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[NDC18]「MapleStory M」が配信時の大成功から落ち込んだワケとは。苦境に陥った原因と,その後の回復が語られた講演の模様をレポート
メイプルストーリーといえば,日本のオンラインゲーマーにも広く知られている作品であり,本家韓国での人気は言わずもがな。そんな有力IPのスマホ版となれば誰もが成功を疑わないだろう。しかし,満を持してリリースされたMapleStory Mは,一時は低迷するなど,厳しい状況にあったという。講演には,本作のディレクターを務めているチョイ・ウォンジュン氏が登壇し,その原因や,持ち直しにつながった解決策などを語った。
チョイ氏はまず開発の初期を振り返り,当時の状況を説明した。4Gamer読者ならご存じの方もいるだろうが,そもそもMapleStory Mは,メイプルストーリーのIPを使った初のスマホアプリではない。2015年8月に「メイプルストーリーポケット」(iOS / Android)がリリースされたが,残念ながら2017年1月に日本版のサービスが終了している(関連記事1,2)。韓国におけるメイプルファンにとっても,メイプルストーリーポケットで蓄積した疲労度は大きく,MapleStory Mも「もう飽きたよ」と言われる可能性が高かったという。
そんな状況でMapleStory Mの開発中に重要視されたのは,長きにわたって培われてきた原作の膨大な世界観を,スマホ上で再現すること。まず原作の可愛らしいピクセルデザインのグラフィックスを維持すべく,スマホアプリに最適化かつ完璧に表現された。以下のスライド写真で見比べてみてほしい。
メイプルストーリーのプレイヤーが期待する要素は,グラフィックスの見た目だけでなく,パーティプレイやチャットを通じて一緒に遊ぶという楽しさも含まれる。原作と変わらないMMO体験を味わってもらうことがMapleStory Mの開発目標で,従来のメイプルストーリーIPを活用したスマホアプリと大きく異なる点でもあったとチョイ氏は語った。
そういった経緯で開発されたMapleStory M。ローンチ当初,韓国スマホゲーム市場における反応は爆発的だった。ダウンロード数は配信から3日間で100万以上,1週間で200万を達成し,App StoreとGoogle Playの両方であっという間にトップへと躍り出た。
しかし,この大成功は長続きしなかった。チョイ氏は「たぶん驚かれると思います」と前置きしつつ,ローンチから2か月間のDAU(Daily Active Users,1日あたりのサービス利用者数)の推移が分かるグラフを公開した。
グラフのとおり,MapleStory Mは,ローンチ直後とローンチから1か月後でDAUが大きく低下する事態に陥った。続いて売上のグラフも公開された。
売上の推移もDAUとほぼ変わらない形となっている。一時的に上昇することはあったが,ユーザートラフィックスの減少が売上の低下にもつながったとチョイ氏は説明した。
ローンチ直後に爆発的な集客があったにも関わらず,なぜこのような結果を招いたのか。さまざまな方向から原因を探ったところ,開発サイドに大きな誤りがあったという。
そもそもチョイ氏らは,メイプルストーリーをスマホに移植することが成功の方程式になると考えていたが,プレイヤーが求めていたものは「スマホでも体験できる原作の14年間」だった。一見些細なことに思えるが,両者の認識の隔たりは非常に大きかったそうだ。そこで原作と同じようなライブサービス(運営)を行い,安定的な戦略を駆使することがゲームの成否を決めるという結論にたどり着いたとチョイ氏は語った。
2017年4月まで下落の一途をたどったMapleStory Mだが,同年5月にDAUと売上が回復の兆しを見せる。チョイ氏いわく,原作IPに対する理解度をベースにキャラクターの大々的なリニューアルを行い,プレイヤーの期待を満たすアップデートを実施したのが,この5月にあたるとのこと。アップデートの効果が減っていく6月にはいっても下落の幅を最小限に抑えられたという。
続くアップデートで自動戦闘システムおよびパーティプレイの改変を行い,KPI(Key Performance Indicator,重要業績評価指標)は現在約400%にまで向上,ダウンロード数は600万を記録したそうだ。このほか原作とのコラボレーションを積極的に実施したこともKPIの回復につながったという。
チョイ氏によると,1日に数十のゲームがリリースされる中,持ち直せる期間は短く,リターンユーザーの回復は非常に困難で,結局のところ運営の改善を早く進めることが重要だという。また,IPを活用したゲームの場合,単にIPを使えばよいのではなく,理解度が大切であり,どれほどオリジナルに溶け込んでいる戦略をとれるかが要になるという。
ちなみに新規ユーザーとリターンユーザーの比率は「1:3〜5」とのことで,リターンユーザー層が大きな割合を占めている。
最後にチョイ氏は,韓国におけるMapleStory Mのサービスをリードして蓄積した運営ノウハウを,グローバルサービスに反映できるようにきちんと構築していきたいと述べて,講演を締めくくった。日本版のサービスに関しては言及されなかったが,グローバルサービスに向けて準備が進められていることは確かなようだ。
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