レビュー
レースシムとして本格派ながら,それほどハードルは高くない
PROJECT CARS PERFECT EDITION
以前,ステアリングコントローラのレビューにおけるテストでも採用しているが,現在のレースシミュレータを語るうえでは「デファクトスタンダード」と呼べる位置づけであり,日本でも多数のレースゲームファンがプレイしていることだろう。
そんな「Project CARS」のリリースから約1年,すべてのダウンロードコンテンツ(50車種と4コースが追加)があらかじめ収録された「PROJECT CARS PERFECT EDITION」がバンダイナムコエンターテインメントから2016年6月9日に発売となった。欧米では「Project CARS GAME OF THE YEAR EDITION」としてリリースされた本作には,500点以上にも及ぶ改良や改善が施されているという。
もちろん,ゲーム中のテキストは日本語ローカライズされており,英語は苦手という人も安心だ。レースゲームにおいてローカライズはあまり重要でないことが多いが,本作では意外と日本語化のありがたさを感じられる部分が多い。
すでに世界的に高い評価を受けている作品ではあるが,本格的なレースシミュレータとしての魅力をあらためてお伝えしよう。
「PROJECT CARS PERFECT EDITION」公式サイト
忠実に再現された世界の有名サーキットを走り回れる喜び
レースの舞台となるのは,世界各国の有名サーキットをはじめ,一般道を利用したストリートコースや架空コースを含む,全31か所のロケーション/計101コースレイアウトだ。
有名どころのサーキットを列挙するだけでも,イモラ,カタロニア,シルバーストン,スパ・フランコルシャン,ドニントン・パーク,ニュルブルクリンク,オートドローム,ブランズ・ハッチ,ホッケンハイムリンク,ラグナ・セカ,モンツァ,ワトキンスグレンなど。日本の実在サーキットは収録されていないものの,錚々たるラインナップとなっている。
それぞれのコースには,グランプリコース,フルコース,スプリントコースといったバリエーション違いも用意されているので,なかなかのボリュームだ。サーキットの再現度については,下の比較映像を見れば分かるとおり,ほぼ完璧と呼べるレベルだろう。実際のレースのシミュレーションとして,プロレーサーがプレイするというのも頷ける話だ。
収録車種もかなり充実している。こちらも列挙してみると,アリエル,アストンマーティン,アウディ,BMW,ベントレー,キャデラック,ケータハム,フォード,ロータス,マツダ,マクラーレン,メルセデスベンツ,三菱,パガーニ,ラディカル,ルノー,ルーフ,トヨタといった有名メーカーの実在車種が登場。これに架空のものも含めた全125車種となっている。
ただ,やはり気になってしまうのは日本車が極端に少ない点だ。マツダ MX-5 Radbul,三菱 ランサーエボリューション IV FQ360 / VI TME / X FQ400,トヨタ 86 / GT-86 / GT-86 Rocket Bunny GT Edition,TS040 Hybridの8車種というのは寂しい。
リアルに再現された日本のサーキットを,日本車で思う存分走りたいという気持ちは筆者だけのものではないだろう。
ちなみに,すべての車種において,ボディの形状から細部に至るまでモデリングは惚れ惚れする出来映えだ。マイガレージでは自由な角度から車を眺められるうえ,フィルタエフェクトをかけたり,絞りやぼかしを使ったりしてスクリーンショットを撮影できる。
もちろん,車内もしっかりと作り込まれているので,コクピットや車内の視点で眺めると思わずニヤリとしてしまう。いろいろな車種の内装を眺めるのもオススメだ。
レーシングドライバー人生を体験できる「キャリア」モード
シングルプレイ用モードは,さまざまなカテゴリのレースに参戦してドライバー人生を体験できる「キャリア」モードをはじめ,「ソロ」モードでは好きなコースや車種で手軽にドライブが楽しめる「クイックレースウィークエンド」,タイムを気にせずにじっくりと走れる「フリー走行」が用意されている。
また,世界中のプレイヤーと楽しめるマルチプレイには,最大16人同時参戦可能な「オンライン」モード,年間を通して定期開催されるレースイベントで競う「ドライバー・ネットワーク」(コミュニティイベント),好きなコースでラップタイムを競う「タイムトライアル」が選べる。
多くのレースゲームにおいては,最初に選べるコースや車種が限られており,ゲームプレイによって徐々にアンロックされていくシステムが一般的だが,本作では「キャリア」以外のゲームモードでは全コース/全車種が最初から開放されている。遊び要素が少ないとも言えるが,面倒な手順を踏まなくてもいいあたり,ガチなレースシミュレータといった感じで好印象だ。
シングルプレイの「キャリア」モードは,初心者向けのレーシングカートを扱う「ティア8」から,プロトタイプレーシングカーを扱う「ティア1」までの8カテゴリのうち,好きなティアでスタートできる。そのカテゴリに属するモータースポーツで成功を収めることで,ほかのカテゴリのチームからオファーが届くようになり,次のティアに進めるという流れだ。ただし,オファーを流して,そのまま同じティアで頑張り続けてもいい。
プレイヤーの目標としては,3つの「ヒストリックゴール」が設定されている。いずれもトップドライバーの証といえる内容だが,これらをすべて達成することがキャリアの「ゴール」となるだろう。
■ヒストリックゴール
- ゼロ・トゥ・ヒーロー……10シーズン以内にLMP1ワールドチャンピオンシップで優勝する(※ティア8から始める)
- チャンピオン防衛……3年連続でチャンピオンシップを防衛する(※ティア2以上)
- 三冠王……3つのモータースポーツ分野でチャンピオンシップを優勝する(※ティア3以上)
レースが終わると,チーム関係者やスポンサーからメールが届き,結果を伝えるニュースやファンからの投稿などをチェックできる。テキスト量が結構多いため,日本語非対応の「Project CARS」をプレイしていたときには,これらを読むことはほとんどなく,淡々とレースをこなしていた。
それが「PROJECT CARS PERFECT EDITION」では,さまざまな情報をきちんと理解できるようになり,ファンからのメッセージでは一喜一憂することも。選手生活の雰囲気を盛り上げるのに一役買っている要素が,ちゃんと楽しめるようになったのだ。
リアルな挙動を感じながらレーシングカーの醍醐味を味わう
レースシミュレータの要である「挙動」にも触れておこう。
冒頭で触れたとおり,本作ではそれぞれの車種の挙動特性がリアルに再現されている。さらにタイヤが路面を捉えるグリップ感,コーナーでのアンダーステア/オーバーステア時にグリップが抜ける感覚,急ハンドルやコントロールミスによる変化(乱れ)も実に自然だ。
また,自分好みの挙動特性にマシンセッティングを変更することもできる。そのうえ,レースゲームでは珍しいことに「物理シミュレーション」による挙動変化の設定も可能だ。徹底的にリアリティを求めたい人は調整してみるといいだろう。
なお,すべての項目はスライドバーによって,かなり細かく調整できる。それぞれの項目の説明も丁寧で,初心者でもハードルは高くないと思う。調整とテスト走行を繰り返しながら,セッティングを煮詰めていく楽しさも味わってほしい。
レースシミュレータとはいえ,アシスト機能の充実により,幅広い層のプレイヤーが楽しめるようになっている点も特筆すべきだろう。初回プレイ時に3つのカテゴリ(初心者/アマチュア/プロ)に応じたアシスト機能が設定されるので,あとはプレイしながら自分の腕や好みによって調整していくことになる。
アシスト項目は,ステアリングアシストやブレーキアシスト,アンチロックブレーキ,横滑り防止,トラクションコントロール(オン/オフ)となっている。また,リアリティに関するところでは,車のダメージを挙動に反映させるか,突発的なマシントラブルが発生するか,タイヤの摩耗や燃費を再現させるか,エンスト時の始動方法など,かなりマニアックなものまで設定できる。
コントローラ設定も細かく調整できるので,自分なりに煮詰めていけばゲームパッドでも快適に楽しめる。実際,マルチプレイのタイムトライアルでも,ゲームパッドで上位に食い込んでいる人がちらほら見られる。
もちろん,可能ならば,ステアリングコントローラを使ってプレイしてほしいところだ。直感的かつ微妙なコントロールが可能になることで,レースシミュレータの面白さは飛躍的に向上すると言い切れる。ちなみに,ステアリングコントローラの新製品への対応の早さも見逃せないポイントである。
繰り返しになるが,本作はレースシミュレータとして高水準でありながら,それほどハードルは高くなく,幅広い層のプレイヤーが楽しめるタイトルだ。リアルな挙動を筆頭に,路面の凹凸や縁石から伝わってくる振動,車種ごとに再現されたエンジン音はマニアをも満足させるだろう。
そして,美しく流れる風景,天候や時間帯の変化,光の反射,フロントウインドウに当たる雨の音。そのすべてがマッチして,まるでレーシングカーのコクピットに座っているかのような気分を演出してくれる。この醍醐味や楽しさ,そしてレースに勝利する喜びをなるべく多くのゲーマーと共有したい。
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