インタビュー
スクウェア・エニックスによる新たなスマホ向け王道RPGはいかにして生まれたのか。「アルカディアの蒼き巫女」開発者インタビュー
今回,4Gamerでは,「アルカディアの蒼き巫女」のプロデューサーを務めるスクウェア・エニックスの潮田太一氏と,ディレクターであるニューロン・エイジの河野成年氏に,同タイトルの開発経緯や現状の課題,そして今後の展望について聞いてみた。
「アルカディアの蒼き巫女」公式サイト
iOS版「アルカディアの蒼き巫女」ダウンロードサイト
Android版「アルカディアの蒼き巫女」ダウンロードサイト
タッチパネルならではのスワイプ操作は
スマートフォンゲームにおける“当たり前の文化”
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,お二人のこれまでの経歴などを教えてもらえますか。
僕はもともとPCオンラインゲーム畑の人間だったんです。アバターサービスやコミュニティサービス,カジュアルゲームを手がけたのち,MMORPGのプロデューサーも務めました。
スクウェア・エニックスに入社してからは,まず「ドラゴンクエストX」の運営をサービスインまで手伝っていました。そのあと本格的にスマートフォンゲームに携わるようになり,2014年に「DRAGON SKY」,そして2015年2月に「アルカディアの蒼き巫女」をリリースしたというわけです。
河野成年氏(以下,河野氏):
僕はコンシューマゲームのプランナーを6〜7年務めたのち,ニューロン・エイジに入社しました。それからブラウザゲームの開発を経て,現在はスマートフォンゲームのディレクター兼プランナーをやっています。
4Gamer:
そんなお二人が,「アルカディアの蒼き巫女」を企画した経緯などを教えてください。
潮田氏:
最初の時期としては,約1年前の2014年2月頃でしょうか。当時ニューロン・エイジさんが提案していたのは,“鍛冶”のゲームだったんです。
河野氏:
その名残が,現在の武器製作パートというわけですね。本当はもっと武器製作に特化したゲームを考えていました。
潮田氏:
そこから2014年4月にかけて企画を固め,5月から本格的に開発がスタートしました。ですから正味の開発期間は9か月前後といったところです。
河野氏:
そのうち6か月くらいは,ずっとゲームの基礎部分──バトルで使うパズルの部分をいじっていたんです。
4Gamer:
鍛冶のゲームから現在の形になるまでに,紆余曲折はあったのでしょうか。
潮田氏:
そこは,比較的スムーズでした。もともと僕自身,MMORPGなどのクラフトが大好きでしたから,その楽しさを押し出しつつ,二つの点を付け加えたんです。
まず一つは,スクエニの新規IPとしてRPGにしたいということでした。もう一つこだわったのは,スワイプ操作の遊びです。
河野氏:
最初の企画時点でパズルの基礎はでき上がっていたんですが,まだスワイプ操作ではなかったんですよ。
4Gamer:
そこでスワイプにこだわった理由を教えてください。
スワイプは,スマートフォンの操作で大きな特徴となる部分です。世の中には,すでにスワイプを使って操作するゲームがたくさんありますが,だからと言って後発タイトルがスワイプ操作を採用したら真似になるのかというと,僕はそう思いません。
と言うのは,スマートフォンはPCやコンシューマゲーム機とは異なり,指先一つでいろんなことを実現できるデバイスであり,その代表的な操作にスワイプが挙げられると思います。スワイプで気持ちよく操作する,というのは,今までのデバイスにはない気持ち良い体験なんですよね。例えばコンシューマゲームでは当たり前になっている十字キー操作をスマートフォンで実現しようとしても……気持ち良さはあまりないかと思います。
ですからスマートフォンゲームの操作は,指先だけを使うタップかスワイプが望ましいと思っていますし,今後も当たり前の文化としてどんどん浸透していくでしょう。
4Gamer:
なるほど。
潮田氏:
またゲームを作るときは,お客様に楽しさを与えるべくさまざまなポイントを用意する必要があります。その中でスワイプは,「うまくつなげた」というとてもシンプルな楽しさを提供できるんです。さらに「アルカディアの蒼き巫女」では,うまくつなげることで敵に大ダメージを与えられますから,そこに気持ちよさが加わります。これがただのタップだと,そこまでにはならないんですよ。
そうやって,楽しさを分解していった結果,スワイプを使って触り心地のいいゲームにしようと考えました。
たとえばコマンド選択式のバトルでは,行き着くところまで行ってしまうと,考えずに攻撃ボタンを連打するだけになってしまいかねません。
バトルを「考えることが楽しい部分」と定義するのであれば,スワイプ操作の採用は正しい選択だと言えるんじゃないでしょうか。
潮田氏:
もちろんタップするだけで遊べたり,オートバトルがあったりするゲームを否定するわけではありません。それらは,どこでも遊べるというスマートフォンの利便性と合致しますし,タップのさせ方により戦略の幅を広げることもできるでしょう。
4Gamer:
どちらを選択するかというトレードオフの中で,「アルカディアの蒼き巫女」ではスワイプを選択したと。
潮田氏:
そういうことです。またスワイプを採用したもう一つの理由としては,初めてプレイする人に向けた配慮もありました。「とりあえず,この光っているパネルをつないでいけばいい」という分かりやすさを用意しようと。
河野氏:
今のスマートフォンゲームでは,同じ色や同じ形をつないでいくことがプレイヤーの共通認識になっていますからね。結果として「ルール説明がなくともプレイできる分かりやすいゲーム」と評価していただけています。だからと言って攻撃が成功するかどうかは,また別の話なんですけれど(笑)。
潮田氏:
6歳だった僕の子どもに試作版を触らせてみたところ,喜んで遊んでいたことも決め手の一つでした。
タップの回数までこだわったストーリーと,キャラ人気を加速させる12人の巫女
4Gamer:
「アルカディアの蒼き巫女」では,「王道」を前面に打ち出していますよね。これは何に対しての王道なのでしょう。
まずは世界観です。中世的な世界観を醸し出す舞台で,主人公が12人の巫女とともに世界を救っていくというところですね。
……その一方で,王道RPGという言葉からコマンド選択式のバトルシステムを想像してしまったお客様もいらっしゃったようで,そこは申し訳なかったんですけれども。
河野氏:
潮田さんの言う王道は,スクエニさんの「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」の持つ世界やストーリーなんですよ。実は僕自身も潮田さんから「王道の世界観とストーリーで行く」と聞かされたとき,「ドラクエやFFのようなゲームを作れる!」と思いましたけどね(笑)。
潮田氏:
遊んでくださった方からは,音楽も含めてストーリーを評価していただいています。
4Gamer:
主人公の立場が明確なので,ストーリーの展開が把握しやすいですよね。
潮田氏:
そこはスワイプ操作の採用と同じで,スマートフォンに適したストーリー展開を考えました。お客様にストレスなくストーリーに入ってきていただくにはどうすればいいか──それはつまり,お客様がどんなシチュエーションでゲームを遊ぶかを考えることです。
今回は,少しの時間で遊ぶことを念頭に置き,気持ちよく理解していただけるような内容を意識しました。たとえばセリフが冗長にならないよう気を付けたり。
河野氏:
開発チームからは,一つのテキストが長くなりすぎないようお願いしました。「どんなに長くとも,テキストを送るためのタップが20回以内で済むように」と。
潮田氏:
「ここは5タップ以内で」と指定されることもあったんです。テキストを仕上げてくださったライターさんと一緒に,「ここは5タップじゃないとダメらしいぞ」と頭を捻ったり(笑)。僕としては新鮮なチャレンジでした。
4Gamer:
タップ数を指定するほどテキストの長さにこだわった理由を教えてください。
河野氏:
開発上,片手で遊べることや通勤時間で遊べることといった課題をいくつか掲げていたんです。たとえば,あまりに重厚なストーリーだと,読んでいるだけで通勤時間や休憩時間が終わってしまいかねないですが,それは嫌だなと。
ところが潮田さんが用意してきたストーリーは重厚長大なものでした。また王道の世界観やストーリーを楽しんでいただこうと考えるのであれば,そうなってしまうことも理解できます。それならば,一つ一つのエピソードを短くまとめていったらどうだろうということだったんです。
潮田氏:
そうやってタップ数までこだわったことにより,お客様に評価していただけるような分かりやすさを実現できたんじゃないかと捉えています。
河野氏:
結果として,主人公達が毎回モンスターに追われるような感じになっていますけどね(笑)。だからこそ分かりやすいというか。
4Gamer:
12人の巫女という要素は,どこから出てきたのでしょう。
潮田氏:
端的に言うと,世間一般における女の子キャラ人気の高さを踏まえたものです。5年前と比較しても,確実にキャラクターの重要度は高まっていますよね。ボイスを演じる声優さんに対するものも含めて,お客様のキャラクター愛は確実に高まっています。そういう市場があるならば,お客様が楽しめる要素を増やすという意味で,きちんとゲームに入れ込もうと考えたわけです。
正直な話をすれば,巫女を12人にしたことでシナリオの構成は大変になるんですよ。しかし,お客様がお気に入りの巫女と一緒に冒険する感覚を提供したほうがいいだろうと判断しました。
4Gamer:
プレイヤーがお気に入りを選べる部分が重要,ということでしょうか。
潮田氏:
そうです。誰を選んでもストーリーが変わることはありませんが,お客様が愛着を持つキャラクターと常に一緒にいられるというところは重要だと捉えています。とくにスマートフォンは常に持ち歩いているデバイスですから,愛着のあるキャラクターと一緒にいる感じが高まりますし。
巫女とコミュニケーションを図るモードも用意されていますよね。プレゼントをあげると,信愛度が上がってお返しをもらえたり。
河野氏:
そこはニューロン・エイジが以前取り組んでいた「はち恋」のシステムをベースに,新しいアイデアを盛り込んだ部分です。アイデア自体はもっとたくさんあったのですが,最終的に現在の形に落ち着きました。
実は信愛度が一定に達するといいことがあるのですが,この時点ではおそらくどなたもそこまで到達していないんじゃないかと……。
4Gamer:
何が起きるのでしょう。
潮田氏:
巫女のサブシナリオが見られるんです。この記事が世に出る頃には,信愛度を上げやすくなるイベントを実施しているので,今後は多くのお客様が目にするんじゃないでしょうか。
河野氏:
メインシナリオはあくまでもストーリーを進めるためのものですから,巫女それぞれにスポットを当てにくいんですよ。そこでお気に入りの巫女の信愛度を上げサブシナリオを見ることで,それぞれのキャラクターを深く知ることができるようにしたわけです。
4Gamer:
信愛度は,巫女の進化に関わったりするのでしょうか。
河野氏:
今のところ,それはありません。「これをやらないと,何かが手に入らない」というものにはしたくなかったんです。もっとも,今後その方針のままで行くかどうかは未定ですが……。
潮田氏:
今は,いい意味でオマケという位置付けなんです。RPGとしてはスワイプを使ったバトルと,武器を作れるという部分があくまでも主軸であり,その上でキャラクターとして気に入ったら巫女とも触れ合ってください,というのが今のスタンスです。
河野氏:
お客様の反応を見ているかぎりでは,多少なりとも巫女に愛着を持っていただけていますので,もうちょっと何か用意してもいいんじゃないかとは考えています。
潮田氏:
そこはオンラインゲームとして,お客様の声を聞きながらブラッシュアップを重ねていこうと思います。
レアリティの低い武器でもコツコツ強化していけば十分に強くなる
4Gamer:
最初の企画時点からあったという武器製作パートも特徴的ですよね。一般的にはマネタイズに絡めやすい部分かと思うのですが,「アルカディアの蒼き巫女」ではそうなっていません。
そこも最初から決めていた部分です。遊びの方向は二つ用意しようと考えていまして,一つはお金をかければ強くなるというもの──これは「アルカディアの蒼き巫女」だとバトルユニットの「ドール」です。
もう一つは,お金を使わなくともプレイヤーが努力することで強くなれるものです。今回は武器がそれに当り,素材を集めて何度も工夫していけば,そのうちいいものができるという形にしました。まだ素材の排出率や配合の関係で僕達が狙ったところには到達していないのですが,今後改善していきます。
潮田氏:
僕達の考える基本のプレイスタイルは,毎日何かしら少しでもコツコツとやることがあるというものなんです。もちろん,お客様が四六時中張り付いてプレイしてくださるのであれば,それはそれでうれしいんですけれども。
ですから,強化イベントをコツコツやっていればキャラクターのレベルが上がりますし,武器もコツコツ作っていればいずれ優れたものができるでしょう。これは先ほどお話した巫女の信愛度も同じです。
河野氏:
お客様のプレイを見ていると,特定の素材を集めるために周回しているような傾向が出始めていたりと,僕達のコツコツ遊んでほしいという狙いが当っている感がありますね。
潮田氏:
「アルカディアの蒼き巫女」は,今の一般的なスマートフォン向けRPGと比較して,より従来のRPGに近いのかもしれません。僕もサービスインに合わせて最初からプレイしているんですが,毎日コツコツ遊んでいることで,少しずつ強くなっています。
「この間,苦戦した相手に勝てるようになった」となると周回プレイも楽しくなります。そうなると必然的にいい素材を多く入手できるようになりますから,それを使って武器を作ってみようという気持ちになります。それで強い武器ができれば,さらに楽しくなります。
4Gamer:
プレイヤーに体験してほしいサイクルを,潮田さん自身が楽しんでいると。
潮田氏:
その一方で,今は武器の作り方がまだお客様に浸透していないとも捉えています。具体的にはレアリティR以上の武器がなかなか作れないのですが,これはこの記事が掲載される頃に改善する予定です。
河野氏:
実は,レアリティの下から2番目となるHNの武器でも十分強いんですけどね……。でもレアリティが5段階あると,どうしても皆さんは高いレアリティのものを欲しがる傾向にあります。
潮田氏:
例えばHN武器の必殺技には,敵のスピードを下げたり,味方のHPを回復したりするようなものもあり,戦略的な利用価値が高いものもあるんです。でもレアリティが低いからという理由で,HN武器は役に立たないんじゃないかというイメージが付きまとってしまうんですよね。
ここで声を大にして言いますが,HN武器は強化していくと見違えるほど強くなります。ぜひ育成してください。
河野氏:
もっと言えば,レアリティが一番低いN武器も結構強いです。とくに始めたばかりというお客様であれば,最初から持っている武器とは明らかに性能が違うことが分かると思います。それは,まず武器を作るとどういうメリットがあるのかを実感していただくためなのですが,それ以降もレアリティではなく,実際にバトルで使ってみて強さを判断してほしいですね。
潮田氏:
そこは僕達のほうで,もっとアピールしたほうがいいかもしれません。高いレアリティでなくとも,「品質向上」によって強い武器を作れるという奥深いシステムになっていますので,ぜひ試してください。
4Gamer:
武器製作には,キー素材とそれ以外の3種類の素材を使いますが,それぞれ必要な数は表示されませんよね。プレイヤー各自が配分を調整しなければならない形式になっています。
河野氏:
そこは正解が見えてしまっては面白くないだろうと,あえてそうしています。試行錯誤を重ねていくと,「この割合だと,この武器が出やすい」というようなレシピの傾向が何となく分かるようになっています。
ただ費用が高すぎるなどの理由から,これまではお客様が試行回数を重ねにくいという状況にありました。そこは順次改善していきます。
4Gamer:
ちなみに,すべてのレアリティの武器を製作できるのでしょうか。
潮田氏:
もちろんです。SSRの武器も作れます。ただ,SRやSSRの武器は,そう簡単に作れるものではありませんから,じっくり遊んでいただきたいです。
河野氏:
まずはRを目指しつつ,HNで強さを確認していただく感じでしょうか。そしてRができたら,さらに上のステップを目指して頑張っていただくと。
ゲームとしても奥深さを実現できた反面,バランス調整などの課題も浮上
4Gamer:
これまでプレイヤーから寄せられている反響や,お二人が感じている手応えなどを教えてください。
最初に感じてほしかった世界観,主題歌,楽曲,シナリオを評価していただけて,非常にうれしく思っています。
スワイプを使ったバトルも「どこかで見たような……」というコメントを交えつつも「楽しい」という感想が多く,ありがたいです。たとえば,異なる属性の攻撃をつなげる「連携パネル」を使うことで生まれる奥深さが評価されていますね。連携パネルを使うと,攻撃と同時に不要なパネルを消すこともできるんですよ。
4Gamer:
次に繰り出す攻撃の準備ができるんですよね。
潮田氏:
そうです。最初のうちは属性とパネルを10枚以上つなげたときに発動する「ブレイクアタック」,そして連携パネルあたりを中心にバトルを進めるわけですが,そこにスキルや武器の必殺技,攻撃倍率,敵味方のターンを加えることで,より奥深いバトルを楽しめます。
これらは河野さんの設計思想によって実現している部分なのですが,すでにそこまで到達しているようなコアなお客様の声も届いています。
しかしその反面,とっつきにくいという声も上がっています。そこはバランス調整で対応しています。
河野氏:
簡単にまとめてしまうと,サービスイン当初のバージョンは敵が強すぎたんです。僕達としては,負けてしまったら,次はどうしようかと考えて遊ぶ余地を作ろうとしていたんです。パネルのつなぎ方,スキルや必殺技を使うタイミングなどをいろいろ試してもらえないかと。
実際,僕自身は課金要素に頼らずとも,それだけで今実装されている最後の部分までクリアできましたから。
4Gamer:
しかし大半のプレイヤーには難しかったと。
河野氏:
そうなんです。意外と早いタイミングでハードルになってしまって。
潮田氏:
そこは大きな反省点でしたね。
少数のお客様からは,「初期のバランスのほうがよかったのに」というご意見をいただいています。僕もそうなんですが,挑戦することが好きな人は楽しいと感じるんですよ。
ただ思い返してみると,通勤時間で遊べるようなバランスではありませんでしたから,やっぱりダメだと。今は,ほかに用意している面白い部分をもっと見てもらえるよう,序盤を中心にバランス調整を重ねています。
潮田氏:
今のところ,1話と2話はかなりバランスがよくなったかなと。3話以降は,お客様の動向を見つつ,もうちょっと調整することになります。
逆にもっと歯応えがほしいというリクエストに対しては,イベントなどでお応えしていくことになります。どんどんハードな敵が出てきますので,ご期待ください。
4Gamer:
そのほか,プレイヤーから寄せられている意見やリクエストはありますか。
潮田氏:
僕達にとって課題になっているものがいくつかあります。よく指摘されるのは,ローディングの長さですね。当然,僕達も把握していますから,改善に努めています。
またサービスイン当初は,どれだけサーバーに負荷がかかるか分からなかったので,強化イベントも実施できませんでした。これは先ほどの話に関わるのですが,結果としてお客様に「バランスが悪い」と思わせてしまう一因になっていました。こういった部分はきちんと反省し,次につなげていきます。
4Gamer:
それでは,頑張って作ったのに,あまり注目されてないという部分はありますか。
潮田氏:
各種のフレーバーテキストですかねえ……。たとえば巫女のフレーバーテキストを読むと,過去の葛藤などに触れているので,より愛着が増すんじゃないでしょうか。
ただ,ゲーム中に図鑑のようなものを用意していないので,お客様のほうでもなかなか読むタイミングがないと思うんですよ。
河野氏:
強化素材の一つ一つにも,きちんとフレーバーテキストを仕込んでいるんですが,プレイ中はいちいち読まずに使っちゃいますよねえ……。
潮田氏:
そういった部分を参照できる図鑑も実装したいのですが,リソースが限られていますので,まずは多くのお客様が求める部分から実現していかなければなりません。
河野氏:
あとはNやHNといった,レアリティの低いドールの性能ですね。武器と同じく,レアリティが低いとどうしても注目されなくなってしまうのですが,意外とユニークな性能になっています。
潮田氏:
設計思想としては,レアリティの低い初期パーティをきちんと育てていくだけでも結構強くなることを掲げています。そういった部分にも,ぜひ着目してほしいですね。
通常のバトルとは違った形式のPvPを筆頭にさまざまな遊びを導入していく
4Gamer:
お二人は,これまでさまざまな形でゲームの開発や運営に携わってきたわけですが,スマートフォンゲームにおける運営開発のスピード感はいかがでしょう。
潮田氏:
ろくすっぽ寝てません(笑)。ただ苦しい反面,やりがいもありますね。やはり,お客様にプレイしていただくことで初めて分かる課題が多いんですよ。それがお客様の熱が高い部分であれば,僕らも急いで改善しなければなりません。
アップデート後の不具合もありまして,夜中の2時頃に緊急メンテナンスを実施したりしてご迷惑をおかけしていますが,あれもずっとチェックしているからこそのことなんです。そういう意味では,運営も開発も結構なスピード感で動けているんじゃないかと捉えています。
4Gamer:
かつて潮田さんが手がけていたようなクライアント型のMMORPGでは,なかなかそうはいきませんよね。
潮田氏:
何か不具合があっても最速で1か月後,優先度が低ければ3か月ごとのバージョンアップでまとめて対応……という感じでしたからね。頑張ろうと思っていても,どうにもなりません。
4Gamer:
スマートフォンゲームだと,頑張れば何とかなってしまうことも多いと。
潮田氏:
そうですね。ただ,スタッフが身体を壊さないように気を付けないと。おかげさまで,チーム全体の空気はものすごくいいですよ。
4Gamer:
それでは,今後の展開について教えてください。
潮田氏:
まずは,4月頭にレイドボスイベントを実施します(編注:本日開始)。そして2015年初夏くらいには,お客様それぞれが育てたドールを使ったPvPコンテンツの実装を予定しています。
強敵レイドボスが期間限定で襲来! |
レイドボス撃破でレア素材や限定SSRドールを手に入れるチャンス! |
他のプレイヤーと協力してレイドボスを撃破しよう! |
4Gamer:
あのバトルシステムでPvPというと,どんな感じになるのでしょう。リアルタイムの対戦ですか。
河野氏:
リアルタイムは,さすがに無理でした。
潮田氏:
そもそもスワイプ操作を送信すること自体が簡単ではないですから。
河野氏:
とは言っても,ボタンを押して結果を見るだけでは味気ないですから,一工夫してあります。まだ仕様が確定していないので,これ以上はあまりお話しできないんですが……。
潮田氏:
通常のバトルよりはシンプルな作りなんですよ。もっと気軽に遊べるような。
河野氏:
PvPのシステムは,通常のバトルシステムとはまた違った遊びとして用意すると表現したほうがいいかもしれません。育てたドールや武器を,ほかのプレイヤーに誇示できるような要素になる予定です。
4Gamer:
ストーリーの5話はいつ頃になりそうでしょう。
潮田氏:
2015年5月中旬頃を予定しています。その後は毎月ペースで1話更新できればと思っていますので,それまでドールや武器をコツコツ育てつつ,ストーリーを進めてください。
4Gamer:
そのほか,今後の予定で公開できることはありますか。
潮田氏:
現状,枠だけが用意されているアクセサリーも実装する予定です。
4Gamer:
アクセサリーは,素材から製作するのでしょうか。
潮田氏:
いえ,違います。そこもクラフトにしてしまうと,やることが多くなりすぎてしまいますから。
河野氏:
まだ確定ではないのですが,アクセサリーを装備するとパラメータが上がったり,スキルが付いたりするなど,もう1段階ドールを強くするものとして用意します。
潮田氏:
そこまで実装されると,初期の構想にあった内容が一通り揃うことになるんです。
4Gamer:
やることが多いゲームだけに,プレイヤーがやれることを段階的に増やしていくと。
潮田氏:
そういうことです。またアクセサリーが実装される頃には,嫌らしいことをしてくる敵を河野さんが用意するんじゃないかと(笑)。きっとコアなお客様も,納得していただけるんじゃないでしょうか。
河野氏:
あとは召喚獣イベントのような,新しい遊びも導入します。ちなみに召喚獣イベントでは,レアボス出現率の高い「たしかな気配」というクエストを探すという遊びを用意しているのですが,今後のイベントでもそういった新たな工夫を加えていきます。
4Gamer:
プロモーション展開はいかがでしょう。
4月22日に,CD「アルカディアの蒼き巫女 オリジナル・サウンドトラック」をリリースします(関連記事)。このCDには,KOKIAさんが歌う主題歌「Spirits」や,作曲家の耀火さん,スクウェア・エニックスの水田直志が手がけた楽曲が収録されます。
初回生産分には,KOKIAさんをモデルにしたドール「SR 歌姫ケイア」の特典コードが封入されていますので,よろしければぜひ手に入れてください。
4Gamer:
ゲームのサービスイン直後にサントラをリリースするというのも,あまり例のない試みですよね。
潮田氏:
僕がゲームの世界観を考えたとき,真っ先に浮かんだのがKOKIAさんの歌だったんです。そうやって説明したところ,KOKIAさんが本当に素晴らしい主題歌に仕上げてくださって。水田と耀火さんが手がけた楽曲も,僕の期待を大きく超える仕上がりですから,ぜひ皆さんに聴いていただきたいと。
また「Spirits」は,3月18日に発売されるKOKIAさんのアルバム「I Found You」の初回限定版にも収録されています。さらにSR武器の特典コードも封入されていますので,こちらもよろしければぜひ。
4Gamer:
他タイトルとのコラボレーションなどはどうでしょう。
今のところ,実現に向けて動いているものはありません。もちろん,今後サービスを続けていく上では,スクウェア・エニックスの各タイトルを含めて,いろいろ検討していくことになるでしょう。
4Gamer:
期待が高まります。それでは「アルカディアの蒼き巫女」に興味を持った人に向けて,メッセージをお願いします。
潮田氏:
現状,多くのお客様にゲームの世界観やメインシステムを評価していただき,非常に感謝しています。今後のアップデートでは,どんどんコンテンツを追加していきますので,もっと楽しくなっていきますし,お客様の声によって改善もしていきます。引き続き,「アルカディアの蒼き巫女」をよろしくお願いします。
現在はバランス調整などでゲームが変わっていく状況ではありますが,どんどん面白くなっているのは間違いないです。僕自身は歯応えのあるコンテンツにも力を入れたいと考えていますので,コアなお客様にはぜひ期待してほしいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「アルカディアの蒼き巫女」公式サイト
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