レビュー
ユービーアイソフトが贈るRPG「チャイルド オブ ライト」をレビュー。キャラクターがなめらかに動く,絵本のような世界へ飛び込もう
「チャイルド オブ ライト」公式サイト
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動く絵本の世界を「UBIart Framework」で表現
ゲームを起動してまず心惹かれるのは,やはりその独特なグラフィックスだろう。水彩画のような奥の背景と,オーロラが移動するフィールド,そして手前に置かれた木々などのシルエットがそれぞれ個別にスクロールし,まるで動く絵本といった雰囲気を生み出している。Ubisoftが独自に開発した2Dゲームエンジン,「UBIart Framework」と,モントリオールスタジオのベテランデザイナー達のこだわりがいかんなく発揮されており,色づかいは控えめであるにも関わらず,思わず見入ってしまう魅力を秘めたグラフィックスに仕上がっているのだ。
また,ゲームの主人公であるオーロラなどのキャラクターに対する光源処理も施されているので,2Dでありながらも奥行きが感じられる画面になっている。
ちなみにオーロラは3Dで作られており,移動中や戦闘時の動きはとてもなめらかだ。
ダークなおとぎ話を思わせる本作の雰囲気をいっそう盛り上げているのが音楽だ。フィールドでは美しいピアノの旋律による楽曲がシーンごとにシームレスに切り替わり,画面をぼんやり眺めながらヘッドホンでこの音楽を聞いているだけでも癒し効果が期待できそうなほど。一転,戦闘シーンでは勇ましいオーケストラに変わり,後述する戦闘システムと共にプレイヤーの緊張感を高めてくれる。ゲーム中に流れる音楽の一部と,そのメイキング映像は,こちらの記事で紹介しているので,合わせてチェックしてほしい。
2人協力プレイも可能な相棒イグニキュラスの存在
最初,オーロラは徒歩で移動するので,その部分は2Dアクションをプレイしているような感覚だ。場所によっては,触れるだけでダメージを受けてしまうところもあるが,体力を回復するチャンスが多いわけではないので,注意が必要だ。
ゲームを進めるとオーロラは空を飛べるようになり,そこからフィールドが一気に開けていく。飛行に特別な操作は必要なく,地上から[×]ボタンでジャンプして左スティックを動かすだけだが,歩きだけだった頃と比べるとプレイフィールは大きく変わり,とくに空が開けた場所なら気持ち良く飛んで行ける。
オーロラには空を飛ぶ力はあるものの,どこにでも行けるわけではない。一方イグニキュラスは,背景をものともせずに画面全体を自由に移動でき,自ら光を放つことで周囲を明るく照らしたり,専用のスイッチに光を当てて,スイッチなどを動かしたりできるのだ。
そんなイグニキュラスは通常,右スティックで動かすことになるが,2つめのコントローラにも対応しており,これにより,リビングなどでプレイしているときに,2人めのプレイヤーが飛び入りで参加できる。もともとは,親子で遊べるようにという趣旨で用意された機能とのことで,機会があればこちらも試してみたい。なおイグニキュラスは,後述する戦闘のときにも非常に重要な存在になる。
敵との戦闘シーンはウェイトゲージの駆け引きが楽しい
日本のRPGに大きな影響を受けたという本作だが,戦闘はシンボルエンカウント制で,オーロラがフィールドにいる敵に触れることで戦闘場面に切り替わる。戦闘はコマンド入力式となっており,画面下のゲージに表示されている順番に沿って敵味方が行動するという感じだ。
この戦闘ステムで面白いのは,どちらかが先に相手を攻撃をすることで,行動順を妨害できるという点だ。敵味方の行動には,「速い」「普通」「遅い」といった,“行動を決めてから発動されるまでの時間”が設定されており,例えば速い攻撃を先に決められれば,相手の行動順を遅らせることができるのだ。妨害の成功/不成功は確率で決まるので,100%確実ではないものの,意識して狙っていくべき要素だろう。
戦闘はオーロラと仲間キャラクターの最大2人で戦うことになり(戦闘中に交替可能),さらにイグニキュラスも参加する。イグニキュラスは敵を攻撃する力は持たないが,戦闘画面の敵に重なって光を当てると,その敵が行動するまでの時間を遅くすることができるのだ(ちなみに仲間に光を当てると,HPが回復)。敵が攻撃準備に入っていたとしても,イグニキュラスの光で行動を遅くしたうえで,こちらは発動するまでが速い攻撃をくり出せば,その敵よりも先に攻撃できる。そこで前述の妨害が決まれば,敵から被害を受けることなく,一方的に攻撃することも可能となるわけだ。
ゲージがウェイト時間の右端まで来ると,コマンド選択が可能に。このときは時間が止まるのでじっくり選んでかまわない |
妨害が成功すれば,行動を一気に遅らせることができる。反対にこちらの行動を妨害されてしまうこともあるので,要注意だ |
なおイグニキュラスが光を放っているときは,画面左上にあるゲージが消費される。このゲージが0になると,一定時間回復を待つか,周囲に咲いた花から出る「光のかけら」を取らないと,光を放つことが不可能になる。とくにボス戦など長くなりがちな戦闘では,限りある光をどう使うかも重要な戦略となってくるだろう。
「ファミリー向け」あるいは「カジュアル」な作品だと思われがちな本作だが,このように戦闘はユニークでなかなか頭を使うものになっており,コアなゲーマーでも十分楽しめるのではないだろうか。
プレイヤーはスキルツリーによってより強く成長する
続いて,オーロラを含めたキャラクターの成長要素について紹介しよう。キャラクターは戦闘に勝利したときの経験値でレベルが上がり,それと同時に「SP」というポイントが手に入る。これを消費してスキルを習得していくのだが,スキルはツリー形式になっていて,ツリーを進めることで,さまざまな特殊攻撃や魔法が取得できる。キャラクターをどのように成長させるかは,プレイヤーの自由だ。
また,成長とは別に「オキュライ」という宝石を使った装備強化もある。キャラクター1人につき武器,防具,そしてアイテムという計3個をキャラクターにセットできるこの宝石は,種類だけでなく,セットする対象によっても異なった効果を発揮する。オキュライによって武器や防具に火や水,土といった属性を与えられるほか,パラメータを上昇させたり攻撃時に追加効果を発動させたりなど,種類も能力も豊富だ。
そんな重要なオキュライは,敵を倒したときやフィールドの宝箱から入手できるほか,手持ちのものを合成させて新たなオキュライを作り出すことも可能なので,宝石をカスタマイズするという楽しみも本作には存在している。
オキュライはキャラクターの3か所に装備できる。戦闘中に変更はできないので,ボス戦などの前には確認しておこう |
手持ちのオキュライは2〜3個を合成することで,新たなオキュライが作り出せる。こうした合成も楽しそうだ |
成長やカスタマイズの要素については,RPGをプレイした経験のある人なら,すんなり理解できるはずだ。比較的シンプルな構成になっているが,ゲーム全体の流れを考えれば,これ以上複雑にする理由はなく,分かりにくくならない適度なバランスに抑えられている印象だ。いかにも絵本のキャラクターらしい,可愛い容姿のオーロラだが,がっちり鍛え上げて最強キャラに育てるのも悪くないだろう。
低価格ながら,手応えのあるプレイを楽しめる良作
ダウンロード版は1480円と手頃な価格であり,しかも,雰囲気だけではなく,RPGとして十分な手応えが感じられる本作。ゲームシステムにとくにストレスを感じる部分はなく,気持ちよくプレイできる良作と呼べそうだ。
ただ一つだけ,オートセーブでファイルが複数作れないため,記事用の画面を撮影するのには少々苦労したところが,まあ,筆者の特殊な事情によるものだがちょっと残念だ。気に入ったシーンの前のセーブデータを残しておくといった遊び方はできないのだが,そこは2周目以降のプレイのお楽しみとしたい。
Ubisoftのモントリオールスタジオのプロデューサー,Patrick Plourde氏は以前のプレゼンテーションで,(キャラクターを成長させなくても)オキュライだけで十分にゲームを進められると話していたが,個人的にそれだけでは少々もったいないような気がする。ぜひ,成長も楽しみたいところだが,いずれにせよ,プレイスタイルの幅はかなり広く取られているので,その日の気分で遊び方を変えてみてもいいはずだ。
ローカライズについても,タイトルからメニュー画面,キャラクターのセリフまで,しっかり日本語になっているので,物語を進めるのに不自由することはない。強いて言えば子供でも読めるように,漢字にルビを振るとか,ひらがなメッセージへの切り替え機能があってもいいような気がしたが,子供を一人で遊ばせるのではなく,親が絵本を読んであげるような感覚で家族一緒に遊ぶのが開発者の想定したプレイスタイルなのだろう。ゲームデザインも,そうした楽しみ方ができるように設計されている。
グラフィックスや音楽が優れたゲームなので,できるなら大きな画面で,細部まで描き込まれたシーンをじっくり味わいつつプレイしてほしい。
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(C) 2014 Ubisoft Entertainment. All rights Reserved. Child of Light, Ubisoft and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. (C) YOSHITAKA AMANO
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