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劇場版「DEEMO サクラノオト」の完成披露試写会をレポート。“音楽映画”を謳う本作の魅力を竹達彩奈さんや丹生明里さんらが語った
本作の総監督・脚本は「BLOOD」シリーズや「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」などで知られる藤咲淳一氏が担当し,キャラクターの声には竹達彩奈さんをはじめ,丹生明里さん(日向坂46)や濵田 岳さん,松下洸平さんら豪華キャストが起用されている。
そんな本作の完成披露試写会が,2022年1月25日に新宿バルト9で開催された。キャスト陣から本作の魅力や,キャラクターを演じる難しさが語られたトークセッションや,ネタバレに気を付けつつ,映画の見どころや感想を紹介しよう。
劇場版「DEEMO サクラノオト」公式サイト
■あらすじ■
音楽によって解き明かされていく過去と、この世界の秘密―――
ピアノが鳴り響く音楽学校。聴く者全てを惹きつける見事な旋律を奏でるのは少し影のある少女、アリスだ。人と交わろうとしない彼女だが、好奇心の強いサニア、優しいロザリアと出会い、徐々に変化が訪れる。
空から一人の幼い女の子が落ちてくる。記憶を失くしていたが、黒の紳士がDeemo ということはなぜか知っていた。Deemoがつま弾くピアノの旋律に誘われるように、少女は「アリス」という自分の名前を思い出す。そこには、彼女を優しく見守るぬいぐるみのミライ、クルミ割り人形のくるみ割り、フワフワと宙に浮く匂い袋がいた。
ピアノの音色で成長する木が天窓まで届けば元の世界に帰ることができるのではと考えたアリスたちは、城に隠された楽譜集めを始める。そこでアリスは表情を隠した仮面の少女と出会う。「あなたなんて、嫌い」と言う仮面の少女とアリスの関係は?
仲間たちとの楽譜集めの冒険。仮面の少女の心。そしてDeemoという存在の謎。時にアリスの頭をよぎる桜並木。
途中で止まる記憶の旋律――。
過去・現在・未来に大きな波紋を広げる音色が、次第にアリスの記憶の扉を開いていく。
360度音に包まれる
「謎と音楽」をテーマにした優しい作品
トークセッションでは,はじめに藤咲淳一総監督に「ストーリー作りについて」質問が投げかけられた。原作をプレイした人なら知っていると思うが,ゲームのはじまりは「少女が上空にある窓から降ってくる」という,何も説明がない,突然の出来事からはじまっている。
そんな原作に対して,藤咲淳一総監督は「まず,どこからどう作っていけば良いか分からなかった」と苦笑いをした。しかし,原作で誰もが疑問に思う「アリスとDeemoは一体何者なんだ?」という謎と,さらに話を面白くするために映画のオリジナル要素として「女子高生のアリス」を登場させたという。本作は「謎と音楽」をテーマに,優しい時間が過ごせるような内容になっていると語ってくれた。
そして,キャラクター達の声を担当するキャスト陣に対しては,演じてみた感想や本作の「音楽」についての質問が投げかけられた。
原作シリーズでもアリスの声を担当し,自身もゲームプレイヤーだという竹達彩奈さんは,「原作だとアリスしか喋らないので一人ぼっちな印象が強かったが,今回は新たなキャラクター達に命が吹き込まれて,どんどん賑やかな世界になったと感じた」と,これまでのゲームとは異なる,新鮮な気持ちで演じることができたと振り返った。
本作で長編アニメの声優,初挑戦となる日向坂46の丹生明里さんは,「すごく緊張した」と収録を振り返った。そして,完成後のエンドロールに自分の名前が流れた時,劇場から自分の声が聞こえることに感極まって泣きそうになったそうだ。また,音楽だけでなく,劇中の日常音や細かい音までもが素晴らしいと称賛し,「360度音に包まれているような感じがしました。ぜひ,映画館の音響環境で本作を楽しんでほしい」とまとめてくれた。
丹生さんと同じく,長編アニメの声優に初めて挑戦するという松下洸平さんは,ありのままの自分ではなく,いかに自分が演じる「ハンス」というキャラクターに声を合わせるか,どう色を付けていくか,監督と何度も相談しながら収録を進めていき,非常に貴重な経験をさせてもらったと収録を振り返った。そして,自身もピアノを弾くことがあるという松下さんは,「ピアノの音色と記憶はリンクしていると思う」と語り,ピアノを弾くとその時の思い出が蘇ったり,昔に流行っていた曲を弾くと,その時の自分にタイムスリップできるような,自分にとって音楽はそういった存在でもある。そしてそれは,この映画でも描かれていることだと思うと語ってくれた。
ぬいぐるみのミライ役を演じる濵田 岳さんは,「生まれてこのかた,ぬいぐるみがどんな感情を抱いているのか考えたことすらない」と,今回演じる“ぬいぐるみ”という特殊なキャラクターを演じることの難しさを語った。また,音楽については劇中の中盤でかかる激しい楽曲「Leviathan」が特に印象的だったという。自分が収録をする際には絵もラフで,音楽もついていなかったため,完成後に見た時は「すげぇ」と衝撃を受けたそうだ。
そして,くるみ割り役を演じるイッセー尾形さんも“くるみ割り人形”にどうやって感情移入するか非常に悩んだという。最終的には「こういうのは頭で考えてもダメ。すぐに口からセリフが出るように,脳を通さないで,脊髄で演じました」と笑って語っていた。
最後には,匂い袋役を演じる渡辺直美さんからのビデオレターが紹介された。キャスティングされた際は非常に嬉しかったと語り,可愛らしくて優しい声で演じたという。普段より少し高い声で演じたので,収録後には喉が枯れて大変なことになったと冗談を交えつつ,試写会に招待された観客へ本作を楽しんでくださいと挨拶を送ってくれた。
トークセッションはあっという間に終了し,松下周平監督から「ライブを見るような感覚で観てほしい」と,映画を楽しみにしている観客へメッセージを投げかけて,舞台挨拶は幕を閉じた。
原作の世界観を忠実に再現し
人気楽曲を迫力のサウンドで楽しめる
ここからは劇場版の本編について,ネタバレに気を付けつつ見どころを紹介していこう。
映画は,幼い少女アリスが,はるか上空からDEEMOの元へ降りてくるシーンで幕を開ける。アリスは元の世界へ戻るために,ピアノの音色で成長する不思議な“木”を育てようと,お城に隠された楽譜を探すことになる。お城の中はゲームで見たことのある光景が広がっており,原作ファンがニヤリとするような演出もされている。
そして,原作の世界観やストーリーを壊さないように,オリジナル要素が加わっているのが大きなポイントといえるだろう。幼い少女アリスとDeemoの世界と交差するように,女子高生となったアリスの日常風景が物語に差し込まれるのだ。女子高生のアリスはいったい何者なのか? Deemoと関係があるのか? ストーリーの序盤は謎が謎を呼ぶ展開になっている。
ストーリーを盛り上げてくれる,新たなキャラクターたちも欠かせない存在だ。Deemoのいる不思議な城には,ぬいぐるみの“ミライ”と匂い袋,くるみ割りの3人が登場し,アリスに協力してくれる。トークセッションで竹達さんが語っていたように,原作ではアリス1人だけが喋るので「一人ぼっち」や「寂しそう」という,どちらかと言えば暗い印象があったが,劇場版ではこの3人のおかげで賑やかな雰囲気に包まれている。
原作の人気楽曲が劇中で流れるのも見どころの1つだ。優しい作風に合わせた「Dream」や「Nine Point Eight」などのピアノ楽曲はもちろんだが,まさか超激しい楽曲「ANiMA」や「Leviathan」までもが流れるとは思わなかった。劇場版のためにアレンジされている楽曲もあるうえ,なんと言っても劇場の音響環境でこれらの楽曲を聴けるのがファンにはたまらなく嬉しいポイントだ。
「DEEMO」の優しい雰囲気はそのままに,物語にオリジナルの要素も加わっていることで原作プレイヤーでも新鮮な気持ちで鑑賞できるように感じた。本作に興味がある人は,ぜひ劇場の迫力のあるサウンドで楽しんでほしい。
劇場版「DEEMO サクラノオト」公式サイト
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(C)2013 Rayark Inc.
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