インタビュー
「チェインクロニクル3」ストーリーインタビュー第4弾。メインシナリオライター全員に聞いてみたら見えてきた,第3部の物語のいろんな側面
今回は総合ディレクター・松永 純氏,シナリオチームリーダー・西 次郎氏のほか,第3部の各主人公の物語を手掛けているシナリオライター5名にも出席してもらい,メインストーリー4章“大祭前夜”,5章“災禍の白光”,6章“集いし欠片たち”について話をしてもらった。
ドラマが大きく動く6章に向けて,ライター達はどのような想いを物語に込めていったのか。いつもの雰囲気とはちょっと違う,チェンクロの物語制作のいろいろな側面をご覧あれ。
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ヘリオス篇:5章
アリーチェ篇:6章
エシャル篇:5章
セレステ篇:5章(インタビュー1時間前に6章が配信。未プレイ)
アマツ篇:5章
※本稿は「チェインクロニクル3」のストーリー6章“集いし欠片たち”までの内容を含んでいます。ネタバレが気になるという人は,プレイ後にあらためて読んでください。
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S氏に聞いた,アリーチェ篇(4章〜6章)
松永 純(以下,松永氏):
第3部の各メインストーリーの担当ライターを全員呼んで,こういう場を作ったのは今回が初めてなんですよ。
西 次郎氏(以下,西氏):
5人ともこの日をワクワクして待っていたみたいなので,遠慮なくいろいろ聞いていただければ!
4Gamer:
かしこまりました。皆さん,本日はご足労いただきありがとうございます。それとよろしくお願いします。今回のストーリーインタビューは“6章の配信順”としまして,アリーチェ篇,セレステ篇,アマツ篇,エシャル篇,ヘリオス篇の順番に話を聞いていきます。最初に皆さんのお名前と,担当している主人公を教えてもらってもいいですか。
S氏:
はい。アリーチェ篇を担当しております,Sです。
白沢戌亥氏(以下,白沢氏):
引き続きよろしくお願いします。セレステ篇を担当している白沢です。
海富 一氏(以下,海富氏):
海富です。担当はアマツ篇です。
吉川 光氏(以下,吉川氏):
エシャル篇の担当をしています,吉川です。
風術師氏:
西さんからヘリオス篇の担当を引き継ぎました,風術師です。
西氏:
一応……松永と僕は現在,シナリオ全体の展開や整合性を統括して見ています。
4Gamer:
ふむふむ。やはり,人数が多いですね(笑)。
松永氏:
本当にあと1時間で終わるのかな……。
(当日は第3弾/第4弾とあわせて計2時間のインタビューの予定,であったが……)
4Gamer:
大丈夫です,チャチャっといきますよ。それでは1番手,Sさんが担当するアリーチェ篇からスタートしましょう。4章ではフロスの一同が迷宮山脈から帰還し,白き竜コットンのことを探るべく,ミシディアと湖都へ向かいました。物語が賢者の塔の周辺から離れて,ようやく外の世界に飛び出しましたね。
S氏:
第3部のメインストーリーは,主人公達がどのように出会い,どのように別れて,絆を紡いでいくかの物語です。なので,4章の本題はなんといっても,エシャルとの運命の交差です。アリーチェをエシャルと出会わせるために,彼女達を塔から放り出すのには苦労しました(笑)。
4Gamer:
読破後だと納得のテーマです(笑)。
S氏:
もちろん,アリーチェ達にとってはコットンがどのような存在なのかを探りにいくのが目的ですが。
西氏:
コットンは(アリーチェ篇における)5人めの主人公と言ってもいいんじゃないでしょうか。マスコットとして,すっかり馴染んだ感じですし。
松永氏:
4章のアリーチェとエシャルの交差は,ボリュームがすごいんですよね。
S氏:
そうなんですよ。これまでの運命の交差は,主人公同士が軽くすれ違うくらいの内容でしたが,ここでは1章を丸々使って描きましたので。執筆時はエシャル篇を担当する吉川さんと「この場面はアリーチェ篇で,こっちの場面はエシャル篇で――」などとよく相談し,2人で細部を詰めていきました。
松永氏:
その頃,Sさんと吉川さんはずーっと話し合っていましたよね。
4Gamer:
たしか,第3部の運命の交差は「〜〜篇」に関わらず,各主人公が登場するシーンをその担当ライターが書いているんでしたよね。
S氏:
はい。だから当時は,私と吉川さんとの間でプロットが行ったり来たりして,その度にボリュームが増えていってしまい(笑)。結局のところ,アリーチェ達は思っていた以上に長く,砂漠に滞在してしまいました。
4Gamer:
ちょっと特殊なセレステは除きつつ,第3部の主人公を男女別で考えると,アリーチェとエシャルは普通で,元気で,善良な少女に位置付けられますよね。私は彼女達を同じ傾向のキャラと認識していたので,当初は「2人が出会ってもそれほど波風は立たないのでは?」と思っていました。しかし,実際は全然そんなことなくてビックリでした。
西氏:
2人の性格の傾向は,第3部スタート前に随分と練りましたよね。
S氏:
ええ,そうでした。
西氏:
第一印象でアリーチェとエシャルの属性が似た感じに見えるだろうな,とは我々も認識していましたので,企画当初にアリーチェは「周囲に振り回されるタイプ」,エシャルは「自分から引っ張っていくタイプ」と,明確な性格の違いを設定しておいたんです。
S氏:
アリーチェはエシャルと違って,自分に自信がないんですよね。だから,アリーチェとエシャルは似ているようで,実際に会話させてみると意外と正反対なんですよ。
松永氏:
それと4章では,2人の“過去への向き合い方の差”をちゃんと描こうっていう話もしていました。エシャルはアリーチェよりも記憶喪失の規模が大きくて,よっぽど不安な状況にあるはずなのに,無理して過去を取り戻そうとは思っていないんですよね。それまで前しか見ていなかったんです,彼女は。そして結果的に,あの心の交差はすごく熱いものになりました。しかも,彼女達はめっちゃ親友になりましたからね。
4Gamer:
エシャルがアリーチェに言った「後先なんて考えて,ためらってたら後悔する!」のくだりは,4章から先も回想シーンとして度々挿入されていますよね。アリーチェに“体当たり系”の属性が生まれた,大きなきっかけだったみたいで。
S氏:
はい,やたらと使っているのはそういうことです(笑)。
4Gamer:
そんなエシャルの協力や,2匹の守護竜の助けにより,アリーチェ達は竜教団に連れ去られたコットンを助けることができました。ちなみに湖都に着いた日の夜,4人娘の恋バナはビックリするほど咲きませんでしたが,これいかに。
S氏:
ええ,彼女達に男っ気はサッパリないです。デルフィーナ以外は女子力が皆無なので(笑)。
4Gamer:
まだ花より団子ですかね。その後,5章ではミシディアの叱責で強制帰宅となったアリーチェが,エシャルと翼のお守りをプレゼントし合いました。そして賢者の塔に帰ったところ,彼女の身体に隠された「増幅」の刻印と,チェインクロニクルの欠片の存在が発覚します。
S氏:
増幅の刻印の力は,結構えげつないものです。ただ,その力はアリーチェのキャラクター性とリンクしているところがあるんです。「自分1人ではなにもできないけれど,皆といれば……」みたいなところです。プラスに転ぶのか,マイナスに転ぶのか,それは今後のお楽しみです。
4Gamer:
命の危険があるほどの強大な力というのは,物語上でも現実的にも取扱注意ですが,男の子には憧れですよね。14歳頃に患う病の一種かもしれませんけど。
S氏:
本当ですか? 死んじゃいますよ?
(一同笑)
4Gamer:
わかる人にはわかるんです! それはさておき,アリーチェはその後,失われた記憶の中にいた少女の存在をベルタに問いただします。そして町で出会った不思議な少女こそ,件の「エステラ」であると判明します。
S氏:
ようやくです! エステラはこれまでの回想シーンで,名前がずっと「????」表記でしたので,プレイヤーの皆さんには長いこと「誰やねんお前!」と思わせてしまいましたが,やっと出番が来ました。
4Gamer:
当然,エステラはアリーチェ篇における重要人物なんですよね。
S氏:
もちろんです。企画段階には生まれていた重要な存在です。今後の物語にもずっと関わっていきます。
4Gamer:
彼女の刻印は,ほかのキャラの刻印の力とは比較にならないほど強力そうに描かれていましたが。
S氏:
ちょーつよいです! 彼女の全身にはびっしりと刻印が記されています。どうしてそうなったのか,それがどういうことなのか,あわせて注目してほしいです。
海富氏:
エステラがベルタの目をサラッと抉り取ろうとしていた場面も印象的でしたよね。アドヴェルサス教授に命令されて,申し訳なさそうにしつつも,本気で実行しようとしていたので。それに教授の黒さもすごいです。ほかの篇の悪役達とも一味違う,クレイジーさを感じます。
S氏:
これまでもベルタとカーリンの関連で研究所の人達を描写していましたが,あの方々は名前がない,あくまで彼女達の境遇を表すための記号みたいな存在でした。でも,アドヴェルサスにはそういったマッドサイエンティストな要素を,すべて人格として落とし込んでいます。まさに研究馬鹿の変態おじいちゃんです。
海富氏:
憎いというより,やべえって感じでした。
4Gamer:
道徳心とかもまったくなさそう。
S氏:
研究一筋。研究さえできればなんでもいいんです。
4Gamer:
そんな人物なのにエステラは一緒にいて,命令を聞いているという……。
S氏:
もちろん! 理由がありますからね!
4Gamer:
ほかにも,フォルテナータが皆に求められていただろう役どころを,キッチリと果たしていました。ああいうキャラは書いていて楽しそうですね。
S氏:
楽しいですよ。フォルテナータを含む3人組を書くのはとても楽しいんです。
松永氏:
出来上がったシナリオを見ていると,Sさんのその気持ちがよく伝わってきます。
S氏:
フォルテナータは毎回,必ず戦いを挑んできますが,アフターフォローは欠かさないんですよ(笑)。
4Gamer:
ライバルの鑑。
松永氏:
そしてあっという間にデレましたね。
S氏:
すっごいイイ娘になっちゃいました。
松永氏:
早かったですよねー,イイ娘になるの(笑)。
S氏:
でも彼女は強いんですよ。アリーチェ達もまだまだ勝てません。
風術師氏:
迷宮山脈の試練でも,先生達を圧倒していましたよね。
S氏:
そこは,ちょっと強くしすぎたかもしれない……(笑)。
4Gamer:
彼女の憧れのもう1人,クラウディアの出番も待ち遠しい。そこからアリーチェはエステラとアドヴェルサスとぶつかりつつ,消沈してたところをデルフィーナの励ましで復活します。すると,6章の主題となるであろう“災禍の白光”が王都に立ち上りました。
S氏:
王都の確認のためにフロスの3人が王都に行っちゃってから,アリーチェは賢者の塔でエシャルと再会しましたね。記憶喪失になった後の彼女でしたが。
4Gamer:
まさかのダブル記憶喪失は,エシャル篇までひとまず保留して。アリーチェはエシャルの例の言葉を胸に,王都へ行く決心を固めました。振り回され系だった彼女の段階的な成長が見て取れます。
S氏:
5章については「どうやってアリーチェを王都へ行かせよう?」と悩んでいたんです。そのため,エシャルとあらためて交差し,彼女にアリーチェの背中を押してもらいたいと考えました。
4Gamer:
そういう物語の作り方もあるんですね。
吉川氏:
ただ,当初は5章でのエシャルの記憶喪失が,本当にアリーチェの動機につながるのか懸念もありました。
S氏:
最初はアリーチェに問題をサラッと流させて,なんとなく王都へ行ってもらうなんて考えていましたしね……(笑)。
吉川氏:
でも,結果的に記憶喪失のエシャルとの出会いは,アリーチェの背中を押せるようになっていました。それは4章での交差があったからです。書いている私達としても,運命の交差はこういうところでキャラの動きを生み出せるから,面白いですよね。
S氏:
それぞれが書いている物語の中で,主人公達は大きく育っていきます。その流れの中で,彼ら彼女らの大切なテーマが交差のタイミングとぶつかると,私達としては「してやったり」と思いますよね。
吉川氏:
それとアリーチェとエシャルの交差は,松永さんが「この2人をここで交差させてみてよ」と言ってきたのが始まりでした。最初は「えっ,本当に!?」と疑っていて,どのような落としどころにするべきかも見えていませんでしたが,結果的に予想外の爆発が生まれました。
西氏:
そういう無茶振り,よくありますよね(笑)。
え,そんなに予想外だったの? 絶対面白くなるという確信あっての振りだったんだけど……。
アリーチェはあの時点で,子供の頃の記憶が欠けていて,エステラのことや,ベルタの想いをなにも憶えていないのを気にしていたんですよ。でも,忘れているだけで,忘れられているわけじゃなくて。エシャルと再会したとき,アリーチェは「大切な人から忘れられる痛み」という,エステラの心境を知ることになったんです。そこに,すごく大きな意味が生まれると思ったんです。きっと,彼女が動き出さずにはいられなくなるほどの。
とはいえ,第3部ではヘリオス篇以外,各主人公の物語の打ち合わせ段階で渡しているアイデアは,あくまでそういったストーリーの種までにしています。その種からどんな物語を展開させるのかは,ライター陣に任せています。物語の細かいところまで指示しちゃうと,それぞれの物語の良さが失われると思っているので。だから,粗筋を立てるタイミングでは具体的なことまでは言わないようにしていて。
……なのでまあ,無茶振りに聞こえてしまうのかもしれませんね(笑)。
西氏:
松永の無茶振りは,チェンクロ3ならではの面白さのため,ライターに1歩先を踏み外してもらうための手段なんじゃないかと思っています。僕自身もそうですが,シナリオライターってどうしても“綺麗にまとまるようなプロット”を書こうとしがちなんです。起承転結を綺麗に書ければ気持ちが良いですし,「いい仕事した!」って感じられますから。もちろん,それは悪いことじゃありませんし,大体はそれでうまくいくんですが……計算だけじゃどうしても書けないものって,やっぱりあるので。
4Gamer:
今まで見えてこなかった制作の実態が次々と。私は6章に関しては,その後の「ソーニャ」の登場にも驚きました。よくもまあ1000体を超えるキャラの中,この状況と背景にピッタリな彼女を連れてくることができましたね,という意味で。
S氏:
前提としては,アリーチェだけで王都に行かせると間が持たないという,情けない理由がありましたが……(笑)。そこで誰か必要だろうと探してみたところ,先輩役になり,友達をテーマにしている女の子に,ちょうどソーニャがいたんです。だから選ぶのは意外とスムーズでした。しかもソーニャを登場させようと決めたとき,偶然にも彼女のレジェンド化が決まったので,ピッタリな状況でした。
西氏:
コラボなどの限定キャラを除くと,メインストーリーに関わるキャラは800体以上となりますが,これだけいると,時と場にピッタリ合ってくれるキャラがちゃんといるんですよね。それを探して,見つけて,魅力的に登場させるのも,チェンクロチームのライターとして必要な能力の1つだったりします。例えば,アマツ篇の「ミシマ」もこういうパターンで登場が決まったキャラでしたしね。
海富氏:
ミシマは「旅立ち」と「航海」という,精神的にも物理的にも状況にとてもマッチした1人でしたからね。
4Gamer:
ほー,登場人物の索引も求められるんですね。
S氏:
その後,ソーニャと一緒に王都に着いて,光の壁に穴が開いた王都へ,2人で入っていきます。そこでまたまたエステラと遭遇し,戦いになってしまいます。そしてアリーチェ達はエステラをどうにか退けたあと,王都の奥に進んでいく……といったところで6章が終わりました。
4Gamer:
賢者の塔にはエシャル,王都にはヘリオスの姿と「セ……ステーッ!」の声,アマツ篇でも王都への道が示されていたので,主人公達がようやく集結しそうです。
西氏:
6章のテーマの1つが“王都に主人公達とその仲間達が集まる”でしたから。ここからは彼らがどのように入り乱れて,なにとぶつかっていくのかが見どころになります。
4Gamer:
ちょっとだけ与太話もいいですか。賢者の塔ではフィリアナやカティアが立派に先生をしている姿が描かれていますよね。例えばフィリアナですけど,彼女の生徒会長時代を高校生とすると,賢者の塔に大学はあるのでしょうか。そして彼女は大学に行ってから教授になったのか,それとも生徒会長から教授になったのか。賢者の塔の学校のシステムが気になっていて。
松永氏:
賢者の塔の魔法学園では,卒業後に研究職を経て,教授の道に進めます。フィリアナの場合は5年前の時点で学園の最高学年にいたので,そのまま卒業し,その道へ進みました。
S氏:
最初は皆,研究員からのスタートですね。フィリアナはそこで功績を認められて,三ツ星教授になったんです。
4Gamer:
つまり,賢者の塔における最高学府は高校であり,大学はないというイメージでよろしいんでしょうか。
S氏:
うーん,大学というものはありませんが,あそこが高校と言うのもイメージ的にはちょっと違いますね。
海富氏:
学生の雰囲気は高校生みたいですが,学校のシステムは大学的な感じですよね。教授という立場もそうですし,クラスというより学科ごとの講義って形式ですし。
4Gamer:
たしかに大学っぽい講義形式でした。
S氏:
入学者は最初,アリーチェ達が元々いた普通科にドサッと集まって,そこから各々で特科クラスに分かれていきます。1つの特科で専門的に学んで卒業する人もいますし,いろいろな所を回る人もいれば,戦闘技術を高めて魔法兵団を目指す人もいると。特科クラス以降は就職に直結しているイメージで考えておいていただければ。
海富氏:
入りやすいけど,卒業しにくい。いわばアメリカの大学ですよね。カレン,イザベル,レベッカ,チアリーといった卒業候補生グループも存在しているくらいですから。むしろ,スムーズに卒業できるほうが稀なんじゃないかな(笑)。
S氏:
在学年数もバラバラで,途中でドロップアウトする人も多そうですから。
4Gamer:
長年の謎が解けました。では最後の疑問ですが,また「ユニ」が新衣装になっていたんですが……。
白沢氏:
たしかフィーナが4種類でユニが5種類なので,バリエーション数のTOPは現在ユニでしたっけ。
4Gamer:
これから帰還したフィーナが巻き返すのか,はたまた暫定1位のユニが引き離すのか。最後に本題から逸れて恐縮ですが,アリーチェ篇の話はここまでとします。Sさん,ありがとうございました。
S氏:
こちらこそ,ありがとうございました。
松永氏:
これ絶対に(時間が)間に合わないやつだ……。
白沢氏に聞いた,セレステ篇(4章〜5章)
4Gamer:
大丈夫です。ここから巻いていきますしね。次は白沢さんにセレステ篇について聞いていきます。ただ,セレステ篇の6章はこのインタビューの1時間前に配信されたというHOTさのため,残念ながら私は未プレイとなります。以降の担当者についても6章に関しては,言える範囲を考えておいていただければなと。
白沢氏:
分かりました。
4Gamer:
セレステ篇の4章では,精霊島で見つかった“謎の印”の解明のため,皆で聖都へ行くことになります。聖都に到着し,ユリアナと対面したセレステ達はそこから副都へ。そこでセレステが鉄煙の大陸のギャングに誘拐されてしまうものの,各ギルドの協力で一件落着。短いスパンで,さまざまなキャラが入れ替わりで登場していましたね。
白沢氏:
4章ではほかの主人公達の各章と比べてもこれまでにないくらい,さまざまな地域の多くのキャラを登場させました。それはこの章のテーマが“3人の子供達を自然な形で旅させたい”だったからです。
4Gamer:
言われてみると,ほかの主人公達の全国行脚よりはほんわかしていたかも。
白沢氏:
物語の根幹に「旅をさせたい」という大きな理由があったので,まずは最終目的地をどこにしようか悩みました。そしてそれはユグド大陸の歴史の中心である,聖王国の聖都だろうと考えたので,聖都に立ち入るならばと,王都のユリアナに許しをもらいにいかせました。こうやって物語の大枠の逆算をしてから,旅の雰囲気を肉付けし,その先の展開のきっかけとなる情報を盛り込んでいったんです。
4Gamer:
私のような素人だと「順序どおりに物語を積み立てていく」みたいなイメージで作ってしまいそう……。ユリアナと子供達の対面シーンはすごく良かったです。ユリアナがゆるっとしつつ,キリッとする感じが。
白沢氏:
カッコいいユリアナを1回くらい書いておきたくて(笑)。
4Gamer:
クーシャンもカッコいい男子になってきました。新キャラのカルヴァリーもお兄さん感がありましたし,セレステ篇はクーシャンとシーシャンの成長も見どころですよね。
白沢氏:
クーシャンとシーシャンの人格は停滞させるのではなく,常に成長と変化の隣り合わせを心掛けてきました。主人公のセレステも成長要素とは切り離せないキャラクターですが,彼女は人でもあり,機械でもある特殊な存在なので,子供の純粋な成長はこの双子に肩代わりさせているんです。
4Gamer:
なるほど。一口に成長といっても,セレステと双子ではアプローチが違うんですね。
白沢氏:
そう言えます。
4Gamer:
では物語の続きを。副都からさらに聖都にやってきた一行は,リリスとテレサと出会い,セレステの過去に関わる,謎の印の手掛かりがあるという,これまた謎の遺跡に足を運びました。その先で見つけたのは,SFチックな施設の通路,マルっとした謎の機械,そしてユニット2号機「要塞機のビオレータ」でした。ビーム撃ってましたよ,ビーム。
白沢氏:
機械の3人娘にはそれぞれ設計コンセプトがあって,それぞれに合った攻撃スタイルを模索しています。ビオレータの場合は,リングシューターという射撃攻撃です。
4Gamer:
3人娘……だけに留まるのかは触れずに,それぞれロボット的なコンセプトがあったんですね。ちなみにセレステはなんでしょう。スキル的に高空強襲型とか?
白沢氏:
セレステは汎用型ですね。上空から戦場を監視し,ユニットに指示を出す,指揮官機のようなイメージです。場合によっては攻撃もしますが,それは副次的な機能ですね。
4Gamer:
カッコいい。そういえば3人の姉妹の順列って,作中の会話で明かされていましたっけ。セレステが姉なのは分かるんですが。
白沢氏:
現状は会話の雰囲気で,なんとなく感じ取ってもらうようにしていました。大きなネタバレでもないので一応言っておくと,セレステが長女,ビオレータが次女,ナランハが三女となります。
4Gamer:
ああ,ビオレータは2号機でしたもんね。なるほどなるほど。
白沢氏:
ちなみにナランハが生意気な感じなのは,彼女を末っ子的なイメージで書いているからです。上の2人が優しいイメージのキャラだったので,ワガママ要素を足してみました。
4Gamer:
そんなかしましい姉妹の戦闘により,セレステはエラー状態になり,体のどこかに意識を閉じ込められてしまいました。一同も遺跡から撤退し,兄弟達は精霊島に帰ります。しかし,島に着くと「森妖精じゃない奴は追い出せー!」と排斥派に囲まれてしまいます。そんな窮地を救ったのが,ロスカァ&ベルダッドでした。
白沢氏:
ラウト,オストラ,サンデーロ,ヴィーボラといった森妖精達は,それこそ第1部・第2部で主人公やフィーナ達が出会った“森妖精らしい森妖精”として描いてきました。ただ,彼女達については旧態依然な森妖精と称するより,人よりも長命な存在である森妖精としてはむしろデフォルトな考え方,というほうが正しいかもしれません。
4Gamer:
人と比べると,生物としての寿命が違いますもんね。
白沢氏:
ええ,森妖精と人間とでは寿命が違い過ぎて,相互理解する価値を見出せない,なんて可能性もありますので。仮に努力して,理解できても,人はすぐにいなくなってしまうのですから。
4Gamer:
ラウトの策略でけしかけられたヘリオス達も,セレステ達と衝突しそうになりましたが,本格的な戦いに入る前に和解し,一緒に暴走したセレステを止めることになります。この聖王国組と精霊島組は,互いに“家族”というワードでリンクしていますよね。
白沢氏:
企画当初,主人公であるセレステとその周りのキャラクターを合わせて,プロットを書いてみました。そのとき,彼女達を家族という間柄で見るのが1番しっくりきたんです。ヘリオス達も家族というつながりを大切にしているので,彼らと交差をするときはこれを主軸に動かすのがベストと考えていました。物語としても納得しやすく,かつ各々の成長の面を見せやすいと思っていたので。
4Gamer:
そういえば4章から先,運命の交差時の共通シナリオの部分も,各主人公の視点がより強調して描かれるようになりましたよね。
西氏:
探り探りだった部分から,段々とこうしたほうがいい,ああしたほうがいいの試行錯誤を重ねた結果です。今もまだ完成系ではありませんので,やろうと思えばもっと綿密に組み上げることができるんじゃないかと……大変そうですが。
4Gamer:
あと,ここで出てきた「穢れの女帝 ラウト」には,個人的に「おっ?」と思わされました。悪い奴なエッセンスが効いているのもポイント高めですが,キャラのモチーフが“ネズミ”ってところに引っかかりまして。
白沢氏:
へー,どんな風にですか。
4Gamer:
ネズミっていうとなんとなく,都会にいるドブネズミなどの害獣的なイメージが先行していたんですが,森や山などの自然環境に生息する野ネズミって,調べてみると結構印象が異なっていたんです。しかも,一見すると強そうな感じがしないモチーフでしたので,なんでこのキャラにネズミを選んだのだろうと。結果的に超強そうですが。
白沢氏:
ラウトはキャラクターの制作段階で,族長に匹敵するすごく強い人物として設定していました。名称からして女帝ですから。そこで強そうなモチーフはなんだろうと,森や山といった精霊島の環境にちなんで食物連鎖で考えていったとき,獰猛な一個体の捕食者ではなく,数で攻める生物でも面白いんじゃないかと思ったんです。
4Gamer:
強くしたいキャラに強そうなモチーフを与えるとなると,どうしても恐竜とかライオンとかイメージしやすいプレデターになりそうなので,意外な変化球が良いですね(弱そうな生物に見えて,実は精霊島ランキングの上位ランカーに入ってるパターン好き)。
白沢氏:
彼女には,島中の様子を常に見聞きできる“無数の目”がありますからね。今までの強力なキャラとは異なる印象を出せていて,ある意味ではそれらを上回る力も隠し持っている,良いキャラクターに仕上がっていると思います。
4Gamer:
物語のほうでは,ヘリオス達とともに世界樹の図書館へ。ヘリオス篇の衝撃展開を尻目に,なぜかチェインクロニクルから弾かれてしまったセレステは,外で鉄煙の大陸のお姫様「ジークルーン」と出会い,友達になります。そして,災禍の白光を目撃しました。このジークルーンとの出会いは,セレステの今後にも大きく関わりそうです。
白沢氏:
実は,そのあたりはすでにじっくりと描いているんです……! セレステ達の6章ではヘリオス達と一緒に王都へ向かいます。王都にはセレステが今まで出会ってきたさまざまな人達が集まっているので,そこで協力し,助け合う姿を見られます。日々成長を遂げてきたセレステの変化に気付く人もいるので,そういった絡みにも期待していてください。
4Gamer:
また,SFチックな描写や背景を散見してきたセレステ篇ですが,最初の年代記の使途「ラシル」の登場や,十七聖人が関わる遺跡の存在により,ユグドの世界観との関連性が見え隠れしてきました。プレイヤー目線では突拍子のなかったはずのSF要素が,この先で世界観と密接につながっているのかもという予感を覚えています。
白沢氏:
そのとおりです。セレステ篇で押し出してきたSF要素というのは,ただ面白そうだから次々と出していたものではなく,ユグドの世界でさまざまに積み重ねられてきた物事の結果なんです。
松永氏:
これまでも物語のバランスについては,かなり揉みましたからね。ですが,セレステ篇のSF的な設定の面白さはここからも,チェンクロのファンタジー要素とのギリギリのバランスを図りながら詰めていくつもりです。
4Gamer:
それらが今後,どのように影響し合うのか。とりあえず,6章はさっそくプレイしておきたいと思います。
海富氏に聞いた,アマツ篇(4章〜5章)
4Gamer:
さて,ここから急かしていきますよ。続いてはアマツ篇ですので,海富さんにお聞きしていきます。4章ではコロミとのひと悶着を終え,アマツ,ベニガサ,ヒトリが四領の火鬼の里へ向かいます。そこで長老シヅチと出会ったり,ヒトリvs.タルキが勃発したりしましたが,とにかく火鬼語の発展っぷりが目覚ましい。カワイイ火鬼がいっぱい出てくると同時に,全員口調も違っていました。
海富氏:
あれは僕も苦労していますが,どちらかというとライター全員の苦労ですね(笑)。シナリオを制作するために火鬼語の原型というのは用意していましたが,それぞれが「俺はこう!」「私はこう!」と試行錯誤していくうちに,それらの発展形が言語化も文書化もされず,各々が独自のルールで書き上げるようになってしまいました。そんな中,僕は皆のクセの中間を狙って書いています。
4Gamer:
そんなことになっていたとは(笑)。でも,物語を読んでいてもとくに違和感がありませんし,キャラごとの特徴くらいなら,なんとなく共有されているのでは?
松永氏:
いや,共有されてないからこそ,発展を続けているとも言えます(笑)。ヒトリ以外の火鬼が登場してからは,とくにそうなんです。
海富氏:
たしかに最低限の「ひらがなでそれっぽく話す」以外は,キャラの特徴ありきでやってきました。タルキなら武士っぽく,かといってカッコよすぎず,少年が背伸びしている感じの子供っぽさです。トヨチにしても女の子っぽい雰囲気的ではありますが,火鬼という種族は性別の有無を明言していないので,あくまで「っぽく」でやっています。ただこれも各々で追及していることなので,ぶっちゃけ共有してるものはほとんどないのです。
4Gamer:
じゃあ,見る人によっては書いた人のクセがなんとなく分かるのかもしれませんね。
海富氏:
ありますよ。「ははーん,さてはこれは,あの人が書いた火鬼だな」ってのは(笑)。でも,僕らがバラバラで書いているものがなんだかんだで通っているのは,シナリオ監修が火鬼語の均一化に尽力しているからでしょうね。
松永氏:
だね。登場人物達のキャラ付けについては,キャラクター発注のリーダーが監修を行ってくれているので。そして当の本人がものすごく“火鬼LOVE”なので,そのおかげっていうのはあります。そこの愛がなかったら,たぶん,もっとブレてたかも(笑)。
4Gamer:
次はキャラクターチームも引っ張り出しましょうか。物語では,九領の古い伝承「オロチ」を復活させようとするコロミが現れ,その裏のシロガネの存在も露わになりました。ベニガサも案の定,ブチぎれです。しかもここで,シロガネはベニガサに向かい「姉上」と口にします。2人がまさかの姉妹であると判明した瞬間でした。
海富氏:
姉御肌のベニガサがキレる場面はこれまで何度かありましたが,今回の“姉上呼ばわり”はさらに一歩先へ踏み込んでいるものです。これから明かされていく,2人の暗い因縁の最初の一石と言えます。
4Gamer:
ベニガサがシロガネを敵対視している理由はいくつか想像していますが,個人的にはベニガサのキャラクターストーリーでの立ち居振る舞いが近いのかなと思っていて。
海富氏:
うーん,キャラクターストーリーだと見られる人と見られない人がいますからね。一因として関わってくることはあるかもしれませんが,シロガネはアマツ篇におけるボス的な存在ですので,問題はもうちょっと根深いところに用意しています。詳しくは本章で描いていきますから,SSRベニガサを持っていない人も安心していてください。
4Gamer:
たしかにアルカナの有無を考えると,大きく取り扱うのは難しかったですね。話を戻すと,シロガネの幻影を退けた3人は,彼女の居城である四領の城に乗り込むことにします。アマツはその道中,シロガネに操られたオボロと戦闘し,川に流されてしまったところ,下流にて旧友のロクショウと再会しました。
海富氏:
ロクショウは実のところ,もっと後に出す予定のキャラでした。それをなぜ登場させたのかというと,4章が“それぞれの過去との対面”というテーマで動いていたからです。メインの3人の過去に迫るキャラクターとして,ヒトリの過去を知るコロミを,ベニガサの過去を知るシロガネを,さらにアマツの過去を知るロクショウを前倒しで登場させることにしました。
松永氏:
ちょうどベニガサもヒトリも,ざっくりと過去を提示できたタイミングだったので,次はアマツの過去を描くきっかけがあったほうが良い,って話になったんだよね。ここでロクショウが出てくれたおかげで,アマツのバックボーンもギュッと締まった感じがします。
4Gamer:
へー,そういう規則性もあったんですね。しかも彼はアマツの妖刀「伏龍」を持っていっちゃって,意味深にフェードアウトしちゃいましたので,次の再会はアツくなること請け合いです。
海富氏:
そうですね,インパクトのある再登場にしたいと思ってます。
4Gamer:
ロクショウ退場後は,オボロを加えた3人がついに城へと殴り込みです。さらに天守閣を目指す道中,オウシンの妹「スオウ」と,お馴染みの「ミユキ」「イイギリ」と出会います。イイギリからは目を逸らして言いますが,アマツ篇の女性陣は特徴がキレッキレなタイプが多いですね。
海富氏:
鬼ですから,どの娘もなにかしらの一癖を持っているんです(笑)。スオウについては,兄のオウシンが正統派な優等生キャラで,父のメイゲツがガッチリと厳つい系と,2人があまり似ていなかったために,“兄が大好きだけど性格は父寄り”という家族間をつなぐポジションで入ってもらいました。
4Gamer:
3人の関係にして,親子のつながりを強化したと。
海富氏:
そうですね。3人にしたからこそ,親子関係を深掘りできました。オウシンとメイゲツだけだと,どうしても役割や確執などが表に出てきて,領主と跡取りという関係性を強調せざるを得ません。そこに両者をつなげるスオウを投入したことで,親子関係の描写を無理なく散りばめられるようになりました。それにチェンクロでは親と子,兄弟や姉妹はいても,親と息子と娘の組み合わせは珍しいので,新しい構図の試みでもあります。
4Gamer:
キャラクターの投入によって,ドラマが作られた例ですね。
海富氏:
それにスオウはアマツとの相性もいいですから。いや,会話的な意味ですよ? アマツってめげないので,スオウみたいにどれだけ酷いことを言わせても大丈夫だなって(笑)。
4Gamer:
アマツが中心だから,女性陣の尖りが引き立てられていたのか。アマツ君……。
海富氏:
スオウはそりゃもう酷いことを口にしていますが,アマツはなにか言われたら負けじと反応するので,女の子側がそれほど悪者に見えないカラクリなんです。キャラ的にこの2人が分かり合うことはなさそうですが,2人の会話は書いてて楽しいです。
4Gamer:
作中ではその後,1章ぶりにアマツとオウシンが激突しました。
海富氏:
ええ,オウシンは長らくライバルポジションにいましたが,アマツ篇では運命の交差などを挟んでいたがために,1章以降は見せ場をパッタリと作れませんでした。そのため5章では2人が激突する前に,オウシン側の視点にも注力しました。彼がアマツをどう捉えているのか,今まで飛ばしていた部分をガッツリ描いています。
4Gamer:
5章の序盤,アマツとオウシンが対峙したところで時間が遡り,オウシン視点の物語に切り替わったあれですね。
海富氏:
そこでオウシンから見たアマツ,四領の現状,親子の描写などを2話にギュッと押し込みました。だから,この2話はやたらと密度が濃いんです。ちなみにオウシンはアマツを恨んではいません。エリートな彼は初めての敗北を喫しても,自分とは違う強さと価値観を持つアマツを尊重し,前向きな再戦を望みました。オウシンは真っすぐ系の主人公みたいな男ですので,こういう部分を穿って見るのは,ひねくれているアマツの役目というわけです。
4Gamer:
結果,オウシンはアマツに2度めの敗北を味わわせられますが,彼は信念よりも現実をと考え,アマツ達と手を組み,父メイゲツとの対決を決心します。
松永氏:
ここの2話は,アマツ篇で最もブラッシュアップに時間をかけました。オウシンの立場がすごく難しかったんですよ。メイゲツを止めるためには,どう考えてもアマツと共闘したほうがいい。でもアマツとは因縁があるから,鬼として,アマツと再戦しないわけにはいかない。だからアマツと戦って敗れて,そのあと手を取りあうって流れにしました。ですが,感情のままにアマツと戦い,そこで負けたから気持ちよく仲間になるノリは「ちょっと違うよね」って。彼には彼の矜持がありますから。
海富氏:
ここをふつうに描いてしまうと,河原で殴りあって,倒れたあとに認め合う“アレ”になっちゃうんですよね(笑)。
松永氏:
そうそう,アレ(笑)。もちろん,あの熱さも必要ではありますが,熱いだけじゃ足りないよねって考えです。次期領主としての責務からアマツに剣を向けたり,父であるメイゲツへの敬意に苦しんだりと,オウシンのそういう四領を守る者としてのプライドが,ちゃんと胸にくるようにしたかったんです。矜持の重みと,鬼の熱さと,両方あってこそのオウシンですから。
海富氏:
そうして戦った2人は清濁の関係と言えますが,オウシンはアマツを否定するわけではなく,濁の部分ごと飲み込んで,共に立ち並ぶ道を選びました。
風術師氏:
最初から,エリートと雑草みたいな対比でしたもんね。
海富氏:
オウシンはそれこそ,雑草をも飲み込んだエリートですよ。また境遇や立場の問題で,奪い奪われの人生を過ごしてきたアマツにしても,どういう形であれ,自身の考えを真っ向から受け止めてくれる存在とは出会ったことがなかったので,アマツにとっても彼は初めて見るタイプでした。
4Gamer:
さらにオウシンとスオウはこれまで,メイゲツがシロガネを重用していることに断固として反対していました。また,オウシンとメイゲツの間でも「伝統と格式を重んじる」の解釈が異なっていたために,対立の流れが見えてきます。
海富氏:
メイゲツの思想はシロガネの誘導が混じったものでしたが,オウシンよりも古きモノに固執する頑なさを持っています。それに対してオウシンは,伝統と格式を重んじつつも,新しい物事を受け入れる柔軟さを持っています。まさに新世代なんです。そして物語は親子の新旧対決というと分かりやすい構図で進み,オウシンとアマツはメイゲツに挑みます。
4Gamer:
2人は少年漫画的な熱さでメイゲツを倒しましたが,大団円は遠かった。追い詰めたはずのシロガネは王都へ向かったといい,しかも四領にはあのシュザが軍を率いて攻めてくるというじゃないですか。アマツ篇の6章は2月6日に配信とのことですが,ここから先は「シロガネを追う組」と「四領を守る組」の2ルートで同時展開するのかななんて。
かー,ネタバレになっちゃうなー。
海富氏:
そんなそんな,予想できる範囲でしょう(笑)。
西氏:
たしかに(笑)。というか掲載時点ではもう配信されているはずなので,言っちゃっても大丈夫でしたね。
海富氏:
という許可が下りましたので,ぶっちゃけるとそうなります。アマツ達はシロガネを追って王都へ,オウシン達は四領を守るためにシュザを迎え撃ちます。ほら,アマツってなんだかんだで,四領自体にそれほど関心がないんですよね。オウシン達がいるので別の想いがあるとしても,目的はあくまでシロガネなので,表面上は四領がどうなってもしったこっちゃないという体裁です。生まれ故郷に固執するタイプでもないですし。そして「シュザをそろそろ出さなくちゃ……」っていう使命感もありまして。
4Gamer:
九領が舞台ですしね。今まで出てこなかったのも不自然といえば不自然かも。
海富氏:
これまでも出番を作りたかった反面,うかつには出せませんでした。彼は人気の高さもそうですが,中途半端に出しては格が下がってしまうんです。登場させるからには良いポジションを用意するべきでした。シュザは「おう,よく来たな」なんて椅子に座って待っている皇子ではなく,鬼を体現する存在なので,出てきた瞬間「はい侵略!」くらいのインパクトが必要だなと思っていて。
4Gamer:
なんとも分かりやすいイメージで(笑)。
海富氏:
元々,「九領の内乱」は大々的に描きたいと思っていた題材でした。第3部では九領全体になんとなく落ち着いてしまったイメージを持たれていたかもしれませんが,九領は本来,年がら年中,戦国時代なんですよ。しかも,その落ち着きを壊すとなったらシュザしかいないじゃないですか。白光という未曽有の大事変が起きている最中,九領では機に乗じてシュザが侵攻を仕掛ける。今回はそういう波乱の展開を生み出しました。そのため,6章前半ではアマツ視点とオウシン視点が交互に展開していきます。
4Gamer:
今後はオウシンも主人公的な立ち位置で活躍してくれそうですね。
海富氏:
ずっとではありませんけどね。彼も彼でライバルらしい活躍をしてくれます。同時に,これからどんどんアマツ篇に欠かせないキャラになっていきますので,アマツのみならず,オウシンのことも期待してもらえるとありがたいです。
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