プレイレポート
[プレイレポ]「ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション」でゲラルトの旅を再体験。さらに美しい世界でウィッチャー稼業を満喫
元々は,互換機能でオリジナル版を新ハードでもプレイすることが可能だったウィッチャー3だが,新世代機版となる本作は,より高性能になったハードスペックに最適化される形で,各種のアップグレードが行われているのが大きな特徴だ。今回4Gamerでは,発売前にプレス向けに先行公開されたバージョンの序盤をプレイできたので,早速その様子をお届けしよう。
なおプレイに使用したのはPS5版で,記事中のスクリーンショットやオプション設定はそれに準じたものになっている。
「ウィッチャー3 ワイルドハント」公式サイト
ダークでハードな世界観が魅力のRPGが,最新ハードに最適化されて再び登場
まずは,ウィッチャーの世界観を説明しておこう。
ウィッチャーシリーズは,剣と魔法の力が世界を動かす中世の世界を舞台としており,人間のほかにも,エルフやドワーフといった種族が社会に共存している。また,グールやグリフィンといったモンスターも各地に生息している。原作はポーランドのファンタジー小説だが,いわゆる“ファンタジー”という言葉から頭に思い浮かべるような,牧歌的な雰囲気は非常に薄い。魔王のような明確な悪の存在が君臨しているわけでもないのに,現実の歴史のように人々は戦争に苦しみ,死体はむごたらしく各地に放置され,人間以外の種族は平然と差別対象となり,力なき者は運が悪ければモンスターにあっという間に殺されてしまうほど,社会は不安定だ。
主人公であるゲラルトが属する「ウィッチャー」という職業はかなり独特で,怪物退治(モンスタースレイヤー)を生業としているものの,いわゆる民衆が称える英雄のような扱いをされることはほとんどない。実情としては人々を助ける仕事をしているのだが,その常人離れした戦闘能力と独特の文化から,良くてがめつい賞金稼ぎ,悪ければ邪悪な魔女のように扱われ,目の前で平然と罵倒されたり,平和な村でも刃傷沙汰が起きたりするのは“よくあること”だ。
こうした抜き差しならないダークでハードな世界の中で,プレイヤーは歴戦のウィッチャーであるゲラルトを操作し,広いフィールドの各地で引き受けられる多くの仕事(クエスト)をこなしながら,場合によっては多くの人々に影響を与える重要な決断を繰り返していく。オープンワールドRPGらしい自由な冒険が出来るのはもちろんだが,こういった骨太の世界観を満喫できるのもまた,本作の魅力の一つだろう。
さて,本作で新世代機に対応したウィッチャー3だが,一番大きな変更点は,ハードの性能を生かしたシステムの強化だ。具体的には,まずビジュアル面の強化が分かりやすい。4K解像度に対応してるのはもちろん,グラフィックスのクオリティを優先する「レイトレーシングモード」と,フレームレート優先の「パフォーマンスモード」を自由に切り替えてプレイできる(本稿のスクリーンショットは,別途記載があるものを除きすべてレイトレーシングモードで撮影)。
実際にプレイしてみたところ,鏡面反射やライティングなどが大きくアップグレードされたレイトレーシングモードは非常に美しいが,60FPSでヌルヌル動くパフォーマンスモードもアクションゲームとしては捨てがたい魅力がある。どちらにするかは好みだが,いずれにしても高解像度で描かれるウィッチャーの世界は美しいだけでなく,世界に垣間見える残酷さや恐ろしさが際立ち,一層没入感を高めていると感じた。
また,高速なSSDによってロード時間が短縮され,ゲーム全体のレスポンスが上がったのも嬉しいところ。元々ウィッチャー3はそれほどロード時間が気になる作品ではなかったが,通常のファストトラベルはもちろん,マップを跨ぐ場合や,セーブデータから再開するときの待ち時間もほとんど気にならない。プレイ時間が長くなりがちな大ボリュームのRPGとしては,ある意味一番重要なところだろう。
時代にあわせたアップデートしては,フォトモードの追加も注目ポイントだろう。PS5版では左右のスティック(L3+R3)を同時に押し込むことで,メニュー画面やデモシーンを除き,いつでも瞬時にフォトモードを起動できる。
派手な額縁やロゴ表示,ポージング機能といったものはないが,ピントの変更や露出の調節,色合いの修正など基本的な部分は押さえている印象だ。普通にプレイしていると,どうしてもゲラルトの後ろ姿ばかりを見続けることになるので,ここぞというシーンを画像に残しておけるのはありがたい。
また,PS5ならではの機能として,DualSenseコントローラーによるハプティック・フィードバックとアダプティブ・トリガーの機能が利用できるのも嬉しい。設定でオフにしない限り,状況に応じてより細かい振動をコントローラから感じられるし,トリガーの重さも変わっていく。戦闘中など動きの激しい場面はもちろんだが,馬に乗って移動している時などの穏やかなシチュエーションでも,自然と場面に応じたフィードバックを感じられるので,比較的地味ではあるのだが確実に没入感の増加につながっていると感じた。
細かい部分では,薬草などを採取するときにチェスト扱いではなくなって直接取得できるようになっていたり,全力疾走(ダッシュ)を左スティックを押すだけでON/OFF出来たり,「印」をメニューを開かなくても発動できる設定が追加されたりと,かゆいところに手が届くアップデートも多い。
さらに,ゲームバランスなども見直されてるようで,例えば,ゲーマーの間で“段差に弱すぎるウィッチャー”と半ばネタ的に扱われていたゲラルトだが,本作では落下ダメージがかなり減少して序盤でも死ににくくなっていることが確認できた。ダメージこそ食らうものの,体力満タンから即死することは少なくなっている様子だ。これで歴戦の戦士の物語の幕が,ちょっとした崖で下りてしまうことも少なくなりそうだ。
新たなクエストやドラマ版ウィッチャーにインスパイアされた衣装など,コンテンツの追加も。新たな冒険に出るなら今だ
システム面でのアップグレードが目立つ本作だが,既存プレイヤーにも嬉しいコンテンツの追加も行われている。ネタバレを避けるため詳細は伏せるが,とある場所に新規のクエストが追加されており,ゲラルトが新たな脅威に立ち向かうことになる。
謎に包まれた怪しい洞窟に,意味深なメモ,浮かび上がる幽霊に不気味なクリーチャー……と雰囲気は抜群なので,ぜひ自分で探し出して楽しんでもらいたいところだ。
また,現在Netflixでウィッチャーのドラマシリーズが展開されていることもあり,これにインスパイアされたアイテムやスキンも実装されている。新しい鋼鉄や銀の剣のほか,ドラマの作中に登場した鎧なども入手できるようだ。今回プレイした中では,ニルフガード兵が着用する鎧が変わることが確認でき,オプション設定で簡単に元のモデルとの切り替えが可能になっていた。ドラマのファンはもちろん,ゲーム内の雰囲気を変えたい場合にも嬉しい追加要素だ。
このほか,「My Rewards」というCD PROJEKTのリワードプログラムを利用することによって,ゲラルトの装備などを無料で入手できるサービスもおこなわれている。GOG.comと連携するだけなので,アカウントがある人は利用してみるのもいいだろう。
リメイクやリマスターではなく,あくまで新世代機への対応版として配信された本作だが,実際にプレイしてみると“単なる高解像度化”では終わらない変更が数多く加えられていると感じた。全体としてはビジュアル面のアップグレードが目立つのは間違いないが,それ以外にもロード時間の減少や,フィードバックの強化,コンテンツの追加にシステムやバランスの修正など,まさにウィッチャー3の完全版に仕上がっていると言えそうだ。未プレイの人はもちろん,かつてゲラルトとして世界を駆け回ったプレイヤーが再び遊ぶのにも相応しいタイトルと言える。
最後に,本作(コンプリートエディション)は,オリジナル版のPC版とXbox Series X|S版は無料のアップデートとして提供されており,PS5版も100円でPS4版からアップグレードが可能だ。またドラマ版ウィッチャーの装備など,一部のコンテンツはオリジナル版でも(アップグレードしなくても)そのまま利用できるコンテンツとして配信される予定とのこと。“ゲラルトおじさん”のまだまだ終わらない旅を楽しみに待とう。
「ウィッチャー3 ワイルドハント」公式サイト
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Wiedzmin (C) CD PROJEKT S.A, based on the novels by A. Sapkowski. All Rights Reserved.
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