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[COMPUTEX]“脳が疲れない映像エンジン”あります。GALAXYが面白機能搭載のグラフィックスカードを発売予定
映像中のオブジェクトを認識しやすくする
DarbeeVision製映像エンジンを搭載
ダービー(Darbee)と聞いて競馬のダービー(Derby)を連想した人もいるかもしれないが,スペルからも分かるとおり,競馬とは関係ない。この製品名は,映像プロセッサの企業である米DarbeeVisionから取られたものである。
GTX 750 Ti Darbeeは,このDarbeeVision製エンジン「Visual Presence」(関連リンク)を,カード上に搭載しているのだ。
Visual Presenceとは,簡単にいうと,テレビ製品で採用されている映像処理エンジンに相当するものだ。
人間の視覚メカニズムは,左右の目から見た内容の視差情報や眼球内にある水晶体の厚み伸縮による焦点制御によって,立体感を把握する構造なのはよく知られている。立体視対応テレビはこの視差情報を再現しているし,NVIDIAが研究中のヘッドマウントディスプレイ「Near-Eye LFD」は,焦点距離による遠近表現まで対応したライトフィールドの再現に挑戦するものだ。
Darbeeによると,Visual Presenceは,人間が持つこの「“脳で見る”視覚」に訴える処理を行う映像処理エンジンなのだという。
概念だけをまとめてみよう。Visual Presenceでは,映像の輝度情報などから仮想的な深度情報を推測し,それを基に「強化した陰影」を追加する処理を行う。仮想的な深度情報を推測する部分は「2D→3D変換技術」に近いものだ。
そして追加陰影を生成する部分は,ゲームグラフィックスでいうところの「SSAO」(Screen Space Ambient Occlusion)的な処理系と似たものになっている。
Visual Presenceが処理した映像は,オブジェクト単位の輪郭が鮮明となり,陰影も際だったものとなって,2D映像内のオブジェクト認識が行いやすくなる。これをDarbeeVision流にいうと,「脳に負担をかけることなくオブジェクトを認識できるようになる」のだそうだ。
下に示したのは静止画を使ったデモだが,画像に映っているそれぞれの内容は,確かにVisual Presence処理後のほうが認識しやすい。風景写真の画像を見比べてみると,比較的均一な輝度分布となる空はほとんど処理されていないが,建物や人物のシルエットは鮮明に見えるよう処理されていることが分かるはずだ。
また,草花のほうではハイライトが鋭く強化され,副次的に超解像的な効果までもが表れている。両方ともぜひ拡大して見てほしい。
Visual Presenceの処理所用時間は
60fps時に0.006フレーム相当
Visual Presenceは,映像を人がより認識しやすいものに変えられる。それなら,これをゲームグラフィックスに応用することで,「長時間プレイしても疲れない」「敵を発見しやすく,狙いやすい」といった効果をもたらすことができるのではないか。GALAXYはそう考えて,このVisual Presenceをグラフィックスカードに組み合わせたのだという。
下に掲載したムービーは,ゲームに応用したときのデモ映像である。格闘ゲームなどではとくに効果が高い印象を受けた。
さて,GTX 750 Ti DarbeeにおけるVisual Presenceは,GeForce GTX 750 Tiカード基板上に実装された専用コネクタに,ドーターカードのような形で搭載される。ドーターカードとはいえ,カード全体の厚みは2スロット仕様に収まる程度だ。冒頭の写真でも分かるとおり,外観上はごく普通の長尺グラフィックスカードと変わらない。GeForce GTX 750 Tiカードにしてはゴツいな,くらいだ。
ユニークな特徴としては,このVisual Presenceを,外部機器からカードに入力された映像にも適用できる点が挙げられよう。
一方,HDMI SWがオフの状態ではHDMI入力は無効化されて,GeForce GTX 750 Tiでレンダリングされた映像がHDMI出力から表示される。
気になるのはVisual Presenceの処理時間だろう。映像処理を行うときにあまりにも時間がかかってしまうと,「表示遅延」が発生してしまう。
DarbeeVisionによれば,Visual Presenceの処理時間は公称値で約0.1msとのこと。60Hz時に1フレームの表示時間は16.67msだから,約0.006フレーム程度の遅延という計算になる。結論として,遅延はほぼ無視できるレベルといえ,ゲーマーも一安心といったところだ。
ちなみに,ここまで処理が速いのは,Visual Presenceがフレームバッファを持たず,ラインバッファベースの基本的な信号処理だけを行っているからだろう。
GALAXYの担当者によれば,GTX 750 Ti Darbeeはまず2000〜3000枚ほど生産するそうだ。そして市場の反応を見ながら,Visual Presenceをほかのラインナップへ展開していくかどうかを検討したいとのことだった。
発売時期は2014年第2四半期中の予定だが,価格は未定。常識的に考えれば,一般的なGeForce GTX 750 Ti搭載カードよりは高くなるだろうが,それが「若干」程度のレベルで収まるなら,面白い選択肢になりそうだ。
カード背面(左)とブラケット部(右)。ブラケット部で突出している黒いスイッチは,ブーストボタンだそうだ |
GALAXY Microsystems 日本語公式Webページ
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