インタビュー
簡単操作ながらもしっかり遊べるスマホ向けオンラインRPG「Klee(クレー)」。作品のキーマンに本作のコンセプトから魅力までいろいろ聞いてみた
本作は,「本格的なマニュアル操作ができる横持ち」と「簡単オートマティック操作の縦持ち」という異なる二つの操作感と,独特な世界観が楽しめるオンラインアクションRPGだ。スマホ向けということで,手軽に誰でも楽しめるゲームになっているが,ゲームシステム部分は丁寧に作られており,しっかりと長く遊ぶこともできる。
今回は,制作を担当したネイロ代表取締役社長にして本作のプロデューサーを務める平井武史氏と,アエリアの事業戦略グループマネージャーの山崎康弘氏に本作のコンセプトから魅力までいろいろ聞いてみた。
コードネームからイメージが広がって完成されたKleeの世界
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,最初に本作の世界観から教えてください。
平井氏:
4Gamer:
キャラクターだけでなく,建物も見た感じではオモチャのような雰囲気があるものの,左右非対称だったりしますよね。それも世界観に通じているのでしょうか。
平井氏:
そうです。武具類も同様にちょっと歪んだデザインになっていたりします。それが,この世界の住人にとっては心地よい空間なのです。音楽も可愛らしいトイ楽器を使っていますが,“ドミソ調”では作っていませんので,どこか不安定さを感じられるのではないでしょうか。
山崎氏:
4Gamer:
そうした世界に入ってくるプレイヤー達は,どういう立場にいるのですか。
平井氏:
ざっくり言うと,プレイヤーキャラクター達は,神を復活させることを目的としています。Kleeに出てくる魔物,ゲーム内では“イーター”という存在ですが,それは“魔石”によって動いています。一方,プレイヤーなど人間達の生活を豊かにしているのも同じ魔石です。そして,プレイヤー達は,魔石を集めることで神を復活させられると信じているんですね。
4Gamer:
なるほど。魔石を集めていくことで,何かが起こるわけですね。
平井氏:
魔石によって本当に神が復活するのか,そして,その神が人間の味方であるのか。現段階では,魔石を集め終わることも神が出てくることもないのですが,いずれはドラマティックな展開が起こる……かもしれません。
山崎氏:
ここは両社で一緒にこだわって作り込んできた部分でもあるのですが,最初のチュートリアル部分から世界観の説明が少しずつ行われていて,クエストを進めていくことで,少しずつ世界の全容が明らかになるような仕掛けになっています。
4Gamer:
明確なコンセプトによって作られた世界なんですね。そうなると,タイトルの「Klee」というのには,どういった意味が込められているのかも気になります。
平井氏:
最初は開発コードネームとして付けた名前でした。ドイツに「幸せの豚がいるクローバーの丘」という伝説があります。そこには幸せのクローバーがあり,小さな住人と豚が暮らしていて,小さな住人が世界中に幸せのクローバーを届けるというお話です。本作には世界の人々をつなげるような機能も存在しますし,人が人に関与して幸せになれるような世界観をコンセプトにしたくて,ドイツ語でクローバーを指す「Klee」というタイトル(コードネーム)にしました。
4Gamer:
そういう意味で付けられたタイトル名だったわけですか。
平井氏:
タイトル名を付けてからアエリアさんと開発を進めていくうちに,イメージが膨らんでいって,タイトルに合うような設定がどんどん生まれていきました。気がついたら,コードネームだったはずのタイトル名が一番ゲーム性に合っているという状況になってしまいまして(笑)。
ダークファンタジーな設定の中にもハッピーな部分もある不安定さがポイントといいましょうか。でき上がってみると,最初にあったコンセプトである「優しく呪われた世界」をうまく表現できたのかなと思います。
4Gamer:
今回は,開発コードから世界観が膨らんでいった好例ということになるのでしょうか。
平井氏:
ちなみに,最初にとにかくノリが良いゲームにしたいと考えていました。音楽にノリながら,アクションが高めだけどRPGとしてしっかり楽しめるゲーム,つまりテンポが良くてノリやすいゲームですね。Kleeというタイトルが自分の中で決まったあとで,日本語のキーボードで,k・l・e・eと打っていくと,日本語で「のりいい」となっていることに気づきまして……(笑)。
山崎氏:
我々としてはネイロさんならではの強みも生かしてほしかったので,ネイロさんとは当初よりサウンドをいかにゲームシステムへと落とし込んでいくかについての検討を行いました。音楽と世界観とアクション,それらが融合して生まれるノリの良さを重視したゲーム作りは,開発初期からお互い一貫して取り組んでいました。でも,キーボード的に意味があったのは,今初めて知りました(笑)。
4Gamer:
後付け……だとしても良くできたタイトルですね(笑)。ゲーム性については,どういった企画からスタートしたんですか。
平井氏:
アエリアさんから,スマホで本格的なRPGが作りたいと相談があったのが最初ですね。スマホと本格的なRPGというジャンルの相性はどうなんだろうと考えながら,一緒に企画を詰めていき,バトルは最大4人参加のスタイルにして,アクション性がありつつも,難しくなりすぎないバランスというのを目指しました。スマートフォンでのプレイをメインに考えていたので,この形が理想だろうという結論に達したわけです。
山崎氏:
アクションバトルと日本人に親しまれるような可愛さが漂うダークファンタジー,この二つを軸に,スマホのアプリゲームとしては類を見ないほどのハイクオリティなタイトルを作ろうと,我々アエリアとネイロさんとの協力体制で準備を行ってきたタイトルとなります。
平井氏:
そうですね,アートイメージとコンセプトについて,アエリアさんと試行錯誤しながら,Kleeを作っていきました。
4Gamer:
開発で一番苦労したところは,どのあたりになりますか。
平井氏:
アクション性の部分はこだわっていまして,開発時は相当苦心したことが思い返されます。バーチャルパッドだとうまく反応しなくてイライラすることもありましたので,スムーズに遊んでいただけるよう独自に改良しました。横持ちと縦持ちとで動かし方が異なるというところも,操作感にこだわったがゆえのアイデアですね。二つのユーザーインタフェースを作ることになるので,開発者の方なら分かると思うのですが,その二つのバランス調整も含めて,単純に二倍以上の労力が掛かりました(笑)。
4Gamer:
スマートフォンだとキーボードもついていないですし,操作感をよくするのは難しいですよね。本格的なRPGを実現するためにどんなことを考えたのでしょうか。
平井氏:
一年後,二年後にお客様が何を要求しているのかを考えながら,スマートフォンで楽しめる本格的なRPGとは何なのかを,両社でいろいろと模索しました。最終的には,「新しいエンターテインメントがこれです」と,自信を持ってお客様に提案できる題材になったのではないでしょうか。
4Gamer:
ちなみに,開発期間はどのくらいですか?
平井氏:
構想からは二年,開発で一年半掛かっています。
4Gamer:
スマホのアプリとしてはちょっと長めですが,やはり本格派RPGとして制作されたので,いろいろと調整が大変だったということでしょうか。
山崎氏:
平井氏:
我々はコンシューマのタイトルも手掛けていますので,CPU,GPUの次世代モデル観点からも先を読むことはそれほど難しくはなかったのですが,いかんせんスマホ自体が流動的なデバイスではありますので着地点にフォーカスするのは簡単ではなかったです。
横持ちと縦持ちを瞬時に切り替え可能にすることで実現した操作感覚
4Gamer:
では,Klee最大の特徴ともいえる,横持ちと縦持ちで異なる操作系について教えてください。
平井氏:
横持ちのときは画面の左半分で移動系の操作を行い,右側の画面で視点の変更と攻撃とスキルに割り当てられたボタンを配置しています。
山崎氏:
スマホ向けのオンラインRPGで,ここまで自由に視点を変更できるタイトルは少ないのではないでしょうか。
平井氏:
補足すると,視点の上下だけは,誤操作のないようフリックで変更するようにしました。これで快適な操作が行えるようになっていると思います。
4Gamer:
平井氏:
縦画面のときはオートでバトルが進行し,「かばんリング」を開くことで,随時スキルを使うことができます。通勤通学などの移動中でも遊びやすいので,ちょっと空いた時間でのプレイや友達とのコミュニケーションに活用してほしいですね。
4Gamer:
横持ちと縦持ちを両立させるのは大変だったのではありませんか?
平井氏:
アクション性が高いRPGを遊ぶことがなかったお客様でも抵抗のない操作と,緻密なアクション性のあるゲームに慣れている方の操作の両方を共存させることは,難度が高かったです。縦持ちのオートバトルが使いやすすぎると横持ちの意味がなくなってしまいますし,かといってオートバトルの精度が低すぎるとストレスになってしまいます。それぞれで特徴を出し,いつでもどこでも持ち方を変えることができるようにして,最終的には整ったのかなと思います。
4Gamer:
バランスを取るうえで一番気をつけたところはどこでしょうか。
平井氏:
山崎氏:
最初は横持ちで戦略を立てながらプレイしてもらって,一度クリアしてダンジョンを周回するようなシチュエーションでは縦持ちでサクサクと効率的に経験値や合成素材を稼いだり,タウンで友達や仲間と一緒にアクションやチャットでのコミュニケーションを楽しんでいただく,といった使い方を想定しています。
4Gamer:
縦持ちでもプレイできるのは個人的に嬉しいですね。電車の中だと片手でしかプレイできないこともありますし,横持ちはいかにもゲームをしてる風でちょっと恥ずかしかったりしますので(笑)。
平井氏:
横持ちが恥ずかしい人向けとは言えないですが(笑)。いろんなニーズに応えられたのかなと思います。
王道的オンラインRPGの中にも隠れた技術が隠されている
4Gamer:
続いて,ゲーム内容について詳しくお聞きしていきます。スマホのゲームはいろんな人がプレイしますが,どんな人に向けたタイトルになっていますか。
平井氏:
特別にターゲットを決めず,いろいろな人にプレイしていただきたいですが……取り分け,初めてオンラインRPGに触れるプレイヤーの方にも戸惑わずに遊んでいただきたいとは考えています。ですので,サーバーに入るようなところは表に見せずに,完全に自動で振り分ける形にしました。拠点になる“タウン”から,難しい手順を踏まずに,すぐクエストを受けて冒険に出られるようにしたのも,誰でもプレイ可能な分かりやすさを重視したがゆえですね。
4Gamer:
タウンではクエストを受けられますが,ランダムパーティを組む場合,キャラクターのレベルが近い人がマッチングされるのでしょうか。
平井氏:
キャラクターのレベルよりもクエストの進行度を優先してますね。
4Gamer:
クエストで気をつけたところなどはありますか。
平井氏:
ザコ敵を倒しながらマップの奥へと進んでいき,最後に中ボスクラス以上の敵と戦うことになります。これに勝利できれば,攻略時のプレイ状況に応じたクリアランクが算出されて,それに対して報酬が得られる仕組みです。プレイ時間はやはりスマホ向けに設計していますので,5分程度から長くても10分程度で終わるようにはしています。
4Gamer:
スマホ向けのタイトルの場合,クエストへの進入回数を制限する行動力のようなシステムが採用されるケースも見受けられ,Kleeにも使われているのですが,やはりこういったシステムは必要なんでしょうか。
平井氏:
Kleeでは「スタミナ」という数値を消費してクエストに入ります。このスタミナは自然に少しずつ回復する,一般的に行動力と呼ばれるものと同じですね。RPGということで,こちらのシステムを入れるかどうかは両社で相当悩んだ部分ではあるのですが……。
山崎氏:
4Gamer:
では,実際に行われるバトルの特徴を教えてください。
平井氏:
装備した武器によって特性が変わるのが最大の特徴ですね。
4Gamer:
片手剣/両手剣/杖の3種類の武器それぞれで戦い方が違ってくるわけですね。
平井氏:
杖を装備している場合は,MP回復速度が速いこと,魔法での攻撃力が高いこともあって,魔法中心に戦うことになります。片手剣と両手剣は,通常攻撃を使いつつ,適時魔法やスキルを織り交ぜていくスタイルですね。あとは武器ごとの必殺技や4段階まであるタメスキルをいつ使うのかも重要になるでしょうね。
パーティの場合は,ガードが得意な片手剣に敵の攻撃を押さえてもらって,その間に両手剣がタメスキルによる攻撃を狙うのも良い戦略だと思います。杖のタメスキルは,回復魔法が使えるのが特徴ですので,ほかのプレイヤーを支援するような戦い方もできます。MPは少しずつですが自動で回復します。回復薬もあるので,いざというときは使っていただければと思います。ちなみに,HPは自動回復しません。
4Gamer:
割とアクション性が高いバトルシステムですよね。バトル中敵の攻撃を見て移動して回避するといったことは想定して作っていますか。
平井氏:
一応できますが……キャラクターにダッシュなどのアクションは入れていませんので,タイミングはかなりシビアかもしれません。敵のパターンを読んで,攻撃の前に避けるイメージですね。
4Gamer:
では,ボスの攻撃を回避しないと倒せないほど難しいバランスにはしていないと。どちらかというとガチで殴りあうイメージで合ってますでしょうか。
平井氏:
4Gamer:
どうしてもクリアできないクエストも,こつこつキャラクターを強化していけばいつかクリアできるようになる。そういった安心感のあるタイトルなんですね。Kleeには職業という概念はなく武器によってキャラクターの特性が変わるという話でしたが,キャラクターの成長要素は,キャラクターレベルだけですか。
平井氏:
武器と防具(頭/体/アクセサリー)にそれぞれにレアリティがあってレベルも存在します。
4Gamer:
武具の合成についてはいかがでしょうか。
平井氏:
水は火に強く,雷は水に強く,火は雷に強いという特徴があります。武器には属性攻撃力,防具には属性耐性がついているものもある感じですね。属性は今後増えていく予定です。
4Gamer:
なるほど。武具に攻撃力アップや防御アップといったオプションが付与されていると,武具集めも楽しいかと思いますが,そのあたりはいかがですか。
平井氏:
パッシブスキルが最大3つ付与されますので,同じ名前の武器でも性能が違ったりします。
山崎氏:
装備品はとにかく数多くて,能力だけでなくキャラの見た目も変わるので,集めて着せかえ的に楽しみながら、友達や仲間が集まるタウンでみんなにを披露できることもKleeのウリです。
4Gamer:
分かりました。話を聞くと全体的に王道なRPG作品に仕上がっているようですが,平井さんの過去作品が好きな人にはちょっと物足りないのかもしれないなと思ったりもするのですが(笑)。
平井氏:
それはボクの創る作品が王道でないということでしょうか(笑)。クオリティに関しては妥協していませんので,遊んでいただければ平井節は伝わると信じています。
音楽に関しても,「優しく呪われた」を出すために音の重ねづらい「トイ楽器」で明るく,でも「ドミソ」はだめという「ドM縛り」でこだわって創ったものです。スタッフの苦労の末に出来上がったものですが,アウトプットとして世界観に調和の取れたものに仕上がっている自負があります。ネイロならではの技術もフル活用していたりしますのでそのあたりも注目してください。
4Gamer:
それは注目して見てほしいところですね。しかし,普通に,真面目にゲームを作っているのに違和感を感じるというのも変な話ですね。
平井氏:
最近は“一歩先”くらいがちょうどいいのかなと思うようになりました。というのも,三歩先は実際には誰にも分からないですし,半歩先は誰かに真似されてしまいます。確実な一歩先というのが現実的なのかなと。
4Gamer:
一歩先を行くオンラインRPG Kleeに期待しています。では最後に,4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
山崎氏:
平井氏:
やりたいことはまだまだあります。まずはKleeの指し示す,今までのスマホアプリにない「アクション」「つながるオンライン」という新しい体験を多くの方に味わっていただきたいです。そして知ってもらうことを重視していて,“難しそう”ではなく“楽しそう”と思われるようなゲームに仕上げたつもりです。これから得意としているマニアックな独自色を出していく予定ですので,お客様が離れないようにしつつ,でも魅力的なKleeを継続させていただきますので,末永くたっぷりとお楽しみください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「Klee(クレー)〜月ノ雫舞う街より〜」公式サイト
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