連載
結のほえほえゲーム演説:第134回「ゲームアーカイブスを越えてゆけ」
今年の夏,PlayStation StoreでPlayStation 3,PlayStation Vitaのデジタルコンテンツの購入ができなくなるという発表が,2021年3月30日にありました。また,PSPで一部可能だった購入機能も終了となるそうです。なお,ダウンロード版のゲームやビデオの新規購入はできなくなりますが,購入済みであればその後も再ダウンロードができるとのこと(関連記事)。
つまり,PlayStation 3,PlayStation Vita,PSPで楽しめた初代PlayStationのゲームアーカイブスや,PlayStation Vitaで楽しめたPSPタイトルのゲームアーカイブスを新たに購入するなら,この夏までがラストチャンスかもしれません!
なんせゲームアーカイブスは名作の宝庫。時代と共に消えていくのを黙って見ているわけにはいきません。後世に語り継ぎたいタイトルがたくさんあるんです。
そこで今回は,ゲームアーカイブスで遊べる私のオススメタイトルをまとめて紹介していきます。
「幻想水滸伝II」
108人の仲間を集め,戦争を戦い抜くRPG。騎士,行政官,修行僧,鍛冶屋,外交官,音楽団,傭兵,踊り子,商人,忍者,貴族,学園講師,医者……。それぞれの職業や個性もバラバラで,次はどんな仲間と出会えるのかずっとワクワクします。戦争システムや料理システムなど,ゲーム性が幅広く,どれも何周もできるくらい面白いです。主人公と幼なじみのストーリーは,RPG史上に名を残す名ドラマ。私は学生時代,ボロボロに泣きながらプレイしました。
「リンダキューブ アゲイン」
「俺の屍を越えてゆけ」でおなじみ,桝田省治さんが手がけるRPG。予言によって現れた巨大な箱舟に,男女1名ずつの乗組員と,多くの動物達をつがいで乗せ,世界が滅亡する前に飛び立つ……という目標のために,不気味な動物を捕獲していきます。多くの動物は,換金したり,加工して肉や装備品にしたり,ステータス強化に使ったりと,利用し放題。そこらじゅうからインモラルな雰囲気がプンプンする本作。ぜひ味わってみてください。
「サガ フロンティア2」
小林智美さんの描く魅力的なキャラクターと,水彩画風の2Dマップの美しさはまさに芸術。「サガ」シリーズの魅力の一つには「行間を想像する楽しさ」があると思うのですが,サガフロ2はまさにその代表格でしょう。ゲームにとっては空白の時間でも,時系列の前と後では人間関係や場の空気がほんの少し変わっていることも多く,想像をかきたてられるシーンばかりです。複雑な人間関係をひもといて少しずつ物語を感じることが,すなわち歴史を知ることにもなります。語りすぎない人間らしいセリフが多いのも魅力です。
「俺の屍を越えてゆけ」
そして最後に,私がゲームアーカイブスで最長時間プレイした作品がこちら。以前にもこの作品の魅力はたっぷり語らせていただきましたが,今一度,お付き合いください。
結のほえほえゲーム演説:第27回「『俺の屍を越えてゆけ』生死への向き合い方から推し神様との子作りまで」
1999年にPlayStationで発売された「俺の屍を越えてゆけ」は,結さんにとって数年に一度は必ずクリアしてしまうぐらいお気に入りの作品だそう。今回の「結のほえほえゲーム演説」では,結さんから見たこの作品の魅力を語っていきます。
本作の主人公一族は,敵の朱点童子にかけられた二つの呪いと共に生きることになります。その呪いとは,数年で死に至る「短命の呪い」と,人と交わって子孫を残すことができない「種絶の呪い」です。プレイヤーが手塩にかけて育てたキャラクターは,あっという間の数年で,志半ばのまま死を迎えます。寿命を迎える前に,主人公一族は神様と交わって子孫を残し,次のキャラクターへと能力を引き継ぐのです。ゲームにおける「各種システム」と「シナリオ」がシンクロする瞬間って,最高に美しいと思いませんか?
一族のキャラクターが死ぬのって,たとえ何周しても,どんなに覚悟していてもショックなものなんですよ。一族の生き様と死に様を,繰り返し何度も見届けることになります。二度と同じキャラクターには会えません。何周しても,毎回違う一族に出会って,愛して,泣いてしまうんです。誰よりも頼りになるほど強く育ったキャラクターの健康度が落ちていることに気付いた瞬間から,別れの足音は迫ってきます。強い敵を倒すため,最期まで命をかけて戦いながら,徐々に弱っていく姿を見ているうちに,罪悪感に駆られるように……。
私が「ゲーム」という存在を最も愛おしいと思う瞬間は,「効率」よりも「自分の心」を優先させたくなったときです。本当は戦場に出したほうが効率的なんだよなぁと思いつつ,少しでも長生きしてほしいという願いが勝ったりするんです。一族のキャラクターは全員出会った瞬間から,すぐにお別れすることが分かり切っているのに。なぜか愛着を抱いてしまうんですよね。
キャラクターが死ぬ最期の瞬間,一言だけ遺言を残します。なんと私たちプレイヤーは,その瞬間に初めてキャラクターの声を聴くのです。生まれたときから知ることができるのは,キャラクターの容姿と,たった一言のプロフィール(趣味や癖など)のみ。けれど,最期の一言を聴いた瞬間,このキャラクターがどんな人だったのか,ブワッと想像が広がり,グッと胸に沁みるんです。
こんな声だったのね,こんなしゃべり方だったのね,こんな言葉を遺すのね……。
あどけない顔立ちなのに,渋い声のしっかり者だったのね。
強面だけど,優しくて甘えん坊だったのね。
死に対して覚悟ができている人も,未練を口にする人も。最期の瞬間にパーソナリティが垣間見えるのです。初めて聴いたはずの死に際の一言だけで生き様を表現するなんて。なんと恐ろしいゲームでしょうか。プレイヤーの愛着が最高潮に達した瞬間に,別れなければなりません。行き場のない切なさを抱えながら,生き残りの一族と,再び戦場に向かわねばならないのです。
現実の世界でも,生きていくうえで,身近な人や大事な人の死を乗り越えなければならないときって,ほぼ必ず訪れると思うんです。生と死に向き合い,どんなことがあっても前を向かねばならない。そんなことを本作から教わったような気がします。
この先の人生,どれだけ時が経っても,この作品達に触れるたび,心を動かされることは分かり切っています。何十年先でも誰かが興味を持ったとき,ゲームそのものが入手困難になっていては悲しいです。願わくば皆さんの所持率が高い現行ハードでも,これらの作品をプレイできたら……。たとえ私がどんな時代に生きていても,きっと心奪われたに違いない名作達ですから。
最近プレイしているゲーム(2021/4/17)
Steam:「Among Us」
Nintendo Switch:「リーガルダンジョン」
PC:「インペリアル サガ エクリプス」
iOS:「ロマンシング サガ リ・ユニバース」
iOS:「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」
■■結(女優・タレント)■■
女優・タレントとして活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ,数多くのゲーム番組でMCを務め,イトキチ(糸吉)の愛称で親しまれている。
公式サイト:http://yui-monogatari.com/
公式Twitter:https://twitter.com/xxxjyururixxx
ニコニコチャンネル「結チャンネル」:http://ch.nicovideo.jp/yuichannel
YouTubeチャンネル「結ちゅーぶ!」:https://www.youtube.com/channel/UCNwmczTygyPzEnouz9tR_Fg/
(C)Sony Interactive Entertainment Inc.
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