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Intel,14nmプロセス世代で製造される次期モバイルCPU「Core M」の概要を発表。2015年のCore Mタブレットは厚さ9mm未満でファンレスに
Core Mの製造はすでに開始されており,搭載製品は2014年の年末商戦から登場すると予想されている。
パッケージサイズはHaswell-Yより25%縮小
消費電力当たりの性能は2倍に
Intelが発表したCore Mの特徴は,幅広い分野にわたっているので,今回はかいつまんで説明したい。
製造には,14nmの“第2世代”トライゲートプロセスを用いており,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)はHaswell世代と比べて半分程度の3〜5Wを実現しているという。さらに,アイドル時の消費電力も,Haswell世代の60%程度まで下がっているとのこと。つまり,Core Mは発熱が今よりも少なく,バッテリー消費も少なくできると理解すればいい。
Core MはHaswell-Yと比べて,面積は2分の1と小さくなった。タブレット端末に搭載するには,サイズの縮小は重要だ |
CPUの真下に当たるマザーボードに孔を開けて,そこにキャパシタ用サブ基板を設置するという大胆な手法も導入されるという |
消費電力を下げるだけでなく,CPUのマイクロアーキテクチャも改良されたことにより,性能も向上しているという。
Core Mでは,CPUコア内部にある「TLB」と呼ばれる一種のアドレス変換キャッシュのメモリ容量が増大したほか,浮動小数点演算機能も高速化されるといった改良が施されており,1サイクルあたりの命令処理数(IPC,Instructions Per Cycle)が5%ほど向上しているとのことだ。
とはいえ,これによってゲームやベンチマークテストの結果が大きく向上するということはなさそうに思える。Core Mは性能面でもHaswell世代に勝る可能性が高いと,理解しておけばいいだろう。
過去のIntel CPUとCore Mの消費電力あたりの性能向上を比較したスライド。従来が世代ごとに1.6倍程度の改善であったのに対して,Core Mはそれを上回る2倍の向上を実現したという。 |
Core MのCPUコアに加えられた改良を示したスライド。TLBの増量やスケジューラの改良,浮動小数点演算機能の改良など,細かく手を加えているようだ |
ゲーマーとしては気になる統合型グラフィックス機能の強化についても,簡単に説明された。それによると,DirectX 11.2とOpen GL 4.3,およびGPU演算用APIであるOpenCL 1.2と2.0に対応,さらに20%の演算性能向上を実現し,ジオメトリ演算やピクセルフィル性能も向上しているという。
NVIDIAやAMDのGPUには及ばないとはいえ,Haswell世代の統合型グラフィックス機能は,かなりの性能向上を見せたのも事実。Core M世代でそれがさらに強化されるとなれば,タブレットでのゲームプレイも多少は快適になるかもしれない。
Windows搭載タブレットといえば,SoC(System-on-a-Chip)にAtom Z3000シリーズ(開発コードネーム Bay Trail-T)を採用する製品が多いのが現状である。しかしCore Mが登場してくれば,ハイエンドのタブレットではAtomではなくCore Mを採用する製品が増えていくかもしれない。そうなれば,タブレットで扱うWindowsやアプリケーションは,今以上に快適な動作ができそうだ。
Intelによる当該プレスリリース(英語)
最新のマイクロアーキテクチャーと14nm製造プロセス技術に関する詳細を公開
インテル コーポレーション(本社:米国カリフォルニア州サンタクララ)は本日、インテルが提供する最先端の14ナノメートル(nm)製造プロセス技術に最適化された最新のマイクロアーキテクチャーに関する詳細を発表しました。本日発表されたテクノロジーにより、クラウドコンピューティングを支えるITインフラやIoT(Internet of Things)、さらにパーソナル/モバイル コンピューティングに至るまで、幅広いコンピューティングのニーズや製品に対応する優れた性能と低消費電力を実現します。
本日の発表の概要
・14nm製造プロセス技術を採用した最初の製品であるインテル Core Mプロセッサーのマイクロアーキテクチャーの詳細を公開
・新しいマイクロアーキテクチャーと製造プロセス技術の組み合わせは、新しいフォームファクター、ユーザー体験とシステムのさらなる小型化、静音と低熱化に革新を提供
・インテルのアーキテクトやチップデザイナーの取り組みを通じ、前世代のプロセッサー製品と比較して熱設計電力(TDP)の半減を実現すると同時に、前世代製品と同等の性能とさらなる消費電力性能の向上を実現
・新しいマイクロアーキテクチャーは、14nm製造プロセス技術によりもたらされる新機能を最大限活用できるよう最適化
・インテルは世界初の14nm製造プロセス技術を採用した製品を量産開始。業界をリードする性能、低消費電力、高密度、トランジスターあたりのコストの低減を実現する第2世代の3次元トライゲート・トランジスター(FinFET)を採用
・インテルの14nm製造プロセス技術を、サーバー、PC、IoT機器など、さまざまな高性能かつ低消費電力のプロセッサー製品に採用
・インテル Core Mプロセッサーを搭載した最初のシステムは、2014年の年末商戦に提供開始予定で、その後、2015年上半期に幅広いシステムメーカーから提供開始予定
・Broadwell(開発コード名)マイクロアーキテクチャーと14nm製造プロセス技術をベースにした新しい製品群を、今後数カ月以内に発表予定
・今回の発表に関する画像を含む詳細は下記URLをご参照ください。(英語サイト)
http://intel.ly/1sEBd1e
インテル コーポレーション 副社長 兼 製品開発事業本部長のラニ・ボーカーは「専門性の高い設計技術と最高峰の製造プロセス技術を組み合わせたインテルの統合モデルによって、当社の顧客や一般消費者に、より優れた性能と低消費電力を実現した製品を提供することができます。この新しいマイクロアーキテクチャーへの取り組みは、単に大きな技術向上の達成にとどまらず、当社の設計技術と顧客のニーズを調和させるという、インテルの徹底した設計理念の重要性を実証するものです」と述べています。
インテル コーポレーション インテルシニアフェロー 兼 プロセス/アーキテクチャー/インテグレーション担当ディレクターのマーク・ボアは「インテルの14nm製造プロセス技術は、第2世代の3次元トライゲート・トランジスターを採用し、業界をリードする性能、低消費電力、高密度、そしてトランジスターあたりのコストの低減を実現しています。インテルのムーアの法則への投資や思いが、この新しい製造プロセスを実現するための中心的な役割を果たしています」と述べています。
- 関連タイトル:
Core i7・i5・i3・M(Broadwell)
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