インタビュー
第2回を迎えた「全国高校eスポーツ選手権」プロデューサーインタビュー。キーワードは「eスポーツを文化にする」
2回めとなる今大会では,1回めよりも参加チームが大幅に増え,順調にその規模を増している。全国の高校にはeスポーツをテーマにしたクラブも創設され,徐々に増えている状況だ。
大会終了後,「全国高校eスポーツ選手権」を主催する毎日新聞社の清野悠介氏と,共催のサードウェーブの佐藤和昭氏に話を聞いた。2人とも今大会の現場を仕切る人物だ。
どういう想いを持って取り組んでいるのか,といったあたりを聞いてきたので,ぜひ目を通してほしい。
「第2回全国高校eスポーツ選手権」リーグ・オブ・レジェンド部門 決勝大会レポート。優勝の栄冠を手にしたのは,角川ドワンゴ学園 N高等学校
2019年12月29日に「第2回全国高校eスポーツ選手権」の「リーグ・オブ・レジェンド」部門の決勝大会が東京・恵比寿のEBIS303で開催された。高校生たちの熱い戦いの模様をお届けしよう。
「第2回全国高校eスポーツ選手権」ロケットリーグ部門 決勝大会をレポート。ラストに劇的なドラマが待ち受けていた年末の戦い
現役高校生によるeスポーツ大会「第2回全国高校eスポーツ選手権」の「ロケットリーグ」部門の決勝大会の模様をお届け。全国から106チームがエントリーした大会の決勝戦は,ラストに劇的なドラマが待ち受けていた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。まずは,自己紹介をお願いします。
佐藤和昭氏:(以下,佐藤氏)
サードウェーブ株式会社の佐藤和昭と申します。社内では,eスポーツ分野でのプロモーション活動を業務としています。
今大会では現場の責任者として,同じく主催である毎日新聞社さんとの意見交換を繰り返し,その舵を切っていくという役割を担っていました。
清野悠介氏:(以下,清野氏)
毎日新聞社の清野と申します。社内では,スポーツ事業部というところに所属して,eスポーツだけではなく,野球やサッカー,ラグビーやソフトボールなど,あらゆるスポーツに関するイベントの運営を担当しています。
この大会ではプロデューサーとして,毎日新聞社側の現場のとりまとめを担当していました。
4Gamer:
毎日新聞社の中で,清野さんが今大会を担当することになったのにはどういった経緯があったのでしょう。もともとeスポーツに興味があったとか……?
清野氏:
そうですね。もともと関心がありました。
新聞社は,スポーツや音楽,美術などのあり方を長年報道し続けてきたわけですが,それは日本のさまざまな「文化の歴史」を積み上げ,創ってきた活動だと思うんですよ。
そして今,世界には「eスポーツ」という新しい文化が生まれ,育ちつつあります。この文化をもっと多くの人に知ってもらい,裾野を広げていくことのお手伝いができればいいなと思っています。
4Gamer:
日本のスポーツの歴史を長く見守ってきた新聞社の方が,そう言ってくださるのは非常に心強いです。
4Gamer:
佐藤さんは両社の提案のすり合わせが仕事だったとおっしゃっていましたが,何か苦労した点などはありましたか。
清野氏:
苦労は小さなものから大きなものまで,山ほどありました。ただ,両社に共通していたのは「選手ファーストである」という点です。選手に注目してもらいたいというのが軸としてあったので,選手ひとりひとりにカメラをつけて,試合中にLEDパネルに映し出したりだとか,そういうことを行いました。
ただ,さまざまなアイディアの中には予算の都合上実現が難しいものもあったので,その取捨選択に苦労しましたね。
4Gamer:
佐藤さんはいかがでしょう。
佐藤氏:
こちらとしては,大会に関して「わかりやすく伝えたい」という想いが強くありました。ゲームの専門用語は,プレイしない人にとってはわかりづらいじゃないですか。文化として広く普及させていくためには,そういった言葉をわかりやすくしていく必要があるのかなと。
清野氏:
「どこまでかみ砕いて表現するか」というのは,実況・解説の方とかなり相談しましたね。
4Gamer:
毎日新聞社というと,甲子園の「春のセンバツ」のイメージがあります。そういった,スポーツ分野での高校生大会に関するノウハウが今大会にも活きているのでしょうか。
清野氏:
そうですね。弊社は「春のセンバツ」以外にも高校ラグビーなど,さまざまな高校生向けのイベントを開催しているので,その経験が活きていると思います。
「eスポーツ」のすそ野を広げて,多くの人に楽しんでもらうためには,まず,見てわかりやすいものにしていかなければなりません。ですから,全国高校eスポーツ選手権では「3倍わかりやすく」という目標を掲げています。
4Gamer:
実際,今大会ではゲームのルール説明やチャンピオンの紹介が,試合の間に行われていました。こういった取り組みはゲームの大会としてはかなり珍しいと思います。
自分の近くに座っていた,選手のご両親であろう年配の方が,その説明を熱心に聞き入っていたのが印象的でした。
4Gamer:
サードウェーブは,「eスポーツ部 発足支援プログラム(※)」という形で大会の支援を行っています。こういった活動の手ごたえはどう感じられていますか。
※全国高校eスポーツ選手権に参加する学校に対して,ゲーミングPCを最大5台(デスクトップ3台,ノートPC2台)3年間無償で貸し出す制度
佐藤氏:
現時点(※取材時)で111校の申し込みがありまして,今大会に関しても100校近くがこの支援プログラムを利用してくれています。手ごたえは十分ですね。
大会全体の規模としても,第1回大会の参加校はロケットリーグ部門が49校(60チーム),LoL部門が80校(93チーム)だったのが,第2回ではロケットリーグ部門が84校(106チーム),LoL部門が85校(119チーム)と順調に増加しています。部活動としてeスポーツに取り組む学校が増えているのは嬉しい限りです。
4Gamer:
実際にその現場を目の当たりにしてどう感じましたか。
清野氏:
第1回大会も凄かったのですが,今大会は両部門ともドラマチックな試合ばかりでしたね。
佐藤氏:
本当に劇的で,素晴らしい試合を見せていただいたなと。今回の大会では「会場の一体感」というのを重要視して来場者と選手の近さなどに気を使ったのですが,あの盛り上がりを見て,苦労した甲斐があったなと感じました。
4Gamer:
まだ第2回が終わったばかりでこんなことを聞くのも恐縮ですが,第3回はどういう大会にしていきたいですか。
清野氏:
「eスポーツを文化にする」という意味ではまだまだ足りていない部分があると思うので,そこを改善していきたいです。また,新聞社としては報道の面にも力を入れていきたいですね。
佐藤氏:
選手ファーストという軸を崩さず,よりよい大会にしていきたいですね。選手たちに,「この大会に出てよかったね」といってもらえるような大会が理想です。
4Gamer:
では最後に,今回の大会を見てくれた方たちにメッセージをお願いします。
清野氏:
大会を見てくださった方々に,高校生たちのまっすぐで熱心な姿がお伝えできたのではないかと思っています。この大会はまだまだ続けていくつもりなので,成長していく姿を一緒に見守っていただければ幸いです。
また,今大会は,部活動とゲームを通じて,友だちとのつながりを深めたり,よりよい高校生活を送る手助けとなるのではないかと思います。出場を考えている人は,ぜひその一歩を踏み出してみてください。
佐藤氏:
今回の大会は,第1回大会を見て「まだまだ初心者ですけど,参加してみます」といって参加してくれた人がすごく多かったんですよ。
友達と一緒に,大会という目標に向かって挑戦していくというのは,学生時代にしか味わえない部活動のだいご味だと思うので,物怖じせず,ぜひ参加してみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「全国高校eスポーツ選手権」公式サイト
- 関連タイトル:
ロケットリーグ
- 関連タイトル:
リーグ・オブ・レジェンド
- この記事のURL:
Rocket League, the logo, and other trademarks are trademarks of Psyonix, Inc and may not be used without permission. (C)2015 Psyonix, Inc. Back to the Future is a trademark and copyright of Universal Studios and U-Drive Joint Venture. Licensed by Universal Studios Licensing LLC. All Rights Reserved.
(C)Riot Games Inc. All rights reserved. League of Legends and Riot games Inc. are trademarks or registered trademarks of Riot Games, Inc.