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[GDC 2017]広大なオープンワールドで描かれる「Horizon Zero Dawn」で使用された,意外と古風なストーリー構築法
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印刷2017/03/01 00:00

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[GDC 2017]広大なオープンワールドで描かれる「Horizon Zero Dawn」で使用された,意外と古風なストーリー構築法

Guerrilla Gamesのナレ―ティブプログラマー,ラシェック・スチェパンスキ氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / [GDC 2017]広大なオープンワールドで描かれる「Horizon Zero Dawn」で使用された,意外と古風なストーリー構築法
 GDC 2017のNarrative Summitにおいて,Guerrilla Gamesのゲームプレイプログラマー,ラシェック・スチェパンスキ(Leszek Szczepanski)氏が「Building Non-Linear Narratives in Horizon Zero Dawn」(Horizon Zero Dawnでノンリニアなストーリーを構築する)というセッションにて壇上に立ち,発売が迫るアクションRPG「Horizon Zero Dawn」のストーリー制作におけるプロセスを解説した。

 「Horizon Zero Dawn」は,地球外の侵略者により文明が崩壊し,原始的な生活を余儀なくされた人間を,恐竜のようなロボット達が監視しているという未来世界を舞台にしており,物語はその世界に生きる若きハンター,アーロイという女性を中心に描かれる。

 スチェパンスキ氏によると,ゲーム開発においては「ストーリーを書いて,そこにゲームプレイを投影していく」か,「ゲーマーにとってのチャレンジをプログラムして,それをストーリーで包み込む」という2つの手法が一般的だという。そもそも「Horizon Zero Dawn」と言えば,最初にキャラクターを制作してから,時代背景やゲームプレイを組み込んでいったと言われる作品だけあり,ゲームで用意された物語をゲームに落とし込んでいくのが難しかったらしい。

 広大なオープンワールドの世界でプレイする「Horizon Zero Dawn」向けのクエストシステムとして,最低限のルールというのは以下のようなものだった。

・ 一般的なタイプのクエストは簡単に素早く作成される
・ 複雑なタイプのクエストは,作成するのに複雑であってはならない
・ ノンリニア(非直線的)なストーリーにフォーカスする
・ ゲーム内のルールとナラティブに基礎となる共通点があること

画像集 No.002のサムネイル画像 / [GDC 2017]広大なオープンワールドで描かれる「Horizon Zero Dawn」で使用された,意外と古風なストーリー構築法

 ノンリニア型のストーリーを持つゲームは,断続的にステップをこなしていくことで表現されていくというが,スチェパンスキ氏は「Horizon Zero Dawn」で,スクリプトを多用する代わりに「確率空間」(Probability Space),そして「グラフ理論」(Graph Theory)という数学的概念を利用していると語る。
 この確率空間やグラフ理論については深く踏み込まれなかったが,スチェパンスキ氏は「Guerrilla Gamesの脚本担当者やデザイナーに説明してもピンとこないので,そこで思いついた方法があるのです」と説明したのが,アメリカでは「ポストイット」という商標名で広く認知されている「付箋」を利用して,クエストを構築していくという意外なほど古風でアナログな仕組みだったのだ。

「Horizon Zero Dawn」に用意されたクエストは150種類。もちろん,それぞれに複雑な“選択”と“結果”が用意されることになる
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 これを,スチェパンスキ氏は「クエスト・グラフ」と呼んでいたが,要するに特定のシーンにおいて,クエスト内でできることとプレイヤーの選択や結果を,付箋を利用して可視化させることによって,複数の関係者がイメージしやすくなるというものだ。もともと,映画や小説のような,長丁場なストーリーの制作においては頻繁に利用されているシステムではあるが,「Horizon Zero Dawn」のような,ゲーム業界では最先端とも言える新作が,こうしたクエストの作り方に回帰しているというのは面白い。

よりプレイヤーが自由にクエストを選べる「Relaxed」と,ゲームデザイナーの意思でコントロールされる「Strict」の2つの系統に分かれるというスチェパンスキ氏。「Horizon Zero Dawn」は,オープンワールドでありながら「Skyrim」よりも「Strict」な形のクエストシステムになるという
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 つまり,「Horizon Zero Dawn」は,1つ1つのクエストが積み重なるように構築されているのではなく,プレイヤーが何かを行う“ステップ”がグラフ化されたような形になっており,何かを見つけるとか,誰かと会話するといった小さなものを含める1つのステップをこなすことにより,次々と複数の可能性が生じていくことになる。
 このことにより,プレイヤーは直線的なストーリーを遊ばせられているという感覚に陥ることなく,何のルールもないように感じるオープンワールドの世界で間延びせずに,まるで自分がクエストを発生させているかのようなゲーム体験が楽しめるというわけだ。

クエストグラフを簡略化させたと思われるスライドだが,これだけでもプレイヤー個人によってストーリーの流れが大きく変化しそうなことは予測できる
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 もちろん,まだすべてが解決したわけではなく,例えばオープンワールドなゲーム世界においては,一度発生した変化は恒久的であるために,別のクエストの発生によって継続不可能になったクエストを進められなくなってしまうことも起こり得る。そのために,イベントを消し去るような仕組みが構築されることは多いものの,「Horizon Zero Dawn」のクエスト・グラフはゲームシステムの奥深くに根付いているために,そういう仕組みをサポートできないでいる状態だという。スチェパンスキ氏は「もう少しで解決できる」とコメントしていたので,ひょっとしたらローンチ後のパッチなどで解消される問題になるのかもしれない。

画像集 No.007のサムネイル画像 / [GDC 2017]広大なオープンワールドで描かれる「Horizon Zero Dawn」で使用された,意外と古風なストーリー構築法

 恐竜とロボットという,誰でもワクワクしてしまうような世界観だけでなく,そのゲームシステムから4K解像度への対応といった技術的な面まで見どころが多い「Horizon Zero Dawn」だが,ゲーマーの目にはそれほど触れられることのないクエストシステムにも,かなり冒険的な仕組みが採用されている。海外メディアのプレビュー評価も高く,多くのゲーマー達が心待ちにしているであろう本作だが,こうしたゲームシステムにもしっかりと注目しておきたい。

「Horizon Zero Dawn」公式サイト


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