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[COMPUTEX]第2世代のThreadirpper,Vega,そしてEPYC。AMDが6月の台北で発表したことまとめ
- 第2世代Ryzen Threadripper:最大32コア64スレッド対応となることを発表,製品パッケージを披露,2018年第3四半期中の発売を予告
- 第2世代Vega:7nm世代のプロセス技術を採用して2018年下半期中の発売となることを予告,製品パッケージを披露,第2世代Radeon Instinctのメモリ容量が32GBに達することを発表
- 第2世代EPYC:「Zen 2」マイクロアーキテクチャ&7nm世代のプロセス技術を採用して2019年に市場投入することを予告,製品パッケージを披露
- Radeon RX Vega 56 Nano:PowerColorブランドがMini-ITXサイズのRadeon RX Vega 56カードを展開すると発表
- FreeSync:Xbox One Xを用いたFreeSyncのデモを披露
AMDの社長兼CEOであるLisa Su(リサ・スー)博士は冒頭の挨拶で,同社が2017年に市場投入したRyzenとRyzen Threadripper,EPYC,Radeon Vega,Radeon Instinctによって高性能コンピューティング市場におけるAMDの存在感が劇的に高まり,競合の市場戦略にすら影響を与えたことを笑顔で振り返り,「この勢いを緩めることなく2018年以降も魅力的な製品を投入していく」と決意表明を行っていた。
それを踏まえて,発表内容を振り返っていこう。
1.第2世代Threadripperは32C64TのモンスターCPUとして第3四半期に離陸
COMPUTEX TAIPEI 2018のAMDプレスカンファレンスにおける事実上の主役となるのが,第2世代Ryzen Threadripperである。
「Zen+」マイクロアーキテクチャに基づき,12nmプロセス技術を用いて製造される第2世代のRyzenプロセッサをCPUパッケージ上に4基搭載することで,HEDT(High-End DeskTop)市場向けCPUとして史上初の32コア64スレッド対応モデルとなる見込みだ。
発売時期はこれまでの「2018年後半」から「2018年第3四半期」とアップデートが入った。32コア64スレッド対応モデル以外のラインナップや,動作クロックなどのスペック,そして最も気になる価格も一切が明らかになっていないが,これらについては発売直前に公開することと,第1世代Ryzen Threadripperが第2世代モデルの登場以降も併売となることは発表されている。
AMDはこの第2世代Ryzen Threadripperと,Intelの現行最上位モデルとなる「Core i9-7980XE」とでレイトレーシングの性能を比較するデモを披露し,前者が大差で圧勝するさまを見せつけていた。
「Vega 7nm」は2018年下半期中に登場予定
さてWang氏は今後のGPUロードマップを示したが,実のところこれは,従来までと変わっていない。
次世代GPUである「Navi」(ナヴィ,開発コードネーム)の登場時期を示す時間軸は空欄のままで,2020年頃登場予定とされる次次世代GPUに至っては開発コードネームも明らかになっていない。
ただ,そこはCOMPUTEXのAMD。このまま終わることはなく,AMDが「Vega 7nm」と呼ぶ第2世代Vegaアーキテクチャでは,当初,GPGPU用途向けの「Radeon Instinct」のみで展開されることになることがまず明らかになった。
なお,AMDはそんな第2世代Radeon Instinctに関して仕様のごく一部を明らかにしており,それによると,
- GPUサーバーやグラフィックワークステーション向けの最適化
- Infinity FabricベースでGPU同士をつなぎ,通信する機能の搭載
- ハードウェア仮想化技術の搭載
- 深層学習向けの新命令セットの搭載
が入るという。
一方,「Compute Unit」数や動作クロックといった部分は明らかにならなかった。7nm世代の製造プロセス技術を採用することで得られるメリットは,第1世代Vegaに対して,
- トランジスタ密度が2倍になる
- 電力効率が2倍になる
- 性能が1.35倍になる
点にあるそうなので,今のところはこれらをヒントにするしかない。
Vega 7nmベースのRadeon Instinctは,2018年後半にリリース予定で,現在はパートナー各社へのサンプル出荷が始まっているタイミングという。
Vega 7nmはまずはRadeon Instinctブランドでの提供となる |
「搭載メモリは容量32GBのHBM2」は今回の新情報だ |
AMDはプレスカンファレンスで,Vega 7nmベースとなる第2世代Radeon Instinctの動作デモを行っている。
デモの内容は「オートバイが佇む3Dシーンを『Cinema 4D』からRadeon ProRenderでレイトレーシングレンダリングする」というもの。デモを担当したAMDのエンジニアは「レイトレーシングで広大なシーンにレイを投げる場合,メモリの性能がレンダリング速度に直結してくる。その意味において,32GBという容量のHBM2は非常に大きな意味を持つ」とアピールしていた。
adeon Instinctを使って行う,Radeon ProRenderによるレイトレーシングデモ |
一瞬でレンダリングが終了。演算性能の高さはもとより,HBM2の圧倒的なメモリバス帯域幅による恩恵も大きいようだ |
Zen 2ベースの第2世代EPYCは2019年に
本稿は時系列を無視して紹介しているが,実際の発表会で,「最後にもう1つ」として出てきたのが第2世代EPYCである。
第2世代EPYCについて語ったのはSu氏で,氏は「Zen 2」マイクロアーキテクチャを採用し,7nmプロセス技術を用いて製造されるエンタープライズ向けCPUが2019年に登場することを明らかにした。
Su氏によると,2018年下半期中にはパートナー各社へのサンプル出荷が始まるとのことだ。
Radeon RX Vega 56 NanoがPowerColorから登場
プレスカンファレンスでRadeon Gaming部門担当ジェネラルマネージャー兼副社長を務めるScott Herkelman(スコット・ハーケルマン)氏は,「Radeon RX Vega 56」搭載カードをMini-ITXサイズの約170mm長にまで小型化した「Radeon RX Vega 56 Nano」を,PowerColorブランドのTulが市場展開すると発表した。
詳細なスペックは別途Tulに取材する予定なので,動作クロックなど新情報があればあらためてお届けしたいと考えている。
なお,世界市場では本日発売だそうだが,日本市場における動向は今のところ明らかになっていない。
Xbox OneシリーズにおけるFreeSyncのデモを披露
また,かねてよりアップデートによってFreeSyncに対応することが予告されているXbox One Xで実際にFreeSyncを動作させるデモを披露している。
主要な発表は以上だ。
振り返ってみると,CPUラインナップの充実,そして製品開発サイクルの速さに対して,GPU側は速度がスローな印象を受ける。現在はRadeon RX Vegaシリーズがゲーマー向けのハイエンドという扱いだが,その下,ミドルクラス以下は依然として1世代前のPolaris世代だ。ウルトラハイエンドからエントリーまですべてGTX 10シリーズで揃えているGeForceと比べてしまうと,「遅れている」印象は拭えまい。
競合NVIDIAは,GeForce GTX 11シリーズを準備中とも噂されているだけに,GPU部門の奮闘にも期待したいところである。
AMD公式Webサイト
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