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Gメッセ群馬で開催された「Red Bull 5G 2021 FINALS」レポート。ジャンルを越えた強豪プレイヤーが集結,激闘を展開した
「日本のゲーミング界に翼をさずける」をテーマに掲げる本大会は,日本のeスポーツの強豪選手たちが,東チームと西チームに別れ「天下分け目の戦い」を繰り広げるというイベントだ。
前大会から5年ぶりとなる。今回は,以下の5ジャンル,5タイトルで競技が行われた。
・SPORTSジャンル 「eFootball 2022」
・RACINGジャンル 「グランツーリスモSPORT」
・FIGHTINGジャンル 「鉄拳7」
・PUZZLEジャンル 「ぷよぷよテトリス2」
・FREEジャンル 「雀魂-じゃんたま-」
戦いの幕開け。「鉄拳7」で激突
Red Bull 5Gは,事前に競技種目の順番が決まっていないことも特徴のひとつ。第1種目を選ぶのは前回優勝を逃したチームで,以後は競技に負けた側のチームが,次の種目を選ぶ権利を獲得する。
そこまでの通算成績が優勢であればチームの勢いを活かした「下剋上」「番狂わせ」を狙ったり,劣勢であればそれ以上差が広がらないように比較的堅い勝負が期待できる種目を選ぶなど,種目の順番選びでもゲーム的な駆け引きが生まれる仕組みになっている。
そして前回大会で破れた西チームが第1種目として選んだのは,FIGHTINGジャンル「鉄拳7」(PC / PS4 / Xbox One)だった。
西チームは2019年にTEKKEN World Tour 2019 Finalsで世界王者となったTHY所属のchikurin選手を擁しており,勝利が濃厚と思われる種目でまずは1勝を狙う形だ。
だが東チームに属するKAGEMARU選手は,2017年のMASTERCUP.9決勝戦で5人抜きを果たすという伝説を残している人物。西チームもけして安泰というわけではない。
勝負への期待が高まる中,ここで「How To Red Bull 5G」なるコーナーが始まり,試合の解説を担当するハメコ。氏が登場する。
相手を壁際まで追いつめて行う「壁コンボ」の威力の高さや,それにともなうプレッシャーの存在。技の空振りのスキに反撃する「スカ確」,前に出て相手に圧をかける「攻め」,相手の次の動きを読んで攻撃を置いておく「置き」の三すくみの関係。そしてレイジ状態の重要性など,「鉄拳7」の勝負の見どころを解説した。
ゲームをプレイしたことがない人にも,勝負の見どころを伝える工夫をしていることが本イベントの大きな特徴のひとつで,この「How To Red Bull 5G」のコーナーは各種目に設けられていた。
また試合中の選手の心拍数はモニタリングされ,勝負展開によって変化する心拍数が選手の状態を観客に伝えていた。
「鉄拳7」決勝のレギュレーションは,東チームと西チーム,それぞれ3人の選手による勝ち抜き戦。1ラウンド60秒,3ラウンド先取で1人勝ち抜きとなり,相手チーム全員を倒した側が優勝となる。
先鋒戦は西チーム,COOASGAMES所属のNOROMA選手のスティーブと,東チーム,うましか選手のニーナが激突。ラウンド1はNOROMA選手の手を読んでうましか選手が先制したものの,続くラウンド2から4までをNOROMA選手が連取。ほぼ危なげなく勝利したNOROMA選手は,次なる相手,東チーム中堅のVALX所属のG選手が操るボブを迎え撃つ。
G選手もラウンド1を先取して流れを変えるかに思えたが,以後はNOROMA選手のペース。終わってみれば3対1という結果となってしまった。
残るは大将のKAGEMARU選手だけとなった東チーム。注目のラウンド1はニーガンを使用するKAGEMARU選手が圧倒的不利な体力状況から,レイジドライブをからめた攻めで,いかにもニーガンらしい逆転勝利をもぎとる。
その後も勝負はほぼ互角の状態で進み,決着はファイナルラウンドへ。最後までわからない展開が続いたものの,残り16秒でNOROMA選手のレイジアーツが炸裂。わずかな差で試合を制し,勝利した。
チームメイトの魚群所属・ダブル選手と,THK所属・chikurin選手に試合をさせることなく,NOROMA選手の独壇場となった「鉄拳7」決勝。NOROMA選手はトロフィー代わりの高崎だるまに勝利の墨入れを行った。
第2種目は異色のFREEジャンル「雀魂」
そして破れた東チームが選んだ次なる種目は,FREEジャンル「雀魂-じゃんたま-」(PC / iOS / Android)。こちらの「How To Red Bull 5G」は,プロ雀士の多井隆晴氏が麻雀について解説。牌の種類やドラの概念などをユーモアたっぷりに伝えていた。
決勝のレギュレーションは各選手25000点持ちで半荘1回。親の連荘なし,順位点なしと,主にあがり点によって競われることとなる。
なお試合は2対2のチーム戦で行われるが,東チームは東家と西家,西チームは北家と南家という具合に,チームメイトが対面(向かい合わせ)に座る。実際に麻雀をよく打つ人や,「麻雀放浪記」や「アカギ」などの麻雀を扱った作品を知る人がイメージする「コンビ打ち」とは少々異なるチーム戦である。
いわゆる「通し」のサインを使ったり,卓の下で牌をやり取りする(!)イカサマは行えないが,チームメイトの手を読んで必要牌やあがり牌を捨てることは可能。味方からあがってもチームの点数が変わりないこともポイントのひとつだ。
そして試合が始まると,東一局から今回のチーム戦ならではの攻防が発生。西家のなぎさちゃーん選手が索子の染め手をこれ見よがしに匂わせると,チームメイトで親番の,しshishiの選手はこれに呼応するかように萬子の染め手へ移行。
西チームは安心して捨てられる牌が大幅に制限される苦しい展開となったが,北家のてらーなんす選手がなぎさちゃーん選手の手から溢れた五索であがり,タンヤオ赤ドラで2000点を獲得。東二局も,てらーなんす選手は西のみ1000点をあがり,西チームに勢いをつける。
そして東三局でも,てらーなんす選手は相手にとって読みにくい字牌の発と西の待ちでリーチをかける。が,どちらも生牌(まだ場に見えていない牌)のため,しshishiの選手が危険を察知,手の内に留めてあがりを防ぐ形になった。
そして東四局はそこまで我慢を続けてきた,しshishiの選手がリーチツモ裏ドラ1をあがり,東チームと西チームの点数はほぼ横並びになる。
その後,勝負が大きく動いたのは南二局。しshishiの選手がリーチピンフドラ1裏1,7700点をてらーなんす選手から直撃,ついに点数で逆転。
続く南三局で見せ場を作ったのは西チームのTAKERU0319選手。しshishiの選手が必要としていた牌・東を読み切ってきっちり手の内で止め,勝負をオーラスの南四局に持ち越した。西チームは東チームからの7700点以上の出あがり,あるいは親のてらーなんす選手が12000点以上の手をツモれば逆転という状況だ。
しかし南四局は流局となり,続く南四局1本場で,しshishiの選手のリーチになぎさちゃーん選手がなんと一発で振り込む。2人は同チームなのでチームの点数は変わらず,本大会のレギュレーションを活かした連携で試合を締めくくった。
こうしてFREEジャンル「雀魂-じゃんたま-」での東チームの勝利により,東西対決は1対1の振り出しに戻ることとなった。
第3種目「ぷよぷよテトリス2」。大会中盤は引き締まった攻防が続く
3つ目の種目として選ばれたのはPUZZLEジャンル「ぷよぷよテトリス2」(PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch)。試合のレギュレーションは各チームが「ぷよぷよ」と「テトリス」を同時に行うタッグマッチとなり,3本先取で1マッチ獲得,2マッチを先取したチームが勝利するというもの。
勝負の見どころとしては,テトリス担当のプレイヤーがいかに速攻を決められるか,ぷよぷよを担当するプレイヤーが大連鎖で大火力をたたき出せるかというところになる。
試合が始まると,まずは今季「ぷよぷよ」の大会で好成績を残すlive選手と,もちもちもちもち選手が組んだ西チームが仕掛け,東チームの「ぷよぷよ」担当・なしー選手に1ライン送り込む。返す刀でもちもちもちもち選手がテトリミノ(ブロック)を一掃するパーフェクトクリアを決め,あめみやたいよう選手を脱落させて勝利を決定付けた。この種目がいかに一瞬で勝負が決まるのかを示したような勝負展開だった。
しかし,あめみやたいよう選手となしー選手がそのまま黙っているはずもなく,両チームが2本ずつ獲得して迎えた最終戦。なしー選手が試合開始からまもなく,ぷよの全消しを成功させて一気に勝負を決め,まずは東チームが1マッチを先取した。
2マッチ目も序盤は交互に勝ち星を取り合う激戦となったものの,終わってみれば西チーム1勝,東チームは3勝。2マッチを連取した東チームが優勝を決めた。
解説を担当したセガの細山田氏の言葉を借りれば,「制作者側が想定したほぼ理論値のバトル」となった今回の試合。となれば,1回のぷよやテトリミノ置きミス,1回の全消しやパーフェクトクリアが勝負を決めてしまうのは当然かもしれない。全体でわずか6分強のスピード決着となった。
第4種目は「グランツーリスモSPORT」。チームで勝利を目指す
そして破れた西チーム側が指定した次なる種目はRACINGジャンル「グランツーリスモSPORT」。ここまで東チームは2種目を制しており,この種目も勝利すれば東西対決は東チームの勝利となる。西チームとしてはどうしても勝ちたい種目だ。
ただ西チームには「FIA グランツーリスモチャンピオンシップ」で三冠を達成した宮園拓真選手がいるだけに,決着を最終種目に持ち越せる可能性は高いと言える。
「グランツーリスモSPORT」決勝のレギュレーションは以下の通り。使用する車はRed Bull X2019 Competition。コースはレッドブル・リンクで,16周するレースを行う。スターティンググリッドは各チーム代表の予選タイムを比較して決定される。1位でゴールすれば6点,2位は5点,3位は4点,4位は3点,5位は2点,6位は1点獲得となり,チームの合計点で勝利が決定する。
なおレッドブル・リンクは,他車を追い抜いて順位を上げるのが難しいコース。スタート位置はかなり重要だ。ポールポジションは宮園拓真選手,続いて高橋拓也選手,山中智瑛選手,佐々木唯人選手,加藤達彦選手,菅原達也選手の並びでレースはスタートした。
スタート直後から,西チームの宮園選手と山中選手が横並びで前を押さえるような形をつくり,さらに東チーム同士の車が接触,東チームにとっては苦しい展開となってしまった。
その後,東チームはスリップストリームを使って態勢を立て直し,菅原選手は2位をうかがう位置まで追い上げていく。また,後方でも最後尾から順位を上げようとする加藤選手を,佐々木選手と高橋選手が連携して抑えるという,見ごたえのある展開が生まれた。
ただ序盤にできた差は埋まらず,独走を続けた宮園選手が1位でゴールインして6ポイント,山中選手が2位で5ポイントを獲得。この時点で「グランツーリスモSPORT」における西チームの勝利が確定した。
「eFootball 2022」が東西対決の結果を決める!
こうして東西チームが制した種目の数が並び,最終決着はSPORTSジャンル「eFootball 2022」(PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)へと持ち越された。西チームのMayageka選手は公式世界大会に日本人最多となる3度の出場を果たす強豪。対する東チーム,レバ選手も第18回ジャカルタ・パレンバン アジア競技大会で金メダルを獲得した実力者だ。
「eFootball 2022」決勝のレギュレーションは1マッチ5分の試合を行い,3マッチ先取した側が優勝というもの。勝敗を決めるポイントは,実際のサッカーと同様,フォーメーションによる攻防と,パスワークでいかに相手の守備を崩すかというところになる。
注目のチーム選びは,Mayageka選手がマンチェスター・ユナイテッド,レバ選手がバイエルンを選択し,決勝戦が始まった。第1マッチ開始から互いのゴール前に詰め寄る激しい展開が続いたが,後半のロスタイムで得点したMayageka選手がまず1マッチ先取。
2マッチ目は勢いを維持したMayageka選手が2点先取する展開。その後はレバ選手の攻勢が続いたものの,1点を返したところで前半が終了。
ここで画面に表示された両選手の心拍数を見てみると,レバ選手は毎分75回と比較的平静で,リードしているMayageka選手のほうが153と高い状態を維持していたのが面白い。
後半終了直前,レバ選手はさらに1点入れて追いついたものの,Mayageka選手はキックオフ直後のクリスティアーノ・ロナウドを軸にした攻めで即座に突き放す。こうして2マッチ目もMayageka選手が連取することとなった。
3マッチ目,あとのないレバ選手はさらに攻め続けるが,守りを固めたMayageka選手にはスキがない。さらにカウンターでレバ選手のゴールを脅かし,先制点を獲得。だがレバ選手もギリギリの角度を通したシュートで1点を返し,勝負は延長戦に突入した。
延長戦開始早々,またもやキックオフ直後からのMayageka選手の攻めがハマって得点する。そのままMayageka選手は勝利し,この種目の優勝者となった。
同時に,Red Bull 5G 2021 FINALSの優勝チームは西チームに決定。共に戦った西チームのメンバーも大きな歓喜に包まれていた。
日本のトッププレイヤーが一堂に会し,東西に分かれて戦いを繰り広げるという他に類を見ないイベント「Red Bull 5G」。選手たちが見せた高いパフォーマンスはもちろん,ゲームやジャンルを越えてチームメイトを応援し,勝負が終わったあとは陣営さえ越えて互いを称え合う姿は,eスポーツもまた「スポーツ」である何よりの証と感じられるものだった。
そして来年2022年もまた,Red Bull 5Gは開催されることが決定している。はたして決戦の地はどこになるのか,どのような勝負が繰り広げられるのか,楽しみだ。
「Red Bull 5G」公式サイト
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