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原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?
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印刷2020/11/28 00:00

インタビュー

原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

 あの日のチェンクロが帰ってくる!

画像集#009のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

 セガのスマホ向けRPG「チェインクロニクル」の新展開“チェインクロニクル 第4部 ―新世界の呼び声―”iOS / Android)が,2020年11月26日に公開された。第3部完結から,わずか21日後の早業だ。

 今回はそんな第4部について知るべく,総合ディレクターの松永 純氏にインタビューをしてきた。“原点回帰”ゆえに昔話にも花が咲いたが,なんでも第4部は,7年ぶりの隊長にもうってつけだとか?

「チェインクロニクル」総合ディレクターの松永 純氏
画像集#002のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

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“チェンクロ”に戻ろう!


4Gamer:
 チェンクロは今年で8年めとのことで,まずは一言お願いします。

松永 純氏:(以下,松永氏)
 まもなく「チェインクロニクル 第4部 ―新世界の呼び声―」がスタートしますが,私もこれだけ長く続けられるなんて想像していませんでしたし,あらためて新しいシリーズをはじめられることに感謝しかありません。プレイヤーの皆さんには,ありがたい気持ちでいっぱいです。

4Gamer:
 もちろん,意向としては続けたい一心なんですよね。

松永氏:
 ええ,気持ちは「10年続けよう!」ですので。それでも,といったところです。第1部から先,第2部も第3部も当初は構想すらなかったものでした。第3部にしても4年もの長期展開となりましたし,皆さんにとっても第3部の遊びがすでにベーシックになっていることでしょう。
 そのため次の第4部は心機一転し,気持ち新たに送り出そうとしています。我々からしても新鮮なくらいのゲーム内容です。


4Gamer:
 今回,第3部完結から第4部開始までの空き期間は,わずか21日でした。この早業についてはどのような思惑があったのでしょう。

松永氏:
 「あまり間を開けないほうがいいよね」ってのがすべてです。
 もはや懐かしいの域ですが,第2部完結から第3部開始までのように数か月の移行期間を設けると,正直長すぎてプレイヤーさんの熱が冷めてしまうなと。だから第4部は第3部完結と同時発表させてもらいました。そのとき皆さんから「第4部早くない?」の声をいただいたわけですが,しかしながら「第4部遅くない?」って言われるより全然いいかなと。

4Gamer:
 ああ,そうかもですね。

松永氏:
 それと今回の第4部のメインストーリーが,時間軸的には第3部完結からそれほど時間が経っていないということもあります。
 おおよそ半年後くらいの設定で物語がスタートしますので,現役のプレイヤーの皆さんには,第3部から続いている物語といった感覚で楽しんでもらえると思います。もちろん,ゲーム内容はかなり新鮮なものになっているので,そこにワクワクしてもらえたらうれしいです。

4Gamer:
 そんな第4部は“原点回帰”とのことで。原点とはなんでしょう。

松永氏:
 ずばり“王道ファンタジーのRPG体験”です。見知らぬファンタジーの世界を旅して,新しい人たちと出会い,未知の魔物と戦い,心打つドラマを楽しむ――といったゲームを奇をてらわず,もう1回やりましょうと。
 つまりそれって原点回帰だよね,となったわけです。

4Gamer:
 プレイ感覚で言うと,やはり「冒険マップ」の復活が大きいですか。

松永氏:
 そうですね! 第4部は第1部・第2部と同様,ストーリー的にもゲーム的にも“冒険”を感じられるものにしていきます。未知のマップで物語を進めると,マップ上に新たな道がギューンと伸びていく,世界を踏破していく冒険感覚を大事にしました。
 第3部は「第1部の舞台でより深いドラマを」「5人の新たな主人公で群像劇を」と考え,ストーリーラインで提供させてもらっていましたが,やはり冒険するマップがあるとRPG感が高まりますね。

「幻獣の世界」冒険マップ
画像集#007のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

4Gamer:
 冒険感を顧みようとなったのは,なぜですか。

松永氏:
 第3部はキャラクターたちの物語を描く群像劇として展開させていただきましたが,それはしっかりとやりきらせてもらいました。
 なので,あらためて元々の体験に方向性を戻して,RPGの冒険を感じてもらうものを届けるべきかと考えたんです。

4Gamer:
 第3部はプレイヤーの視点もまた違いましたしね。

松永氏:
 ええ。とくに「主人公(義勇軍の隊長)」が第3部に合流した帰還篇は大いに盛り上がったと同時に,そのあと「せっかく主人公が帰ってきたんなら前みたいに冒険したい」という声が挙がっていたのも事実でした。こういった声にはきちんと応えたいと思ったんです。
 第3部の主人公の役割は,新世代の少年少女たちを支えることにありました。そして第3部完結篇では,少年少女たちの自立を描くととともに,手が離れた主人公一行が,彼ら自身のクライマックスにあらためて立ち向うという,もうひとつの完結篇というべき物語を描いていったのですが,やはりそれも非常に好評でしたね。

4Gamer:
 端的に,世代交代の難しさは感じましたか?

松永氏:
 交代といっても,プレイヤーにとっての自分自身は「主人公」であることは揺るがないですから。そのうえで第3部の新たな試みとしては,やれることをやりきれたと思っています。当初想定していた2つの大きな課題も,一定の解決はできたと思っていますので。

4Gamer:
 2つの課題というのは?

松永氏:
 1つめは「物語をマンネリにしたくなかった」です。
 第1部で魔王を倒し,第2部で真の魔王を倒し……これ以上なにするの? という問題。実のところ第3部の構想段階にも,現在の第4部のように「違う世界に行こうか」という考え自体はありました。

4Gamer:
 しかし,それじゃあインフレするだけかもしれない。

松永氏:
 そうなんです。単純に上に上に登っていくだけでは維持できない楽しさというのはあると思います。基本的には,一番初めに提示した世界設定や伏線がほとんど回収されたタイミングというのが,どんな作品でも節目だと思うんですよね。それがチェンクロでは第2部の完結時でした。
 だから,新たな展開に踏みきらせてもらったという経緯があります。

4Gamer:
 ならば,もうひとつの課題は。

松永氏:
 2つめは,第2部の運営中に延々と課題になっていた「新しい場所に行き,冒険を繰り返していると,これまでの仲間が描けない」です。
 第2部の道中は主人公,フィーナにピリカ,カインたち初期の義勇軍メンバーが主軸にいましたが,それ以外の第1部キャラクターをメインストーリーで活躍させることが困難な状況にありました。それどころか次の大陸に進むと,前の大陸で仲間になったキャラも活躍しづらい。

4Gamer:
 心当たりがない,とは言い難い。

松永氏:
 はい。ユグドの仲間たち,新大陸の仲間たち,ここまで描かせてもらって,ファンの皆さんにとっても大切な存在になっているキャラクターたちに,メインストーリーで活躍してほしい。その想いもあって,第3部は群像劇にたどり着いたんです。
 冒険の地を見知ったユグド大陸にしたのも,世界を上に横に広げるのではなく,まず皆さんが愛着ある場所をさらに深める方向にしたかった。新主人公たちの活動場所を振り分けたのも,土地ごとの種族・組織に焦点を当てたいと考えてのこと。それはきちんと描くことができました。

4Gamer:
 5年後というのも,うまく作用していました。

松永氏:
 5年間で成長したレジェンドキャラクターの存在も,オールスター的な絡みをたくさん提供することにつながりましたね。キャラクターやストーリーを求める方々に満足いただける内容になったと思っています。
 しかし,例えばアマツとトウカが合流した,アリーチェとフィリアナが合流したとなったとき,ドラマとしての楽しさはあっても,プレイヤーとして一緒に冒険しているRPG感は少なかったんじゃないかなと。

4Gamer:
 「物語を楽しむ人」と「RPGを楽しむ人」で感想は変わるかもとは。

松永氏:
 はい。そういった振り返りを経て,チェンクロチームも今回の“冒険感を生み出すゲーム作り”には,非常に高い熱量で取り組んでいます。
 普段のアップデートや機能改修とは,一段違う温度感です。

画像集#001のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

4Gamer:
 ちなみにチェンクロ4ではなく,チェンクロ第4部にした理由は?

松永氏:
 第3部のときは「これまでとは違うチェンクロにしよう!」という意気込みで,内容にも大幅に手を加えたため,その表明のためにナンバリングを追記しましたが,今回は逆に原点回帰ですからね。
 「だったら“チェンクロ”に戻ろう!」が正解かなと。

4Gamer:
 せっかくなので,あらためてお聞きしておきたいことが。チェンクロはスマホ向けRPGにおいて数々のエポックメイキングを成しましたが,成功を収めた要因を今になって言語化すると,どう言えるのでしょう。

松永氏:
 うーん,いろんな方々に論じてもらっているのと,そう変わらないかもしれませんが……チェンクロで初めてやったことは,当時カード扱いでしかなかったキャラクターを“仲間”に作り替えたこと,物語にエンディングを設けたことなどが大きいかと思いますが,雑に一言でまとめるなら「スマホでちゃんとRPGを楽しめた」ってところなんでしょうね。そのうえで,たくさんのキャラクターたちと一緒に冒険している感覚が,プレイヤーの皆さんに届いたんだと考えています。
 ですので,これもまた「次の第4部はまたそういう遊びになります!」ってところにつながります(笑)。



第4部で昇華していくもの


4Gamer:
 第4部については今しばらくお時間をいただくとして,この機会にぜひ第1部あたりの昔話でもと思うのですが。いや,もう何度となく語りつくしたうえに,むしろ記憶も怪しいところと思いますが。

松永氏:
 そうですね,そろそろ忘れちゃってきてますね(笑)。

4Gamer:
 恐縮ですが,そのうえで……(笑)。
 では,これも何度も話してもらっている話題な気がしますが,今になって思う,第1部でもっとも印象的なストーリーはどれでしょう。

松永氏:
 あらためてなんですけどね。個人的には最近,「チュートリアルのストーリーよかったなー」って思うようになりました。

4Gamer:
 というと,フィーナとの出会いのあたり?

松永氏:
 はい。主人公がフィーナと出会って,副都に戻って,シルヴァやアルドラと出会ってみたいな。冒険のはじまりの流れです。
 今になって「ちゃんとRPGできてたなあ」って思ったんですよね。

画像集#003のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

4Gamer:
 あー,内容を覚えているかというと怪しいものの,冒険のはじまりを予感させてくれる流れだったかもとは。

松永氏:
 チェンクロでは例年「キャラクター人気投票」をやらせてもらっているんですが,例えばチュートリアルから登場している,副都の最初期メンバー「スレイ」などは,今でも毎回いい位置につけているんですよ。
 投票時のコメントにも「ずっと使ってます」「使ってました」といった声がとても多くて,それが投票結果にもつながっていて。

4Gamer:
 根強い人気,と表現できるキャラクターは結構いますもんね。

松永氏:
 スレイの場合は「チュートリアルに出てきたから」「これからRPGがはじまるタイミングだったから」というのが大きいんでしょうか。
 その後にめっちゃ感動するとか,めっちゃ熱いとか,いろんな登場人物の活躍が描かれましたが,それでもこういう出会いの印象って,月日が経っても本当に強いなと。第4部のこともあり,しみじみ思いました。

4Gamer:
 すっごく共感できます。私も乗っかると,ゲーム開始時の副都の酒場で3回めに出てきた「ニンファ」は特別ですし。能力の特殊さ,リセマラランキング的な満足感も含めて,ニンファで走った第1部のゲーム攻略には,メインストーリーとは違う個人の物語がある感じで。

松永氏:
 そうですね。ニンファ,アルドラ,ロレッタ,最初の酒場のSSRの3人に関しては幸いなことに,そういう話をよく聞きます。酒場での出会いから,自分だけの物語を感じていただけたんだと思います。
 そのひとり,ロレッタについては第4部最初の新世界「幻獣の世界」で,メインキャラクターのひとりとして,新世界義勇軍の冒険にあらためて同行します。7年半を経てと考えると……感慨深い。

4Gamer:
 私は精霊島の開放あたりではじめたクチですが,第1部のキャラクターたちへの愛着は,副都に続くさまざまな種族や冒険地が段階的に公開されていった,サプライズ的な発表も要因になっていそうですよね。

松永氏:
 それで言うと,新たな冒険地が“ゲームの難度と比例していた”のも大きいでしょうね。登場人物たちがその個性のみならず,物語展開やバトルも含めての体験まるごとで受け入れてもらえていた,みたいな。
 やっぱり冒険マップは大事です。気になる場所があって,難度を乗り越えて,その先にたどり着いて,だから達成感がある。「このマップのこんな場所に変な神殿がある!」ってなるから,行ってみたくなる。

4Gamer:
 こんな場所に魔王みたいなやつがいる! とか。

松永氏:
 ですです。第4部の冒険マップには,またそういう楽しさがあるので,ぜひ味わってもらえたらうれしいです。

画像集#004のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

4Gamer:
 一方で,第1部で反響の大きかったイベントはどうでしょう。

松永氏:
 もう記憶の濃いやつしか思い出せないんですが,やっぱりこういう場で話すときは,初のイベント「黒の砦」になっちゃいますね……。
 初イベントならではのやらかしも心に刻まれていますが,あれをやってよかったなと思うのは“オールスター的な内容”にできたことです。メインストーリーにもつながっていて,それでいてたくさんのキャラクターが活躍する。その先のすべてのイベントの礎になったなあと。

4Gamer:
 次いで,よく覚えているファンからの声などは。

松永氏:
 となると,第1部のフィーナについてですかね。

4Gamer:
 それはその,今は懐かしき“不人気ヒロイン”的なお話しで?

松永氏:
 まさに,フィーナって第1部の終盤まで超不人気でしたからね(笑)。今日はすべてゲーム初期のRPG的な冒険体験にからめますが,序盤は記憶喪失で,物語的には足手まといで,なのに“メインヒロインのポジション”にいた。一方でニンファのように,自分だけのプレイ体験として,酒場で運命のキャラクターと出会っているような状況もあって,キャラクターストーリーを進めた人は,その仲間との深い絆を感じていた。
 ですから正直,フィーナはお邪魔な正妻に見えたことでしょう。

4Gamer:
 ゲーム的な本領発揮も,アビリティ覚醒からでしたしねえ。

松永氏:
 そうですね。ちょうどそのあたりで,プレイヤーの皆さんもはじめてフィーナをパーティに入れて,本当の意味で彼女と冒険するようになりました。そして第1部のエンディング前後に「フィーナ超好きになった!」という声が急激に上がってきて,そこから第2部のクライマックスチャプターまで,プレイヤーさんからの好感度もうなぎ登りって感じに。
 プレイヤーの皆さんが自分自身の冒険として,RPGとしてチェンクロを楽しんでくれたからこそ,フィーナへの思いも大きくなっていって,それが結果的に人気の変遷につながったと思うわけです。

4Gamer:
 物語の核心ありきのキャラクターですもんね。そういったところも含め,やはり反響が一番大きいのはエンディング時になりますか。

松永氏:
 これまで最も反響があったのは,新規展開の開始はもちろんとしても,第1部,第2部,第3部のエンディング。やはり終わったときです。同時にチーム一同,本当にやっててよかったと一番感動する瞬間です
 ひとつひとつのシナリオやイベントへの反響も非常にありがたいですが,メインストーリー完結時にいただける声援って「数年間,このゲームをやってきてよかった」という声が本当に多くて。クライマックスの部分だけじゃなくて,すべてのプレイヤーさんがそこまでの長い時間をまるごと喜んでくださっている。それは長い時間にわたって物語を運営してきたゲームだからこそいただける,特別な反響だと思っています。

4Gamer:
 スマホゲームにおける本格的なエンディングは,これまたチェンクロが先駆けです。それを踏襲した作品もいくつかありますが,年単位の長期展開,かつ3度ものクライマックス施策となると類はないですよね。

松永氏:
 はい,おそらくは。

4Gamer:
 そしてそのエンディングの提供が,それほどまでにゲームクリエイター冥利に尽きる瞬間だとすると,チェンクロはスマホゲーム業界において,かなり贅沢な体験ができる現場なのやもしれませんね。

松永氏:
 そうかもしれません。ここまで運営をやり遂げられてほんとによかったと感じますので。例えばコンシューマRPGを作るとなったら,何年かかけて,50時間くらい遊べるゲームになります。それを遊んでいただいたときにもらえる最高の反応は「すごく面白かった!」です。
 それも,もちろん心の底からありがたい反響ですが,我々の場合は「第3部の4年間が最高でした」と言ってもらえました。最高にうれしいです。その声は,50時間どころではなく,本当に数年にわたって遊んでくれた人だからこそだと思うので。それがなによりありがたいです。

画像集#005のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

4Gamer:
 ここまでの話の着地点に,答えがあれば聞いてみたいのですが。
 チェンクロを遊んだ人の思い出って,ストーリー,キャラクター,バトル。断言は難しいにせよ,どこに根付くことが多いと思われますか。

松永氏:
 それについては,第4部の制作にあたっての話なんですけど。

4Gamer:
 はい。

松永氏:
 第4部の検討中に,過去にチェンクロを遊んでいたけど,やめちゃったというプレイヤーさんたちに「どんな思い出がありますか?」って,実際に聞いて回ってみたんです。
 原点回帰を意識するには,自分たちの思い込みではなく,当時の感覚を持つ人に直接,きちんと話を聞くのが大切だと思ったので。

4Gamer:
 面白そうなお話。

松永氏:
 そしたらですね,大半の人が「今でも覚えてるのはキャラです」って言うんです。ストーリーやバトルも面白かった記憶はあるけど,ぶっちゃけ忘れましたと。皆さん大体そうおっしゃいます。
 そりゃそうだなって。作ってる側がゲームのどこに力を注いでいるかは置いといて,本作がRPGである以上,プレイヤーさんが最終的に行きつくところは“自分で育てたキャラで攻略する楽しみ”なんですよね。

4Gamer:
 やっぱり。多数派と同じ見解で安心しました。
 自分がどの場所で,どのキャラクターで挑んで,負けて,再挑戦して,クリアして。その思い出は,言ってしまえばメインストーリーと同列……あるいはそれ以上の記憶として残りますよね。

松永氏:
 ストーリーやバトルはどんなに練っても,その時々で消費される「体験」です。けれど,キャラクターはずっと手元に残る存在だから,そこに一番の思い入れが注がれるのはある種当然だなと。常々そうあろうとしてきましたが,あらためて考えました。RPGにおけるキャラの大切さ。
 仮に,第1部をクリアしたけど,それから遊んでいなくて,第4部になって久々に戻ってきてくれる人がいるとして。その人は当時感動した物語をとっくに忘れてしまっていても,自分で編成したパーティのキャラクターたちのことは,たぶん忘れてはいないんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 あーこんなんだったなー,ってなるような。

松永氏:
 つまり,それが自分で冒険するRPG体験というものですよね。それにもし忘れていたとしても,ログインしたら絶対そこにいるので,遊んでいるうちに思い出せます(笑)。キャラクターが,まずそこにいる。第4部の新展開がどうこうの前に,まず「おかえり」って言ってくれる。
 なので第4部では,今回をきっかけに帰ってきてくれた人たちが,当時の愛着あるキャラクターたちと一緒に,そのまま悩むことなく新展開に挑める,そういった作りも心がけています。

4Gamer:
 というと,第4部は第1部のキャラパワーでも攻略可能な難度に?

松永氏:
 少なくともメインストーリー序盤は,そうやって楽しんでもらうのに愛着が不都合にならないラインを,うまく目指したいと思います。

4Gamer:
 まとめると。第1部で打ち出した魅力は,今もつながっていて,さらに第2部と第3部を糧に,第4部で昇華していくんだと。

松永氏:
 昇華って言葉,いいですね!
 その言葉のとおり,第4部は単純に原点へと回帰するのではなく,かつての魅力をつなげて,第4部ならではの新しい体験を感じてもらえるものにしていきます。ぜひご期待ください!



キャラと冒険をするゲームの,ひとつの答え


4Gamer:
 それでは原点に返る第4部について,まずは概要を教えてください。

松永氏:
 先ほども触れましたが,なにより大きいのは,また「プレイヤー=主人公の視点の物語」になるところです。
 第4部の舞台は,ユグドと突如つながってしまった多種多様な異世界です。義勇軍たちが設立した「義勇軍本部」を拠点に,異世界で巻き起こる問題の対処のため,さまざまな仲間たちが奮闘します。ゲームプレイ的に大きな特徴は,バラエティに富んだ異世界ごとの1章完結型の物語になること,かつ章ごとに選出されるキャラクターたちの存在です。

4Gamer:
 なんでも,章ごとにメインメンバーが替わるとかで。

松永氏:
 はい。第1部から第2部までは冒険型のストーリーの進行中,メインメンバーはカイン,ミシディアといった面々で固定でした。
 しかし第4部では各世界での冒険ごとに,これまでに登場した1000人近いキャラクターのなかから,特定のキャラたちがメインメンバーとして新たな冒険を紡いでいく,そういう形式にさせてもらっています。第3部のように助っ人的にスポットで活躍するのとも違う,ともに冒険をする仲間としてそれぞれを描かれていきます。

4Gamer:
 新キャラクターを増やすばかりでなく,これまでのキャラクターも生かしていくと。さらにビジュアルにも変化があるらしく。

松永氏:
 第4部での世界設定として,登場人物たちが特定の異世界に移るとき,当の異世界の習わしに従ったり,特殊な力を得たりして,それぞれの登場人物の姿形にも変化が起きます。
 簡単に言えば変身,フォームチェンジをして,その異世界ならではの華やかな姿で冒険を繰り広げるわけです。新しい場所に行くたび,どのキャラが,どんな姿で登場するのか。ワクワクしてもらえると思います!

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4Gamer:
 率直に聞きますが,キャラクターの選抜はもめたのでは?

松永氏:
 それはもう,数百人のなかから十数人を選ぶということで,チーム内で侃々諤々(かんかんがくがく)で揉めました(笑)。
 あと決め方のルールですが,第1部から第3部までのキャラクターはどこからもちゃんと出す,人気投票上位ばかりにはしない,そう決めています。じゃないと「絶対この子は選ばれないんだろうな」ってキャラクターも出てくると思うんですよね。そしたら,次の世界では誰が出るんだろう? っていう期待もなにもなくなっちゃうので。新章のたびに「次こそは!」と期待してもらえるような第4部にしていきたいんです。

4Gamer:
 異世界物で1章完結型。顔ぶれも多種多様。説明だけで面白さを想像できますが,そのうえで。第3部は正直なところ「読むのに気合いる」ってなくらいにカロリーが求められる,だからこその内容でしたが,今回の第4部はどうでしょう。より気軽に読めそうな印象ですが。

松永氏:
 そのあたりも制作側でかなり意識していて,第3部よりも1話ごとの文章量は減らしています。単純に,これまでよりもサラッと読みやすいシナリオになると思ってください。
 というのも,第4部は物語だけではなく“RPGの冒険感覚”に重きを置くので,ストーリーやバトル,登場人物の交流や問題解決,それらを「ゲームとして楽しんでもらう」ようにしていきます。主人公ならではの会話の選択肢も増えますし,冒険マップを手探りで進んでくのもそう。第1部や第2部のころのようなゲーム体験をデザインしていく方向です。

4Gamer:
 章も最初から順にではなく,好きな章から遊べるとのことで。

松永氏:
 ええ。公開時は第4部プロローグと1章前半のみなので,スタートから追ってくださる場合はあまり関係ないですが,その先の3章や4章となったとき「気になるから4章から遊ぼう」といったことが可能です。
 各章もスッキリ完結する内容にするので,興味のあるシチュエーションから遊ぶなど,より手軽に楽んでもらえると思います。

4Gamer:
 そうなると短編的な手軽さの一方で,以前のような大長編活劇が難しいのでは? いやまあ全部つながるとか,なにかあるんでしょうが。

松永氏:
 ですね。そこはちゃんと用意します。第4部は「新世界篇」を前述した形式で楽しんでもらいつつ,それらの異世界とユグドの危機に立ち向かっていく,グランドストーリー「ユグド篇」を同時提供します。
 ユグド篇は各章のクリア時に“1話ずつ開放される”もので,ユグド世界で活動する義勇軍メンバーの奮闘などを描きつつ,ゆくゆくは第4部の大きな流れを見せていければと思っています。

4Gamer:
 それだと,ユグド篇の開放のためには全章遊ぶ必要ありと?

松永氏:
 まー,最終的には全章遊んでほしいですね(笑)。でもそこに至るのは何年も先になるかと思うので,まずは気軽に遊んでいただければ!

画像集#019のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

4Gamer:
 義勇軍本部をはじめ,新要素はいかがでしょう。

松永氏:
 まず新システムの「義勇軍本部」は箱庭要素みたいなもので,3Dモデルで表示される“お気に入りキャラクター”と触れ合ってもらえるコンテンツです。かつて使っていたパーティメンバーもかわいく動くので,これが結構うれしい体験になるのではと考えています。

4Gamer:
 義勇軍本部には,メリット的なものはあるのでしょうか。

松永氏:
 クエストから帰ってくると,キャラクターの頭上にハートマークがついていて,それをタッチすると「親愛度」が上昇します。また,第4部では各コンテンツ攻略時に「プレゼントアイテム」を入手できて,それらを好きなキャラにあげることができたりします。

4Gamer:
 プレゼントアイテムの種類に小ネタが散らばっていそう。

松永氏:
 第4部で主人公が手にする「万象鏡(ばんしょうきょう)」にもゲーム的な意味があり,義勇軍本部にある万象鏡ゲージをためると,本部で「異変クエスト」が発生します。こちらは異世界と関わったことで起きる,ユグドや各大陸の異変を解決するコンテンツです。
 こういったゲームプレイのシークエンス部分にも手を入れていることで,ひとつひとつの物語を軽く読める内容にしつつ,第3部とも異なる遊び,ゲーム全体でRPGを楽しんでもらう設計を目指しました。

4Gamer:
 では,気になるバトル面の新要素は。

松永氏:
 第4部キャラクター向けの新たなスキル・アビリティとして「共鳴(シンパシー)」システムを用意しました。
 共鳴にはスキルとアビリティがあって,対応キャラクターの共鳴スキルを使用時,共鳴アビリティを持つパーティメンバーがいると,それぞれの「攻撃力上昇」「移動速度上昇」といった共鳴効果が連鎖し,特殊な演出でスキルを放ちます。ようは「合体必殺技」みたいなものです。

4Gamer:
 そのほか,コンテンツ面ではなにか。

松永氏:
 第4部公開時ではありませんが,既存の「深淵の渦」「年代記の塔」のようなバトル系の新コンテンツも後々のために思案中です。
 義勇軍本部についてもいろいろと機能拡張を考えているので,今後の運営をとおしてのアップデートを楽しみにしていてください。

4Gamer:
 ついでに,第4部のイベントの舞台はどうなるでしょう。

松永氏:
 イベント運用については新たな異世界にフォーカスしつつ,引き続き従来の魔神襲来型,踏破型のイベントを提供していきます。

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4Gamer:
 仮定として,第1部の復帰者でも迷わず遊べそうですか?

松永氏:
 なるべく迷わず遊んでもらえるよう,導線を詰めている最中です。
 ちなみに第4部プロローグをこなすと,プレイヤーレベルが一気に上がります。現役の方々には恩恵が薄いかもしれませんが,復帰された方々はそれである程度の段階まで駆け上がれるよう,ゲームの流れを調整中です。また,既存キャラクターを獲得できる機会も増やす予定です。

4Gamer:
 チェンクロって……という枕詞を置きつつ,私は過去に鉄煙の大陸で「こんなん進めねえよ!」となり,第3部公開前くらいまでお休みするなど,ちょくちょく離脱しているプレイヤーなんですが,新しいのがはじまると「やっぱ第2部クリアしておこ」ってなるんですよね。

松永氏:
 うれしいことに,そういう人はとても多いですね。展開の区切りのときに,たびたび戻ってきてくれて,新しいストーリーやコンテンツに挑む前に,未クリアの部分をきっちり消化しておくという。
 例えば第3部の開始直後も,第2部のクリア率が急上昇しました。シナリオスキップ率も慣例的にかなり低いほうです。やるからには順を追って遊びたい人が多いんでしょうね。作り手としても非常にうれしいです。

4Gamer:
 第3部完結という今の状況も,コンシューマRPG的な目線で見ると,いわば「第3部発売!」という捉え方もできますしね。

松永氏:
 チェンクロは流行り廃りはほぼ関係ない,1人用RPGとして作ってきたものですので,そういう遊ばれ方をされるのも非常にうれしいです
 とはいえ,第3部は4年分ですから……第4部の前にやっとくかってなると,想像以上のとんでもない時間が求められるはずです。第1部も第2部も,途中まで遊んでいる人ならぜひともやってほしいですが,手つかずの人には「いやほんと大変なんで第4部からやってください!」って言いたいです。プレイが落ち着くまで飛ばしてください(笑)。

4Gamer:
 第3部終わらす前に2020年終わるでしょうね……。それと今行われているアカウント復旧。こちらはどこまで対応してくれますか。

松永氏:
 かなり対応しています! ゲーム内の引き継ぎIDを控えていない人でも「どこまで進めたか」「当時使ってたパーティ」など,思い出の欠片レベルでもお問い合わせいただければ,運営が全力でサルベージします。
 ときには情報がなさすぎて断念もありえますが,運営にも7年分のノウハウがあり,絶望的なケースに対応し,検討を重ねてアカウントを発掘した経験もあるので,思い出さえあれば気軽にお問い合わせください。

4Gamer:
 かしこまりました。それでは最後に抱負を一言いただけますか。

松永氏:
 第4部では「これまでのキャラクターたちと,いかに楽しくて新しい冒険をするか」。8年めの今だからこそ出せる答えを,あらためて提示したつもりです。現役で楽しんでくれている人も,昔チェンクロを遊んでいたという人も,久々に「そうそう,これがスマホRPGだよね!」と思ってもらえるはずですので,ぜひプレイしてみてください!

4Gamer:
 縁あるとしまえんもなくなるほどの時間。進化しつつも変わらないチェンクロの魅力が第4部にはあるんですね。

松永氏:
 なつかしい! としまえんでイベントやりましたねえ。無口なはずの主人公が,ものすっごく長いナレーションをするやつ(笑)。

4Gamer:
 そういえば,第4部は何年くらいかかるんでしょう。

松永氏:
 分かりません。けれど,少なくともチェンクロが10年続いたとき,そのときはまだ第4部だと思います。

4Gamer:
 それぐらいの構想はあると。

松永氏:
 構想……というか,第4部が開始して,2年ちょっとしたら10年ですから! それくらいの時間があっという間に過ぎていた,そう思ってしまうくらいの楽しい新世界,新しい冒険をこれからいくつもお届けしていきたいと思いますので,よろしくお付き合いいただければと思います!

画像集#006のサムネイル/原点に返る「チェンクロ」インタビュー。新展開の第4部が取り戻す,王道RPGの冒険感覚とは?

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