インタビュー
「デジタルモンスター ver.20th」の開発者は当時デジモンに夢中だった子供達。ファン垂涎の要素を多数追加した復刻版の魅力を聞いてきた
今年で誕生20周年を迎えるデジモンこと「デジタルモンスター」シリーズ。今回のデジモン ver.20thは,1997年に発売されたシリーズの原点である液晶ゲーム「デジタルモンスター」の記念復刻版として生産される商品だ。
これまでも「デジヴァイス」や「D-3」など,アニメに関連する携帯液晶ゲームが次々と復刻されてきたが,元祖デジモンが復活するのはファンにとっても大きなニュースと言えるだろう。そこで今回4Gamerは,バンダイの阿部雄太氏と五月女 翔氏にデジモン ver.20thが具体的にどのようなものなのか話を聞いた。インタビューにはボーイズトイ事業部 MDチームの大田原智康氏も同席して話してもらっている。
「デジタルモンスター ver.20th」公式サイト
当時デジモンに夢中になった子供達が作った復刻版
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,お二人がこれまでどのようにデジモンと関わってこられたのかを聞かせてください。
五月女 翔氏(以下,五月女氏):
私は,現在第4章まで公開されているアニメ「デジモンアドベンチャーtri.」に関連する商品の企画開発を行っています。また,アニメ15周年を記念した玩具「デジヴァイス ver.15th」や「D-3 ver.15th」「ディーアーク ver.15th」といった,デジモンアニメに関連した商品を復刻版という形で大人向けに企画しています。
阿部雄太氏(以下,阿部氏):
私は,大人向けのデジモンシリーズ全般の商品を五月女と一緒に企画開発しています。あとは「デジモンユニバース アプリモンスターズ」といった子供向けの商品企画をやらせていただいております。言うなれば,デジモンシリーズ企画開発の現場隊長ですね。
4Gamer:
お二人とも若く見えますが,もしやリアルタイムで初代「デジタルモンスター」を遊んだり,アニメを見ていたりした世代ですか。
そうですね。私が8歳のときに「デジモンアドベンチャー」が始まったので,まさにアニメ直撃の世代です。
阿部氏:
ちょうど五月女がアニメ世代で,私が初代の液晶ゲームを遊んでいた世代になります。僕はアニメの方はあまり詳しくなかったので,バランスが取れているかなと。
4Gamer:
子供のころに好きだったデジモンの商品に携わっているなんて,世のファンからしてみればとてもうらやましいですね。
五月女氏:
そうかもしれません。
大田原智康氏:(以下,大田原氏):
バンダイって結構そういうスタッフが多くて,子供のころに見ていて好きだった商品を担当するということが,企画者の夢だったりするんですよ。
4Gamer:
さて,そんなデジモン世代のお二人が今回企画されたデジモン ver.20thですが,開発に至った経緯やきっかけというのは何だったんでしょうか。
五月女氏:
先ほども少し話しましたが,アニメが生誕15周年を迎え,2015年からデジモンアドベンチャーの「デジヴァイス」,デジモンアドベンチャー02の「D-3」,デジモンテイマーズの「ディーアーク」といったアニメの商品をどんどん復刻しました。
そして,今回1997年に発売された元祖「デジタルモンスター」が記念すべき20周年を迎えるということで,世の子供たちが初めて遊んだあのデジモンをもう一度皆さんの手元に届けたいなと思ったことが,開発の始まりです。
4Gamer:
発表後の反響というのはいかがでしたか。
すごく良かったですね。デジモン ver.20thは,弊社の直販サイト「プレミアムバンダイ」で予約受付をしているのですが,今まで会員登録していなかった新規のお客さん達がたくさん入ってきてくれました。今ご予約いただいているお客さんのうち,およそ40%が新規という比率になっていますから,「アニメのデジヴァイス系には興味がなかったけど,初代のデジモンは欲しい」というファンには,大きな支持をいただいていると感じています。
4Gamer:
4Gamerの記事でも大きな反響がありまして,注目度の高さをひしひしと感じております。
阿部氏:
とてもありがたいですね。
4Gamer:
どのくらいの年齢層が購入されているのでしょうか。
五月女氏:
27歳から30歳くらいのお客さんに多く注文をいただいています。デジヴァイスやD-3のときは,24歳から26歳あたりのお客さんが多かったので,アニメからデジモンを好きになった人と,液晶ゲームからデジモンを遊び始めた人で,若干年齢層に違いが見られますね。
4Gamer:
さらに若い10代の客層はどうですか。
阿部氏:
19歳以下になると若干少ないかなという印象ですね。今デジモンのグッズを買っていただいているお客さんは,アニメ「デジモンアドベンチャー」がスタートした1999年当時に小学生だった,20代前半から中盤くらいまでがコアになっています。20代後半から30代前半のお客さん達は,液晶ゲームであったり,デジモン自体に関心を持たれる人が多く,フィギュアなどがよく売れています。
4Gamer:
売れ筋の商品でも微妙な世代の違いが出てくるのですね。
お二人は,それぞれ液晶ゲーム世代とアニメ世代ということですが,お気に入りのデジモンや思い出深いデジモンを教えてください。
五月女氏:
私は「デジモンアドベンチャー」が好きだったので,ウィザーモンが好きです。
4Gamer:
ウィザーモンですか。
はい。子供のころアニメを見ていて感動して泣いたのが,テイルモンとウィザーモンのやり取りなんですよね。ウィザーモンって本当に心の優しいデジモンで……。
4Gamer:
ああ,あのシーン(※)はファンの心にも強く刻まれていますよね。
五月女氏:
あとはエレキモンが好きです。タケルが訪れることになるはじまりの街という場所にいるデジモンなんですけど,そこにあるデジタマを必死で守っているんですよね。
※アニメのネタバレ注意
強敵との戦いで,ウィザーモンはテイルモンをかばって命を落としてしまう。これがきっかけとなり,テイルモンは完全体へと進化し,強敵を討ち果たす。アニメファンの間では今も語られるシーンだ。
4Gamer:
液晶ゲーム世代という阿部さんは,いかがでしょうか。
阿部氏:
自分は思い出深いデジモンというと,マメモンですね。
4Gamer:
それは何故ですか。
阿部氏:
マメモンって進化させるのがすごく難しいんですよね。メタルグレイモンの進化元になるグレイモンは,成長期をきちんと真面目に育てれば進化するじゃないですか。逆にもんざえモンに進化するヌメモンは適当に育てれば簡単に進化します。ただ,マメモンに進化できるデジモンって真面目でも不真面目でもなく,中途半端に育成しなきゃいけないので,「今何回お世話ミスしてるかな」とか考えながら育てるのが大変だったんですよ。
4Gamer:
確かに当時メタルグレイモンになった人はたくさんいましたけど,マメモンになった人ってそれより少なかったかもしれません。
はい。なので,苦労してマメモンに進化したときにはめちゃくちゃ喜んだ記憶が残ってます。あとは,あんな小さいキャラクターが爆弾を投げるという,見た目とのギャップも好きです。
4Gamer:
小さいけどとても強いんですよね。
阿部氏:
通信対戦でもあのメタルグレイモンに簡単に勝てたりしますからね。
4Gamer:
ver.1で言うと,もんざえモンが1番強くて,その次にマメモン,3番めがメタルグレイモンなんですよね。もんざえモンは,ヌメモンという最弱のデジモンから最強のデジモンになるというインパクトがとても大きかったです。
阿部氏:
当時の開発者に話を聞いたら,途中で育てるのをやめないよう,救済措置としてもんざえモンを作ったそうです。
4Gamer:
ある日突然友達のヌメモンが進化して,今までの力関係が逆転したりするんですよね。よく考えて作られてたなと思います。
パタモン進化! エンジェモン? いいえ,オーガモンです。アニメとは違った進化が初代デジモンの面白さ
初期のデジモンのデザインって改めて見てみると,すごく野性的に描かれていますよね。グレイモンは口からよだれをまき散らしていたり,今にも襲ってきそうなイメージでした。それが年を経るにつれ,どんどんヒロイックなデザインになっていったイメージがありますが,ターニングポイントというのはやはりアニメなのでしょうか。
阿部氏:
デジモンの初期コンセプトが「戦うたまごっち」で,初期の頃は恐竜だったり,野生むき出しのモンスター達を端末の中で育てようというイメージで作られていたと聞きます。なので,最初のデジモンはかなり凶暴なデザインが多いんですよ。
アニメ化の際に東映アニメーションさんから,可愛らしいイメージやパートナー感というものを入れていただいて,そこから色々なデジモンができていったという感じでしょうか。
4Gamer:
今やアニメのイメージ=デジモンのスタンダードになったあたり,アニメの存在というのはやはり大きいんですね。初代デジモンは,モンスターの進化も今のイメージでは考えられないようなものが多くありますよね。
阿部氏:
今見返すと,ぶっちゃけ違和感はありますけど(笑)。
大田原氏:
ゲームだとまた違ったりするよね。
五月女氏:
私はアニメからデジモンにはまっていったので,初代デジモンの進化系譜については,正直未だに違和感があります(笑)。
4Gamer:
アニメだとパタモンはエンジェモンになりますけど,液晶ゲームだとそもそも登場するバージョンが違うので,エンジェモンになれないんですよね。同じ育て方をしようものならオーガモンになってしまいます。
阿部氏:
おっしゃる通りです(笑)。ただ,今回のデジモン ver.20thは,当時のものを完全再現するつもりで作っているので,その辺りには手を加えていません。
五月女氏:
この今でこそ感じる“違和感”が当時遊んでくれていた人が感じる懐かしさでもあり,変えてはいけない部分だったのかなと。
4Gamer:
なるほど。
阿部氏:
先ほどおっしゃられていたメタルグレイモン,マメモン,もんざえモンの力関係もこの話につながってきますが,「一見強くなさそうなデジモンが強い」「この進化って今見ると変」というような“違和感があるけど面白い部分”はずっと残していきたいと考えながら作ったので,変えていません。
4Gamer:
“今の常識”で遊んでみると,また新鮮に映るかもしれませんね。
あと,デジモンの液晶ゲームと言えばモンスターイラストだけなく,その16×16の空間に表現されるドット絵が特徴的です。このドット絵というのは毎回モンスターイラストとセットで作られているのでしょうか。
阿部氏:
ドット絵に関しては,あったりなかったりというのが正直なところです。液晶ゲームに出ているデジモンは当然セットで作られています。コンシューマゲームに登場したデジモンの中には一部ドット絵が作られているモンスターもいますが,液晶ゲームなどを出していない一時期に生み出されたデジモン達は公式イラストしかない子もいます。
4Gamer:
すべてにドット絵が作られているわけではなかったんですね。
阿部氏:
ただデジモンというのは,液晶ゲームを原点として始まったものですので,我々としてはすべてのデジモンにドット絵があるべきだと考えていて,今後もどんどん作っていきたいと思っています。
4Gamer:
それにしてもデジモンのドット絵って職人技ですよね……。16×16のドット絵かつモノクロなのにちゃんとどのデジモンなのか分かります。
阿部氏:
すごいですよね。ドット絵は,一緒に製品を作っているウィズの職人さんが一生懸命作ってくれています。
五月女氏:
どのドット絵もしっかり特徴をとらえているんですよね。うまく色を逆転して色違いのデジモンを作ったりしていて,当時のスタッフはすさまじいなと,ただただ感心するばかりです。
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デジモンワールド -next 0rder- INTERNATIONAL EDITION
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(C)本郷あきよし・東映アニメーション
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
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