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印刷2014/03/06 09:00

インタビュー

「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載

 KONAMIは2014年3月20日に「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」PlayStation 4 / PlayStation 3 / Xbox 360 以下,MGSV:GZ)を発売する。なお,Xbox One版は現在のところ発売日未定となっている。
 本作は「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」PlayStation 4 / PlayStation 3 / Xbox One / Xbox 360。以下,MGSV:TPP)の“プロローグ”にあたる作品で,オープンワールドで展開するミッションなど,従来のシリーズとは大きく異なるシステムが特徴だ。
 それに先駆けてメディア向け体験会「『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』BOOT CAMP 2014」が開催されたのはコチラの記事でもお伝えした通りだが,その翌日には小島秀夫監督に対するメディア合同インタビューも実施された。本稿ではその内容をお届けしよう。

画像集#007のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載


リニア(直線的)ではない,オープンワールドなゲーム性


――「MGSV:GZ」は「MGSV:TPP」の序章にあたる作品とのことですが,本作からは「MGSV:TPP」のどのような片鱗を感じ取れるのでしょうか?

画像集#001のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載
小島秀夫監督(以下,小島監督):
 25年前からイメージはしていたけど,当時のハードでは技術的にかなわなかった部分,サーチライトが壁に反射したりするような,陰影のあるかくれんぼの怖さを表現するために「FOX ENGINE」でテスト的に創っていたのが「MGSV:GZ」です。ゲームというものが持っていたインタラクティビティをもう一度見直し,オープンワールドに近いゲーム性で,リニアではなく自由に戦略を立てて進むことができます。それによって,プレイする度に展開が変わるゲーム本来の面白さを感じてもらえるんじゃないかと。まだ発展途中ではありますが。

――先日の体験会でも,プレイヤーによってクリアに至るまでのルートがまったく違っていました。

小島監督:
 はい。そのあたりは今までのシリーズにない点だと思いますが,あくまで島という閉鎖空間を舞台としている点で,「MGSV:GZ」はまだ今までの「MGS」に近いんです。この机の上に乗っているペットボトルが「MGSV:GZ」だとするならば,「MGSV:TPP」は机全体。フィールドが一気に広がり,時間や天候の変化といった要素も導入されます。
 そこへいきなりプレイヤーを放り込むよりも,まずはある程度制限された閉鎖空間で簡単なミッションをやってもらおうというのが「MGSV:GZ」です。最後までプレイすれば分かりますが,ストーリー的にもスネーク達にとっての“グラウンド・ゼロ”。ここから彼らの報復劇が始まります。

――操作系で何か工夫された点は何かありますか?

小島監督:
 もともと「MGS」の操作系はほかのゲームとちょっと違っていて,独自の操作感があったのですが,今回は一般的なTPSやFPSに慣れたプレイヤーがすんなり入れるようにしています。

画像集#013のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載

――「MGSV:GZ」で「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER」(以下,MGS:PW)から続く話を描こうと考えたのは何故でしょう?

小島監督:
 僕の中でソリッド・スネークの物語は「MGS4」で終わっているので,あとはビッグボスが初代「メタルギア」に至るまでを埋めるしかないんですよ。「MGS3」が1964年という設定だったんですが,そこからなんとなく「10年刻みに作ろうかな」という構想はありました。それで「MGS:PW」の舞台が1974年で,一番やりたかったのがジョージ・オーウェルの小説にもある「1984年」なんです。「MGSV:GZ」は「MGSV:TPP」のプロローグなので,「MGS:PW」直後の1975年が舞台ですけどね。

――「MGS」の壮大な歴史を描いていく一連の物語は,監督の中で最初から出来上がっていたものなのでしょうか?

小島監督:
 いえいえ,その都度考えています。そして毎回「これが最後」と思っていますね。宮崎 駿監督みたいに(笑)。だから設定など,細かいところの摺り合わせは辛いですよ。本当は過去作品も直せるものなら直したいんですけど,そうなるとリメイクを創らなければいけないので(笑)。

画像集#036のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載


世界と戦うために作られた「FOX ENGINE」


――「FOX ENGINE」は2011年に発表されましたが,これまでにどのような進化を辿ってきたのでしょうか? 当時のものと比べると,よりビジュアルがリアリティに溢れるものになっていますが。

画像集#002のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載
小島監督:
 「FOX ENGINE」は描画だけじゃなく,ツールやライティング,物理演算などすべてを含めて「FOX ENGINE」です。「MGSV:GZ」や「MGSV:TPP」を創りながらフィードバックして,今もツールをブラッシュアップしています。なので,これからも性能と使い勝手はどんどん良くなっていきます。

――まだまだ進化が期待できるんですね。 

小島監督:
 現状,使いにくい部分もまだあるので,まずは作品をひとつ完成させて,現場と意見をキャッチボールしながら良くしていきます。ほかのエンジンに比べると,現時点での「FOX ENGINE」はそんなに大したことないです。

――エンジンを自力で作ろうと思った理由は何なのでしょうか。 
 
小島監督: 
 他社製のエンジンを使うとなると,結局ブラックボックスがあるものをもらうわけじゃないですか。例えるなら「レゴブロック」みたいなものです。市販されているレゴブロックの部品を渡されて,「どうぞ使ってください」という感じ。
 僕らは渡されたもので積み木を創るしかなく,自分たちの「こういうものが欲しい!」という願いは叶えてもらえない。それで仕方ないので,自力で創ろうと。

――なるほど……。

小島監督:
 他社製のエンジンでは,「Unreal Engine」の開発チームと一緒にゲームを作っている人たちには敵わないですよね? あのクオリティと戦おうと考えるなら,自分たちで創るしかないんですよ。

――FPSタイトルが世界的には売れていますが,参考にした作品はあるのでしょうか?

小島監督:
 別にそういうものが創りたいわけではありません。ただ,「FOX ENGINE」はFPSもTPSもなんでも創れますので,ここでチューンしてKONAMIグループ全体で使ってもらいます。完全なオープンワールドを創るにはメモリも足りませんし,ビジュアルもショボくなるので難しいかもしれませんが,FPSであればすごいものが出来上がると思いますよ。その辺は,ほかのチームに任せようと思います。


プレイヤー自身が体感する,報復の物語


――「MGSV:GZ」,そして「MGSV:TPP」は“報復”が大きなテーマになっていますよね。これまで“反戦・反核”というのが「MGS」のテーマだったと思うのですが,今回のスネークやミラーからは,平和とは対照的な,強い“憎悪”のようなものを感じます。

小島監督:
 「MGS」で描いている反戦や反核のメッセージは僕の中でビジネスではなく,本気でそれを伝えたくてやってきました。しかしまぁ,20数年やってきてもなかなか世の中というのは変わらないんですよ。世界中でどんどん戦争やテロが増えていき,今の10代の子供たちは,その辺にあまり興味がない。映画などで悲惨なシーンを見せて「戦争はダメですよ」と伝える手法はありますけど,ゲームでは得策ではないということで,実は「MGS:PW」からちょっとやり方を変えたんです。

――と,言いますと?

小島監督:
 「MGS:PW」ではスネークとカズが自分たちの国を作るために軍備を増強していった結果,最終的に核を保有します。ずっと反核を説いてきたゲームですが,あえて「MGS:PW」ではプレイヤーに,間違った考えではありますが「こういう世界では銃が必要なんだ」「だから核を持つんだ」と考えてもらおうと思いました。

――なるほど。確かにプレイしていて,どんなことをしても自分たちの居場所を守りたいという気持ちになりました。

小島監督:
 でも,結局その先にあるのは“恨み”ですよね? やられたらやり返すという報復の連鎖が,戦争に発展する。その部分を,プレイヤーに体感してもらうのが目的でした。「MGSV:GZ」のエンディングではスネークもカズもボロボロになる。そうなるとプレイヤーも敵に対して強い“憎悪”を抱くと思うんです。「MGS:TPP」ではそこから先,どんな道を辿ることになるのか……実際にプレイヤーがミッションをクリアしながら,体感できる仕組みにしています。

――「MGS PW」をやり込んだ身としては,「MGSV:GZ」のエンディングでとんでもない喪失感を味わいました。正直,一刻も早くあんな惨劇を引き起こした相手に復讐したい気持ちになっています。……まんまと監督の意図にハマっているわけですね(笑)。

小島監督:
 あそこまでされると,もう「誰に」とかでなく「世界」に対して,大暴れして報復したくなりますよね。しかし,相変わらずノーキル・ノーアラートでもクリアできるようになっていますので,どうするかはプレイヤー次第です。ゲームをしながら,いろいろと感じ取ってもらえればと思います。

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コンセプトである“潜入”も新たなステージへ


――「MGS:TPP」はオープンワールドではあるものの,完全な自由ではなくミッションクリア形式と聞いています。

小島監督:
 本当ならオープンワールドという表現はしたくないんですが,ほかに最適な言葉が無いんですよね。ミッションは例えるならばTVシリーズの1エピソードのようなもので,誰かを探せとか,何かを取ってこいとか,目的が明確化されていて,それを達成すれば1話終了という感じですね。ただ,その後に帰還するかどうかは任意なので,そのフィールドに残って遊んでいてもかまいません。

――なんとなくイメージがつかめました。

小島監督: 
 完全なオープンワールドの作品で遭遇する「何をすればいいのか分からない」ということは無く,「どうやって目的を達成するか」「どうやって脱出するか」というようなことを考えているうちに1クールから2クールの物語になってくるわけです。まぁ,中には本筋に関係無いようなミッションもありますけどね。TVシリーズ中に4話くらいは面白くない話があったりするように(笑)。

一同:(笑)。

――「MGS」のコンセプトである“潜入”ですが,今回は自由度が高い分,どこにでも隠れることができるのでしょうか?

小島監督:
 26年前の「メタルギア」は敵の動きを見極めながら決まったルートを進んでいくというものでした。しかし,本作では目的地までぐるっと回り込んでもいいし,上や下からも攻められるんです。サバイバルゲームのようなもので,「見つからないように動く」ということは変わりませんが,「どうやって見つからないようにするか」はプレイヤー次第です。そこはあえて誘導しないようにしています。

――なるほど,挑戦しがいがありそうです。

画像集#005のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載
小島監督:  
 難度のこともよく聞かれるのですが,いわゆる昔のゲームは走り高飛びのようなもので,飛び越えられない高さを何度も挑戦して飛び越える喜びがありました。難度調整は言ってみればそのバーの上げ下げなんです。
 しかし,本作ではクリアの方法がひとつではないので,無理をしてバーを飛んでもらう必要がありません。なので,従来の難度調整とはちょっと違うものになっています。銃撃で受けるダメージのようなものはもちろん調整する余地がありますが,ゲームデザイン的な部分ではあまりイジりたくないですね。その辺はプレイヤーが決めることなので。

――「MGS:GZ」の難度選択に「EASY」がないのはそのあたりが理由ですか?

小島監督:
 日本のライトゲーマーにはちょっとキツいかもしれません。まぁ,だったら買わなくていいです(笑)。

一同:(笑)。

小島監督:
 これでも最初は「ヌルすぎる」と言われたんですよ。

――そういえば鍵のかかった扉を開けるために鍵を探すというような,ゲーム的な遠回りが「MGS:GZ」にはありませんでした。

小島監督:
 それはスタッフから同じ質問をされたことがあります。「鍵を探しに行ったほうが面白いのでは」と。アホかと(笑)。スネークはプロなので,本作ではピッキングで開けてしまいます。鍵をガチャガチャやっている最中,敵に見つからないかとソワソワするじゃないですか。よくゾンビ映画なんかでピンチの時に扉を開けるのに手間取るようなシーンがありますが,あれがやりたかったんです。メモリの関係上,どうしても開けられない扉が出てきてしまうのが残念でしたね。

――その点では体験会でも鍵を開けて入れる施設に行った人と,行かないままでクリアした人がいたようです。

小島監督:
 たまたまかもしれないし,戦略的に動いた結果なのかもしれませんが,それは「MGS:GZ」だからこそではないかと。レールで進むゲームにしてしまうと,兵士同士が「あそこの電圧が〜」みたいな会話をしているデモシーンが入りますよね。そうなると絶対そこに行かないといけなくなる。それはそれで面白いかもしれませんが,やはり自分で考えて見つけてもらいたい。

――なるほど。

画像集#024のサムネイル/「GROUND ZEROES」は「MGSV」の本編へと続く道。小島秀夫監督へのメディア合同インタビューを掲載

小島監督:
 そういえば海外の人によくチコとパスのことを「これは誰だ?」と聞かれます。「MGS:PW」はプラットフォームがPSPだったので,彼らはあんまりプレイしていないんですよね。
 でも,僕はそれはそれでいいと思うんです。「MGS」に対する情報量なんて,人によって全然違うので。それこそ「MGS:PW」を何百時間もやった人ならば,「MGSV:GZ」のエンディングで泣くかもしれません。その一方で,別になんとも思わない人がいてもいいんです。チコという男の子と,パスという女の子が拷問されているから助けに行く。それだけでいい。
 だから,「ピーチ姫」ですね(笑)。クッパがピーチ姫をさらうことに関しても,説明は無いじゃないですか(笑)。

一同:(笑)。

小島監督:
 とはいっても,「MGS:GZ」では,途中の会話や,集めたカセットテープを聞くことでチコとパスの背景が見えてくるようになっています。一方で「MGS:PW」をやっていた人はカセットテープで当時のBGMを聴きながらプレイするかもしれませんし,ここも人それぞれだと思います。


ボスのコンセプトと立ち位置に期待


――サイドオプスもバリエーションがあって面白かったです。

小島監督:
 同じエリアでも時間や天気が変わるとどれだけ違うのかという部分を体験してほしかったんです。今回はミッションごとに時間や天候が固定されていますが,「MGS:TPP」ではそれらがリアルタイムに変化します。朝と夜で,見通せる距離が違ってたりするんですよ。そういうのを体験してもらって,本篇に備えてほしいなと。
 ちなみに,「MGSV:TPP」にもサイド・オプスはあります。TVシリーズでも息抜きでサブキャラの生い立ちなんかを描いたりしますよね。そんな感じで,「裏ではこんなことがあった」というような展開が楽しめます。「MGS:PW」のマザーベースみたいに基地が大きくなっていくような要素もありますよ。

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――従来シリーズでは要所要所で超人的な能力を持ったボスが出てきて,倒さなければ先に進めないようになっていましたよね。そういったボスはオープンワールド要素を取り入れた「MGSV:TPP」でも登場するのでしょうか?

小島監督:
 いいとこ突きますね。いますよ。いるんですけど……ラスボスはともかく,中ボスはプレイヤーを通せんぼするために出てくる存在なので,それをオープンワールドでやると最後まで会わない人がいるんですよ(笑)。

一同:(笑)。

小島監督:
 だって,リアルに考えるとそうでしょ? 「MGS3」の「ジ・エンド」なんかは,またちょっと違いましたけど(※)。
 一方で,昔ながらのいかにも「戦ってください」という展開で出会うボスもいます。詳細はまだちょっと言えませんが,すごいのが出てきますよ(笑)。

※「ジ・エンド」との戦いを回避できたり,まともに戦わずに勝てたりといった方法が用意されていた

――今まで特殊部隊から超人,怪人まで様々な特徴を持ったボスが登場しましたが,今回のテーマはなんでしょう?

小島監督:
 最初が特殊部隊,次はソリダスのようなアメコミみたいなの,その次は怪人,ビューティー&ビースト,そしてAI兵器……今回は,その上を行くやつですよ(笑)。

――まるで想像がつきませんが,楽しみです。ありがとうございました。

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