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「コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア」の開発元,Sledgehammer Gamesのスタジオツアーをレポート
同社の設立は2009年で,ゼネラル・マネージャーのグレン・ショーフィールド(Glen Schofield)氏やチーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)のマイケル・コンドレイ(Michael Condrey)氏などの中心メンバーは,それ以前にElectronic Arts傘下のVisceral Gamesで「Dead Space」を開発していたという経緯がある。
Sledgehammer Gamesといえば,多くのファンは2011年にリリースされた「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3」(以下,モダン・ウォーフェア3)をInfinity Wardと共同開発したチームとして記憶していることだろう。同作のリリース後,彼らは3年という十分な時間をかけて,アドバンスド・ウォーフェアを新世代ゲーム機向けのタイトルとして作り上げてきたのだ。
さて,このオフィスは,サンフランシスコを車で20分ほど南下したフォスターシティという地域にある。モダン・ウォーフェア3の開発時はビル内にあるフロアの半分のみを使用していたが,アドバンスド・ウォーフェアの開発が進むにつれてチーム人数が増えたため,ビルの所有者の許可を得て,フロアを分離している壁をスタジオの名前どおり,スレッジハンマーで叩き壊して拡張したらしい。
そのためか,エレベーターやキッチン,サウンドルームなどがある中央部分以外は非常に開放感のあるスペースになっており,現在は230人というメンバーが,部門ごと等間隔に並べられた机で作業を行っている。
印象深かったのは,開発者が使っているディスプレイの付近に,小さなメダルのようなものが飾られていたこと。このメダルはメンバーのモチベーション向上のため,「入社した」「良いチームワークをした」などといったマイルストーンを達成するたびに与えられるとのことで,同様の試みが米国海軍で行われているという。ディレクターレベルの人だと,10個ほどのメダルを積み重ねているようだった。
最新技術「パフォーマンスキャプチャ」がさらに進化
さて,チームワーク重視でアドバンスド・ウォーフェアの開発を行っているというSledgehammer Gamesのスタジオツアーは,シングルプレイのキャンペーンやそのバックストーリー,開発テクノロジーなどについての紹介がメインとなっていた。アニメーションディレクターのクリス・ストーン(Chris Stone)氏とオーディオディレクターのドン・ヴェカ(Don Veca)氏によるプレゼンテーションは,20人分ほどのソファが並べられたシアタールームで行われた。
アドバンスド・ウォーフェアの開発に取り入れられている数々のテクノロジーの中で,ビジュアル面で最も大きなアピールとなっているのが,アカデミー賞男優であるケヴィン・スペイシーさんの演技を再現する「パフォーマンスキャプチャ」だろう。
パフォーマンスキャプチャとは,「The Last of Us」や「BEYOND: Two Souls」など,2013年リリースのタイトルからスポットライトを浴びるようになった技術で,黒いタイツを着込んだ役者にいくつものドットを付けて,それを多方面からビデオで撮影することにより,その動きを取り込む「モーションキャプチャ」技術の応用である。モーションキャプチャが体の動きを取り込むのに対し,パフォーマンスキャプチャは役者の表情や声まで同時に取り込めるのが特徴だ。
アドバンスド・ウォーフェアにおけるパフォーマンスキャプチャの収録は,映画「アバター」にも使用された北米屈指のスタジオ,Giant Studiosの協力によって行われた。ストーン氏によると,ケヴィンさんはスタジオに入ってくるやいなや,Sledgehammer Gamesが描いていた以上のジョナサン・アイアンズ像を演じ始めたという。
そんな本作のパフォーマンスキャプチャ収録で特筆すべきは,Giant Studiosが生み出した新しいテクノロジーが採用されたことだ。通常のパフォーマンスキャプチャであれば,役者の顔に何十ものドットを付け,役者を囲むように配置されたカメラでデータ収集していく仕組みになっているが,本作の収録ではドットを使わず,あらかじめ役者の「右眉を吊り上げる」「口を大きく開ける」「目を細める」といった何百ものパターンを別途撮影しておき,それを部分ごとに当てはめていくような方式になっていたという。
これによって,ドットを使った方法では再現しづらい顔の筋肉や皺の微妙な動きが再現できるだけでなく,皮膚のテクスチャーそのものも,小さなホクロや毛穴まで作り込めるようになるとのこと。この技術はジェームス・キャメロン監督の新作映画「アバター2」でも利用されているらしいが,実際にお披露目されるのはアドバンスド・ウォーフェアが初になるとのこと。
なじみ深い音を何層にも重ねて未来のサウンドを作り出す
Sledgehammer Gamesでは,これを「レイヤー」と呼んでおり,具体的には,基本となる「Ground Layer」の上に,「Mechanical Layer」という機械的ながらも実録されたサウンド層,さらにその上に「Synthetic Layer」というコンピューターで作成されたシンセ音を重ねるというものになっている。電子シールドを持ち上げるときの効果音といった,一瞬しか聞こえないようなものでさえ,20層にも及ぶ構造になっているというから驚きだ。
ヴェカ氏によると,開発チームでサウンドを担当する6人のメンバーは常に録音機を側に置いているようで,夜中に街を走るゴミ回収車のクレーン音にピンと来たメンバーが,パジャマのまま外に走り出して収録したサウンドクリップが,ゲーム中に登場する四足歩行型のドローンタンク「ウォーカー」のGround Layerに利用されているという。
ほかにも,自走砲の発砲音を収録するときにマイクを近付けすぎて燃やしてしまったり,スタンガンの効果音を作るために実際に撃たれてみたりと,オーディオチームにはワイルドなエピソードが多い模様。こういった涙ぐましい努力によってコツコツと蓄えられたクリップによって,アドバンスド・ウォーフェアのサウンドが作られているというわけだ。
さらにSledgehammer Gamesのオーディオチームは,Audio Intelligence System(正式名称なのかどうかは不明)という新システムをアドバンスド・ウォーフェアのために開発したという。これは1つ1つの効果音が,音源からの方向や距離,環境によって全く異なる聞こえ方になることを再現するシステムということだ。
「例えばショットガンが横で発砲された時と,自分で撃った時に体から伝わってくる衝撃を含めた効果音は違うものになるのです」とヴェカ氏が解説したように,本作では周囲の環境によって起こる微妙な音の変化が再現されている。氏は「プレイして音を聞いてみると,これまでとまったく違うサウンドになっているのを実感できるはず」と胸を張っていた。
プロダクト・デベロップメント・ディレクター アーロン・ヘイロン氏インタビュー
プレゼンテーションの後はミーティングルームへと移動し,昼食を取りながらというフランクな形での合同インタビューとなった。最初のインタビュイーは,「モダン・ウォーフェア3」でゲームデザインチームに所属し,今はプロダクト・デベロップメント・ディレクターとして各方面での調整役を担うアーロン・ヘイロン(Aaron Halon)氏だ。
――新世代ゲーム機向けのソフトを開発することを念頭において,プロジェクトが始まったようですね。
ええ。開発が始まった3年前は,まだ新世代ゲーム機の詳細がまったく分からない頃でしたから,PC上でスペックやテクノロジーを想定しながらの作業となりました。高解像度で60fpsを目指すことはできても,実際にどのような形でゲームを表現するのかは暗中模索の状態でしたが,3年間という開発期間はトライアル&エラーを繰り返すには十分な時間だったと思います。
――共同開発だった「モダン・ウォーフェア 3」とは違い,自分達だけで「アドバンスド・ウォーフェア」を生み出していく上で苦労したことはありますか。
ヘイロン氏:
多くのゲーマーにプレイしていただく一大ブランドで新しいチャプターを開始するというのは並大抵のことではありません。シリーズらしさを残しながら,どこまで新作感を演出できるのかは開発中にいつも意識していたことでした。
そんな中で私達は,開発チーム内の1つのグループに「自分の想像力や未来感を思いっきりさらけ出したものを」と注文し,もう1つのグループに「これまでのCoDシリーズらしく保守的に」という注文を出しました。その上で,双方から提出されたものを比較しつつ,最終的なものを生み出していったのです。それが先ほどお話ししたトライアル&エラーというわけです。
――今回のマルチプレイは,シリーズらしい小〜中規模のマップばかりでしたが,やはりその路線は継続されるのですか?
ヘイロン氏:
ええ,当初からその方向で開発を進めてきました。CoDシリーズらしいかどうかというよりも,エクソスケルトンを利用したスピーディな展開を楽しんでもらうためには,この程度の規模のマップで,さらに上下移動ができるようなものにしたかったのです。
――なるほど。スタジオ内を見渡したところ,Xbox Oneで開発やテストを行っている人が多い印象ですが?
ヘイロン氏:
どちらを優先しているというのではなく,同時に開発しています。Xbox Oneを主体にPlayStation 4に移植しているということではありません。双方ともに最大限にハードウェアの良さを引き出すのが前提です。
クリエイティブ・ディレクターのブレット・ロビンス氏インタビュー
ヘイロン氏の次にミーティングルームへ入ってきたのは,クリエイティブ・ディレクターのブレット・ロビンス(Bret Robbins)氏だ。彼はSledgehammer Gamesの設立当初から在籍しており,それ以前にもVisceral Gamesで「Dead Space」や「The Godfather: The Game」などの開発に参加した経験があるなど,開発者として18年のキャリアを持っている。アドバンスド・ウォーフェアにおいては,主にシングルプレイのキャンペーンを担当しているとのことだ。
――本作は,おそらくシリーズでは初めて,たった1人の主人公の視点で描かれるストーリーになっていますね。これはストーリーで大きな評価を得た「Dead Space」の元開発チームとして,企画当初からこだわっていた部分なのですか?
はい。1人の視点と複数の視点,双方に強みと弱みがあると思いますが,1人の視点で描く場合の強みとして考えられるのは,プレイヤーが主人公の境遇に自身を投影でき,ストーリーがより明確になることでしょう。自分がどんな考え方を持っているのか,どんな状況にあるのかということを,その度に解説し直す必要がないというのも,より自然なストーリーの流れを作るのに役立ちます。
今回は,ミッションをとおしてエクゾの機能が追加されていき,主人公のミッチェルがそれを学んでいくというのも,ストーリー進行の重要な要素になっていますから,複数の視点にするよりも良かったと思っています。
――本作では2054年から10年近いスパンで主人公の物語が描かれますね。
ロビンス氏:
ええ。ゲーム開始当初で描かれている世界観やストーリーは,それほど今の世界からかけ離れたものではありません。それは,プレイに登場するテクノロジーをプレイヤーにもそれなりに親近感が持てるようなものにしておこうという配慮です。ゲーム開始当初にミッチェルが海兵隊として送り出されるソウル(韓国)のミッションの状況が,本作のテクノロジーのベースラインになると考えてください。ミッチェルは,そこからPMC(民間軍事会社)のAtlas Corporationへと移り,そこでさらに進んだテクノロジーに触れていくという流れになっています。
――今回拝見したトレイラーでは,フルボディアーマーを着込んだ兵士のようなものも登場しますが,あれはゲーム後半に登場するエクゾの進化型のようなものなのでしょうか?
ロビンス氏:
あれはAST(Armored Security Trooper)という重装備兵士です。エクゾの発展型としてゲーム後半に登場するのは間違いないですね。
――未来の戦争を描くということで,どのようなリサーチを行うのでしょうか?
ロビンス氏:
海兵隊のSeal Team 6やデルタフォースの隊員として活動していた元軍人のアドバイザーから助言をもらって,部隊の動きを再現しています。また,彼ら「Tier 1」と呼ばれる精鋭部隊の人たちは軍事産業とも綿密に協力し,新しい武器のテストを行ったり,意見交換をしたりしていますので,ゲームにおける未来の軍事技術を作り上げる上では大いに参考にしています。
――ゲームマップとしては,ソウルとラゴス(ナイジェリアの首都),そしてサンフランシスコといった場所が既に公開されていますが,こうしたロケーション選びはどのように行うのですか?
ロビンス氏:
現在の地政学的な観点から,40年後の世界がどうなっていくかを考慮しつつ,ゲーム的に面白いバラエティに富んだ場所,例えば氷河だったり大都市だったりといった,プレイヤーを飽きさせない場所選びが必要になってきます。いずれにせよ,ストーリーにマッチさせていかなければならないのですが,後付けのロケーションで,予想外に面白くなったようなケースも少なくないですね。当初からすべてを決めているわけではないです。
――日本がゲームに登場する可能性はないですか?(笑)
ロビンス氏:
残念ながらないですが,今後のために可能性を探っておきましょう。ロケハンで日本に行けるチャンスですから(笑)。ロケハンは,普段のゲーム開発とは違う脳を使っているようで楽しいんです。
――本シリーズは演出も魅力になっていますよね。モダン・ウォーフェア3でも,乱気流に巻き込まれたジェット旅客機の中で銃撃戦が繰り広げられるような演出がありましたが,ああいった突拍子もないアイデアはどうやってまとめるのでしょう?
ロビンス氏:
あのシーンは私の担当でしたから,当時の状況はよく覚えています(笑)。新しい技術による表現を見せたい技術者と,自分の想像力を存分に見せつけたいデザイナーの攻防戦のような状況が繰り広げられつつ,それがまとめられていくのです。ある意味,もはやゲーム開発は「ハリウッド映画」と競合しています。とくにこのシリーズはそう断言できるレベルにまで来ていますから,常に一段高い部分,映画でも過去にない,あるいはできないような演出を意識します。
――ケヴィン・スペイシーさんの配役は,早い時期に決まっていたのですか?
ロビンス氏:
はい。脚本を書いている時から,スペイシーさんの姿を想像していました。それが実現したのは本当に良かったと思っています。しかも,彼がジョナサン・アイアンズとしての独特なキャラクター像を作り上げていく様子を目の当たりにして,本当に感動しましたね。そのために,セリフなどの一部分を撮影時に変更したりもしたのです。
――この「アドバンスド・ウォーフェア」を3年にわたって作り上げてきたことに対する自負のようなものも感じますが,今後シリーズ化していくことも想定されていますか?
ロビンス氏:
そうなればよいと思っていますし,プレイヤーにもそれを求められるような作品に仕上がっていると確信しています。
――そうなると,ストーリーのエンディングがあからさまに続編を匂わせるものになるのではないかという心配が生まれてきますが……。
ロビンス氏:
いや,それは我々も強く意識していて,1つのストーリーとして確実に完結することは保証しておきます。それは,先ほど話した1人の主人公にフォーカスしていること,それからアイアンズのような,練り込んだキャラクター像を描いていることからもお分かりいただけるはずです。
スタジオツアーの内容は以上だが,最後にスタジオ内の写真をまとめて掲載しよう。ワーキングスペースだけでなく,レセプションやキッチンといったところまで広々としていることが分かるはず。
「コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア」公式サイト
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