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「デュエル・マスターズ グランプリ 8th」をレポート。2つのフォーマットで行われた史上初のダブルGP
「デュエル・マスターズ」(以下,デュエマ)は,ウィザーズ・オブ・ザ・コーストが開発し,タカラトミーが販売しているTCGであり,約17年の歴史を誇るTCGの雄である。もともとは,小学生を主なターゲットとして開発されたTCGだが,シンプルで分かりやすいルールながら,奥が深く,一発逆転要素もあるとして,今では社会人を含め幅広い層のプレイヤーがいる。
ここ数年のデュエマプレイヤーは,カジュアルに楽しむ層と,数百人規模のチャンピオンシップ(以下,CS)と呼ばれる大会などに出場する競技志向の層(いわゆるガチプレイヤー)に二極化しており,タカラトミーもそれぞれに向けた施策を行っている。
デュエマの大会は,数人から十数人規模の店舗大会,数十人から数百人規模のCS,1000人前後の超CSと,その参加人数によって大別されるが,その中で最も大規模な大会が,今回行われたグランプリ(以下,GP)である。
デュエマGPがはじめて開催されたのは,2015年8月1日であり,その後ほぼ半年ごとに全国各地で行われており,GPの参加人数は1000〜3000人程度と非常に大規模だ。国内で行われるTCGの大会としては,同じくウィザーズ・オブ・コーストの「マジック:ザ・ギャザリング」のGPと並び,トップクラスの参加者を誇る大会といえる。
8回目となるDMGP 8thは,DMGP史上はじめて2日間で行われる大会である。デュエマは現在,殿堂レギュレーションと2ブロック構築という2種類の公式フォーマットがある。殿堂レギュレーションとは,過去に発売されたデュエマのカードをすべて使えるというフォーマットだ。もちろん,使うことができないプレミアム殿堂カードや,デッキに1枚しか入れられない殿堂カードといった制限はある。
一方の2ブロック構築は,マジック:ザ・ギャザリングでいうスタンダードと同じように,ここ1〜2年以内に発売(再録も含む)されたカードしか使えないというフォーマットだ。2ブロック構築は,過去のカード資産を持たない新規参入組でも挑戦しやすい。これまでのGPは,1日で開催されており,殿堂か2ブロックのどちらかのフォーマットを採用していたが,DMGP 8thでは,初日の13日が2ブロック構築,2日目の14日が殿堂レギュレーションという,史上初のダブルGPとして開催された。もちろん,エントリーは独立しており,両日参加する熱心な選手も多かった。
前置きが長くなったが,筆者は娘や息子とデュエマを楽しむプレイヤーの1人であり,最初のGPでは,選手として出場した娘の付き添いに,2ndと3rdではフロアジャッジとして,4th〜7thまではスコアキーパーとしてデュエマGPに参加している。今回は,ダブルGPとなったため,初日はスコアキーパーとして参加,2日目は娘と選手として出場したので,いろんな立場から,デュエマ最大のお祭りであるGPの様子をレポートする。
会場が拡充され,非常に快適な環境
実のところ今回のDMGP 8thは,当初ホール8のみを使うことになっていたのだが,参加者が当初の想定より増えたこともあり,急遽隣のホール7も会場として使うことになった。会場写真を見てもらえばわかると思うが,これはまさに主催の英断であろう。
これまでのGPでは,会場がやや手狭で息苦しかったり,フリープレイの場所がとれないといった不満もあったのだが,今回は,スペースがゆったりしており,運営側としても参加者側としても非常に快適であった。
DMGPではメインとなる本戦以外にも,さまざまなサイドイベントが行われており,サイドイベントやサイン会狙いの参加者も多いのだが,まずは本戦の様子を紹介する。
開会式では,主催者の挨拶や,ヘッドジャッジから注意事項の説明が行われ,「デュエマ,スタート!」のコールともに,本戦が開始された。デュエマは,先攻後攻をジャンケンで決めるのが正式ルールであり,3000人が一斉に挨拶をしてジャンケンをする様子は,なかなか壮観であった。
DMGPの本戦は,予選と決勝トーナメントから構成されている。予選は,スイスドロー9回戦で行われた。スイスドローとは,勝つと勝ち点が3点もらえ,次の対戦相手は勝ち点が同じもの同士で戦うという方式だ。要するに,勝てば勝つほど相手も強くなり,負ければ相手も弱くなるという仕組みだ。
ただし,途中で3敗すると自動的にドロップ扱いとなり,以後の予選のマッチングからは外される。そして,9回戦が終わった時点で,上位128名が決勝トーナメントに進むことができる。約3000人の中で,上位128名になること自体がかなりの難関だ。9-0(9勝0敗)や8-1(8勝1敗)なら,確実に上位128名に入るが,7-2(7勝2敗)の人は,一部しか上位128名に入れない。
勝ち点が同じ人同士の順位は,オポネント・マッチ・ウィン・パーセンテージと呼ばれる数値によって決定する。これは大雑把に言うと,どれだけ強い対戦相手と戦ってきたかという数値だ。要するに,勝ち点が同じ21点でも,戦ってきた相手がより強い人のほうが上位だという考え方である。
したがって,7-2で終わった人は,自分が上位128名に入ったかどうかは,成績が発表されるまで確定しない。成績表が公開されると,会場のあちらこちらで,喜びと落胆の声が上がった。
決勝トーナメントは,観客が近寄りすぎないように,柵で囲われた中で行われる。また,予選,決勝ともに,注目選手の対戦は,フィーチャーテーブルと呼ばれる特別な場所で行われ,YouTubeでの生放送やテキストカバレージ(対戦の様子をテキストで書き起こしたもの)の対象となる。
全16回戦を戦い抜き,初日の2ブロック構築を制したのは,赤緑印鑑パラス覇道轟轟轟を使ったおんそくさん,2日目の殿堂レギュレーションを制したのは,白赤メタリカミッツァイルを使ったデデンネさんである。両者ともに,素晴らしいデッキ構築とプレイングで,観客を魅了していた。
GP初の超シールド大会など,サイドイベントも充実
GPでは,サイドイベントと呼ばれる,本戦以外のミニ大会が多数行われる。GPならではのユニークな大会が多く,すべて当日受付で参加できるため,サイドイベント目当ての参加者も多い。今回のDMGP 8thでは,2ブロック/殿堂ガンスリンガー,タイムスリップカオスドラフト,超シールド大会という3種類のサイドイベントが開催された。
ガンスリンガーは,自分で構築したデッキを使って,2回戦を行うというミニ大会である。フォーマットは,2ブロックと殿堂のそれぞれで行われており,参加することでスタンプを2つ,1勝ごとにスタンプを1つ押してもらえる。このスタンプを決められた数集めることで,GP特製カードキーホルダーやアーティストサイン入りポスターなど,さまざまな景品と交換することが可能だ。
タイムスリップカオスドラフトは,手ぶらで参加できるサイドイベントであり,とくに人気が高い。ドラフトとは,参加者それぞれが同数の未開封パックを受け取り,順に開封し,パックの中から1枚,自分が使いたいカードを選び,それ以外のカードを隣の人に回し,受け取った束の中から,また1枚カードを選んで隣の人に回すということを繰り返して,デッキを作って対戦するものだ。
ユニークなのは,タイムスリップカオスと付いているところで,通常のドラフトは現行の最新パックを使うのだが,これは過去に発売されたパックをランダムで使う。デュエマのタイムスリップカオスドラフトは,全部で6パックを使い,一度に2パックずつ開封するルールになっている(ドラフトで手に入れたカードをすべて使ってデッキを作る。デッキは30枚となる)。
意外なカードや懐かしいカードが登場し,対戦も文字通りカオスなことになるので,プレイヤーからの大きな笑い声がよくきこえていた。こちらは4人1組でドラフトを行い,2戦することになる。こちらも,参加でスタンプを2つ,2勝すると追加で2つもらえる。両日とも人気で,開始から2時間程度で,用意されていたパックがすべてなくなってしまった。
超シールド大会は,今回のGPではじめてサイドイベントとして開催されたもので,1人15パックを受け取り(こちらは最新弾),その15パックを開封してでてきた75枚のカード(デュエマは1パック5枚が基本)を使って30枚デッキを作り,対戦するというものだ。シールド戦は,マジック:ザ・ギャザリングなどでもよく行われているが,カードの選択が勝敗を分けるため,高い技量が要求される。こちらは定員128名で行われたが,定員一杯となっていた。
アーティストのサイン会,スケッチ会も大人気
GPのお楽しみイベントといえば,アーティストのサイン会やスケッチ会である。デュエマでは,多くのアーティストがカードに書かれているクリーチャーなどをデザインしている。そのアーティストが,自分の絵が描かれたカードやプレイマットにサインをしてくれたり,有料で希望の絵をスケッチしてくれるのだ。
サイン会は無料だが,各回につき60名まで(サイン会は各日2回),スケッチ会は有料で6名までとなっており,それぞれ抽選券が配られ,当選者のみサインしてもらえることになる。初日は,Tutui Misa先生とHisanobu Kometani先生が,2日目は,IWAO先生とYuukoo009先生が,サインやスケッチを行った。とくにスケッチ会の競争率は高く,ファンが抽選に当たって喜ぶ姿や外れてがっかりしている姿が見られた。
物販やイートコーナーも賑わう
物販コーナーでは,ホビーステーションやフルコンプといった,カードショップが出展しており,デュエマのシングル販売やスリーブなどのサプライ品を販売していたほか,先行販売の公式グッズも用意されており,軒並み売り切れるほどの人気であった。
また,イートコーナーでは,クレープ屋やケバブ屋,ステーキ丼屋といったキッチンカーが並び,イートコーナーも十分なスペースがとられていた。ただし,夕方までには売り切れてしまったり,注文の列がかなり長くなってしまったりしていたので,もう少しキッチンカーの数が欲しかったところだ。
ガンスリンガーや後述するアミューズメントコーナーをプレイするには,GPチケットが必要になるが,GPチケットはデュエマの新弾パックを6つ会場で購入するごとに3枚もらえるようになっている。
また,本戦参加者にはGPパックと呼ばれる参加賞が配布される。GPパックは,特製プレイマット,特製スリーブ,特製サイドローダー,特製プロモカードが入った特製バッグだが,GPパック受取所が22時まで受け付けていたため,受け取り列が長くならず,プレイヤーの立場からみてもありがたかった。
射撃やゲートボールなど,アミューズメントコーナーも充実
また,会場奥のアミューズメントコーナーでは,デュエマをモチーフにした各種のアミューズメントが楽しめ,子ども達にも人気であった。全部で4種類のアミューズメントが用意されており,すべてGPチケット2枚で1回プレイできるようになっていた。成功するとスタンプがもらえるので,何度も挑戦している人も結構多かった印象だ。
ギャラリー展では超貴重なアニメ資料が多数展示
また今回のGPでは,ギャラリー展も行われており,超貴重なアニメ資料などが展示されていた。デュエマは,アニメの人気も高く,アニメからTCGに入る人もかなりいる。普段見ることができない,アニメの台本や絵コンテ,設定資料などが多数展示されており,熱心に見ている人が多かった。
シャドーボックスや拡張アート,ミニ四駆など圧巻のユーザー出展
これまでのGPでも,デュエマを愛するユーザーによる出展が行われていたが,DMGP 8thでは,その出展スペースが大幅に拡大されており,出展者の数もこれまでの倍以上になっていた。
プロモコレクションやこれまでに登場した全パックの未開封パックの展示,複数枚のカードの絵の輪郭をカッターなどで切り出して重ねることで,カードを立体化するシャドーボックス,絵の周りを描き足して作品として仕上げる拡張アート,クリーチャーの絵の切り絵,デュエマのクリーチャーをモチーフにしたミニ四駆など,さまざまな出展が行われていた。
素晴らしい作品ばかりで,どうやったらこういった作品を作れるのか,作者に質問している人も見られた。作品については,以下の写真を見ていただきたい。
有志によるDMEDHの体験コーナーも盛況
ユーザー出展の奥のスペースでは,デュエル・マスターズ統率者戦(以下,DMEDH)の体験コーナーが用意されていた。EDHとは,もともとマジック:ザ・ギャザリングで遊ばれているフォーマットであり,同時に多人数で戦うことが特徴だ(通常のデュエマは1vs1の対戦)。
EDHのデュエマ版がDMEDHであり,公式なフォーマットではないが,愛好家が増えており,有志による対戦会や交流会なども頻繁に行われている。
DMEDHは,通常のデュエマとはデッキ構築のルールが異なる。通常のデュエマのデッキは40枚だが,DMEDHは統率者に指定したクリーチャー1枚と59枚の合計60枚となり,また,同じ名前のカードは1枚しか使えない(ハイランダー構築と呼ぶ)。そのほか,独自の規制カードリストがあるほか,ゲームの進行も多少異なるのだが,通常のデュエマではあまり使われない派手なカードが効果的で,ボードゲームにも似たプレイ感覚が魅力だ。
このコーナーでは,DMEDHをプレイしたことがない人でも,気軽にDMEDHをプレイできるように,DMEDHデッキの貸し出しやルール説明をおこなっていた。GPで,こうしたコーナーが設けられたのも,今回が初めてであり,DMEDHを体験してみたいというプレイヤーで賑わっていた。
素晴らしい運営で2日間,たっぷり楽しめたGP
筆者がプレイヤーとしてGPに参加したのは,今回が初めてなのだが,3000人を超える規模にもかかわらず,進行がスムーズで,会場スペースも広くて快適であった。ホビーステーションがDMGPを開催するのは,今回が4回目となるが,過去の経験やノウハウが十分活かされているのであろう。全国から集まった公認ジャッジはもちろんだが,参加者の誘導や案内,物販など,GPを支えてくれたホビーステーションのスタッフの方々に感謝したい。
「デュエル・マスターズ」公式サイト
- 関連タイトル:
デュエル・マスターズ トレーディングカードゲーム
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TM &(C)Wizards of the Coast/Shogakukan/Mitsui-Kids