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「刀剣乱舞-ONLINE-」と「神姫PROJECT」のキーマンが,マルチデバイス展開のメリットとデメリットを語る。TGSのDMMブースで行われたステージをレポート
このステージでは,「刀剣乱舞-ONLINE-」と「神姫PROJECT」のキーマンが登壇し,ブラウザとスマートデバイスのマルチデバイス展開について,実績を開示しつつディスカッションを行った。本稿では,その概要をまとめてレポートしよう。
登壇者は,「神姫PROJECT」のディレクターを務めるテクロスの加藤将彰氏,「刀剣乱舞-ONLINE-」を筆頭にDMM GAMESのプラットフォーム初期を支えたDMM GAMESの花澤雄太氏の2人で,DMM GAMES マーケティング本部 本部長の川端祐喜氏がモデレーターを担当した。
花澤雄太氏(DMM GAMES 花澤部 部長) |
加藤将彰氏(テクロス「神姫PROJECT」ディレクター) |
川端祐喜氏(DMM GAMES マーケティング本部 本部長) |
まず加藤氏から,「神姫PROJECT」における,“デバイス・ドメイン間”の延べ月間アクティブユーザー率が開示された。それによると,PCのWebブラウザが42.2%,スマートデバイスのWebブラウザが24.2%と全体の3分の2を占めている。
アプリ版「神姫PROJECT A」はiOS版,Android版(Google Playストア,DMM Gamesストアアプリ)の合計で33.6%とのこと。なお左のグラフでは,アプリ版のサービス開始(2017年4月)以降は,延べ月間アクティブユーザー数が1.54倍に伸びている。
一方の「刀剣乱舞-ONLINE-」は,PCのWebブラウザが37.8%で,アプリ版「刀剣乱舞-ONLINE- Pocket」はiOS版が37.9%,Android版が24.3%という比率。アプリ版の合計が62.2%と,「神姫PROJECT」とは真逆の傾向になっている。
なお,延べ月間アクティブユーザー数は,こちらも(おそらくはアプリ版リリース後の平均で)1.56倍になったとされている。
川端氏は,「刀剣乱舞-ONLINE-」のように女性プレイヤーの比率が高いタイトルでは,スマートデバイスでアプリを配信したら,そちらに流れるユーザーが多いだろうと予想していたという。
実際に配信したところ,ブラウザゲーム版のアクティブ率はあまり下がらず,予想以上にPCで利用するユーザーが多くいることに驚いていると,素直な感想を口にしていた。
なお,詳しくは後述するテーマで述べられているが,ブラウザゲーム版とスマートデバイス版の重複率は,両タイトルともそれほど高くないらしい。
加藤氏は,「神姫PROJECT」のブラウザゲーム版の1年後にアプリ版をリリースすると決めていたので,制作作業は大変だったが大きな不安はなかったという。
加藤氏も,実績のないゲームだったら大変なうえに不安も大きかっただろうと話していたが,先にブラウザゲーム版で実績を積んでいるため,売上や運営面の不安を考えずに済むというわけだ。
ここで川端氏から,ブラウザゲームを開発してからアプリ版を開発する場合,何が“しんどかった”かという質問が出た。
この問いかけに対して加藤氏は,そもそもブラウザゲームとアプリでは作り方がまるで違うとコメント。とくに「神姫PROJECT」の場合,Webブラウザを前提としたゲーム設計を行っていたので,アプリでは容量の問題に悩まされるなど,非常に苦労したそうだ。
ただ,そのデメリットも運用の知見に生かせるので,大きなメリットにもつながると話していた。
花澤氏は,スマートデバイス版には手軽にプレイできる,ブラウザゲーム版には刀剣男士(「刀剣乱舞-ONLINE-」の男性キャラ)を大きな画面に表示できるというように,それぞれの良さがあるとコメント。マルチデバイス展開では,その両方をプレイヤーが享受できるようになることが“メリット”であると述べた。
花澤氏によれば,「刀剣乱舞-ONLINE-」のプレイヤーで,ブラウザゲーム版とスマートデバイス版の重複率は10%から20%程度と,かなり低いとのこと。加藤氏も,「神姫PROJECT」のプレイヤー重複率は「刀剣乱舞-ONLINE-」とさほど変わらないと述べていた。
ここで,マルチデバイス展開のデメリットは何かという話題になった。
「刀剣乱舞-ONLINE-」はブラウザゲーム版をFlashで開発していたため,アプリ版の開発は新規に作るくらいの労力がかかったとのこと。
加藤氏もこの苦労に思うところがあったようで深くうなずき,ブラウザゲーム前提で開発を行うと,アプリ版を開発するときに引っかかる部分が多くなったり,挙動が変わって調整に苦労したりすると話していた。
そのため,最初からマルチデバイスを念頭に置いて開発すれば,結果的にコストを削減できるのではないかと話していた。
次の話題は,「今後のPC展開で取るべき手法とは?」。
花澤氏の主張は,これまでは“PCファースト”だったメーカーでも,最初からアプリ展開“も”見据えて作ることが今後は大事になるだろうというもの。
スマートデバイスは画面が小さいので,ゲームのジャンルによってはマッチしないことがある。バッテリーの消費が大きかったり,端末によっては動作が重くなったりと,スペック面での問題が発生することもある。
そういった,ある意味ゲームの面白さとは別の側面の問題でヒットしないこともあるが,それをPCで展開したら受け入れられることもあると話していた。
つまり,「刀剣乱舞-ONLINE-」や「神姫PROJECT」のような,PC(orブラウザゲーム)からスマートデバイスに展開していくパターンに限らず,スマートデバイスからPC(や家庭用ゲーム機)に展開することも,成功のパターンとしてあり得るわけだ。
そう考えれば,マルチデバイス展開が可能な,汎用性の高い設計にしておくべき,という主張も納得できるだろう。
まずは,「ぶっちゃけ,売上いくらですか?」というド直球な質問。
これに加藤氏は,「神姫PROJECT」がマルチプラットフォーム展開して少し経った2017年5月頃は,App StoreとGooglePlayのセールスランキングで20位から30位くらいだったとコメント。開発コストはかかったが,売上がきちんと出ているので運営できていると話していた。
花澤氏は,「刀剣乱舞-ONLINE-」は課金を薄くしたモデルなので「神姫PROJECT」のようなインパクトのある数字は出せないと前置きしつつ,ゲーム内イベントが開催される週は,セールスランキングで1ケタ台に食い込むこともあるので,決して悪い数字ではないと述べた。
次に「なぜ,DMMでタイトルを展開することにしたのか」という質問。
加藤氏は,「神姫PROJECT」の開発当時,アプリ市場はすでに“レッドオーシャン”状態で,ランキング50位以内に入るのも厳しいくらいの見込みだったという。
DMM GAMESは,すでに「艦隊これくしょん -艦これ-」や「刀剣乱舞-ONLINE-」のように人気タイトルが生まれていたものの,プラットフォームとしてはまだ若くライバルは少ない。さまざまな条件を分析して「行ける」と思ったことが,参入のきっかけになったそうだ。
ちなみに,プラットフォーム内で広告も出してもらえることも,大きなメリットに感じたとのこと。
最後に川端氏が来場者に向けてスピーチを行った。
川端氏は,“アプリファースト”だったパブリッシャもPC展開を視野に入れる流れができつつあり,盛り上がっていくであろうPC市場の今後の動きがとても楽しみだとコメント。
DMM GAMESはプラットフォーマーとして,今以上にさまざまなタイトルをユーザーに届けていきたいと考えているのでぜひ参入を検討してほしいと,来場していた業界関係者に向けてアピールし,ステージを締めくくった。
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