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[Unite 2015]女性だけのゲーム開発ワークショップ「Game Girl Workshop」は,いかなるコンセプトで生まれ,どのようなゲームを生み出したのか
タイトルにある「Game Girl Workshop」とは,10代の女性を対象に,ゲームの作り方を集中的に教えるという試みだ。それがいかなるコンセプトの下に生まれたものなのか,そして,結果としてどのようなゲームが生み出されたのかについての講演が行われたので,本稿で紹介したい。
「Unite 2015 Tokyo」公式サイト
「Game Girl Workshop」公式サイト
女性だけのゲーム開発ワークショップ
デンマークやパレスチナなど,これまでいくつかの国と地域で行われてきたワークショップだが,もともとは中東の女性達を対象にしていたようだ。Eronde氏はまず,ワークショップを始めたきっかけはゲーム産業に携わる女性が少ないことと,「中東にはゲームをプレイする人は多いものの,中東で開発されたゲームはあまりない」という主旨の講演を聞いたことだと述べた。
中東ではゲームは新しい産業であるため,女性が関わるチャンスも多いはずだと考えたEronde氏は,Andrea Hasselager氏と共に,女性のみを対象としたGame Girl Workshopをスタートさせた。そこにはまた,「ティーンエイジャーの女性を集めてゲーム開発ツールの使い方を教えたら,どんな作品を生み出すのだろうか?」という興味もあったという。
Game Girl Workshopは,短期間で集中的にデザイン,オーディオやグラフィックスの作成,プログラミングなど,ゲーム制作の基礎を学ぶワークショップで,2010年に行われた初のGame Girl Workshopでは,8〜10歳の女性10人ほどを2つのチームに分け,それぞれのチームで異なったゲームを開発してもらった。
その結果,参加者からは「自分に絵の才能があるとは思わなかった」「プログラムのコーディングがこんなに楽しいなんて」といった喜びの声が聞かれ,また教育委員会や学校,参加者の両親からも肯定的な意見が寄せられたという。
よく聞かれるのが「なぜ男性を混ぜず,女性だけでワークショップを行うのか?」という点だとEronde氏は語る。大きな理由は,男女混合のグループを作った場合,男性のみが精力的に活動してしまうことが多いためだ。参加者を女性のみにすれば,こうした心配がなく,女性自身が考え出したゲームが生まれるという。
Game Girl Workshopは,3〜5日間にわたって行われ,参加者にはUnityとそのプラグインであるPlayMakerなどの開発環境が提供される。
開発において最も重要なのが,参加者によるブレーンストーミングだ。このワークショップでは「シューティング」や「迷路ゲーム」といった“ひな形”はなく,ブレーンストーミングによって生み出された物語が,ゲームへ落とし込まれていった。ゲームと物語の区別がついていない参加者も少なからずいたため,ゲームそのものやゲームデザインについての説明は行ったものの,あくまで参加者の自主性が尊重されたそうだ。
講演では,ワークショップで作られたゲームの実演と解説も行われた。中でも特徴的な傾向を示したのが,パレスチナのワークショップで作られたゲームだという。
Eronde氏が特徴としてまず挙げたのは,すべての作品の主人公が男性だったことだ。女性だけで作るゲームなのだから,女性を主人公にしてもよさそうもの。なぜ男性を主人公にしたのかと参加者に聞いたところ,「男性なら世に出ていろいろなことができるが,女性にはできないから」という答えが返ってきたそうだ。
また,パレスチナで作られたゲームの世界観にファンタジー的な要素はなく,すべてが現実的だったのも大きな特徴だという。例えば「Flower Garden」は,花畑の花が虫に食われる前に鎌を投げて花を摘み取ったあと,トラックに乗って市場へと売りに行く……と実際に即した展開になっている。
筆者もこのゲームをプレイしたのだが,虫に鎌を当てても何も起こらない。鎌で害虫をやっつけても良さそうなものだが,現実にそんなことをする人はいないので,ゲームにも出てこないのだ。
パレスチナのワークショップで作られたゲームは「農夫や猟師など男性が登場する,アーキタイプ的な物語」であり,スウェーデン,デンマーク,ドバイのワークショップで作られたものは「日常生活における葛藤などを反映した,個人的な物語」だったとEronde氏は述べた。
Eronde氏は最後に「女性のゲーム開発者を教育するためにできることは,まだたくさんあると思っています。我々の活動をソーシャルメディアでフォローしてください」と今後への意欲を語り,講演を締めくくった。
Game Girl Workshopの公式サイトでは,これまでの活動が紹介されているほか,ワークショップで作られたゲームが掲載され,実際に遊ぶこともできる。興味がある人はチェックしてほしい。
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