ゲームのアイデアを得るために,多くのゲーム開発者は本を読んだり,映画を見たり,ほかのゲームで遊んでみたりするのが一般的であるという。
 しかし,これではどのゲームも似たり寄ったりになってしまう。そこでSzcześnik氏は,「自分の体験で特別に感じたものからアイデアを得るのが,新作をユニークなものに仕上げるのにもっとも効果的だ」と話し,自分がモンテネグロの寒村を旅行したときの体験や,祖父母から聞いた話からアイデアを得たと話す。このほかにも,古文書から中世の戦法を記した図解を見つけ出したり,CD Projektの有志が,中世騎士の衣装を着けて“トーナメント”と呼ばれる模擬試合に参加したりといったことも行ったという。

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(3) チームと論議する

 「The Witcher 3: Wild Hunt」PC / PlayStation 4)の開発に際して,一つ一つのモンスターに特定のスキルを用意しようと決めていたものの,作業が遅れて締め切りに間に合いそうにないという事態が発生した。そこで,Szcześnik氏はデザインチーム全員を集めて,合同で迅速にアイデアを絞り合う「クロフォードのブレインストーミング」という手法を活用したという。とにかく一つでも多くのアイデアを持ち寄りながら,第1条の「質問をぶつけろ」を実践して選ぶという,引き算の仕組みを取り入れて効率性を重視したというわけだ。

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(4) イノベーションを追加

 シリーズ最新作という以上は,前作を超えるだけの新しい要素がなければファンは納得しない。The Witcher 2のプロトタイプではその試みが何度も失敗していた。スタントマンでもある格闘家や剣術の達人に実際に動いてもらい,モーションキャプチャーを加えることで,前作以上に記憶に残り得るゲームが実現できた。

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(5) アイデアの客観的評価

 ゲームをより洗練させるためにも,フィーチャーの絞り込みが必要不可欠。しかし,実際にアイデアを出した人は,自分のアイデアに感情移入してしまい,チーム内で意見が分かれていがみ合うという最悪の状況も起こり得る。
 そこで,一つ一つのアイデアを客観的に評価するため,CD Projekt REDではフェイスブックの「いいね!」に似せて,「Like It」システムというのを作り出したという。
 画像を見ると分かるとおり,Szcześnik氏のチームは(3)にあるスキルリストに,開発者の投票によってスコアを付けている。非常に民主的なやり方であり,このことで採用されないアイデアを出した人もなだめやすくなり,プロトタイプを作成する前に,不必要なアイデアを取り除くことができる。
 ちなみに,リストで気になるモンスタースキル「Stinker」(悪臭を放つもの,の意味)は,投票で11点しか取れなかったらしく,The Witcher 3では採用されないようだ。

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(6) フィーチャー導入の影響を明らかにする

 オリジナルのThe Witcherでは,女性との交際で「セックスカード」というものを入手できた。Szcześnik氏らは当初,これらのカードを集めて回るゲーマーが続出するとは予想していなかったらしく,人権団体などから女性蔑視だと批判を受けることになった。
 そのため,「一つのフィーチャーを取り入れることで,ゲーム全体にどのような影響を及ぼすのか」を事前に予想するシステムを取り入れたのだという。

 会場では,Szcześnik氏が,実際にゲーム開発に利用していると思われるマトリックスの一部を紹介し,一つのフィーチャーがゲーム全体に与え得る可能性を予想する仕組みを論じた。このマトリックスは,社内では「Consequences Graph」と呼ばれているらしいが,これを作成することにより,ネガティブな効果だけでなく,想定できなかったポジティブな効果も明らかにされるという。

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(7) 良いプランを立てる

 The Witcher 2では,何を優先させるべきかというプラン作りを怠ったために,例えば苦労して作り上げたスニーキングのシステムが,ゲーム中で3度しか使われなかったということが発生した。そのかわりに,より簡単に開発できたであろう乗馬要素などを盛り込めば,ファンは喜んだろうとSzcześnik氏は悔しがる。そのために,フィーチャーに開発の優先順位を設けることは欠かせない作業であるという

 Szcześnik氏は,これを「Game Roadmap」と呼んでおり,一つ一つのフィーチャーに対して,開発にかける労力を示す「Effort」と,ゲームプレイやゲーマーにとっての価値を示す「Value」という2項目で採点し,ValueをEffortで割り,その数値が高いものほど優先的に開発するという手法を,The Witcher 3で編み出したという。これは,漠然としているアイデアを数値という分かりやすいものに置き換え,フィーチャーの変更などにも迅速に対応できるとのことだ。

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(8) 解決法を簡素化する

 The Witcher 3で新しく加えられるのが,空を自由に飛び回るモンスターだ。ところが,当初のデザインは「3D NavMesh」と呼ばれる,オープンワールド型のゲームには適さないパスファインディングのシステムが利用されていたため,空を飛ぶモンスターが本当に自由にマップ中を飛び回ってしまう状態になり,その調整に苦労したらしい。
 Szcześnik氏は,初期の制作はシンプルにするほど新機能も盛り込みやすくなり,その分だけバグの発生率も低くなると話していた。

画像集#013のサムネイル/[GDC 2013]「The Witcher」シリーズのCD Projekt REDから学ぶ,ゲームにアイデアを組み込むためのゲームデザイン八か条

 The Witcherシリーズは,これまでに500万本を販売している大ヒットシリーズだ。それだけに,さらに進化したゲームエンジンと,次世代ゲーム機へのアグレッシブな対応で,CD Projekt REDの名を世界に轟かせようという意気込みも伝わってくる。「The Witcher 3: Wild Hunt」は2014年中の発売ということで,今後もSzcześnik氏の奮闘は続いていくはず。その成果を心待ちにしたいところだ。

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