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NVIDIAのジェンスン・フアンCEO,AI分野における日本への期待を熱く語る
結論から先に言うと,Huang氏が語った内容はGPUコンピューティング一色であり,ゲームのゲの字も出てはきていないのだが,NVIDIAの総帥が,日本の開発者に向けて何を語ったのか,今回はその点を簡潔にまとめてみたい。
「AIによってSFが現実になる」
そういう流れのなかで,Huang氏が,GTC Japanの前身となる国内イベント「GPUコンピューティング 2010 Winter」以来,6年ぶりに,日本のローカルイベントで基調講演を担当するというのだから,NVIDIAにとっての重要度は窺い知れよう。
ではなぜ,GTC Japan 2016がNVIDIAにとって重要なのか。それは,基調講演でHuang氏が力を込めて語っていたように,同社がいま,「AIコンピューティングの会社」という,新しい衣装を身に纏いつつあるからだ。
「なぜNVIDIA(がAI)なのか,それはNVIDIAが設立当初から並列処理に取り組んできたからだ」とHuang氏は語る。GPUの並列処理が,AI,なかでもディープラーニングと呼ばれる技術に極めて適しており,そこにNVIDIAが力を入れるのは必然だというわけだ。
そのうえで氏は,NVIDIAが従来から力を入れてきたビジュアルコンピューティングの成果でもあるARやVRにAIを活用する例として,映画「Iron Man」(アイアンマン)を引き合いに出す。
いわく,「私はスタークの,研究所のシーンがとても好きだ」(中略)「このシーンも,もはやSFではない」とのことである。
Huang氏はディープラーニング技術が急速に発展すると同時に応用が広がっていることに触れ,「(その進歩速度は)ムーアの法則を超えている。AIは『超成長』しているのだ」と言う。
そんな急激なディープラーニング技術の発展に対応するために,「NVIDIAは20億ドルを投資してPascalを開発した。20億ドルという投資額はコンピューティング分野としては最も大きなものではないか」とも述べている。
産業用ロボット大手ファナックとの協業を会場で発表
さらにディープラーニングをIoTやロボットに活用する未来像を示しながら,「日本はロボットが誕生した国といってもいい」と日本を持ち上げてみせている。
と,ここでHuang氏は,NVIDIAと産業用ロボット大手ファナックとの協業を発表。ファナックでロボット事業部本部長を務める稲葉清典氏が登壇し,ファナックが目指すAIの生産技術への応用を語った。
ファナックは多関節産業用ロボット市場で世界シェアの50%を占める有力な企業だ。もちろん,産業用ロボットでは世界最高の技術力を持つ。NVIDIAがファナックと協業するというのはビッグニュースであり,今回のGTC Japan 2016でHaung氏が最もアピールしたかったことの1つだろう。
自動運転研究の進展を報告しつつも日本のパートナーは発表せず
ファナックとの協業によって産業用ロボットという大市場に乗り込んだNVIDIAだが,続いてHuang氏が大市場になりうると強調したのが自動運転の分野だ。「AIトランスポーテーションの需要はとても大きい。将来的には1000兆円の市場になるだろう」とのことだ。
よく知られているとおり,NVIDIAはPascalアーキテクチャを搭載するDrive PX 2シリーズを使い,自動運転システムの開発に取り組んでいる。その成果である自動運転向けOS「DriveWorks」のα版は「向こう数週間以内にパートナーに提供することができるだろう」(Huang氏)。
また,ディープラーニングによる学習だけで自律走行する自動車「BB8」の現状もHuang氏は動画で紹介していた。
BB8は,GTC 2016でその存在が明らかとなった実験的なプロジェクトなのだが,3月当時に比べるとかなり賢くなっているようで,今回披露された動画では,走行レーンのない道や,郊外の未舗装路ようなところでも道を認識して走って曲がれるようになり,工事現場の脇を抜けて進むといったこともできるようになっていた。
……という具合に自動運転研究の成果披露があったため,ファナックに続いて,ここで日本の自動車メーカー関係者が登壇するかもと期待したのだが,残念ながらそれはなかった。
トヨタが米国にAI研究所を解説するなど,日本の自動車メーカーも自動運転技術の開発に取り組んでいる最中だが,少なくともGTC Japan 2016のタイミングで,日本の自動車メーカーとNVIDIAが共同で発表できるようなニュースはなかったようである。
以上がHuang氏が語った概要だが,やはりファナックとの協業は大きなニュースだろう。ファナックの稲葉氏は,学習によってさまざまな作業を効率よく学習し,周囲を認識して,他のロボットや人間と協業できる産業ロボットといった将来のロボット開発を語っていたが,こうしたことがNVIDIAとの協業で可能になれば産業技術にとって大きなブレークスルーをもたらすはずだ。
そしてそれは,普段ゲームをプレイして過ごしている我々の生活をも大きく変えることにもつながるだろう。今後の展開に期待したい。
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