インタビュー
「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」で,伝説のメサイヤブランドの復活を狙うエクストリームのプロデューサーに,これからのプランを聞いた
「ラングリッサー リインカーネーション-転生-」公式サイト
この新生ラングリッサーと共に注目が集まっているのが,ゲームブランドである「メサイヤゲームス」だ。日本コンピュータシステム(以下,NCS)のゲームブランドだったメサイヤは,「ラングリッサー」シリーズをはじめ,「エルスリード」「超兄貴」「改造町人シュビビンマン」「重装機兵レイノス」など,オールドゲーマーには懐かしい個性的な作品を次々に送り出してきたのだが,やがてゲーム市場から撤退してしまう。
ゲームの内容については7月4日に掲載した記事に詳しいので,ぜひ参照してほしいが,今回はエクストリームで本作のプロデューサーを務める齋藤創志氏に,本作の開発秘話のほか,気になるメサイヤゲームスの今後の展開について聞いた。
往年のシミュレーションRPGが,高い戦略性はそのままで装いも新たに15年振りに登場。「ラングリッサー リインカーネーション-転生-」の魅力を紹介
メサイヤゲームスの家庭用第1弾となる
「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずはこの「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」を発売することになったきっかけから聞かせてください。
齋藤創志氏(以下,齋藤氏):
実は最初にあったのは本作の企画ではなく,メサイヤブランド復活のほうだったんです。弊社社長の佐藤(佐藤昌平氏)が,かつてメサイヤで事業部長に就いていたこともあって,いつの日かブランドを復活させたいとずっと考えていたんです。
4Gamer:
ブランドが立ち上がったのが,2014年4月でしたね。
齋藤氏:
4Gamer:
実をいうと,私もその一人でした。
齋藤氏:
ですよね(笑)。その反応を見て,そこまでファンに求められているのなら,PCゲームだけではなく,人気の高かった家庭用ゲームのラインナップもリリースしていきたいということになりました。そして,その第1弾として,メサイヤを代表するシリーズである「ラングリッサー」を選ばせてもらったわけです。
4Gamer:
そもそもメサイヤブランドというのは,エクストリームが権利を譲受するまで,どうなっていたんでしょうか。
齋藤氏:
4Gamer:
そしてついに権利を譲受されて,晴れて新作を出せるようになったと。
齋藤氏:
そうなんです! その第1弾となるタイトルは,どうしても「ラングリッサー」にしたかったんです。
4Gamer:
メサイヤブランドのラインナップとしては「重装機兵」シリーズや「超兄貴」などもありますが,そこで「ラングリッサー」を選んだ理由はなんでしょう。
齋藤氏:
「重装機兵」に関しては,ドラキューさんが今「重装機兵レイノス」を作っています。もちろん「重装機兵」シリーズも将来的にはメサイヤ ゲームスのラインナップに絡めていきたいと考えてはいますが,まずは弊社からのライセンスアウトという形で監修などに携わりながらも,発売はドラキューからとなります。
一方「超兄貴」は知名度は高いのですが,ブランドの第1弾として今のユーザーさんにアピールするには,内容もジャンルもニッチなので今回は見送りました。
4Gamer:
そう考えると,確かにシミュレーションRPGは,ジャンルとしては一番受け入れられそうなイメージがありますね。
齋藤氏:
はい。この「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」に関しては,タイトルの懐かしさに興味を持ってくれた人だけでなく,新しい層にも遊んでほしいという希望があります。シミュレーションRPGをプレイする世代は,今は小学校の高学年ぐらいからいますし,ハードにニンテンドー3DSを選んだのも,本作およびユーザーとの親和性が高いと考えたからです。
4Gamer:
3DSでシミュレーションRPGとなると,先頃,任天堂から「ファイアーエムブレム」の最新作も出ました。
齋藤氏:
あれはちょっとビックリしましたね(笑)。 実は1991年にメガドライブで「ラングリッサー」が出た半年ほど前に,ファミコン向けに「ファイアーエムブレム」が発売されていて,さらにスーパーファミコンの「デア ラングリッサー」のちょうど1年後に「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」なども発売されています。同じ時期にシミュレーションRPGとしてシリーズを続けてきたという意味で,おつきあいが長いんです。
ですから今回もすごく運命を感じていて,さらに8月には「スーパーロボット大戦BX」も発売されますし,ある意味,シミュレーションRPGが3DSユーザーにグッと浸透するいい機会だと思うんです。一時期ブームになったこともありますが,もう一度あの流れが来てほしいとも願っているんですよ。
4Gamer:
メサイヤのラインナップにも,シミュレーションRPGは多いですよね。
齋藤氏:
そうなんです。ファンタジー系のシミュレーションとしては「エルスリード」の三部作もありますし,シミュレーションRPGなら「ガイアの紋章」や「飛装騎兵カイザード」ですとか,マニアックなところではゲームギアの「ヘッドバスター」などもあります。もしこの機会にシミュレーションRPGが伸びるようなら,これらのタイトルもいつかは復活させたいと思っています。
新しいファンに「ラングリッサー」を伝える架け橋に
4Gamer:
新しい「ラングリッサー」について,もう少し詳しくお聞きしたいんですが,開発は内部でされているんですか。
はい。基本的には内部で開発しています。中には初期のラングリッサーシリーズを手がけていたプログラマーなどもいまして,当時からのスタッフも何人か関わっています。
またサウンドをプロデュースしてもらった岩垂徳行さんは,メサイヤ時代のメガドライブの「ジノーグ」のメインコンポーザーで,そのかたわらで初代ラングリッサーの曲を作っていたんですが,それが好評で,「ラングリッサーII」以降は一人で担当されるようになったんです。
岩垂さん自身,「ラングリッサー」シリーズにすごく思い入れがあり,今回も何曲かお願いしたんですが,わざわざ当時の音源や楽器を引っぱり出して作ってくれたそうです。PC-FX版の「デア ラングリッサーFX」の音源が入ったHDDを,当時使っていたPCから抜き出し,Windows 95が起動するPCをわざわざ購入したそうで,我々が考えもしなかったほど力を入れて作ってくれました。
4Gamer:
すごいですね。
齋藤氏:
作っているうちに楽しくなってしまったそうです。マスターギリギリまで「これ入れていいですか?」って新曲が届きましたからね。限定版には2枚組のサントラCDが付属するんですが,岩垂さんの曲が全曲入り切らず,残念ながら間引かせてもらったぐらいです。サントラのライナーも,岩垂さんが執筆しています。
4Gamer:
ちなみにビジュアル関連は,当時のうるし原智志さんではないんですね。
齋藤氏:
はい。今回ビジュアルはカイエダヒロシさんにお願いしました。スクウェア・エニックスさんの「超速変形ジャイロゼッター」などを手掛けた人です。
4Gamer:
シリーズを知るファンにとっては,なぜうるし原さんではないのか?という声も多いと思うのですが……。
確かにうるし原さんは「ラングリッサー」というシリーズに関して非常に大きな存在であり,我々としても,キャラクターデザインをどうするのかについて開発の初期段階から,かなり議論を重ねました。
本作は完全新作ということもあって,先ほどお話したとおり,新しい世代に「ラングリッサー」というゲームがあったことを伝えたいという思いがあったんです。過去の作品から,新たなファンに作品の存在を伝える架け橋になる作品にするために,最終的にゲームシステムは当時のまま,見た目は新しくするという方針に決まりました。
4Gamer:
ナンバリングではなく,サブタイトルが「リインカーネーション −転生−」なのも,そういったことが理由でしょうか。
齋藤氏:
そのとおりです。
4Gamer:
ゲームシステムは,継承しているわけですか。
齋藤氏:
そうです。「ラングリッサー」ならではの「兵種の三すくみ」や,傭兵を雇える「指揮官システム」もありますし,シナリオの分岐ももちろん用意しています。仲間キャラクターとの親密度や告白イベントによる固有のエンディングは,メインキャラクター29人全員に用意されていますので,やり込みという部分でもかなり充実しています。
傭兵ギルド |
傭兵リスト |
4Gamer:
ボリュームとしてはかなり大きそうですね。
齋藤氏:
はい。勢力が3つあって,さらにそれに属さない場合がありますから,それだけで4つのまったく展開の異なるルートが存在していて,それぞれにトゥルーエンドとアナザーエンドを用意しています。また先ほどの告白によるキャラクターごとのエンディングもありますから,ボリュームはかなりあると思います。
4Gamer:
分かりました。では最後にメサイヤブランドの今後の展望についてお聞かせいただけますか。
まずはこの「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」で,メサイヤブランドの作品が正式にリリースされることになります。その発売以降も,やりたいと考えていることはたくさんあるんですが,今のところはまだ何も決まっていない状況です。
4Gamer:
やりたいことというのは,やっぱりゼロからの新作ではなく,本作のように,メサイヤブランドを象徴するゲームがメインとなりそうですか。
齋藤氏:
それはそうなると思います。もし何か新作をやるとしても,例えば「超兄貴」の世界観を使った別のゲームですとか,メサイヤのベースは変えない作品が主軸になっていくでしょう。またメサイヤは昔と同様に,ぶっ飛んだことをやらないといけないブランドですから,ユーザーさんをアッと驚かせることを常にやっていきたいです。
4Gamer:
超「超兄貴」という感じですか。
齋藤氏:
出したいですね。エクストリームはメサイヤブランドを受け継ぎつつ,どこまで迫れるかは分かりませんが,できる限りNCSをリスペクトしたものを作っていきたいと思っています。今回の「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」を皮切りに,第2弾,第3弾と,さらに皆さんがワクワクするものを提供していきます。
4Gamer:
分かりました。今後のメサイヤゲームスにも期待しています。本日はありがとうございました。
「ラングリッサー リインカーネーション-転生-」公式サイト
筆者のようなアラフォー世代のゲーマーにとっては,メガドライブやPCエンジンの時代に非常に魅力的なソフトを提供してきたメサイヤブランドの復活は嬉しい限りだ。
昔のファンを意識しながらも,新たなファンを取り込もうとする意欲的な作品となったこの「ラングリッサー リインカーネーション −転生−」がどのように評価されるのか,そしてその次となるタイトルがいつ発表されるのか,引き続き注目していきたい。
- 関連タイトル:
ラングリッサー リインカーネーション-転生-
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