インタビュー
「DQMSL」バージョン6アップデート座談会。ドラゴンクエストには堀井雄二氏の“めんどくさい感覚”が大切?
今回はこのV6を含む,6周年に向かっていくDQMSLのこれまでとこれからを,DQMSLプロデューサーの柴 貴正氏,運営プロデューサーの千葉直人氏,DQMシリーズ プロデューサーの犬塚太一氏,さらに“ドラゴンクエストの生みの親”堀井雄二氏も交えて語り合う場が設けられた。
座談会の進行を務めたのは,大会実況などで活躍している,DQMSL公式生放送「らいなま」でもお馴染みのアール氏だ。
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いろいろあった,DQMSLの5年間
アール氏:
はい,準備が整ったようですので,はじめさせていただきます。まずはDQMSLがどのようにして生まれたのかを聞かせてもらえますか。
堀井雄二氏(以下,堀井氏):
最初から話しするなら,開発のときだよね。
柴 貴正氏(以下,柴氏):
事のはじまりは,開発・運営のCygamesさんから「今こういうソーシャルゲームってのがありまして――」と話を聞いたことですね。当時のソーシャルゲームの基本サイクルは戦って育てて,戦って育ててを繰り返すものが大半でしたが,「それってドラゴンクエストモンスターズ(以下,DQM)が合ってるんじゃない?」という話につながりまして。
犬塚太一氏(以下,犬塚氏):
Cygamesさんが「神撃のバハムート」で研究してたころね。
堀井氏:
あんときはまだ移動が大変だったんだよ。
犬塚氏:
ああー,なんでしたっけ。最初は画面上の十字キーを押して,キャラクターを移動させようとしてたんでしたっけ?
堀井氏:
そう。それがめんどくさくてね。
柴氏:
バトルと成長のほかに,移動の概念も入れたかったんですよね。でも初期は矢印ボタンだったか? そういう移動があんま楽しくなくて。
堀井氏:
それで移動はクックッてやる(フリック操作の意)のが気持ちいいんじゃないってなってね。
柴氏:
僕もスマホで写真をスライドして見るのが好きだったので,そういう操作を取り入れられるならと,DQMSLにフリック移動を採用しました。
犬塚氏:
あのころ生まれた技術だったねえ。
柴氏:
そうですねー。あんときも「この操作こそスマホならではだ!」ってのを,みんなで話し合ってた記憶がありますよ。
アール氏:
堀井さんはDQMSLとはどのように関わってきたのでしょう。
堀井氏:
今でもいろいろ判断を求められることはあるけど,基本的には立ち上げだけ。リリースするまではああだこうだ言わせてもらいますが,リリースしてゲームが軌道に乗っかってからはお任せしてます。
柴氏:
堀井さんには,DQMSLの背骨をいろいろ作ってもらいましたね。
アール氏:
DQMSLの構想には,どれくらい時間をかけたのですか。
柴氏:
構想ってよりはね,そこはCygamesさんのすごいところ。彼らは「文字じゃ分かんないはずなので作ってきます!」と,構想を固めるよりも先に,いろんな試作品を作って持ってきてくださったんです。
堀井氏:
おかげで作りはじめが早かったよね。
柴氏:
早かったです。DQMSLになるまで。本当の最初は,ちびキャラがたくさん出てきて戦うようなゲームを考えていたくらいなのに。
犬塚氏:
あれねー。全然違うやつ。
柴氏:
「半熟英雄」みたいな(笑)。
犬塚氏:
そう,最初はまったく違うゲームだった(笑)。
柴氏:
どうせ作るなら,新しいスマホゲームを目指すべきと考えていたんですけどね。企画を進めていくうちに「あれ? これならDQMを素直にやったほうがいいんじゃねえ?」となり,さっき話したバトルや成長や移動を考えていく流れに。それでも1年以上はゴチャゴチャやってました。
堀井氏:
リリースまで“やっと感”はあったね。それとリリースした当初もいろいろすごかったよね。
柴氏:
ああ(笑)。
犬塚氏:
思い出話をはじめると,いろいろ言わざるを得ないやつ(笑)。
柴氏:
まずですね,配信開始は夜中でした。当時はほぼプロモーションもせずに出したんですけど,夜中にもかかわらず多くの人たちが口コミで広めてくださって,リリースから4日間で100万ものダウンロード数を記録したんです。でも,当時のソーシャルゲームでそんなダウンロード数は予想されてなくて,当然サーバーも整えてなくてと……その結果ね。
アール氏:
ああ……(笑)。
柴氏:
パケットが詰まるわ,ダウンロードできないわ,DL再開機能もないから途中で落とされちゃった人は最初からDLをやり直さなきゃならないわと。これ以外にも,スマホゲームの黎明期によくあるミスは一通りやっちゃっいましたね。黒歴史です。いろんな“コラボ”をしたりとかも。
アール氏:
DQMSLは,DQシリーズ初のソーシャルゲームでしたしね。
柴氏:
ソーシャルゲームとしてはね。あのころはCygamesさんがブラウザゲームのノウハウは持っていても,スマホゲームは業界全体としてまだこれからというところでしたし。予期せぬトラブルがあったりと,今となっては「お互い大変でしたね」って話(笑)。
アール氏:
DQMSLで問題が起きたときは,堀井さんにも伝えられるのですか。
堀井氏:
僕は結構ネットを見てるので。いろんなことを僕が1番早く見つたりするのも,じつは少なくないんです。
犬塚氏:
そう。わりとすぐLINEとかで送ってきてくれる(笑)。
柴氏:
Facebookで「大丈夫?」ってねえ。僕のこれまでは大体「だいじょばないです」でしたが(笑)。中には堀井さんに言われてから気づくことすらありましたけど,堀井さんそういうのいつ見てんですか?
堀井氏:
内緒かな(笑)。
アール氏:
DQMSLの公式生放送「らいなま」第1回も伝説的でした。まさかの“謝罪スタート”となり。当時の出演者は柴さん,千葉さん,クロちゃん,広橋 涼さんの4名でしたが,この人選にも意図はあったのですか。
柴氏:
それはまあ,(クロちゃんが)犬塚さんに似てるからとか。
犬塚氏:
よく言われるねえ。
アール氏:
実際,クロちゃんと肩を組んでやっていましたよね。「俺たち兄弟じゃん!」みたいなネタっぽいこと(笑)。
犬塚氏:
2人で「ビアンカvsフローラ論争」とかやってたなあ。クロちゃんは番組以前に,らいなまのつながりでウチの会社にも来てたし。
アール氏:
それでは広橋さんのほうは?
柴氏:
広橋はねえ。らいなま以前に一緒に番組をやっていたつながりがあったから。堀井さん,僕に昔「MCはさまざまな人たちの引き出しをいかに開けていくかが大切」って教えたことあったじゃないですか?
堀井氏:
あったね。
柴氏:
広橋はね,引き出しをまったく開けてくんないんです。DQMSLにも全然興味ないの。数十回と番組をやってきて,最近ようやく「iPhone買ったんですー」って言うくらい。彼女それまでずっとガラケーでしたし。
堀井氏:
それでなんで?
柴氏:
お喋りが面白いんですよ,お喋りが。らいなまでは何度も謝罪を披露してきましたけど,彼女がいるとなんか和らぐ。女子ならではの吸収力とかそんな感じじゃない,一応こっち側のはずなのに「こいつらやらかしちゃったけどごめんねー」みたいな,そんな謝り方。それが面白い。
アール氏:
独特の空気感がありますよね。
柴氏:
第3回くらいまでは「こいつ全然ゲーム知らねえじゃねえか!」って,お客さんにも叱られてたんです。だってMCに抜擢されたら普通,なるべく勉強してくるもんじゃないですか? なのに彼女,まったく勉強してこないの。ハートが強いの。それで第4回くらいからお客さんたちも「うん,もういいよ……」って雰囲気になっていき,許された(笑)。
犬塚氏:
ちょっといい? そもそもなんで,らいなまって言うの?
柴氏:
スーパー「ライ」ト「生」放送です。僕も何回か忘れてる。
アール氏:
広橋さんは今でも番組開始時に「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライトの生放送。らいなまー!」って言っていますよ。
堀井氏:
彼女はちゃんと分かってんだね(笑)。
柴氏:
そういうとこだけ分かってる(笑)。
アール氏:
映像面で言えば,DQMSLはTVCMもバラエティ豊かでした。
犬塚氏:
能年玲奈さん(現:のん)とか,橋本環奈さんとか,北大路欣也さんとか,いろいろあったねー。
柴氏:
ふざけたCMが多かった(笑)。ただ堀井さんに絵コンテを見せたとき,「これくだらないねえ」って言われたら大体ウケるんで。
アール氏:
堀井さんも目をとおしていたんですね。あと,ゲーム外では新宿末廣亭で「ドラクエ落語」などもやっていました。
柴氏:
あれねえ。スライム座布団なんかはあまりに人気だったので,近々正式に商品化することが決まっちゃいました。やっぱ,ピエールになりきってスライムに座ってた舞台の感じがウケたんでしょうね。
アール氏:
そしてゲーム的な過去話としましては,「魔剣士ピサロ」はどうでしょう。ものすごい人気を博しましたが,モンスターズなのにモンスター的じゃないということで,実装するにあたって揉めたのかなと。
犬塚氏:
彼は元々,コンシューマ版のDQMシリーズに登場させる案があったんだけど,堀井さんに相談したとき「この外見で配合させるわけにいかないんじゃない」となり,お蔵入りしていたんです。でも,DQMSLは配合じゃなくて“転生”だから,ならいいじゃんとなりまして。ある意味,シリーズとしては念願の初登場だったわけ。
柴氏:
反響も大きかったしねえ……数字的にも。
アール氏:
「より多くの人が喜んだ」という数字的な意味ですよね(笑)。ほかにも,DQMSLにはオリジナル魔王がいます。「ドラゴンクエスト30周年お誕生日カウントダウンスペシャル」で発表されたのが初でしたか。
柴氏:
あんときはプレゼンしましたねえ。
犬塚氏:
酒飲んでベロベロになってたときだ。
堀井氏:
ちょうどいい機会だったよ。歴代魔王もあんまり出してると品切れになっちゃから。「オリジナル魔王いいんじゃないの」って言って。
柴氏:
オムド・レクスとか,もろピサロの流れを踏襲しましたしね。
犬塚氏:
「やっぱイケメンがいいよね」と話し合ってね。
柴氏:
同時に「リバース」みたいな面白い“とくぎ”も生まれましたし。プレイヤーさんもずーっと同じ戦い方だと飽きちゃうでしょうから。
アール氏:
しかし,ゲームバランス的には実装が難しいとくぎだったかと思いますが,このあたりはいかがでしょう,千葉さん。
千葉直人氏(以下,千葉氏):
そうですね。ゲームバランス的には尖った性能のとくぎですが,柴が言ったようにずっと同じ戦い方をさせていては飽きられてしまうので,こういった特殊な仕掛けは定期的に導入していきたいと考えていました。実際,オムド実装後の対戦はより白熱するようになりましたし。
犬塚氏:
でも,プログラム的にはバグを生みやすいやつよね?
千葉氏:
そうなんですよ。当時はサービス3年めでしたか。ちょうど先制系のとくぎなども出てきて,それぞれのプライオリティ管理をあらためて整理する必要があったので,合わせて対処した覚えがあります。
柴氏:
対戦ゲームとして成熟していった時期だったね。最初の全国大会は「なんちゃらゲー」と言われるくらい,お決まりの戦法が勝つみたいな環境だったけど,このあたりから駆け引きにも奥行きが生まれていって。
アール氏:
ちなみに,今後も魔剣士ピサロのような「モンスターじゃないけどモンスター」は実装されるのでしょうか。それこそ勇者など。
千葉氏:
どうなんですかねえ。
柴氏:
どうだろうねえ。
犬塚氏:
どうかねえ。
堀井氏:
ねえ。
アール氏:
プレイヤーとしてはですね,やっぱりモンスターと同じくらい「あのキャラクターが好き」があると思うんですよ!
柴氏:
アールさんは誰好き?
アール氏:
ライアン。
千葉氏:
渋いなあ(笑)。
堀井氏:
ほかのDQスマホゲームでは,勇者とかのキャラクターも普通に出てるしねえ。そこは出し方かな。
犬塚氏:
DQMSLらしい出し方が大切なんですよね。キャラクターズでもヒーローズでもない,モンスターズ的な出し方ってやつ。
柴氏:
魔剣士ピサロもだけど,ちゃんとDQMSLの背骨になっていて,お客さんが喜ぶのなら,堀井さんは基本的にOKだから。全員が「こういう出し方なら納得」にたどり着けば,やれないことはないです。
バージョン6も「めんどくさく」ないように
アール氏:
続いてV6の話ですが,中でも「超魔王」が目玉になるのだとか。
犬塚氏:
超強い魔王なんですよね?
千葉氏:
新しい試みはさせてもらっています(笑)。
堀井氏:
こういうのってバランスが難しいよね。売り切りのゲームはバランスをガシッと取って完成形にすればいいんだけど,運営型のゲームはずっと続くんだもん。強さのバランスがどんどん変化していく。つくづく難しさを感じますよ。千葉君に「超魔王というのを作りたいんですが」と聞かれたときは,「いいんじゃない」と軽く答えましたけど(笑)。
アール氏:
個人的にはランクSSの次は「ランクSSS」と予想していましたが。
千葉氏:
分かりやすさのためです。SSSよりも,超魔王のほうが分かりやすいので。DQシリーズにおいて魔王は特別な存在ですし,DQMSLで細かく調整してきたのも,やはり魔王には強くあってほしいからです。超魔王については,犬塚さんにはかなり早い段階から相談していました。
犬塚氏:
うん。こういうゲームってどうしても行きついちゃうからね。相談してたときには超魔王以外にも,もっととんでもない案もあったけど。
千葉氏:
事前案はほかにもありましたね。「竜王強」とか。
犬塚氏:
「竜王雌」とか。今回は一番シンプルなのを選んだつもりです。
アール氏:
超魔王はなんでも,変身もしてしまうと聞きました。
柴氏:
DQシリーズの魔王って,やっぱ戦っているときに変身するのが印象的だと思うんですよ。プレイヤーさんもおそらく同じだと思うので,「じゃあいっそのことバトル中に変身させちゃおう」と。
千葉氏:
超魔王は「しょうたいをあらわす」のボタンを押すと,特別な演出とともに変身シーンが挿入される仕組みになっています。
アール氏:
1体めの超魔王「闇の覇者りゅうおう」は,バトル中にいつでも変身できるのですか。
千葉氏:
超魔王「闇の覇者りゅうおう」に関してはそうです。ただ,今後発表する超魔王にはそれぞれ条件を加えようと思っています。「HP一定以下になると変身」とかです。ハーゴンなら自身を捧げてシドーを召喚する原作シーンを踏襲して,「ハーゴンがしんだらシドーがあらわれる」といったように。それでですね,せっかくだからこの場で「超魔王???」のイラストを堀井さんに確認してもらおうと思い,持参してきまして……。
堀井氏:
この前見たやつだよね。そのときは迫力がないってリテイクした。
千葉氏:
はい。なので背景やエフェクトなどを調整して,角度を変えた2バージョンを用意させてもらいました。これはいかがでしょう。
堀井氏:
前のやつはもっとこぢんまりしてたよね。
柴氏:
これたぶん,羽の見せ方が変わったんですね。
堀井氏:
んー,これなら,こっちのほうがいいか(真正面の???ではなく,斜めに角度のついた???のイラストを指して)。ただ,目はこっち向いててほしいかな。むこうじゃなくて。
千葉氏:
こっちですね。分かりました。
堀井氏:
じゃあこれで。おっけえ。
一同:
おおー(笑)。
柴氏:
まさにこんな感じですからね? やらせなしのリアル現場(笑)。
アール氏:
なんとなく分かりました(笑)。では,そのほかのゲーム内の課題はいかがでしょう。討伐モンスターのドロップ率などは?
千葉氏:
いきなりコアですね(笑)。我々としても「討伐モンスターのドロップ率が低すぎる!」と不満に思われるのは目指すところではないので,試行回数がもっとちゃんと報われる内容への調整を考えています。
アール氏:
討伐モンスターのおかげで,ふくびきを引かなくても十分戦えるようになってきましたしね。復刻も度々ありますし。
千葉氏:
闘技場があるので,過去に登場したっきりで,新しくはじめた人が使えないモンスターが多すぎると,それだけで不利になってしまいますから。復刻などの機会はこれからも提供していきます。
アール氏:
ただ“そうび”がですね。とくにコラボそうびはそのときに入手できないと取り返しがつかず,対戦中に「あれがあったら……!」なんて思うことがしばしばあるのですが,こちらに関してはいかがでしょう。
千葉氏:
コラボ絡みはちょっと別枠ですね。弊社側の判断だけで決められることではないので……。特定のそうびに関して,持っていなくても不利にならないような,なんらかの代替策を検討していきたいと思っています。
アール氏:
モンスターの転生についても,要求される転生素材を減らしてほしいなどの声をチラホラ耳にするようになってきました。
千葉氏:
それはゲームの構造上の問題ですね。コンテンツの拡張に応じて,環境の先端を目指そうとすると,バトルも育成も時間がかかるようになってきました。我々としては転生素材の配布やLVMAX地図の提供など,育成時間を短縮し,より遊びの時間を増やしてもらえるよう調整中です。
アール氏:
あと,プレイヤー同士のコミュニティについてはどうでしょう。例えば,個々人で集まったローカル縛り大会に特別な勲章を提供するなど,プレイヤー主体の活動への支援は予定されているのか。
柴氏:
そういった要望はよくあるので,なにかしらサポートできないかと常々考えています。ただですね,コミュニティを持たせることが目的になったり,コミュニティの有無で有利不利がつくようになったりするのはダメだと思うので,DQMSLでは絶対にそういうことはしないつもりです。
千葉氏:
どのコミュニティに対しても,平等に行えるようなやり方を考える必要があります。そのうえで,積極的に検討していきたいです。
アール氏:
私なら「個人大会の視察に行ってこい」と言われれば行きますよ!
柴氏:
出張してくれるんだ(笑)。DQMSLの運営は“お客さんとガチでぶつかり合う”ことを大事にしてるしねえ。
アール氏:
私もらいなまに携わらせてもらっている身として,運営とプレイヤーのつなぎになれたらと考えているのでぜひ(笑)。そして今後ですが,DQMSLの6年めには,さらなる展望などはあるのでしょうか。
柴氏:
やりたいことはたくさんあります。まぁ,すでにスーパーライトどころか“スーパーヘビィ”と言われていますが。スマホゲームはどうしてもプレイ時間が長くなりがちで,それに合わせて新しい遊びを入れようとすると,どうにも重たくなってしまうので悩みどころです。堀井さんにもよく言われるんですよ。「これめんどくさい」って。
堀井氏:
言うねー。
柴氏:
僕はそれがDQにとって「すごく大切な背骨」だと思ってんですよ。だからまず,今のままより快適に遊びやすくする,新しくはじめた人も追いつきやすくすることを考えていきたいです。そのうえで,求められているものを与えられるようにする。これ僕の考えですが,運営型ゲームでは「これ新しい」より「これ欲しい」を確実に提供するのがただしいんじゃないかなーって。作り手は新しいものを作りたがりますが。
犬塚氏:
分かる。
柴氏:
突拍子もなく新しいんじゃなくて,今のまま新しさを積み重ねる。超魔王もそうですよ。想像の範囲内だけど,嬉しい感じがあるじゃない。
堀井氏:
新しさもいいんだけどね。「それがどういうものか分かんない」と思われると辛いのよ。だから感覚的にパッと分かるものにしないと。
柴氏:
超魔王なんて,文字を見れば誰でもなんとなく分かりますからね。
犬塚氏:
今のスマホゲームにしても,よりシンプルさが求められているというのか,1プレイをもっと短くするのが求められているのかな。「より短いプレイで,より長く遊んでもらう」みたいなの。
アール氏:
柴さんと犬塚さんはDQMSLのことで話し合ったりするのですか。
柴氏:
あんましませんよね。
犬塚氏:
週一で会ってるけど,しないね。
柴氏:
ゲームの話もそのときやり込んでるものくらいですし。
犬塚氏:
そもそも古い付き合いだし。ヤンガスのころからの(PS2用ソフト「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」のこと)。
柴氏:
そんときから師弟関係なの!
犬塚氏:
僕はそのときから「こいつ,チャラチャラしてるわりにゲームのことはちゃんと考えてんだ」ってのを知ってるんで(一同笑)。
柴氏:
いやまあ,そうしないと申し訳ないですからね(笑)。社内の仲間にも,シリーズを作ってきた人にも,なによりお客さんに失礼なんで。
犬塚氏:
そうなんだよ。「柴のやつ! ランボルギーニ乗ってやがる!」とか煽られたりしてるけど,意外にゲームのことちゃんと考えてんのよ?
柴氏:
そうして難しく考えすぎてると,堀井さんに「これめんどくさい」って怒られ,引き戻されるんですけどね。
犬塚氏:
堀井さんはほんとプレイヤー目線がブレないですよね!
アール氏:
羨ましいです。堀井さんはどうやってそれを養ったんですか。
堀井氏:
生まれつき。僕の特異な才能のひとつは,「分かりにくいことを分かりやすくする方法」をポンと思いついちゃうことだから。
柴氏:
しかも堀井さんってね? それをまったくコストかけずにやっちゃうんですよ。文字だけでなんとかしたりして。
犬塚氏:
イベントのフレームだけ残して,文章を変えるだけで印象をガラッと変えちゃうんだよね。やってることがまるでクイズみたいなの。ヤンガスのときだって,最後はそうだったよね?
柴氏:
最後はあっという間に変わりましたね。堀井さんに言われてから。
犬塚氏:
作る側でありながら,遊ぶ側の視点をこれほどまでに保ち続けているところが,堀井さんの本当にすごいところなんだと思います。
堀井氏:
僕はあんま意識しないんだけどね。例えば「車を運転しはじめると歩行者の気持ちを忘れる」とかそういうのほとんどないのよ。だから自分の作ったゲームでも,プレイヤー目線を忘れることはほぼない。
犬塚氏:
新しい仕様を考えるときはクリエイターとしてピシッと決める。それでいて,制作物への感想はプレイヤーとしてバシッと言える。「これめんどくさいからやんねえな」って言えちゃう。そこがすごく不思議。
堀井氏:
今までなかったリアルって,ともすると俺はすごいだろう的な“作り手側のエゴ”だったりするので。そういうのはすぐ分かる。簡単な例だと,最初のDQでもリアルさのために,山を歩くときは移動速度を遅くするとか考えたけど,結局「こういうリアルさはいらねえよ!」となってボツにしました。だって,プレイヤー的にはめんどくさいだけだから。
柴氏:
その点,僕らって山で足を遅くしがちで……(笑)。
アール氏:
昨今の「リアリティを追求するゲーム」への一言はありますか。
堀井氏:
リアルさを考えたら「他人の家のタンスを開ける」のはリアルじゃないけど,開けたいじゃん? それを逆手にとって「この泥棒!」なんて言わせすることもできるし,結果的にDQの象徴にもなったしで。リアリティを求めるのは全然悪くないと思うけど,ゲームとかで描かれるドラマって,根底には“省略の美学”がありますからね。
犬塚氏:
堀井さん,説明文とかほぼカットしますもんね。
堀井氏:
無駄なつなぎのシーンとか,そのための段取りとか,ドラマにおいてはいらないので大体切っちゃいます。
犬塚氏:
僕も堀井さんに「どんなセリフが良いんでしょう」と聞いたことありますけど,「とにかく短いやつだ」って言われましたもん。
堀井氏:
受けの台詞は書かないでいいの。「天気がいいですね」に「そうですね」と返さないで,そのまま次に話題にしちゃえばいいの。「俺は悲しいよ」とか言わせたりして。そういう意味では,DQMSLもこういう感覚的なゲームに仕上がっていると思いますよ。
犬塚氏:
ある程度,ある程度です(笑)。DQMSLにしたって,開発中に堀井さんにそういう手直しをしてもらったから今こうなんですから。
柴氏:
導入部なんかとくにだよね。ダラダラしがちなゲーム説明文を,実際に遊ばせることで感覚的に分からせるようにするのとか。
堀井氏:
最初から分からせなくていい。プレイヤーを分かった気にさせればいいんです。DQみたいなRPGが遊びはじめから全部理解できるなんて,ありえないし。操作方法とかのゲーム説明が助長だと,「チュートリアル長いよ!」ってなっちゃうだけですからね。
柴氏:
だからか,DQシリーズはどれも導入がスルッとしてるんですよね。堀井さんは“はじめの1時間〜2時間のプレイの流れ”をじっくり確認してますし,ダメだったら「Excelよこせっ!」って書き直しちゃうし。
犬塚氏:
まぁ,よこせって言ってから実際に書き上げるまでが,堀井さんちょっと長いんだけど(笑)。
堀井氏:
(笑)。まあでも,DQMSLは本当に彼らにお任せしているものだから,僕も今はひとりのプレイヤーとして楽しんでるよ。アップデートのときとか「こう来たか!」って驚いたりしてね。それに毎日,何十万人もやってるゲームなんだもん。これってすごいことだよ。
柴氏:
どこかの県と同じくらいの人数です。
アール氏:
DQMSLは今後も,柴さんと千葉さんの双肩にかかっていると。
柴氏:
いやいや,CygamesさんのおかげですよCygamesさん(笑)。
千葉氏:
Cygamesさん,今後ともよろしくお願いします(笑)。
アール氏:
そんなこと言わずに(笑)。それでは名残惜しいですがお時間となりましたので,最後にひとりずつメッセージをいただけますか。
千葉氏:
DQMSLはリリースから5年経ちましたが,モンスターを育てたい,戦わせたいという魅力の根底は変えずにやってこられたと思います。対戦にせよ,その先にある大会にせよ,どれもプレイヤーの皆さんと一緒に作りあげていきたいと思っていますので,引き続きよろしくお願いします。
犬塚氏:
僕はDQMシリーズの者として話しますが,DQMSLはもう数年前から,DQMシリーズの「エースで4番バッター」だと思っています。この先もずっとお客さんを喜ばせていくはずですから,僕に手伝えることがあればなんでも手伝います。これからもDQMSLをよろしくお願いします。
柴氏:
DQMは対戦が主軸にあるので,DQシリーズの中でもディープな立ち位置にあります。必然的に,それを求めるファンを楽しませるべく,面白さを常に尖らせなければなりません。とはいえ,複雑すぎるゲームにならないようにです。めんどくさいと思われない,かつ楽しさを伸ばしていく,そういうチャレンジをこれからも頑張っていきたいと思います。
堀井氏:
まあね,最初はいろいろあったゲームだけど,今では結構うまくやってますよね? 僕はプレイヤーとして,超魔王がどうなるのか,DQMSLにヒーローがどういう形で登場するのか,そういう展開に期待しています。なのでプレイヤーの皆さん,僕と一緒にDQMSLを楽しみましょう!
柴氏:
堀井さんっぽいコメントだ。僕もいつか言ってみたい(笑)。
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