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[E3 2019]猿人の進化を描く大河ゲーム「Ancestors: The Humankind Odyssey」の開発者インタビュー。「全人類のルーツをみんなにプレイしてほしい」
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印刷2019/06/14 18:41

インタビュー

[E3 2019]猿人の進化を描く大河ゲーム「Ancestors: The Humankind Odyssey」の開発者インタビュー。「全人類のルーツをみんなにプレイしてほしい」

 Take-Two Interactive傘下のパブリッシャPrivate Divisionが2019年8月27日のリリースを予定している新作タイトル「Ancestors: The Humankind Odyssey」PC/PlayStation 4/Xbox One)。その開発を進めるPanache Digital Gamesのパトリス・デジーレ(Patrice Désilets)氏に話を聞く機会を得た。

アサシンクリードの生みの親として多くのゲーマーに知られるパトリス・デジーレ氏。「Ancestors: The Humankind Odyssey」はデジーレ氏の久々の新作だ
画像集 No.002のサムネイル画像 / [E3 2019]猿人の進化を描く大河ゲーム「Ancestors: The Humankind Odyssey」の開発者インタビュー。「全人類のルーツをみんなにプレイしてほしい」

「Ancestors: The Humankind Odyssey」公式サイト


 デジーレ氏は,Ubisoft Entertainment時代にディレクターとして携わった「Prince of Persia: The Sands of Time」(2003年)でキャラクターにパルクールアクションを導入し,4年の開発期間を費やしたといわれる「アサシン クリード」(2007年)をUbisoftの看板シリーズに仕立て上げた開発者だ。
 「アサシン クリード ブラザーフッド」を最後にUbisoftを退社したのち,紆余曲折を経て2014年にPanache Digital Gamesを設立。それから9年の歳月を経てリリースされる彼の新作が,「Ancestors: The Humankind Odyssey」というわけだ。

 「Ancestors: The Humankind Odyssey」はなんとも不思議なゲームで,人類の祖先をここまでシリアスに描いた作品は,これが初めてだろう。ジャングルで樹上生活を行っていた1000万年前から,現在の人類に近い直立歩行を行った200万年前のアウストラロピテクスまでの長い歴史を背景に,過酷な暮らしの中で自分の仲間を増やし,環境の変化や天敵と戦いながら子孫を残していくという。


 公開されたトレイラーなどから,デジーレ氏の作品には欠かせないパルクールが取り入れられたアクションになっていることは分かるが,果たして「Ancestors: The Humankind Odyssey」はどのような考えのもとに制作された作品なのだろうか? この機会に詳しく聞いてみた。


4Gamer
 あなたの作品は,いつも歴史がテーマになっていましたが,まさか1000万年前まで遡るとは。あまりにも意外な発想で,発表されたときは本当に驚きました。

パトリス・デジーレ氏(以下,デジーレ氏)
 それはどうも(笑)。パルクールで世界を動き回るというゲームシステムをベースに,わずか35人しかいないスタッフで何を作れるのか,というのが我々の挑戦でした。もちろん,ルネッサンス時代のパルクールアクションを作っても本家には太刀打ちできませんし,1万年前となると,キャラクターの中身は現代人とそれほど変わらない割に,使える道具が少ないなど制約が大きい。それなら,いっそのこと猿人から原人へ進化していく過程を,丸ごと表現しちゃえばどうだろうかと閃いたんです。あるとき,ビビッとね。

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4Gamer
 ゲームのモチーフになる時代が古く,しかも非常に長いので,どのようなゲームになるのか,想像し難いです。

デジーレ氏
 プレイヤーが1人のキャラクターをプレイして,その成長を追うというパーソナルな物語ではありません。グループのリーダーだけでなく,子供だったり長老だったりと,さまざまなキャラクターへいつでもスイッチできます。プレイヤーキャラクターが崖から落ちたり,猛獣に襲われて命を落とすこともありますが,その場合は,グループのほかのキャラクターを使ってゲームを続けていくしかありません。経験を残せば,次の世代がより良く生きていくのに役立ちます。個ではなく,グループとしての人類の先祖の生存をシミュレートしているわけです。ゲームの目的は,1000万年前から800万年の間,種を受け継いで進化させ,最後は「ルーシー」という化石が見つかっているアウストラロピテクスになることです。

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4Gamer
 つまり,子孫をできる限り増やしていけば良いということですか。

デジーレ氏
 それは,プレイヤーの選択によりますね。本作には,「食べる」「水を飲む」「寝る」という3つの基本要素があり,それによって行動原理が決まります。ジャングルの中には果物などがあって豊かですが,ジャングルにずっと留まっていると,やがて食料が尽きてしまいます。そのときに何をするのかといえば,これまで未知の領域だった土地に足を延ばし,食料を探し求めるのです。
 食料を入手するのが困難な状況では,グループの人数が多いほど不利になります。グループが小さければ食糧難を乗り切るのは容易ですが,そのぶん,子孫を残す前にいなくなり,種の存続が難しいという事態に陥りやすくなります。
 ちなみに,近縁種や同種のキャラクターがマップ点在しており,食料を分けるとか病気を治してあげるとか,彼らのニーズを満たすことで仲間に加えることもできます。

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4Gamer
 ミッションは,どのようなものになるのでしょうか。

デジーレ氏
 本作には,通常のゲームのようなミッションはありません。「食べる」「水を飲む」「寝る」という欲求が,キャラクターを突き動かすのです。ミニマップもなく,我々の先祖と同様,自分の体験をもとに周囲の環境を知る必要があります。

4Gamer
 でも,プレイヤーは成り行きを知っているわけですから,例えば,最初から樹上生活をやめて新天地に移動したりすれば話は早いのではないですか。

デジーレ氏
 それができるならね(笑)。まだ手つかずな大自然には急流や崖があり,倒すすべもない強暴な野生動物が跋扈しています。もし自分が800万年前に生きていたとして,住み慣れた森の生活をやめてサバンナに引っ越そうなんて考えたでしょうか?
 そうしたさまざまの,難しい決断を乗り越えていかなければならないのです。具体的に言うと,本作では「Fear」(恐怖)というシステムがあり,獰猛な生物に襲われたり,大きなケガを負ったりした場所に来ると,過去の記憶が蘇って恐怖心に襲われ,画面がにじんで周囲が見えづらくなってしまいます。

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4Gamer
 なるほど。

デジーレ氏
 その状態で川でも渡ろうものなら,ワニに食べられたり,濁流に飲まれたりしてしまうでしょう。必要な知恵を身につけたり,勇気をもって足を踏み出したときにのみ,彼らの生存と繁栄が約束されるのです。恐怖を克服する勇気は,ゲーム中のゲージの1つである「ドーパミン」を一定量獲得する必要があります。

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4Gamer
 だんだん,ゲームの進行が分かってきました。新しい土地では,見慣れないオブジェクトがあふれていると思いますが,そこにある食料を食べていいのか悪いのか判断できますか。

デジーレ氏
 見慣れない食べ物が腐っていたり,毒が入っていることもありますから,簡単ではありません。肉食にしても,ある程度,進化の過程を経ていないと当たってしまいますので,グループの誰かがそれを行って生き延びなければならない。肉の消化に適した酵素が子孫に受け継がれることが必要なのです。ですから,見慣れないものを食べて病気になり,さらにそれを生き延びたうえで子孫を残して,ようやく1つの進化を迎えるわけです。

4Gamer
 食料の獲得はグループ全員が行うのですか。

デジーレ氏
 見慣れないものを食べるとか,腹痛を緩和する薬草を見つけるとかは,プレイヤーキャラクターが行わなければなりません。ただ,採取や狩りの方法が分かれば,それを仲間に教えて,共同作業が行えます。

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4Gamer
 スキルはどのような進化になりますか。例えば,人類の先祖が火を使い始めたのも,すでに原人が登場していた50万年前ぐらいだということですが。

デジーレ氏
 ええ,最近の考古学的発見によれば,少なくとも300万年前から人は道具を使っていたそうですね。本作のスキルツリーは「Nervous」(神経)システムと呼ばれています。十分な経験を積んだプレイヤーキャラクターが就寝中,特定の身体能力が進化して,手に何かを握るとか,直立するとかが可能になる新たな神経系統がアンロックされます。学術的には,猿人やアウストラロピテクスなど,20種類以上に細かく分類されていますが,本作ではその中から6つを選んで,進化の道筋をたどっていくことになります。

公開済みの映像からキャプチャーした,「Fear」システムと「Nervous」システム。恐怖は「ドーパミン」を獲得することで克服できる
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4Gamer
 プレイヤーごとにプレイの内容が異なるものになりそうですね。他人のプレイを見ているだけでも楽しそうです。

デジーレ氏
 そうなるといいですね。このあいだ,夜ふけに自宅で本作をプレイしていたんですが,悩まされ続けていたヒョウをやっとのことで追いつめ,ヤリを何本か突き立てて弱った相手を,眺めのいい崖の縁で取り囲んだんです。そのとき,ちょうどゲーム中の太陽が遠方の地平線に登って,それがあまりにも美しかったので,「これが人類の夜明けだ!」とチームメンバーにも見てもらおうと後ろをキョロキョロしちゃったんです。そのときに,自宅でプレイしているのを思い出したんですけど(笑),でも本当に,みんなに見てもらいたい美しいシーンでした。

4Gamer
 見たかったですね。ところでマップはどれくらい広いのですか。

デジーレ氏
 54平方kmくらいです。馬もいませんし自動車もないですから,十分でしょう。中心から端に行くまで,パルクールがうまくて,幸運にも敵にまったく遭遇しないとしても,45分くらいかかるでしょうか。

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4Gamer
 公開されているトレイラーを見る限り,パルクールもかなり進化しているようですね。

デジーレ氏
 ええ。ジャングルで生活しているときは「パルクールが楽しい」と感じてもらえるでしょうね。高い木の上や崖から落ちても,空中で体勢を整えて方向を少しだけ変えられるので,操作の上手な人ならすごいトリックができるかもしれません。オフィスで操作がうまいスタッフのプレイを見ていると,自分が恥ずかしくなっちゃうほどなので,これも他人のプレイが楽しめる要素の1つになるかもしれない。

4Gamer
 プレイ時間はどれくらいを想定していますか。

デジーレ氏
 30時間から40時間ですが,プレイヤーがどれだけ早く進化するのかで大きく変わります。進化を早く達成すれば,それだけ早くアウストラロピテクスになれるのです。でも,どんなペースでもプレイできるゲームになっていますから,本音を言うと,少しでも多くの人にプレイしてもらいたいな。
 「Ancestors: The Humankind Odyssey」は日本を含む13か国の言語に対応しますが,それは「われわれ全人類のルーツをみんなにプレイしてほしい」という思いがあるからです。どのような奇跡の果てに今,ボクらがここに存在するのか,それを追体験してほしいのです。

4Gamer
 8月27日のリリースがますます楽しみになってきました。本日はありがとうございました。

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「Ancestors: The Humankind Odyssey」公式サイト

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